二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.340 )
- 日時: 2012/10/21 21:54
- 名前: このみ (ID: cSy8Cn7x)
第27Q 「勝敗」
黄瀬side
怖い、怖い。
負けるかも、しれない。
だけど、だけど。
負けたく、ないんだ。
「うおおおおお!!!!」
『ッ!?』
なんとかなつきっちをかわして、ゴール前まで行く。
そして、ダンクを決めた。
ガコンッ!!!!
ギシッ……
片手でリングを掴んで、転んだなつきっちを見下ろす。
なつきっちはゆっくり立ち上がりながら、ダンク、かっこいいね。と、いった。
『でも、私……負けないよ?』
俺が着地するのと同時に、なつきっちは下に落ちているボールを拾った。
ダムッ、ダムッ、とドリブルをする彼女は、俺を見ていなかった。
俺の、左側を見ていた。
だからなつきっちが床を蹴り上げると同時に、俺は左に移動し、なつきっちと向かい合った。
それになつきっちはニィ、と笑うと、受けて立つ、とでも言うように、俺を見た。
俺はボールを取ろうと、ダンッと足を踏み出す。
それをスルッとかわす彼女。
そして、体をグニャリと曲げた。
右手にボールを持ったまま、上半身だけ左に曲げる。
下半身は普通に立ってるみたいに床につけたまま。
なつきっちは左手を床につけると、下半身を上に持ち上げた。逆立ちをするように。
ボールを取ろうと腕を伸ばせば、そのボールはなつきっちから見て前方、つまり俺の後ろに投げられた。
なつきっちは側転をしたあと、俺よりも速く走ってボールを取った。
俺の手は空振った。空気が冷たい気がした。
ボールを取った場所、つまり今いる場所とゴールまでの距離は、コートの4分の1程。
まさか、誰が、そこから女子がダンクを決めると予想できるだろうか。
床を蹴り上げ、鳥のように飛び、静かにボールをリングの中にぶちこんだ。
踊るように、軽やかに。
無駄な動きは一つもない、綺麗なプレー。
ファウルなんてとらない、相手に触らない柔らかな動き。
一年以上ブランクがあるにも関わらず、どこまでも跳べる足。
独特の動き、速さ。
そんなのに、勝てるわけないっスよ……。
試合終了のホイッスルの音が、遠くで聞こえた。