二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜5000越え ( No.282 )
- 日時: 2013/04/16 14:47
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
- 参照: http://nicoviewer.net/sm18621153
4話 「ネーミングセンス!」(長いです)
さて。いま、置かれた状況を、説明いたしましょうか。
いたって単純でございます。理解もはやいでしょう。
簡潔に言いましょう。
つかまってます。
まあ、ただ単に、おりの中にひとり、閉じ込められて、人目に触れないならいいんだがね。うん、気楽だし、逃げ出すなら勝手に逃げ出せるし。
問題は、このあたりなんすね、ええ。
まず第一に。人目に触れてるんですよね、これが。どこにいるかっつーと、ラグナロクスタジアム。どういうことかは、まあ、のちのち。
で、第二に。ひとりじゃないんですよね。いやぁ、ほんとに困った。まったく、一緒に忍びこまなきゃ良かったって、後悔してるんだけどなぁ……。
あ、これで、カンのいい人は、もう分かったよな? 一緒に居るのは、
「なんで、おれまでつかまらなきゃならねぇんだよ!」
「落ちつけ、相崎。俺と同罪なんだから。」
「うるせぇ! なぜ!」
そう、相崎。顔を両手で覆い隠し、わんわん泣いております。男のくせに、情けねぇの。
まあ、俺と一緒につかまったのは、とうぜん、不法侵入の罪ってところ。ふたりそろって、『フェーダ』の本拠地に、不法侵入だしな。つかまっても、無理ない気はするが。
こういう経験は二度目だから、もうあせったりしない。
次に、俺がなぜ、つかまって、ラグナロクスタジアムでおりに入れられてるかを説明したいんだが。
まあ、こういうのは、説明が長くなるから、画面の前のあなたも、たぶん、そろそろうんざりしてるだろう。
というわけで、物語形式でお送りしよう。
《半個半幽》の能力が解けた俺は、完全に絶体絶命だった。走りだした体勢のまま、顔以外動かせない状況にある。
こちらに手を差し出しているサリューは、怪しく笑んでいた。となりのフェイはと言うと、無表情でこちらをながめているだけ。いつの間にか、支援者xは退室してしまっていた。
「さてと。」
うわ、なんかふつうに笑ったよ、こいつ。
こういう状況であんな笑い方されたら、イヤな予感しかしないわ。
「提案があるんだけどね。」
うん、なんか、的中しそうな予感爆発中。
「きみって、セカンドステージチルドレンだよね?」
いや、あんたがそえれ、天馬にバラしたんやないんですかな。
とは言えず。
「そうですが。」
「なんで敬語なのかは、ちょっと置いとくね。」
あえて言うところからすると、あんまり置いとく気ねぇだろ。
とは、またまた言えず。
「それが、なんなんだよ?」
「あのね……雷門を裏切って、ぼくらに協力するつもりはない?」
……俺の耳も、とうとうおかしくなったか? それとも、サリューの頭が猿になったか?
まあ、どっちでもいい。
とりあえず、いまは脱出案を見いだしたい。時間稼ぎをしなくちゃ。
「なんで急に?」
「同じセカンドステージチルドレンなら、ぼくらみたいな思いをしたことがあるかな、と思ってさ。復讐心が芽ばえない人間なんて、いないだろう?」
「……まあ、な。」
でも、それって、どうなんだろう。
そうせ、武力やらそういうので押さえつけたって、それはきっと、一時的な形でしかないだろう。
いつか、押さえつけられた側も、自分たちの方が上だと示したくなる。それで、何度かやって、成功したら、また同じことが起こる。
けっきょくは、くり返しになるだけだろう。まあ、どの国もこんなことをくり返しながら成り立っているのだから、当たり前の気持ちだとは、思うんだけど。
「で、どうなのかな? まあなって、言っていたし。」
「……まあなとは言ったけど……でも……。」
どうしよう。まだ解決策なんか、まだ考えついてないよ……。
(あーっ、もう! こんなとき、超強風でも吹いて、サリューの気をそらしてくれたらなぁ……。)
そしたら、このエスパーだって解けるだろうに。
なんて、考えても無駄なのは、分かっていた。
だけど、俺はただひとつ、なにか忘れているような気がして……。
と、思った、そのとき。
ビュオォッ
バタンッといきおいよく窓が開き、強風が部屋に入りこんできた。
えっ、ま、まじですか!? まじで、入ってきたんですか、救いの風が!
