二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.177 )
日時: 2012/09/29 22:07
名前: このみ (ID: N5yVg.Pp)

第13Q 「僕等はどこまでも、 part6」



私は、誰かと一緒にいるってことが、さっちゃんより少ない。
だからこそ狙われるのもわかっている。
それについてあっちが悪いだなんだと騒ぎ立てることもしない。
酷いことをされて、叫んだり、泣いたり、そんなことはしない。
だけど、だけど。
抵抗もしない、助けを求めもしない私にだって、心はあるんだ。
それに……。
私ばかりやられることについて、さっちゃんに対する憎さもある。
さっちゃんが悪いわけじゃない。それはわかりきっているのに。
彼女は大ちゃんと四六時中一緒にいて、呼び出されない。
キセキの世代に恋心を抱いている彼女たちにとって、そのキセキの世代の前で呼び出すというのは、できないから。
じゃあ私もテツ君や、涼ちゃん、真君たちと一緒にいればいい。
そう思うかもしれないけれど、そんな「一緒にいてください」なんて言えるわけがない。図々しいにも程があるだろう。
じゃあ麻耶ちゃんは?そう思う方もいるだろう。
彼女は優しいから、一緒にいてくれると言った。でも私は断った。
理由は、ただ一つ。
私と一緒にいて、彼女が巻き添えをくらうのだけは避けたいからだ。
だから私は常に一人でいる。
それ故に、彼女たちに呼び出される回数がさっちゃんよりも遥かに多い。
さっちゃんには言っていないからきっと気づいていないだろうけれど、今月に入って呼び出された回数は15回を超えた。
さっちゃんと同時に呼び出されたのはたったの2〜3回。
さっちゃんもさっちゃんで一人の時に呼び出されているかもしれないけれど、それでも5回くらいだろう。
でも、だからと言って、さっちゃんを憎むのは私が絶対に悪い。
そうはわかっている。わかっているけれど、どうしてもやめられないのだ。
さっちゃんが嫌いなわけじゃない。むしろ私たちの仲はどこかの兄弟姉妹よりもかなり良いと言える。
尊敬しているし、憧れている。羨ましくて、さっちゃんと双子だということは私の誇りだ。
だけれど、どこかで憎んでいた。
双子。しかも一卵性。
そんな二人が比べられない訳がなく、私たちは幼い頃から周りの人々に比べられて生きてきた。
大人はもちろん、友達も。
姉のほうはいいけど、妹のほうはダメだね。
妹のほうはいいけど、姉のほうはダメだね。
そんな言葉を言われないように、私はさっちゃんに合わせることを覚えた。
優れないように。劣らないように。
さっちゃんを真似るこの技術だけは、涼ちゃんにも負けない。
それが私の唯一の取り柄であり、欠点でもある。
だけど私は、合わせさえしなければ、もう少しくらい優れているのに。
さっちゃんよりも、優れているのに。
そんなことは言うわけにはいかない。だから言わなかった。
むしろ、少しだけさっちゃんより劣っているように見せた。
テストの点も、スタイルも。性格も。
さすがに料理だけは劣りたくなかったから練習して上手になった。
この内気な性格は、さっちゃんを目立たせるため。
私は、目立ちたくない。静かにひっそりと、生きていたい。
だからこんな性格。
実際さっちゃんは明るくて、活発で、目立つ。
私はその後ろをいつも歩いている、まぁ金魚のフンみたいのものだ。
それでいい。それが良かった。
だけど、それのせいで私は標的にされる。

『…………』

前髪から落ちる水滴。
ペタリと張り付く制服。
冷たくなる体。
あの鋭い複数の目。

「アンタ、一人じゃ何も出来ないくせに、出しゃばってんじゃないわよ」
「立場わきまえなさいよ」
「お姉ちゃんがいなけりゃ何もできないくせに」
「姉のほうもさ、こんな鈍くさい妹がいて嫌よね」
「アンタいる意味あんの?」

ああ、我慢できる自分凄いなんて、余裕かまして思ってないと。
いつか、壊れちゃうよ。





————なっちゃん、なっちゃんが困ったときは、私が助けてあげるからねっ!!
————絶対、絶対だよ!!

うそつきだね、オネエチャン。
私、あなたの事で困ってるよ。


妹の思考、終。
(いっその事、嗤ってくれたらなんて)
(そのお人形みたいな顔で、私を見下ろしてさ)