二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ( No.235 )
日時: 2012/10/17 20:59
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

短編2の続き(ハル視点)

バンのことだから、どうせ飲んで帰ってくるだろうと思っていた。
頭を抱えながら、何かと私に突っ込んでくる。

「飲んでたんだから、しょうがないだろォ?」
「はぁ・・・・・・ったく、つまらんことになるから困ったわ」

幼馴染とはいえども、バンに突っ込む気になれない。
酔いが覚めてくれればと思うが、その様子を見て覚めそうにもない。
飲んで帰るのは分かっていたけど、どうにもならないことは事実。

「何がつまんないんだよ」
「・・・・・・別に」

ふてくされながら立ち上がり、ベッドの上に座り込んだ。
無言で見つめていたバンは溜息をつき、私のベッドにダイブして倒れ込んだ。

「なんだよ、悩み事とかあるなら言えよー?」
「別にないってば・・・・・・・」
「嘘つけェ〜寝ちまう前に聞きたいことでもあるんだろ?」

バンはフニャリとした顔で私に向かって笑いかける。
そんな彼の様子を見て、溜息をついた。

「はぁ・・・・・」
「なーに溜息をついてんだ?」
「酔っ払いに言われたくないね」
「な〜にィ〜? おまえの様子がおかしいからって言われてきたんだぞォ?」

バンの言動に驚きを隠せず、誰かに聞いたかもしれないと推測できた。
その言動からして嫌な予感が的中してきて、ビクッとなった。

「もしかして、楓に言われた?」
「うん、月島に・・・・・・様子がおかしかったって言ってたから、電話してみたのさ」

ミソラタウン駅に着いた時の記憶を探り出す。
確かにバンから電話がかかってきた。

(ということは、私から話を聞くつもりでいたのか?)

電話で会話した時間はそれなりに短かった。
少なくとも、酔っ払って帰ってくることだけは想像できた。

「楓のヤツ、後で殴ってやるゥー!」

ゴゴゴ・・・・・・と怒りのオーラを纏いながら燃え上がる。
楓は何かあるとき、バンに突っかかりながら話すことが多い。
よりによって、また余計なことをしてくれて困ってしまうくらいだ。

「ハル、落ち着けって・・・・・・」
「落ち着いていられるかー! だって、楓のヤツ・・・・・・」

ガルルル・・・・・・と唸りながら言いたそうな顔をして突っ込もうとする私の口を塞いだ。
上半身を起こしながら、バンは人差し指で落ち着けというようなしぐさをする。

「はいはい、言いたいことは何となく分かったからさぁ」
「だって・・・・・っ!」
「月島はお調子者だからな、少なくとも・・・・・・」
「少なくともってのはないわっ! だから、ろくなことにならんわ!!」

明日、楓に突っ込みを入れて殴ってやろうかという気持ちに駆られた。
イケメンなのに、何かとかっこいいバンの様子を見ていて、安心できるという気持ちになった。

「いや、別にそういうことはないと思うぜ」
「あのねぇ・・・・・・」

バンに突っ込みをかましながら、ボケを連発しそうになっている幼馴染を見て呆れた。
幼い頃からずっと見てきたバンは何かと気にかけてくれて、私の話を聞いてくれる。
そんなバンが大好きになっていったのは、中学時代に帰国してからだ。

「どうした、ハル?」

トロンとした目で見つめるバン。酔ってるのにも関わらず、話を聞いてくれるところが好きだった。
酒を飲んでいる時は楽しく飲みながら語り合うといったところだ。それがバンに合っているかもしれない。

「何でもない・・・・・・」
「いや、何でもなくはないだろォー・・・悩み事がないなら、何か聞きたいことでもあるんじゃないかぁ?」

痛いところを突かれてしまったが、冷静を装って話すことにしようかと思って悩んだ。
そこで悩んでも仕方がないので、バンにイケメンコンテストのことを聞く。

「そういえば、大学の文化祭でイケメンコンテストがあるの知ってる?」
「ああ、知ってるよ」
「楓がね、そのコンテストにバンが出るって言ってたけど・・・・・・本当なの?」

