二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜6000越え!? ( No.314 )
- 日時: 2013/11/05 06:54
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: J69v0mbP)
☆番外編☆第十五話 「人質」
「どうしたの、風花!?」
帰るとほぼ同時に、母が風花の肩をつかんだ。風花は下くちびるをかみしめ、床に視線を落とす。
それを見て、母はなお続ける。
「最近、ずっと学校から帰る度、ケガしてると思ってたけど……髪なんか切って! …………切られたのね。」
びくっと肩がはねる。
なぜだか分からない。でも、いいようのない恐怖が、風花の口から「いじめられている」という事実を、いい出せなくしていた。
母にいうのでさえ、怖い。
「ねえ、こたえて。」
「ふ、風花が切ったの、自分でやったの。べつに、みんなは悪くないの……。」
母はまだ疑っているらしく、風花をきつく睨んでいたが、やがてやめた。
立ち上がり、風化に背を向ける。
「え……ママ……?」
「風花がいわないんじゃ、ママも分かんないわ。」
肩越しに冷たい視線を向けられる。
風花はその場にかたまったまま、リビングに歩いていく母の背中を見つめていることしかできなかった。
☆
「あんた、絶対にあたしたちにいじめられてること、いっちゃだめなんだからね。」
はじめて、そういわれた。
だが、元々いおうとも思っていないし、いえる気もしていない。
「もしいったら、そうだなぁ……。」
壁にもたれかかって、うなだれている風花を見て、くすっとわらった。
「あ、そうだぁ♪」
「なになに?」
「あのさ、となりのクラスに、こいつの仲のいい男子いるじゃん?」
「ああ、影山輝ね。」
びくっと、風花の肩がふるえる。顔を上げると、女子が風花を見下ろしながら、くすくすわらっている。
「輝くんもあんたとおなじメにあわなくちゃいけなくなるっていったら、あんたも、誰にもいえなくなっちゃうよねぇ?」
「あ、いいね〜。」
「でしょでしょ?」
なにがいいのか、風花にはまったく分からない。
ただひとつ分かるのは、輝を人質にとられてしまった、ということくらいだった。