二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.20 )
日時: 2012/09/11 00:19
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
参照: 第六篇/Wearkly Struggle (言外に告ぐ目的)

 地下二階。
 この世界を維持するためのあらゆる機関の中枢が集まり、コードを掻き分けなければ立っていられないほどに機械類が立ち並ぶ、神のみぞ立ち入れるはずの領域に、私は居る。
 正確には、その機械類を乗り越えた奥の一角——見上げるほどのコンピュータを前にした場所。そこに置かれた椅子に、マスターと向かい合わせで座っているのだ。四十センチ四方のパネルを幾十枚も繋ぎ合わせた画面には、読めない文字によって綴られた大量のデータが、青白い光芒を放って私達を照らしている。
 「君にはまだよく分かっていないだろう、何故君が此処に呼ばれたのか。薄々は気付いているかもしれないが、恐らく君の考えているよりももっと、事態は深刻だ」
 言いながらマスターの眼が、画面に並ぶ膨大な文字の羅列を無造作に眼で追う。その内に、穏やかだった瞳の色が冷たく暗い闇を帯び、元々から鋭かった眼光はいよいよ研ぎ澄まされて、触れるもの全てをなぎ倒す怪刀の鋭さと激しさを、眼の奥に燃やすようになっていた。
 ——背筋の凍るようなその恐ろしい眼を、私は一度だけ、見たことがある。
 怒り狂い、叔母の首を絞めて殺した叔父の、襖越しに見たあの暗い目。涙を流しているかそうでないかの差異だけで、あの憂鬱な黒さも、あの限界まで磨ぎ打たれた狂気も、今の彼と同じだ。
 「知っているだろう、クレイジーハンドのことは」
 不意に沈黙が破れた。私はとっさに言葉を上げ返す。
 「破壊神、とだけは」
 「そう、その程度の認識で構わない。私とて、彼のことは知らん」
 「……は?」
 一瞬彼の言っていることが理解できなかった。ゲームの中では、常に二人一組で登場していたくせに、マスター自身はクレイジーのことを全く知らないのか? どういう事なんだ。
 疑問符で頭が一杯になりだした頃、マスターが気付いたように溜息をついた。
 「すまない、混乱を招いたようだな。言葉を換えよう。私はクレイジーのことを読めんのだ。読む心がないと言ってもいい。私には、あいつが一体何を想ってこんな愚挙に走ったのか、全く……」
 「愚、挙?」
 思わず聞き返す。たった一言だけ、泣きそうな声が戻ってきた。

To be continued...

 小夜子さん、実は結構衝撃体験の多い人だったりします。
 マスターも苦労人ですが、小夜子も隠れた苦労人。