楓から聞いたことを思い出しながら、バンに聞いてみる。
彼は苦笑しながら、ポリポリと頬を掻いた。

「あー・・・・・・うん、そうだけどさ。成り行きで出ることになったんだ」
「え、何で私に話さなかったの?」
「おまえに話すと驚くだろうなって思って、黙ってたんだ」

バンは私の頭を撫でながら、苦笑しつつも答えてくれる。
どうりで話そうとしなかったのは、黙りこくっていたということになるのか。

「でも、バンはイケメンだけど・・・・・・そんなにモテたっけ?」
「まさか! モテモテになるっていうところなんか興味ねえよ」
「興味ないって・・・・・・・」

そうか、バンは女子にチヤホヤされていたからモテたというわけだ。
大学進学してからもバンに対する女子の人気が高まったのは言うまでもない。

「ああ、別にコンテストなんか出る気になれないけど・・・・・・才野に頼まれてな」
「才野くんに頼まれて、代わりに出るってことになったの?」
「そうなんだよ、特技とかそういうのやるみたいだからさ」

バンは得意なもんなんてあったかなーと言いながら笑って答えた。
そう言われてみると、確かに特技なものが見当たらない。

「バン、あんたの特技がないんじゃ困るね」
「何だとォー?」

顔をしかめながら、私を見上げる。
特技がないのは確かだし、運動神経は良い方だ。
スポーツはともかく、それ以外の特技がないと困る。

「うーん、何かあったかな・・・・・・あっ!」

ふと、アメリカに住んでいた頃の記憶を探り出して思い出す。
死ぬ前の氷介がヨーヨーに嵌っていた時に使っていた技を見たことがあったのだ。

(アレなら、バンにできそうな予感がするけど・・・・・・)

確か、フリースタイルヨーヨーっていうのに出ていて優勝したことがあった。
バンはヨーヨーなんて興味ないかもしれないけど、聞いてみることにした。

「バン、ヨーヨーに興味ある?」
「ヨーヨー?」

そういえば、日本に帰ってきたときに一度だけ氷介のヨーヨーを見たのを思い出したのだろう。
バンはポリポリと頭を掻きながら、溜息をついた。

「そういやぁ、こっちに帰ってきてから見たっけ。ヒョウちゃんのフリースタイルによるダンスがカッコ良かったな」

そういうことだろうと思って、大事にしまっていたのを取り出した。
氷介の形見とも言えるものであり、大切なものだった。

「これ、試しに使ってみる?」
「良いの? でも、得意じゃないからな」
「うん、良いの! バンが使ってくれれば、兄さんも喜ぶから」

バンに託すしかない。兄の夢を守りきるため、ヨーヨーを渡した。
左手で受け取ったが、彼は使い方に慣れるまで時間がかかりそうだと察した。

「まあ、やるからには頑張らないとな」

バンの背後に回りこみ、無言で黙って抱きしめる。
幼馴染として好きだけど、恋人になるのはいかがなものか。

「どうした、ハル?」
「ねえ、バン・・・・・・」

バンを見て、気になったことを思い出していた。
訝しげに私を見つめている眼差しは真剣そのもの。

「んー?」
「わ、私のこと・・・・・・どう思ってんの?」
「どう思うって・・・・・・気が強いし、突っ込みたがる」

その言葉を聞いて、ピクッとなりながら怒る気になりかけた。
バンはそれでも構わずに話を続けた。

「でも、ハルは俺の話を聞いて突っ込んでくれるから助かるよ」
「えっ・・・・・・突っ込むって、そんなこと・・・・・・・」
「いや、おまえがいると何か安心できるっていうか・・・面倒見が良いから、そういうところが大好きだよ」

面倒見が良いのは確かだけど、バンがそれなりに感じ取っていたなんて思っていなかった。
左手で氷介のヨーヨーをギュッと握りながら、私に振り向いてくれた。

「ヒョウちゃんが死んだ時は辛かったかもしれないけど、こいつで優勝するぜ」
「うん、そうだね!」

バンの様子を見て、コクリと頷いた。
時間を見ると、深夜3時ちょうどになっていたことに気付く。
こんな時間まで話したのは久しぶりだった。

「そろそろ寝ようか」
「うん、そうだね!!」

部屋の電気を消して、深い眠りに引きずり込まれていく。
今夜も良い夢が見られるように祈ろう。


The End----------------------------