二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.28 )
- 日時: 2012/07/12 14:12
- 名前: わたあめ (ID: q7aBjbFX)
二十一話をにじファンから移すの忘れた…orz
「うるぁあああ!」
飛んできた拳を間一髪交わすと、地面にぴしりと皹が入った。赤頭なら地面を軽くぶち割りそうだが、怪我している右手だからしょうがないだろう。——怪我している右手? 何故彼女は怪我した手で、
それがフェイクだと気付くのに大した時間はいらない。距離をとろうとする間もなく、サンカは右手で地面を弾いて空に跳ね上がる。空中で体を捩り、左足で延髄蹴りを放った。地面に墜落しかけるリーだが、しかし彼も伊達に体術の訓練をしていたわけではない。右手で着地し、素早く木の葉旋風を放つ。空中にいたサンカは上段の蹴りにも見事はまってくれた。吹っ飛んだサンカは悔しそうに歯噛みしつつ印を結んで、髪を解く。
途端にその髪が赤みを増してぎらぎらと輝く。
「……どこからでもかかってきてくださいっ!」
「いったね!」
構えをとったリーに向かってにやりと笑顔を見せると、サンカは右腕を時計回りに回した。その顔はいままでの好戦的な表情とは違い、穏やかで、けれど勝ち誇っているようにも見える顔だ。
ふんわりと、赤い霞が周りに蔓延り始めた。
「私にこれを使わせたのはあんたが始めてよ……光栄に思うことね。秘術・紅霞(べにかすみ)の術」
霧隠れの術の色違いバージョンか? とも思ったが、違う。この霞は彼女のチャクラなのだ。霞のように形を換えたチャクラ。
そしてリーは突如その危険さをしった。
「なっ、」
「紅炎圧掌(こうえんあっしょう)!」
サンカの声が聞えたかと思いきや、チャクラの霞がぐうっとリーを地面に押し付けた。紅色の霞が掌のような形になっている。
術者たるサンカのチャクラを外に向かって放出し、相手を取り囲む。そして自らのチャクラを操作して相手を攻撃する——なるほど秘術といわれるだけのことはある。なんとも恐ろしい技だ。
「っぐ……!」
そのあまりの圧力に捻り潰されそうになる。体を捩って必死に抵抗するリーだが、真っ赤な掌は力を緩めようとはしない。
ただその威力はまだサンカが素手で殴りかかってきたほどのものではない。もしサンカのチャクラコントロールが完璧なものならこれはかなりの脅威だろうが、サンカはチャクラコントロールを余り得意としていないようだ。素手の彼女の方がまだこれより強いのがその証拠だし、それにこの術には致命的な欠点がある。
それはチャクラを霞に変換して随時外に放出しているということだ。サンカの疲れも並みではないし、これはクゥの槍ノ雨よりも更に体力を消耗する技だろう。
「っまけま……っせんよ、!」
「強がってんじゃねーよオカッパ!」
クゥもサンカも、スタミナやチャクラ量などには構わず力ゴリ押しするタイプらしい。相手を倒す為ならチャクラの節約も技の出し惜しみもせずに、破壊力と威力を重視してつっかかってくる。
「赤丹縄(あかになわ)!」
チャクラの霞が縄のようにリーの手足を掴んだ。成る程こういうやりかたもあったか。がつんと腹にサンカの拳をもろに喰らって血を吐き出す。
そうもたないはずだ。チャクラ量がさして多いわけでもないし、このような使い方は消耗がかなり激しいはずだから。
〈何の用だ、小娘。——いや、小僧、か?〉
ケイを相手に扇子を振るいつつ問いかけてきたのは犬神笑尾喇だった。笑尾喇の後ろに立ち、はじめはクゥとカイに向かって印を結んだ。
「お前が傷付けられた所為でユヅルが傷付けられないないようにだ。——水遁・水車輪!」
幸いクゥの方はかなり消耗しているようだ。カイも全く消耗していないというわけではないだろう。なら、ほぼ(情けないことだが)ネジを盾代わりにしていた為に攻撃を受けていないはじめの方が優勢とも言えるかもしれない。いや、盾代わりにした為に柔拳を一発受けていたのだが。
「雷槍!」
水車輪を相殺され、手裏剣が地面に落下する。更に数本がはじめを襲ったが、はじめはそれを体を捻って交わすなり、起爆札を貼り付けた手裏剣を投擲する。普通はクナイを使用するのが相場だが、あえて手裏剣にしたのはなんとなくクナイがいやだったからだ。そしてそれがいやだったのは多分——姉に、一文字初に焼いたクナイを押し付けられたからだろう。思い出すだけで背がちりっと痛んだ。
「なんだよカイナとケイはちゃんとやってたの!? コイツ体力満タンじゃん!」
「……先輩のお陰でな」
