二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第十四幕 鳥の子《とりのこ》 ( No.24 )
日時: 2012/07/08 21:14
名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)

「お前等、生きて・・・。」
喉の奥から熱いものがこみ上げてきて、銀時は言葉を詰まらせる。
紫の目の青年、棗が掴んでいた新岡の胸倉から手を離した。ぶらりと垂れ下がった腕にはなんの力も込められておらず、まるで人形のようだ。
「銀時様が、おっしゃったんですよ・・・っ。」
こみ上げてきたモノをこらえるように俯いた銀時に、棗がゆっくりと近づく。
「『生きろ』って。」
銀時は顔を上げる。その赤い瞳に映ったのは、今にも泣きそうな顔で笑う棗と、月華隊の面々だった。
「わ、我等、月華隊。ただ、今・・・最後の任務をまっとうし、ここに、帰還・・・!」
銀時の鼓膜を震わせたのは、部下の涙声。
棗の目尻から一筋の光がぱたりと床に落ち、小さな染みを作った。
「銀時様、」
棗の後ろに控えていた月華隊の中から、紅一点であった女性と、二人の青年が進み出る。三人は銀時や棗と同じく隊の中心であった者たちだ。
千風ちかぜひじり、朝露・・・。」
三人は棗の隣に並び、そのまま片膝を折った。
「おか、えり・・・。」
銀時の左の目から涙がこぼれた。それに呼応するかの如く、彼らの目からも光るものが流れる。
「「「「ただいま、戻りました・・・!」」」」
その言葉を合図に、月華隊隊士達が一斉に銀時のもとへと殺到した。
「隊長!!」
「俺たちが、どれだけ心配したとっ!」
「俺達には吉田隊長が全てなんですよ!?」
銀時に抱きつく隊士も、泣く隊士も、皆行き場をなくして銀時が拾ってきた者達だ。それ故に彼らの銀時への思いは強い。
「すまねぇ。・・・もう絶対お前等を置いてなんかいかねえから。だから、」
銀時は言葉を切る。
彼の次の言葉を聞き漏らすまいと、隊士達は息を詰めて銀時を見つめた。
「こんな俺を、許してくれるか?また・・・付いて来てくれるか?」
その言葉に、隊士たちは涙の痕の残る顔に笑顔を浮かべた。
「「「「当たり前じゃないですか!!!」」」」


「さて、邪魔者おれは退散するか。」
完全に忘れ去られていた新岡は、部屋を出ると真っ直ぐに台所へと足を進めた。
「茶ぁでも持ってってやるかね。」
そうすれば少なくとも死の危機に瀕することはないだろう。
今、銀時との再会に水を差せば確実に月華隊に半殺しにされる。
「全く、難儀な連中・・・。」
そう呟いた新岡の口元には、薄い微笑みが浮かんでいた。