二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: パラドックス [ REBORN ] ( No.3 )
- 日時: 2012/07/31 08:45
- 名前: 烏月 ◆RYtaauV6do (ID: mxpCGH6q)
「気味悪いわよねえ。」
名も知らない一人の女子が、ぽつりと言葉を零した。
その言葉は、いつものように窓際の席で本を読む、藤堂七瀬に向けられたものであった。友達らしき人物も、うんうんと首を縦に振っている気配がする。どうやら肯定の印らしい。
まるで、七瀬のことが疎ましいというような視線を送りながら、二人は舌打ちをした。七瀬は、その視線をまるきり無視して、文章を目で追っている。それをいいことに、また二人は七瀬の悪口をつらつらと並び立てた。
「……死ねばいいのに、あんな無表情な女。」
「ほんと。誰とも喋らないくせに、生きてる意味あんの?」
——〝生きてる意味あんの?〟。その言葉に、七瀬ではなく隣の沢田綱吉が反応した。七瀬の隣の席に座っている沢田は、苦々しく顔を歪めていた。悪口を叩いている女達は、丁度沢田の近くで話をしているのだ。悪口を聞いて、気分が悪くなったらしい彼が、ちらりと七瀬を見る。
七瀬は相変わらず何を考えているかわからないその表情をしている。悪口は聞こえているはずなのに、なんとも思わないのだろうか——と、沢田は思った。
すると、七瀬は、キッと女達を睨みつけた。女達はその視線にびくりと震えるが、次の瞬間には何事もなかったかのように愛想笑いを浮かべた。それを見て、七瀬はがたりと音を立てて立ち上がった。沢田は、はらはらと七瀬を見つめている。
『愛想笑い浮かべても、悪口は聞こえてたから、意味ない。』
「……!!なっ、何よ…!!」
『悪口言うのは構わないけど、こんなところで言ってたら沢田さんが困る。後で悪口でも憎まれ口でも聞いてあげるから、一回消えてくれる?』
「!!っこのっ…!」
七瀬のその言葉に、沢田がはっと息を呑む音がした。オレのためだったのか、と彼は彼女を見上げた。女達が、苛立ちを隠せていない表情で七瀬を睨む。
『もう一回言う。消えて。』
七瀬は、感情の篭っていない声で言った。女達は、苦虫を噛み潰したような顔をして、そそくさと去っていく。それを見計らってか、沢田は七瀬に話しかける。
「……あ、の…。ありがとう…」
『……いい。わたしが好きでしたことだから。それより、ごめん。わたしのせいで沢田さんまで嫌な思いをしてしまって。』
「え、ううん!いいよ!オレ、気にしてないし!」
沢田は、あわてたように両手を真横に振った。それを見て、七瀬はふっと微笑む。
『……ありがと。』
彼女には悪い噂ばかりがついているが、本当は優しい人なんではないかと、沢田は思った。