二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ〜二人で一つ〜 10000打企画開催中! ( No.541 )
日時: 2012/12/01 02:55
名前: このみ (ID: DSoXLpvQ)

10000打企画。
ココロ#様リクエスト。



「Memories」




「なつきはなんでバスケを始めたの?」
『え?……んーと……』

なつきの子供のころの話が聞きたくて、そう尋ねた。
彼女は首を軽く傾げて、語り始めた。





約10年前————。


さっちゃんと幼馴染の大ちゃんは、外でわいわい友達と遊ぶのに対して、私はどちらかと言えば大人しい子供だった。
あまり外には行かなかったし、休日や暇なときに何をしているかといえば、読書だ。
難しい本は読めないので、絵本だけれど——。
本は私にとって、唯一の癒しのようなものだった。
ロマンチックな御伽話は私を夢の国へと連れて行ってくれた。
時にはお姫様、時には町の少女、時には妖精……。
私は本に吸い込まれていくような、そんな感覚に陥っていた。
しかし、その本も、家にあるものはすべて読み切ってしまった。
困った私は母に相談した。すると、母は図書館に連れて行ってくれた。
私のカードを作って、いつでも来られるように道をわかりやすく説明してくれた。
そこまで大きな図書館ではなかったため、人も少なく、子供が通いやすいところだった。
私はその本の数に圧倒され、目を見開いたまま五分は固まってしまった。
知らない本が沢山あって、感動して。
毎日毎日暇さえあれば図書館に行き、自分が読める全ての本を読んだ。
最後の一冊を読み終え、つまらなくなった私は閉館時間になる前に家へと向かう。
その途中で、子供がはしゃぐ声が聞こえた。
なんだろうと少し右を見れば、公園があった。
その中には自分と同い年くらいの子供と、姉と幼馴染の姿。
折角だから二人と一緒に帰ろうと、その公園の低い……その時の私だと胸の下あたりにある柵を潜った。



「あ!なっちゃん!なっちゃんもやる?」
『……ううん、よくわからないからいいや……。私、あっちにいるね』

私に気づいたさっちゃんの誘いを断り、近くにあったベンチへと腰かけた。
そこで私の目についたのは、バスケットコート。
中には誰もいない。が、ボールが一つ、転がっていた。
なんとなくそれを拾って、ゴールへ放つ。
が、幼稚園児の力では、それはゴールには近づかず、真上に上がり、そして落ちてきた。自分の顔に当たって、半泣きになる。
うずくまって鼻を押さえていると、聞きなれた笑い声が聞こえてきた。
大ちゃんだ。

「ぶっは!!顔って!!」
『笑わないでよぅ……。痛かったんだよ……』
「貸せ。こうやってやるんだよ」

大ちゃんは私が抱えていたボールを取り上げて、ゴールへと放った。
リングに当たったものの、それはネットを潜って地面へと落ちて行った。
かっこいい。
それが、私の感想。感動。
それは沢山の本と出会った時のような、目を輝かせるような。
ふつふつと奥から湧き上がってくるような。
私も、あんなふうに。
次の日から私は図書館に行くのをやめて、公園に通った。

一か月も大ちゃんから教わり、ようやく人並みに出来るようになった。
それが嬉しくて、大ちゃんに泣いてお礼を言った。
二か月程経つと、大ちゃんには追いつけはしないものの、追いかけることが出来るようになった。
三か月経つと、大ちゃんとコンビを組んで中学生や高校生とゲームをするようになった。
さっちゃんはその様子を嬉しそうに見ていた。

『さっちゃんも、やる?』
「ううん!私には出来る気はしないからいいや!!でも、なっちゃんの為にアドバイスとかするね!」
『ありがとう』

そんな会話をした日から、さっちゃんが少しずつ変わり始めた。
一週間後にはこうなるから、このストレッチを忘れるな、とか。
私は素直にそれを聞き入れ、また強くなった。
私たちは近所ではバスケが上手い、と少しだけ有名になった。
本の中に一人で佇んでいたのを引っ張ってくれたのは、二人だった。
私は読書をやめて、バスケに夢中になった。



『でも、結局男女の壁は越えられなくって……。小学校四年生でゲームをすることは、なくなった、かな。
シュート練とかはするけどね』
「ふーん……。あのさぁ、なつきとさっちんと峰ちんて、」
『うん?』

「ほんと、バスケバカ、だよねー」

俺がそう言えばなつきは珍しく歯を見せて笑った。







あとがき。
企画参加ありがとうございます!
テーマは「なつきとさつきと青峰が子供の時の話」。
この三人と言えばやっぱり「バスケ」だと思ったのでこんな感じになりました。
タイトルは「Memories」。思い出です。
本当にありがとうございました!
リクエストお待ちしております!!