喚くクゥに向かって小声で呟きつつ、水球をぶっ放した。集中雨槍の所為で相殺されかけるが、チャクラを更に行使して雨槍を乗り込み、クゥのチャクラを取り込んで更に巨大化した水球をぶつける。な、と驚きの声をあげるクゥに向かって思い切り水球をぶつけ、そしてカイの目の前に回りこんだ。くるか、とカイが構え、クゥが援護の槍ノ雨を使用するも——
「一文字流・声東撃西(せいとうげきせい)——口寄せ・似之真絵!」
親指の皮膚を噛み切って地面に当てる。途端に地面から現れた一本の刀——「似之真絵(にのまえ)」を振り回して、そしてそれをサンカの左腕めがけて振り下ろした。
「っ、うわああああああ!」
紅色の霞が霧散し、リーが地面に着地する。泣き叫びながら地面に蹲るサンカとあくまで無表情なはじめを驚いた顔で見比べながら、「はじめくん……?」と恐る恐る問いかけた。
視線の先に、地面に落ちたサンカの左腕。血がぼたぼたと流れ、サンカの顔は汗と涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「っ、サンカぁ!」
クゥがサンカに飛びつき、その体をゆすった。はあはあと喘ぎながら、サンカは立ち上がった。ぼたぼたと血が垂れる。足がガクガクと震え、そしてサンカはクゥによりかかった。
「……あたし、やっぱ、向いてなかった、の、かなあ……っぐ……!」
だめよ忍者なんて。
音隠れ? そんなのやめなさい。
そんな両親の反対を押し切って音隠れに赴いたのは他でもないサンカだった。最初は「サンカちゃんは凄いね」くらいで済まされていた怪力が、「バケモノ」にかわったのはいつのことだろう。
岩隠れを出たことについては後悔していない。何故ならその後間もなくサンカの住んでいた地帯で爆発が起こったからだ。両親と離れたことについての後悔はしたけれど、サンカは音に逃れたお陰で死なずにすんだのだ。
だから大蛇丸に従うと決めたけれど、所詮自分は呪印すら与えてもらえない下っ端だ。いつだって捨てられる、だからこそ頑張ってきた、つもりだったのに。
「先生!」
「っくそ!」
ガイの攻撃を振り切って、蓮助が走ってきた。蓮助を追おうとするガイを、ミソラが相手する。ばっと掌をサンカに押し付ける。ぼん、と音がして煙りが立ち、サンカの姿が消えた。お前は帰ってサンカの傍にいろ、とついでにクゥにも掌をあてる。どうやらサンカとクゥは恋人か、もしくはそれに近い関係であるらしい。
「——っ木の葉旋風!」
呆然としていたカイに攻撃を放つ。しかし木の葉旋風を既に数回目撃していたカイはその手にははまらなかった。上段をしゃがんでかわし、そして素早く右手だけで逆立ちの状態になる。下段の蹴りが迫ったその瞬間に右手を離し、左手を地につける。そして間髪いれず、回し蹴り。
両腕でそれを受け止めながら、リーの足が僅かに地面を抉った。しかしそんなカイの背後に、はじめの助走をつけたドロップキックがクリーンヒットする。思い切り吹き飛ばされたカイはカイナに激突し、カイにカイナと同じく「カイ」も二文字を持つ者同士、仲良く地面に倒れこんだ。
「げほっ、がほっ!」
カイが咳きこみ始め、カイナは元々腕に刺さっていたクナイが更に食い込んだのだろうか、痛そうに顔をゆがめていた。その二人に向かって手を伸ばす蓮助に、ハッカが追撃をかける。
「巻き物はマナの腹の中だ。もう消化されているかもしれん。さっさと撤収しろ——この、“死んでいる”恋人を連れてな」
「……ハッカよ、彼女はまだ生きているぞ?」
ハッカに片足で捻じ伏せられているレミがもがくのを見ながらガイが言うが、違う、とハッカは静かに首を振る。
「術で縛った鬼火を死んだ人間の意識の容器とする、鬼の国における穢土転生モドキさ。ただこちらは死ぬ前の能力の半分しか再生できない。その上、記憶の再生も不可能だ。本人には死んでいるという意識すらない」
書物で読んだことがある、穢土転生という術を模倣したものだ。その威力は穢土転生ほどに強くはないが、穢土転生のように白目の部分が黒くなるということもなく、術を使っての蘇生であるということが露見しにくい。
「十数える内に撤収しないと、この女の術を解くぞ」
懐から取り出した札をちらつかせる。僅かの間躊躇ってから、蓮助はレミの方へと差し伸べた。
途端、レミが鬼火の塊となって分解し、するすると蓮助の掌へと向かっていく。そしてそれらは蓮助の掌に吸い込まれて消えた。
蓮助がケイとカイに触れると、二人も一陣の煙りとなって消えうせた。ミソラもまた、蓮助の掌で煙りとなって空を漂う。撤収しよう、と静かにいってから蓮助もまた撤収する。
あっけないほどに彼らは去っていった。最後の一抹の煙りが宙にとけて消えると、リーが膝から崩れ落ちた。