二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  パラドックス  [ REBORN ]  ( No.2 )
日時: 2012/07/29 13:05
名前: 烏月 ◆RYtaauV6do (ID: mxpCGH6q)

 

クラスには、必ず一人はいるであろう。いつも窓際の席に座って、頬杖を突きながら本を一心に読み漁る生徒が。それが、彼女であった。彼女は誰とも話さず、誰ともつるまず、一人でただ読書をしていた。彼女がもし死ぬことがあっても、少なくともこのクラスでは誰も悲しまないであろう。それほどまでに、影の薄い女だった。

 彼女は、一人で生きていた。




 そんな彼女の名を、藤堂七瀬とうどうななせ。ショートヘアと呼ぶには短く、ミディアムヘアと呼ぶには長すぎる真っ黒な髪とは対照的に、真っ白い肌。特別綺麗というわけではないが、それなりには整った顔立ち。スタイルは平凡、制服は特に着崩すこともなく、きっちりと着ている。


 平凡の代名詞である彼女の表情が緩むことは無い。口を真一文に引き締めて、髪と同様真っ黒な瞳は鋭い視線を放っている。俗に言う無表情ともとれるが、表情が無いというより何時も不機嫌なイメージだ。


 勉強はそれなりにできる。テストは毎回平均点よりは幾分か上だが、それも数点のことで、頭が良いというまではいかない。運動も、平均的である。五十メートル走は九秒にかなり近い八秒台。マラソンは女子が百人近くいるのに対し、良くても四十台。


 家もいたって普通。他の家とはなんら変わらない。家族構成も両親と弟とペットの猫がいるくらいで、どう考えても彼女は普通の人間である。


 つまり、だ。彼女、藤堂七瀬は、平凡な並中生なのだ。



 しかし、彼女はどこか異彩を放っている。他の誰かとは、違う何かだ。彼女のクラスメイトなら、誰でもそう感じていることだろう。かくいう沢田綱吉も、その一人であった。話しかけこそしないものの、彼女の放つ何かが気になっていた。興味があった。

 「——沢田さん、」誰もが沢田綱吉のことを名字で呼び捨てするか、ダメツナと言う中、彼女だけは名字にもれなくさん付けもプラスして沢田綱吉を呼んだ。あの凛とした声を、沢田綱吉はいつまでも覚えている。


 冒頭では彼女のことを影の薄い女だと言ったが、訂正しよう。


彼女は、誰とも話さず、誰とも馴れ合わないのに、なぜか、強い存在感を持つ女であった。