二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.117 )
日時: 2012/12/20 21:18
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 4HUso7p7)
参照: 第四篇/Dichroite Pendant (いつか役に立つ何か)

 この世界にも蝉がいる。
 晩夏に響く、物悲しい求愛の声を聞きながら、私は窓際で膝を抱えていた。そして、三時間はそのままだ。
 最初は子供勢が絡んできたり心配した何人かのメンバーが声を掛けてきたりしたが、それらの全てが悉く五感をすり抜けていった。何時しか私の傍に寄るメンバーは一人減り、二人減り、そして今は私一人。がらんとしたリビングの中に、私以外の生けるものはおおよそ存在していない。
 「そうだ……」
 不意に拾った石のことを思い出して、ベストのポケットから引っ張り出す。角度を変える度色が変わる——今は透明感ある灰色の石は、夕暮れ時の穏やかな光を受けて、美しい橙色を表面に反射していた。台座から通る銀色の鎖もまた、良い感じの色にきらめいている。
 これの名は何なのだろう。五階にあると言う図書館に行き、心ゆくまで調べたい気もするが、それよりも此処にいたい気持ちのほうが幾分強い。疲れを癒すはずが逆に溜めてしまったこともあるが、此処で一日の移り変わりをいつまでも見ていたい、と言う気持ちもある。
 「ダイクロアイトか」
 暇つぶしがてら、石に陽光を透かして遊んでいると、背後から静かで冷たい女声が届いた。咄嗟に振り返ってみれば、タンクトップにジーパンと言うなんとも動きやすそうな格好で、解いたさらさらの金髪を結び直す、バウンティ・ハンターことサムスが、空色の眼で私の手元を覗き込んでいる。
 「ダイクロアイト?」
 問うてみれば、サムスは堅い表情をしたまま、まるで資料を朗読するように答えてのけた。
 「アイオライトとも言う。泥岩ホルンフェルス中に高温低圧型の広域変性、もしくは接触変性があった場合に産生する、変成岩の一種だ。見ての通りの性質があって宝石としても人気は高いが、此処では滅多と採れないから高価な代物だな。況してその大きさ、天空闘技場の入場料の十倍はするだろう」
 入場料の十倍、つまり千コイン。
 大抵RPG系ゲームのコイン上限が九九九だから、いかにそれが高価なことか! それでいくと天空闘技場の入場料百コインも高いが、五十コインのウルトラキノコが二個と二十個の差は、十分すぎるほど大きい。
 「そんなものを一体何処で拾った?」
 「森の入り口近くに落ちてましたけど……加工済みで」
 嘘を付いても仕方がないし、素直に回答したのだが、怪訝な顔をされてしまった。どうやら信じてはもらえないようだ。まあ、千コインの価値がある宝石がその辺に放り出されてるなんて、普通はありえないだろう。サラダの中にダイヤの指輪と指が紛れ込むくらいには。

To be continued...

この世界にも造山活動や火山活動は普通に存在します。
ただし、スマブラ屋敷のある場所ではそれほど活発な活動が起こらないため、天然のアイオライトがこの近辺で採取されることは稀です。希少価値ゆえに価格がインフレして大変なことに。

ちなみに、サムス姐さんは試合の時とパワードスーツ着用時以外は基本的にタンクトップ&ジーパン(必要に応じてジャケットかコート)と言うヒジョーに動きやすい格好。戦闘時もこの格好のままが多いです。
曰く「あの格好は着脱が面倒臭い」とのこと。