二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.406 )
日時: 2012/11/02 23:25
名前: このみ (ID: q7aY8UsS)
参照: http://nanos.jp/yukidarumanote/

第30Q 「異変」


クリスマスが過ぎ、年が明けて、私たちは三年生になった。
今日は入学式だ。
入学式の日はさすがに部活はないのだが、バスケバカのみんなは練習をしていた。
もちろん私とさっちゃんもそれに参加する。
バスケ部に入部希望の紙を出した子たちの名前、身長、体重、ポジション、特技、足の速さなどを正確にノートに写していく。ついでに頭の中にも入れる。
全員が終わったときには手の感覚がなくなっていた。痛い。
少し休憩するために席を立ったのが4時半。
水道に行って、手を冷やしていると、さっちゃんが私を呼ぶ声が聞こえた。

『なあに?』
「お願いがあるんだけど、次の練習試合での過去と未来のデータ、私が全部やってもいいかな?」
『……え?でも、さっちゃんは……』
「やってみたいの!!お願い!」
『……いいけど……』
「ありがとー!どうせ失敗すると思うけど、やってみるね!」
『う、うん……』

さっちゃんは走り去っていった。
私はその場に立ち尽くす。
大丈夫、そう胸に手をあてて言い聞かせる。
彼女は私を捨てたりしない。私をいらないと言ったりしない。
大丈夫、また、一緒に攻略方法を考えられる。
そう、信じて。




「今回は桃井一人でやったのか?」
「そう!やってみたくって!!」
「すごいな。二人の時よりも詳しいんじゃないのか?」
「ありがとー!でもなっちゃんの方が上手だよー」

地獄耳って、ほんとヤダ。
全部聞こえてますよお二人さん。
私もさっき見せてもらったけど、明らかにさっちゃん一人でやった方が詳しく書かれていた。
どうかな、とキラキラとした笑顔で聞かれれば、すごいね、以外の言葉は出てこない。実際すごいのだからいいのだけれど。
でも、でも。
この心に引っ掛かるような感じはなんだろう。
もやもやとするのは、なんだろう。
気分が悪い。顔でも洗いに行こう。
タオルを置いて、体育館の入り口に向かおうとした時、呼び止められた。

「なつき、今いいかい?」
『……うん』

捨てられる覚悟を。

「これからは、情報収集は桃井一人にやってもらう。
そうすればお前は雑用に集中できる。仕事量も減る。
そのかわり、桃井には一軍から三軍までのすべての試合の情報収集をしてもらう。
それでいいかい?」

疑問形になっているけれど、私には拒否権なんて無い。
だから涙をこらえて、私はうなずいた。


後から、思えば。
テツ君が、みんなの変化を感じたのが、大ちゃんとの亀裂のせいだとしたら。
私にとってのみんなの変化は、ここだった。
小さな小さな、異変。
誰にも気付かれず、それは大きさを増す。


(おかしな成長)
(私にそれを止めることは、)
(出来なかった)