二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜オリキャラ募集中&800越え ( No.96 )
- 日時: 2012/08/27 20:17
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: z52uP7fi)
☆番外編☆第九話 「心から」
カーテンの間から漏れてくる朝日に、風花は目をさました。からだを起こすと、そばにおいてあったたなから、きのうの紙をとりだし、ながめはじめる。
きのうから、ずっとこうしていた。どうしても「ふーさゃん」というまちがいには吹いてしまうが、子どもっぽい字が、風花をいやしてくれているような気がした。
「はやくこないかな、輝。」
「あら、風花ちゃん。起きていたのね。」
「看護婦さん。」
「もう起きちゃってるみたいだから、検査していいかしら?」
「はい。」
風花はゆっくり、ベッドから降りた。
父が幼稚園にのりこんできて、もう一週間。背中の傷はまだいたむものの、立って歩けるまでに回復していた。みんなも毎日お見舞いにきてくれたし、話がはずむこともあって、だんだん精神的に回復してきている気がする。
「はい、おわりましたよ、検査。」
「はーい。なにかあった?」
「とくには、なにもなかったわ。あさってには、退院できそうよ。」
「やったぁー!」
「こらこら、はしゃがない。また傷が悪くなっちゃうわよ。」
「ううっ……。は、はい……;;」
風花は傷が悪化するということをもちだされて、おとなしくなる風花。
病室にもどると、友撫がベッドの上をはいまわっていた。
「ゆ、友撫ちゃんっ;;」
「あら、風花。」
「あっ……ママ……。」
「検査結果、どうだったの?」
母は、友撫をベッドからだき上げると、ベッド付近のいすにすわる。
「う、うん。あさって、退院できそうなんだって。」
「そう。」
しーん……
いきなり、沈黙がおとずれる。風花は、その場でうつむいた。
母とは、父のことについて話されて以来、ずっと気まずいまま。風花から話しかけても、消極的になることが多くなっていた。
(ママ、なんか、怒ってる……。)
風花は、ちらっと母を見た。つーんとしていて、まえの母とは、ぜんぜんちがう。なんだか、こわい。
(ママ……。)
「風花、なにつったってるの。ちゃんとベッドに入りなさい。」
「う、うん……。」
風花はベッドに上がるとすわり、もういちど母を見た。すると、ぐうぜんにも目があう。風花は、思わず目をそらしてしまった。
「なに。親の目を見て、目をそらすなんて。」
「あ、いや、その……。」
「なんて子なの。そんなふうに育てたおぼえはないわよ?」
母が、じりじりと近づいてくる。
こわい。こわい。こわい。
風花が目をつぶった、そのとき。
「ううっ、うううっ……。」
母の腕のなかで、泣きはじめる声がした。ふたりとも、ハッと反応する。
友撫だった。友撫が、この緊迫した空気のせいか、耐えがたくなり、目をなみだ目にして泣きはじめていた。
「うっ……ふえぇ……ん……。」
「ああら、よしよし。だいじょうぶよ。よしよし。」
母が友撫をあやしはじめたのを見て、風花はほっとむねをなでおろした。どうやら、さっきのことは、母のなかではすっかりわすれさられただろう。わすれっぽいのも、母のひとつの特徴のようなものだから。
「あうぅ……。」
「なんで、泣いてるのかしら。」
「ねえ、ママ。もしかしたら、お腹空いてるんじゃない?」
「えっ?」
そういってふりかえった母を見るのがこわかったが、母は「そうなのね。」といって、バッグから哺乳瓶をとり出すと、友撫にくわえさせた。友撫はすなおに思いきりくらいつき、遠慮なくゴクゴク飲んでいく。
そして飲みおわると、すやすやとねむってしまった。
「風花は、たよりになるわねえ。」
「ありがとう。でも、友撫ちゃんが泣いてるときって、たいていお腹空いてるときか、きげんが悪いときくらいだもん。」
「よく見てるのねえ。」
友撫のおかげでやさしくなってくれたらしい。母は、いつも小さい子がいるところでは、やさしくなる。
「そういえば、よかったわね。あさって退院できて。友撫のことも、めんどう見てちょうだい。この子、あなたがいないこと、わかるみたいで。ずっと泣きどおしなのよ。」
「うん、友撫ちゃんのお世話、頑張るね。」
風花はにこっとわらった。母もわらいかえしてくれる。
だが、すぐに立ち上がると、
「ごめんなさい。そろそろ面会時間、おわりなの。」
「そっか。ごめん。バイバイ。」
「バイバイ、風花。」
そういって、母は病室をでていった。でていったのを確認したあと、風花は大きくため息をつく。
風花はかなり内心あせっていた。だって、あんなにこわい母は、はじめて見たから。
(ママ……元に戻ってくれないのかな……?)
風花は、心からもとにもどってくれるのをねがった。