二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 黒子のバスケ〜拝啓、キセキの君たちへ〜 うたかた花火 ( No.10 )
- 日時: 2012/09/24 19:20
- 名前: このみ (ID: 07JeHVNw)
- 参照: http://yaplog.jp/momizi89/
「こんばんは、大丈夫?」
『ぁ、……大丈夫、です……』
どう見ても大丈夫ではないのに、無理に笑顔を作る彼女。
俺はその手を掴むと、人がいないところまで引っ張った。
『あの……どこに、行くんですか……?』
「人のいないところだよ。もう直ぐだ」
彼女は大人しく僕に引っ張られていた。
本当に人っ子一人いないところまで連れてくると、パッと手を離した。
「何故、泣いているんだい?」
『…………』
「言いたくないならいいんだ」
『……いえ、聞いてください』
二人でその場にしゃがみこむ。彼女は静かに話し始めた。
『私……恋人がいるんです。あ、いた、ですかね……。今日も、一緒に花火を見ようって、約束してたんです。
でも、家を出る直前、メールが来て……。行けなくなったって……。ドタキャンされちゃって……。
私はもう浴衣着ちゃってましたから……どうしようって思ったんですけど、折角だから、見に行こうかなって……。来たんです。
そしたら、彼が……違う女の子と笑いながら歩いていて……。
ああ、騙されたんだなって……。やっと気付きました。
元からデートをドタキャンされることが多かったんですけど……。忙しいんだなくらいしか思っていなくって……。
私、遊ばれていたんですよね……どうして気が付かなかったんだろうと思っていたら、あなたが……』
最後の方は涙をボロボロと零しながら話していた。
ハンカチを渡すと、申し訳なさそうに受け取って、涙を拭いていた。
僕は誰かと付き合ったりした事が無いから、というか、好きになった事が無いから分からないが、
彼女は本当にその「彼」を好きだったのだろう。でなければこんなに泣く事など出来やしない。
しかし、その「彼」とやらは、どんなにイケている男なんだろうか。
こんなに可愛らしい彼女がいるのに、他にも女がいるなんて。
まぁどんなに顔が良かろうが運動が出来ようが頭が良かろうが、性格は最低な下種野郎だという事に変わりはない。
そしてそんな男に惚れてしまった彼女は、見る目が無かったというだけの事だ。
『どうして、声をかけてくれたんですか……?』
「君が泣いていたから」
即答だった。だってそれ以外に理由なんてないから。
もしあの時彼女が泣いていなければ声なんてかけていない。
「どうして泣いているのか、気になってね。話してくれてありがとう」
『……聞いてくれて、声をかけて下さって、ありがとうございました。楽になりました』
「そう。それはよかった」
『あの、お名前を聞いてもよろしいでしょうか……?』
「赤司征十郎。帝光中二年だ」
『わ、私も帝光中です!』
その言葉には本当に驚いた。
こんな女子はいただろうか。
『私、入院していて……学校には数回しか行った事が無かったんです。
でも漸く退院出来て……来月から、ちゃんと通う事になりました』
そういう事か。通りで見かけない顔だと思った。
「そうか。退院おめでとう。君の名前は?」
『ああ、言っていませんでしたね』
『和泉 砂夜(イズミ サヤ)といいます』
18時52分16秒————
(その名前は絶対に忘れない)