二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.328 )
- 日時: 2012/10/21 16:42
- 名前: このみ (ID: TaF97fNV)
第26Q 「怖い笑顔」
黄瀬side
試合開始のホイッスルが鳴った。
それと同時に、赤司っちがボールを上げる。
それを取ったのは、俺。身長的に考えても、それが普通だろう。
それに、赤司っちが言ったあの言葉。
『なつきにボールを渡すな』
赤司っちの忠告が、少し気になった。
そりゃあボールを渡さなければ、奪われなければ、相手が点を入れることはない。
もし奪われたとしても、奪い返せばいい。
だけど、それをわざわざ赤司っちが言ったとなると、何かある。
気を付けよう。
そして、早く終わらせよう。
俺は3Pラインに立つと、軽くジャンプをした。
手首を使って、ボールを投げる。
着地しながら、リングに吸い込まれようとするボールを見つめていると、次の瞬間、ボールが消えた。
「……は?」
目の前にいたはずのなつきっちは、いつの間にかリングの前にいた。
しかも、ジャンプをしてボールをカットしていた。
ボールを持ちながら、着地し、ドリブルをするなつきっち。
ヤバい。そう全身が告げていた。
一瞬であそこまで行き、ジャンプをする。その速さ。
それに、なつきっちにボールを渡してしまった。取り返さなければ。
そう思って近付いた。
筈なのに。
スッと真横を通る人影。
そして、振り返ったときには、ボールがリングを通る音がした。
ガコンッ
ボールが床に落ちて、タン、タン、と跳ねる。
今起こったことの意味がわからなくて、ボーッと突っ立ってしまった。
なつきっちは振り替えって、俺を見た。
ポニーテールが、揺れた。
ピンクの瞳に、俺が写った。
彼女は、また、笑った。
点数を見ると、0−3。
観戦している皆を見たら。
赤司っちは、目を伏せながら笑ってて。
青峰っちは、当たり前だというように、笑ってて。
桃っちは、ぴょんぴょん跳び跳ねていて。
黒子っちと緑間っちは驚いていて。
紫っちは、笑いながらお菓子を食べていた。
訳が、わからない。
もう一度なつきっちを見れば。彼女は。
ゴール下で、ボールを持って、
『涼ちゃんの、番、だよ……』
『早く、やろう?』
怖いくらいに笑って。
そのボールを、前に差し出した。
俺はそのボールを受け取るのに、一分以上かかった。