ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

嫌い。
小さく呟いた負の言葉は、冷たい空気へ振動を伝えてから消えた。
部屋の隅で膝を抱えて小さく丸まっている今の自分は、なんと惨めなのだろうか。
綺麗に少しの隙間も残さず閉められたカーテン。無造作に床に落ちているキセキの世代が表紙の雑誌、それがバラバラに切り裂かれた紙の破片、ハサミ。カッターで串刺しにされたバスケットボール。
部屋は酷い有り様で、姉は私とは反対側の部屋の隅で泣いている。
どうしてこうなったのか。部屋が、という意味でなく、キセキが、という意味。
あんなにも仲が良かったのに、全部全部煙のように消えていった。そこらへんに落ちてる紙たちのようにバラバラになった。
何が駄目だったのか。何処で何を間違えたのか。それは誰にも分からなくて、どうしようもなくて。
小さく小さく、1ミクロンほどに小さく切り裂かれた紙を元に戻すことが出来ないように、私たちはもう元のように笑いあうことは出来ない。
馬鹿みたいに全部壊れて、阿呆みたいに泣いた。思い出にすがって、自分がもしいなかったら変わっていたのだろうかとまで考えた。
最初からいなかったら。空白のページだったら。桃井さつきの双子の妹が最初からいなかったら。何かが変わっていた?
変わっていたとしたら私は喜んで消えよう。何があったとしても産まれてはこない。存在しない。
そんなことは有り得ないと、頭の何処かで解ってはいても、考え出したら止まらない。
自分とキセキが並んで笑っている写真が嫌で嫌で、机に飾ってあった写真立てごと部屋の扉に投げた。バンッという扉に当たる音と、パリン、と硝子が割れる音がした。その音に解放感を感じた。全てが壊れて無くなった気がした。
でも壊れたのは写真立てであって、写真ではない。自分とキセキが写っている写真では。
傷が少しついているだけで、壊れてないそれを見て、苛々した。無性に泣きたくなった。破いてしまいたくなった。それでもあの写真だけは、と思ってしまっている二律背反。それにすら破壊衝動を覚えて、いよいよ厨二病かと心配になったりならなかったり。
それでも私は壊すしかなくて、落ちている写真に手を伸ばそうとした。
しかし手は空を切って、写真は姉の元へ。
姉は駄目だとでも言うようにそれを抱え込み、首を振った。
苛々苛々苛々苛々苛々苛々。
何に自分が怒っているのかも分からなくなった。悲しくて苛々して訳も分からずボロボロと涙が溢れてきた。
そのぐちゃぐちゃの自分の顔を全身鏡で見てしまって最終的には自分を壊すことにした。何度も何度も自分の足を殴って、手を殴って、頭をガシガシと掻いた。首に両手を回してぎゅうッと締め付けたけれど、力が弱すぎて私を壊すことは出来ない。
次に私の瞳に映ったのは長い長い髪。姉とお揃いの、桃色。
ああ、この髪が。この髪が無くなれば、皆を忘れられるのか。もうこんな想いをしなくてすむのか。ならば手放そう。
バスケットボールに突き刺さったカッターを抜き取り、刃を目一杯伸ばした。
姉が息を飲む音が聞こえた。携帯を弄る音が聞こえた。大ちゃん速く来て!!!!と叫ぶ甲高い声が聞こえる。
なんで親を呼ばないんだと思って、そう言えば仕事でいないことを思い出した。だからこそここまで酷い惨状に出来たのだ。
家が近いとはいえ、幼馴染みがここまで来るのには最低でも三分は掛かるだろう。三分あれば、十分だ。姉が止めに来る可能性もあるけどまだ電話中だから。
自分の髪の、頭より少し離れた所を片手で大体全部掴んだ。掴みきれなかった髪がハラリと肩に掛かった。この時程髪の量が多いことを恨んだことはない。
束にした髪の左側にカッターの刃を当てる。姉が叫ぶのもお構い無しに一気にその刃を右にずらした。
音もなく床に散らばった桃色に、また苛ついた。


「unstable」


(嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い!)
(色のあるこの髪も私を置いてく皆も全部全部大嫌い!)
(私は色なんて欲しくなかったのに、)









あとがき
みんながばらばらになって、不安定になったなつきがあったのではないかなと。それで髪を切って……。
本編ではちゃんと美容室で切ってるんですけどね( ‾▽‾)ifってことで！
本編にこんな暗いの混ぜるわけにもいかないし……って思ってお蔵入りになってたのを完成させてみました。
てか……。
学祭まだあと一話残ってるのになにやってるんだ……!!
イラストも年賀用に一枚描かなきゃいけないしあけおめ小説も書かなきゃなんないのにバカバカバカ!
でも後悔はしてない(｀・ω・´)
バカですみませんm(__)m



ところでバスケットボールってカッターで刺せるんですかね(´・ω・`)?