「なっ、なんで急に……わっ!?」
サリューが風にあおられ、しまったという顔でよろめいた。そのはずみに、エスパーも解かれ、俺は全力疾走で、扉を開けて、廊下に逃げ出す。
「しまったっ。」
サリューがさけんだが、もう後の祭りだぜ!
っと、お? なんか、むこうからも、なにかが来るぞ……って!
「相崎!?」
「おう、月流!」
合流した。
って、こんなところで合流する必要、ねぇよ!
しかも、相崎の背後には、セカンドステージチルドレンと見てとれる奴らがたんまりと。うーわー、自体は最悪だな。
俺は相崎の腕を掴み、いちばん近くの窓にむかって走り出す。
「おい、おい!?」
「黙って見てろ!」
とりあえず、《半個半幽》で、この壁をすりぬけ……。
ヒュンッ
閃光が、再び耳をかすめる。
……やばいな。
「それ以上動くと……撃つよ?」
俺は相崎の腕をつかんだまま、その場に立ち止まる。
……最悪どころのさわぎじゃないぜ、これ。
俺と相崎は同時にふりかえり、手をあげる。それを見て、サリューは満足げに笑った。
「うん、それでいいよ。……でも、なぁ。」
なんだよ、まだ不満かよ?
「風花には、動いてもらいたくないな。いつ、《半個半幽》の能力発動されるか、分かんないし。だから、ちょっと一緒に来てもらうよ。」
サリューが、ちらっととなりのフェイを見た。フェイは静かにうなずき、じっとしている相崎を連行していく。ふたりが見えなくなりそうになったとき、
「相崎に手、出すなよ!」
そうさけんだ。俺に手を出すならまだしも、仲間に出されるのは、気にくわない。
フェイは立ち止まり、こちらを一度確認してから、角を曲がった。
伝わった……のか?
「さ、来てね? みんなは、もう部屋にもどって。」
「そうさせてもらうわ。」
メイア? だったかな。そいつが、うんざりという顔をしながら、きびすを返した。それを合図に、みんな部屋にもどっていく。
全員が部屋にもどると、サリューは俺に歩みよってきた。そして、意味ありげな笑みをたたえる。
「な、なんだよ。」
「別に、なにも?」
そう言いながら、彼はうなじを強くたたいた。
意識がなくなったのは、ここだった。
んで、いまにいたる。
これは、ラグナロク第三戦目。後半に入る、一歩手前だ。
どうやら、俺が眠っている間に、おりに入れられたらしい。くわしいいきさつは、相崎から聞いた。俺たちが入れられているおりは、けっこう高いところにある。だから、シュートでもしたら、落とすぞっていう警告なのか、タダの形だけなのか。
だが、そんなもんを気にしない選手も、ひとりいた。
ザナーク・ドメイン。すでにミキシマックスを果たしている。彼はいままさに、シュートを打とうとしているんだが、天馬が浮かない顔。
ええい、なんか安心させてあげたくなるじゃないかっ。
「うっちまえ! すでに落ちた時の対策は考えてある!」
「そういうと思ったぜ!」
うそつけ。
「「グレートマックスな俺」!」
ザナークは、きみょうなさけび声を……って、待て。まさか、あれ、必殺技か!?
「「ネーミングセンス!」」
俺と相崎の声が、みごとにハモったのと同時に、ザナークのシュートが、ゴールをつらぬいた。
「やったーっ!」
俺の言葉で安心してしまっていたのか、天馬がうれしそうな声を上げた。
だが。
「えっ、な!?」
輝が声を上げた。理由は単純。
落下し始めていたんだ、おりが。