二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ( No.152 )
日時: 2012/10/14 12:52
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

150越えになったということで、姫佳のリク短編を描いていきたいと思います!
レッドの短編小説、記念すべき第2弾はヒロナオです!!

短編1(ヒロナオ編)
タイトル;幼馴染の背中(ナオ視点)

大学2年生になった春、大学生活に慣れてきた頃は空手部の練習に打ち込みながら頑張っていた。
幼馴染の大空ヒロはいつも優しいから、私の話を聞いてくれることが多い。
それでも、今の私が居るのはヒロのおかげだと言っていいだろう。

「ハァッ!」

得意の回し蹴りを繰り出しながら、一気に詰め寄る。
その練習相手のハルこと人見晴香さんが相手をしながら、ガードして受け止めていた。

「ナオ、何か気合が入ってるね!」
「そうですか? 試合が近いから鍛えまくりたいんです!」
「鍛えるのは良いけど、あまり無理しない方が良いと思うよ」

ハルさんに突っ込まれながら、何も言えない状態になった。
確かに気合を入れすぎているのは、いかがなものか。
言われてみると、ハルさんの言うとおりだ。

「そうですね、すみません・・・・・・」
「ナオ、もしかして悩み事でもあった?」

こういうときのハルさんは勘が鋭い。いつも優しく接してくれるから、話しやすい人だと思っている。
それに空手部の先輩でもあり、チームメイトとして尊敬できるからだ。

「いえ、別に大したことじゃないですから」
「ははあ、さてはヒロに恋心を抱いてたりする?」
「なっ・・・・・・!?」

頬を赤らめながら、ハルさんを見て驚きを隠せずにいた。
ヒロはイケメンだし、かっこいいけど・・・・・・私のことをどう思っているかも知らない。
最近になって、ヒロに会えていないこともある。その影響を受けていたので、話しづらいこともその1つだ。

「じゃあ、部活終わったことだし・・・・・・部室に戻ろうか」
「はい!」

ハルさんはキャプテンということもあり、バンさんの幼馴染で相談しやすかった。
でも、その悩みを話すわけにはいかなかった。

(どうしよう、ヒロに会えていないから気になる)

その複雑な思いはどこから来るものなんだろうか。
ヒロのことは特別な存在として見ているつもりでいたのだ。



部室で胴着から私服に着替えた。そのズボンのポケットの中に入っている1つの鍵を取り出す。

「ヒロ・・・・・・・」

大学生になってすぐに言われたことを思い出す。
ヒロはいつも優しい眼差しで私に鍵を渡してくれた。

【これ、僕の家の合鍵だよ。僕が居ない時に鍵を開けて入ってくれても良いからね】

その時に私の話を聞いてくれるっていうから悩んだのを覚えている。
ヒロはいつも優しいし、素直なところもある。バンさんに宥められてしまうことも何度かあった。

「ナオ、その鍵は?」
「あ、いや・・・・・・その、ちょっと」

ハルさんに見られてしまい、鍵を入れて隠そうとした。
だが、その時はもう既に遅し。ハルさんが指差しながら話しかけた。

「これ、ヒロの家の鍵?」
「あ、はい・・・・・・」
「やっぱりね、ヒロのことで悩んでるんじゃないの?」

ハルさんに咎められてしまうことになろうとは思わなかった。
でも、ヒロのことだから・・・・・・・酒を飲んで帰ってくるかもしれないし、ヒロの家で待つしかないのだろうか。

「いや、別に大したことじゃないです」
「本当に?」

ハルさんに咎められ、問いかけられてしまう。
その場に居た月島楓さんとチームメイトで親友の直井夏来(なおい なつき)が止めに入った。

「ちょっと、ハル・・・・・・ナオに突っ込んじゃダメよ」
「そうですよ、ハル先輩。ナオのことは私に任せてください」

夏来が私の背中を押しながら、荷物をしょっていた。
ナツに助けられることが多かった。周りに親友として相談できる人がいなかったので、ナツに悩みを打ち明けることにした。

「ナツ・・・・・・私の話を聞いてくれるかな?」
「うん、良いよ! 私でよければ聞くよ」

ナツは笑顔を見せながら、私を見つめた。
私はヒロのことで悩んでいると打ち明ける。

「ヒロのことで悩んでるんだ」
「大空くんのことか、やっぱりそうだと思ってた」

ナツもある程度は事情を察していたらしく、どうりで練習に打ち込みやすいと納得したのだろう。
まあ、それが原因で打ち込めるようになったのは確かだ。

「でも、大空君はナオのことが気になってたんじゃないかな」
「・・・・・・え?」
「大空君、ナオのこと心配してたからね」

ナツが言うには、昼休みに会って話したそうだ。
その時にヒロがナオに避けられているような気がするって言って呟いていたのを聞いたという。

「ヒロが悩んでいるのも分かったし、ナオも同じように悩んでるんじゃないかってね」
「ナツ・・・・・・でも、ヒロんちに行ってもいいのか分からないよ」
「ここは、ひとつ・・・・・・勇気を振り絞って行ってみたらどう?」

ナツに諭され、ヒロの家に行く決心をする。
幼馴染だからこそ、言いたいことがたくさんあるのだ。
私の話を聞いてくれたナツには本当に感謝の気持ちでいっぱいだった。

「ナツ、ヒロんちに行くね! 私の話を聞いてくれてありがとね」
「うん、頑張れ! 仲直りしてきなさいよ!!」

ナツは私に向かって励ましながら、手を振った。
彼女と別れた私はスポーツバッグをしょって、ヒロの家に向かった。


数分後、ヒロの住むアパートに到着した。
ヒロの住んでいるところは確か、3階だったはずだ。

「よし、行きますか!」

エレベーターに乗って、3階に向かった。
ヒロの家は確か、304だったような気がする。

「あっ、ここか」

確かによく見ると、『大空』という苗字があったので、ここで間違いない。
大学生になってからは、1人暮らしするようになっていた。
料理ができないというわけではないが、ヒロは少しくらいならできると言っていたのを思い出す。

「とりあえず、インターホンを押してみるか」

試しにインターホンを押す。

『ピンポーン』

シーンと静まり返る。インターホンを押しても反応がないということはどこかに出かけている可能性が高い。

「合鍵をかけなきゃね」

ズボンのポケットから取り出し、合鍵をかける。
すると、ガチャリと扉が開く音がした。

「お邪魔しまーす・・・・・・」

玄関のドアを開けると真っ暗闇になっていた。手探りで玄関のスイッチを押す。
すると、フッと電気がついた。

「へぇ・・・・・・」

家の中を見回しながら、感嘆したように漏らす。
ヒロのヤツ、こんなところに住んでいたのか。

「ん?」

ふと、ヒロの机の上に1枚の写真立てが置かれていることに気付いた。
ヒロの母親・大空遥と一緒に撮ったときの写真だった。当時は小学校に入った頃だと考えられる。

「ヒロ、かわいいな」

懐かしく思えたのは、いつ頃だったろうか。
幼馴染として、気軽に話せる存在・・・・・・それがヒロだった。

(ヒロがいたから、ここまで生きてこれたんだ)

そんなヒロの優しさに染みてきたのか、涙が流れそうになる。
寂しさを紛らわすかのように、ヒロの帰りを待つしかなかった。