二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.395 )
日時: 2012/11/04 20:26
名前: このみ (ID: q7aY8UsS)

パロディ カゲロウデイズ
※付き合ってるけど、夏。
※現実はもう秋と冬の間だけど夏。
※時間軸なんて気にしない。



8月15日 紫

暑い。
起きてから、そればかり思っている。
クーラーは家についてないので、扇風機を回し、うちわで扇ぐ。
けれど自分にかかるのは生ぬるい風。
暑い。
地球温暖化なんて言ってるけど、ほんとうのことだった。
これじゃ大好きなお菓子も咽を通らない。
皆さんもっと木を植えよう。二酸化炭素排出を止めよう。
なんて心の中で思っても誰かに聞こえるわけでもなく。
アイス食べよう。
立ち上がって冷凍庫を開けると、何もない。
なんでないんだ。
冷凍庫を睨み付けるが、そこに何かが現れるわけでもなく、ただただ冷たい空気が外に流れる。
しょうがないから、コンビニに行って買おう。
Tシャツ短パンに着替え、男にしては長い髪を結ぶと、玄関を出た。


ガサガサと袋が音をたてる。
中には4個のアイス。口には棒つきアイスをくわえながら近くの公園に向かう。
公園に着いたとき、ブランコに誰かが座っていた。
桃色の長い髪。キレイな横顔。文句のつけどころのないスタイル。そして、眼鏡。
なつきがいた。
彼女は膝に黒猫を乗せている。
名前を呼ぶ直前に、彼女はこちらを向いた。
驚いた顔もせず、ただ片手を上げてきたので自分も片手を上げ、隣のブランコに座った。

「何してんのー?」
『お散歩。敦は……アイス?』
「そ。食べる?」
『じゃあ頂こうかな。暑いし』

袋の中から桃味のアイスを取り出して彼女に差し出す。
ありがとうと彼女は言って、受け取った。
アイスを食べる姿は、どこか不機嫌だ。
冷めた目をしていて、いつもの彼女らしくない。それに、顔色もよくない。
顔色悪いし機嫌も良くないけどどうしたの、と聞けば、彼女は、片手でアイスを持ち、片手で猫を撫でながら、

『夏が嫌いだから、かな』

とふてぶてしく呟いた。
苦手じゃなくて嫌いなのか。
なんて思っていると、猫が彼女の膝から飛び降りた。
彼女は食べ終わったアイスの棒を持ったまま、危ないよと言って後を追いかけた。
俺は自分のアイスの棒をゴミ箱に向かって投げる。
バスケのように上手くいくのか、と思っていると、棒は音もたてずゴミ箱に吸い込まれていった。
それを確認して猫の後を追いかけた彼女に目をやった。
しかし代わりに目にはいったのは、赤に変わった信号機。
なつき!!!!と自分でも驚く程の声を出す。
でもそれは遅くて。
彼女は一瞬こちらを向いたが、そのまま車道へ飛び出してしまった。
その瞬間、発進したトラックが、彼女に体当たりをした。
血が辺りに飛び散る。駆け寄った俺は、その臭いに咳が出そうになった。
彼女とはもう言えない意識のない体が自分の瞳に映った。
嘘だろ、そう呟いて、顔を上げれば。

——嘘じゃないぞ——

無事に道路を渡りきった先程の猫がニヤリと嗤った。
蝉が、煩かった。
救急車!と叫んでいるであろう大人達の声も聞こえないくらいに。
ぐらりと視界が歪んだ。
最後に見えたのは、嫌になるほど、真っ青な夏の空。

夏なんて、嫌いだ。


(彼女は、死んでなんか)
(ない)