二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 ( No.424 )
日時: 2012/11/04 19:24
名前: このみ (ID: q7aY8UsS)
参照: http://nanos.jp/yukidarumanote/

第34Q 「夕日」



嘘だと思った。
嘘であってほしいと。
でも、現実は残酷で。

「なんの冗談?なつき」

そう聞いても彼女は笑いながら言うんだ。

『冗談じゃない。本気だよ』

髪が短くなった彼女は、吹っ切れたような表情で。
なんか俺が間違っていることをしているようで、居心地が悪くなった。

「なんで、別れなきゃなんないの。
なつき、俺のこと嫌いなの?」

苦しくて、そういったら。
彼女は困ったように笑いながら、言った。

『嫌いじゃないよ。好きだよ』

じゃあどうして。そんなことを言うんだ。
叫んだように言えば、彼女は今度は悲しそうな顔をした。

『私がこれから、紫原くんを好きでいられる自信がないから』

そこまで言われてしまえば、俺はもう何も言えなくて。
俺は立っているだけになった。
彼女はバイバイと言って、その場からいなくなった。


それから何分経ったのだろう。
ぽつぽつと、静かに雨が降り出した。
まるで俺の心みたいに。




帰ってきてから、紫原くんと別れてから、何分経ったのだろう。
彼はちゃんと家に帰れているだろうか。
気づけば彼の事ばかり考えている。
だって、本当は別れたくない。
本当は、好きなのに。
でもずっと好きでいられる自信がない。
どんどん変わっていく彼を、見ていられる自信が。
……本音は。
捨てられることが怖かった。
成長する彼と止まった私。
いつ幻滅されるのかと考えると、怖かった。
だから、自分から切り捨てる。
私は自分が大事だ。自分が一番。
相手の事なんて考えられない酷い人間。
傷つくとわかってしまっていても、私は相手を傷つけてしか自分を守れない。
そうしないと壊れてしまうから。

『……なんで、』

なんで、こんなに酷い女なんだろう。
もっと優しくなりたいのに。
なんで、こんなに悲しまなきゃいけないんだろう。
なんで、こんなに辛いんだろう。
温もりがほしかった。
私を甘やかしてくれる人に会いたかった。
寂しさを埋めてくれる人に。
でも、全部突き放した。
あったかくなればなるほど、離れたときの温度差は大きいから。
死んじゃいそうだから。
まだ大丈夫だと、心の奥で叫びながら。



部屋(通学路)に夕日が差し込んできた。

その光はあの時の。私(俺)たちが告白をしたときの光と同じで。

涙が出るくらい、優しくて。

ぼろぼろと泣いた。



『「好きなのに……」』





(好きだけじゃ)
(どうにもならないの?)