二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜 ( No.318 )
日時: 2014/01/08 18:44
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: J69v0mbP)

☆番外編☆第十八話   「家庭教師」



「ここを……風花ちゃん?」

ぼーっとしていた風花に、家庭教師の先生は優しく声をかけた。風花ははっと我に返り。

「ごっ、ごめんなさい。」
「いいのよ。まだ慣れないわよね。」

家庭教師の先生——陽子(ようこ)先生は、風花の頭をなでながら、彼女にいいきかせるようにいった。風花はそうではないのだが、小さくうなずく。

「風花ちゃん、なにか分からないこと、ある?」

優しいほほ笑みをたたえ、風花の目線に合わせて聞いてきた。
素直に首を振る。勉強は、教科書を読んだり、解き方さえ教えてもらえれば、難なく解くことができる。
陽子先生はうんうんとうなずき、授業を続けた。

「じゃあ、この問題を解いてみて。」
「はい。」

返事をしながら、すでに頭の中に答えはでていた。だが、わざと考えるふりをする。
クラスの女子に、こういわれたことがあった。

『あんたさぁ、自分が天才だってこと、じまんしたいわけ? 考えもせずに答え書いてさぁ。ムカつくんだよね。』

いわれたことがまだ振り切れず、風花は考えるふりをするくせがついていた。
風花が三十秒ほどかけて解くと、陽子先生はにこりと笑った。

「正解よ。風花ちゃんはのみこみがはやいから、先生も助かるわ。」
「ありがとうございます。」

頭を下げた風花を見ながら、陽子先生はそっと問う。

「風花ちゃん、もしかして……まだ、学校でのこと、引きずってる?」

びくっと肩を跳ねさせて、ゆっくり顔を上げた。その顔には、恐怖の色がありありと浮かんでいる。陽子先生は、風花の表情を見て、ゆるゆると首を振った。

「引きずらなくてもいいのよ。わたしは、風花ちゃんの味方だもの。」

にっこり、太陽みたいに暖かい笑みを浮かべ、陽子先生は風花の短くなった髪を、なでた。
これが、陽子先生と出会って、一週間後の話。