二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

    星空の軌跡 | 002. ( No.14 )
日時: 2012/07/24 18:58
名前:  ゆう  ◆Oq2hcdcEh6 (ID: fOW/FHMu)







  | 002 黙ってろバカ犬





「あーもしもし、……って、亜美っちっスか?! やー懐かしいっスね! ……え? 誠凛高校? 何処ソレ。や、オレ、その学校あんま知らねんスけど……はあ、って、ええ?! 彩音っちも黒子っちも其処なんスかあ、彩音っちオレのことフッたくせに……! ハハ、亜美っちは確か洛山高校、だったっけ。相変わらずラブラブだなー、もう。ちょ、その呼び方やめてよ! オレ犬なんかじゃ……ば、バカ犬?! くうん!」

 人通りの多い街中を、携帯電話を耳に押し当てて歩いている、目立つ髪色の少年がいる。頬を緩ませ弾んだ声で電話をする少年は、向こうから聞こえてきた言葉に、一瞬表情を凍りつかせた。

「……亜美っち、それ、ほんとっスか」

 冷たい低い声。亜美っち、と呼ばれた電話の相手は至極愉快そうな笑みを漏らして、囁くような声で言う。

「嘘だよ、バカ犬」



 ++



 場面は変わって誠凛高校。
 男子バスケットボール部の活動場所である体育館には、入部希望者が集まっていた。

「なあ、あのマネージャー可愛くねー?」
「二年だろ?」
「けど確かに! もうちょい色気があれば……」

 ひそひそと囁き合う男子生徒に、マネージャー希望の彩音がきょとんとした視線を送る。それは向こうで佇むショートカットの女子生徒のことのようで、彩音はあれ、と首を傾けた。

「だアホー、違うよ!」

 思った通りだ。
 囁き合う男子生徒の後ろから拳が直撃。あいてっ、と小さく悲鳴が上がり、彩音はですよねー、なんて小さな声でぽつりと零した。バキキッと良い音がする男子生徒の頭に憐みのこもった視線を送っていると、ショートカットの女子生徒は何時の間にか近くに来ていて、マネージャーという言葉を否定した。

「男子バスケ部カントク、相田リコです。よろしく!!」
『ええーっ?!』

 どーん、という効果音が付きそうな顔でさらりと述べた男子バスケ部カントク——リコに、ずっとマネージャーだと思っていた入部希望の男子たちがざわめいた。
 何処か残念そうな顔をする者もいれば、向こうで何もしない教師が監督じゃないのかと問う者もいる(因みに顧問の武田先生だ)。
 リコは辺りが少し静まったのを見て、またもや真顔で言う。

「じゃあまずは——……シャツを脱げ!」

 その言葉に男子生徒達は驚き、彩音はピキッ、と凍りついた。
 しかしちゃんと従いシャツを脱ぐ男子生徒に彩音は苦笑を浮かべる。きっと何かを考えてなんだろう、と己もシャツを脱ごうとすると、後ろから伸びてきた手に阻止された。眼鏡を掛けた、主将の日向だ。
 女子は脱ぐなと苦笑されては彩音は従うしかない。シャツを着たまま、列に並ぶ。

「キミ、ちょっと瞬発力弱いね。反復横とび、50回/20secぐらいでしょ? バスケやるならもうチョイほしいな」
「……凄いな、」
「キミは体カタイ。フロ上がりに柔軟して! キミは……」

 体を見ただけで的確にズバズバと言い当てるリコに皆が目を見開く。彩音も小さな声でぽつりとそう漏らした。
 そんなリコが、最後の一人——火神大我を見て凍り付いた。心なしか目がキラキラとしているような気がする。日向に声を掛けられて漸くハッとしたリコは、忘れかけていた黒子の存在を思い出して辺りを見回す。

「あの、あたしも良いですか?」
「えっと、キミは……選手希望?」
「あ、いや、マネージャー希望なんですけど、何か凄いし、カラダ見て貰いたくて、」
「! 男子に匹敵してる!?、……ってもしかしてキミ、帝光中からの、」
「ハイ、有彩彩音です」

 キラキラッ、と再度瞳を輝かせるリコに彩音がにっこり笑う。それから、と付け加えて、リコの真後ろを指差した。

「テツヤも見てあげてくださいね」

 へ? と振り返るリコは、数秒後に絶叫を上げた。



 ++



「もう! ホント酷いっスよ亜美っちは何時までも! これじゃ中学時代と何も変わらないじゃないっスかあ、! お、オレ、犬なんかじゃ……うう、わんわん!」
「言うことを聞く犬は赤司も私も好きだよ。でもお前は駄目かな。言うことは聞くけどデカい。赤司よりデカいとかふざけんな。あ、バカ峰は良いよゴリラだから。真太郎は天才だし敦は可愛いし幼馴染だから許すけど涼太、バカ犬なお前は許さん」
「何ソレ理不尽!」
「悔しいなら泣け、いや寧ろ泣け吠えろ」
「きゃんきゃん!」
「は?」
「わんわんお!」
「よくできました。デカいのはやっぱヤだけど。ていうか写メ見たよ、面白かったな! ……あ、一つ良いコト言ってあげる。お前のそういう従順なトコロはスキだよ、涼太。———何ていうかバカ犬め!」
「えっ……って、ちょっとでも期待して胸キュンしたオレを誰か殺して下さいっス! うわあああ!」








 prev | next / 最後の会話文は勿論電話で。亜美さんはデカいのが嫌い(黒子スキ)。