二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: inzm ——愛する君に伝えよう、 ( No.3 )
- 日時: 2012/07/13 21:38
- 名前: 舞雪 (ID: 6kwRIGzI)
(3)確かに軌道は狂いはじめていて
「なあ白鳥、この問題ってどうなんだ?」
クラスの女子たちのナイショ話をわざとらしく遮り隣の席の円堂くんが話しかけてくる。
まあこの人の場合は、ただの偶然なんだろう。
自然と浮かんだ笑みで差し出された問題用紙を受け取り、彼がいう問題に目を通す。
———昨日。
やっとのことで泣き止んだわたしをベンチに座らせ、円堂くんたちは立ったまま説明してみせた。
以前からわたしに対するいじめが気になっていたこと。
わたしのお母さんから、同じ幼稚園だった円堂くんに、「愛玲がいない」と電話がいったこと。
びっくりした円堂くんのお母さんが円堂くんの友達に電話をまわしたこと。
「良かったよ、豪炎寺が言ったとおり学校にいてさ!」
そんな感じで今に至る。
あのとき一緒にいたのは豪炎寺くん、円堂くん、風丸くん、木野さん、半田くん、染岡くん、それから新聞部の一年生。
今日、ゲームを放棄したわたしの噂が聞こえてくる度に、彼らは気にかけ喋りかけてくれる。
いい人たちだ。
「えっとね、ここ。かけるのを忘れてるよ、」
「・・・ほんとだ! サンキュー白鳥!」
お得意の満面の笑みで答えてくれた円堂くん。
問題用紙を大事そうに机になおしたつもりが、わたしのほうを見ながらなおしたもので、それは机のなかでグシャッと潰れているのが見て取れる。
まあ本人はいいようだから、これでいいんだろう。
気をつけていても口元が緩んでしまう。
彼の笑顔はまるでお日様のよう。まわりを照らす太陽そのもの。
“———サッカーやろうぜっ!!”
しかしさすが太陽というだけあって、まわりへの影響力がとてつもない。
わたしはずっと見てたからわかる。
円堂守は危険人物だ。わたしにとっても、みんなにとっても。
その『みんな』のなかに彼自身が含まれているのが少し皮肉だけど、ね。
虚無感のなか、醒めきった自分が真顔に戻っていくのがわかった。