二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.25 )
日時: 2012/09/13 20:49
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
参照: 第六篇/Wearkly Struggle (言外に告ぐ目的)

 言うべきこともなくなって、口を閉ざした私の耳に、より一層低く鋭くなった声が流れ込んでくる。
 「新しく作るために壊すのではない、全てを無に帰すため壊すのだ。あいつが掌るのは、ある種の美学だ。創造を破り、習慣を破り、禁忌を破り、予定調和を破り、秩序や混沌を砕き、最後には己自身をも無に帰してしまうほどの莫大な力だ。彼を止めるに、私ではあまりに無力すぎる」
 こんな所で言うのもなんだが——なんて弱虫なんだ。
 ゲームを見慣れていると、どうもいけない。目の前で頭を抱える男は、私よりも弱い存在ではないのか、そう錯覚してしまうほどに、彼の精神はやけに女々しかった。こんなの、私の彼氏の方がよっぽど強いじゃないか。
 だが、あえて何も言わず、私はマスターを睨みつけた。彼は弱弱しく笑う。
 「……ずっと気になっていたが、驚かないのだな。普通、こんな突拍子も無いことを聞かされれば、少しくらいはリアクションが返ってきてもいいと思うんだが?」
 「あたしの頭には、もう一人私がいますから」
 違う次元から場を見定め、感情に任せて突貫したがる「あたし」を冷徹に、そして理論的に諌める「私」。事実は小説より奇なり、それを体言する『あっち』の世界で私が生き延びて来られたのは、「あたし」の中に「私」がいたからに他ならない。そして今、「あたし」と「私」は半分ずつ顔をだしている。
 「いいから任せてください。私は、最強なんでしょ?」
 私の顔は、笑っていた。自分で分かるほど朗らかに。
 何が、こんなに幸せなんだろう。私には分からない。

 私の声を聞き、マスターは額に手を当ててしばらく黙り込んでいたが、やがて顔を上げた。
 「君が来てくれて、良かった」
 上げた声が酷くかすれていたのは、心の奥から込み上げてくるものを、無理に堪えた所為なのか。私はあまりその辺りを詮索せずに、笑う。
 「いいえ。……それじゃ、あたしもう寝ます」
 他人のものは他人のものだ。
 その人の眼前に壁があるなら、その人自身が、一人で乗り越えるか打ち砕くかするしかない。
 「ありがとう」
 最後、背中に投げかけられた声には、何も言わないでおいた。

To be continued...

 破壊神が全てを破壊しつくしたとき、クレイジーもまた自身の力に呑まれ滅びてしまうのだ、と言う話。
 言い換えれば、クレイジーが死ぬ時=“全て”が滅びるとき。

 ALL RIGHT?