二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.162 )
- 日時: 2012/09/23 00:49
- 名前: このみ (ID: 0T24nVPU)
第11Q 「僕等はどこまでも、 part4」
靴を隠されてから、1週間が経った。
もちろん虐めは終わらない。
「……なつき、大丈夫?顔色悪いよ?」
『大丈夫だよ、………慣れてる、から…』
「私、何も出来なくてごめんね」
『ううん!!麻耶ちゃんには、すっごく助けてもらってるよ……』
麻耶ちゃん。私とさっちゃんの、数少ない友達。
いつも私達と遊んでくれて、心配してくれて……。
本当に、大切な、友達。
この人だけは、失いたくない。
「なっちゃ——ん!!部活行こーっ!」
『あ、うん。バイバイ、麻耶ちゃん……』
「また明日ね。気を付けて」
『うん、ありがとう……』
部室。
「……無い………どうしようっ……」
『っ…………、』
部活の、皆の情報を書いたノートが、無くなってしまいました。
授業のノートをぐちゃぐちゃにされるより、万倍困る。
しかも、切られた、とかならまだ良かったのに、無くなってしまった。
これじゃあ、内容を思い出すことも出来やしない。
どう、しよ……。
ミーティングで、絶対に使うのに……。
「また、あの人たちが……?」
『……そう、だろうね……』
「っ!!許せないっ……!」
『……』
私もだよ、さっちゃん。
でも、私まで怒って、周りが見えなくなったら、困るから……。
私は、怒らない。
『さっちゃん、落ち着いて……。ミーティングが始まるまで、時間は……30分ある……から、それまでに……探そう』
「……うんっ」
流れる涙をグイッと拭ったさっちゃんが、頷いた。
私も泣けたらよかった。
涙は、……流れない。
同時刻、屋上。
「あははっ!!盗んでやったよ!」
「すげー!ほんとにやるとか!マジウケるー」
「それでぇ?どんなこと書いてあったのぉ?」
「バスケ部の事だよ!これないとあいつら困んじゃね?」
「困るわーあたしだったらすっげー困る」
「ふふ、いい気味……。調子乗ってマネジなんかやるからよねぇ」
「おい、お前ら……うるせえんだよ!!黙ってろ!!」
「はぁ?あんた誰だよ」
「ちょ、コイツ……゛ ″だよ!!」
「逃げろっ…………っ!!」
「おい、それ置いてけや」
「ひっ……」
「恵里菜っ!そんなもの早く捨てて!!」
「っ………!!」
バタバタバタ……
「なんだったんだ、あいつら……」
屋上手前の階段。
「あとはここだけよね」
『うん……』
バタバタバタ
「退いてっ!!」
『っ!』
ドンッと押され、よろめく。
相手を見ると、私達に水をかけてきた女子達だった。
一人目は私を押したあと直ぐに階段を降りていき、二人目は睨み付けてきて、三人目は舌打ちをしていった。
ガラ悪いなぁ、と思ったのは置いておいて、なぜ彼女達はあんなにも急いでいたのか。
二人で屋上の扉を見つめる。
「行こっか」
重い扉を、開いた。
そこにあったのは、懐かしい灰色の髪。
大ちゃんに負けず劣らずの、ガラの悪い顔。
だけどそれは綺麗に整っていて……。
そして右手には、ノート。
『灰崎、君』
昔(って言っても一年前)、彼のことを『祥ちゃん』と呼んだ。
そしたら、本気でキレられたので、渋々『灰崎君』と呼ぶことにした。
その灰崎君が、目の前にいる。
「あ?マネージャー……いや、もう違うな。桃井姉妹、なんの用だよ」
『どうして、ここに……』
「サボってた」
「じゃあ、どうしてそれを持っているの?」
「さっきの女共がこれ持って騒いでたからよ……なんだと思ったらお前らのノートと似てるから取り上げた。なんか『盗んだ』とか聞こえたしな」
お前、絶対良い奴だろ。ツンデレなだけだろ。
そう言いたくなった。
「ほらよ」
ポイツと投げられたそれをキャッチして、ペコッと頭を下げた。
『ありがとう』
両手でノートを抱えながら、笑って見せると、頭をクシャッと撫でられた。
雑だけど、どこか優しい。そんな撫で方。
「さっさと行けよ、ミーティング始まんぞ」
「灰崎君、ありがとね」
『授業、サボっちゃダメ、だよ……』
「……おう」
さっちゃんが扉に手をかける。
私は一度振り向いて、叫んだ。
『灰崎君!!』
「あ?」
『私は、灰崎君のこと、好きだから!!
だから、私達のこと……嫌いにならないで!!』
「……」
『またバスケ、一緒に、しよう?
だから、バスケ、やめないでね!!』
「…………おう!」
ニカッと笑った彼に、私も笑った。
双子と灰崎、終。
(久し振りに、叫んだ)
(不器用な彼は、まだ変わっていない)