二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ( No.721 )
日時: 2012/11/26 12:05
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第40章 ついに明かされる、リンの本当の過去・・・壮絶な出来事とは?

(ストーリーモード:バン)

数時間前、俺は奈良警部に言われて警視庁に来ていた。
警視庁の応接室に通してもらい、椅子に座る。

(俺に話したいことっていうのは・・・いったい?)

奈良警部が俺に話があるということはリンのことだろうか。
いや、それとも・・・警部が呼び出したのには、何らかの理由があってもおかしくないはず。

(なのに、こんな時間に呼び出しておいて・・・どうするつもりだ?)

連絡を受けた時に健太と直太を連れてきてもいいかと聞いたが、1人で来るようにと言われた。
その理由が分からなかったが、自分だけしか言えないことでもあるのだろうか。

(それにしても、なぜ・・・俺をここに呼ぶのか?)

疑いながら考え込むが、リンの様子がおかしかったのは確かだった。
廃墟ビルを探検した日の夜、帰りに話した時に気づいたことがあった。
リンの首筋に暴力にやられた後なのかも分からない傷跡が残っていたので、鮮明に覚えている。

「待たせたな」

聞き慣れた声がして振り返ると、警視庁の捜査一課で働いている奈良警部と直井健太さんの2人がやってきた。
ふと、由美さんがいないことに気付く。もしかして、事件の資料を取りに行っているのだろうか。

「奈良警部、由美さんは?」
「後から来るってさ・・・大谷が来たら、話そうかと思っているんだ」

由美さんは過去の事件の資料を取りに行っているそうだ。その話を聞いて納得するが、過去の事件とはいったい何なのか?
それとも健太と直太の身に何があったのか知りたい・・・このままでは、その真相に辿り着くことができないと思ったからだ。

「お待たせ!」

応接室のドアが開かれたのと同時に由美さんが息を切らして、中に入ってきた。
かなり集めているようだが・・・いろいろ調べていたのだろうか。

「大谷、やっと来たか・・・例の資料は用意できたか?」
「はい! ここにあります」

由美さんはそう言いながら、奈良警部の手元にファイルらしきものを置く。
事件ファイルみたいなものに資料がギッシリと積まれていて、何かと大変な作業をしていたかのように感じた。

「さて、話す前にいくつか質問する」
「質問ですか?」

いきなり質問が来るとは思わなかったので、心構えしながら聞く。
奈良警部はコホンと咳払いしてから、俺を見つめる。

「君はどのような経緯でリンちゃんを引き取ったのかね?」
「1ヶ月くらい前ですかね。母さんが俺の部屋にやってきて、ミソラ駅まで迎えに行けって言われたのがきっかけですね」

当時の記憶を振り返りながら思い出す。リンとの出会いは母さんに頼まれたのがきっかけだった。
それを機に迎えに行ったけど、可愛らしくて、大人しいという印象だったのを覚えている。

「お母さんになんて言われたか覚えてるか?」
「木曜日くらいに親戚の方がいらして、女の子を引き取ってもらえないかと申し込んできたそうです」
「親戚・・・・・・だと? そんな人がいたのか」
「はい。詳しいことは分かりませんが、健太と直太の親戚って言ってました」

間違いなく聞いていたので、母親の真理絵はそんなことを言っていた。

「なるほどねぇ・・・・・・」

奈良警部は腕を組みながら考え込んだ。どうやら、過去の事件と何らかの関連があると見て間違いない。
長兄である山野バンしかいなかったため、目撃証言を得られる人物が彼しかいなかったということになる。

「リンちゃんはその日から君の家で暮らすようになったんだね?」
「はい。隣の部屋で健太と直太の2人と一緒に暮らしてますが、リンは2人のことを可愛がっているし・・・結構仲良くしているので」

リンは俺にとっても大切な存在であり、家族の一員といっても過言ではない。
俺の大切な妹が目の前からいなくなるのは嫌だったので、警視庁の奈良警部に頼んで調べてもらうことにしたのだ。

「うむ、それなら良かった。あの子の心の傷を癒してあげられるのは君しかいないんだからな」

奈良警部は溜息をつき、事件資料を取り出す。直井さんと由美さんは訝しげに顔を見合わせた。
奈良警部は腕を組みながら、再び考え込んだが・・・すぐに頷き、決意したかのように捉えた。
どうやら、何か話してくれる気になったらしい。

「今からリンちゃんの過去について話そうか」
「えっ!? 話してくれるんですか?」
「あぁ、だが・・・その前に写真を見てほしい」

差し出された数枚の写真を受け取り、ジッと見つめる。

「---------ん?」

ふと、あることに気付く・・・リンの背中にタバコを押し付けられたような痕が残っていた。
しかも禍々しく、台風の目を見ているかのようだ。彼女に何かあったのかもしれない。

「なんだよ、これ・・・」

驚きのあまり絶句する。突然のことで動揺を隠せなかった。
想像以上に虐待された痕がいくつか残っていて、背中を含む上半身や下半身にいくつかの痣ができていた。

「いったい、リンの身に何があったんですか?」
「リンちゃん・・・・・・彼女は両親を失ってから、親戚に引き取られたんだ」
「親戚に引き取られたなら、仲良くしてるはずじゃあ・・・・・・」
「そこが問題なんだ。写真を見ても分かるように、これは明らかに虐待を受けている」

確かによく言われてみると、虐待を受けているのは間違いない。
じゃあ、いったい・・・・・・誰がリンに暴力を加えたのか?

「確かにそうですねぇ、これはおかしい」
「そうだろ? バンもそう思うよな」
「はい。リンに何があったのか知りたいし、俺は目の前で大切な家族を失いたくないんです」
「うむ。今から本当の過去のことを話そう、心して聞けよ」

奈良警部はポツリポツリと語り始めた。



その出来事は5年前に遡る。当時、リンは12歳だった。
不慮の事故で実の両親を失ったリンは父親の親戚に当たる家族に引き取られた。
近所に住んでいたのが、幼馴染の早間綺羅と宇津野志穂だった。2人はリンにとっても大切な友達とも言える存在。

「ただいまー!」
「お帰り、リン」

リンの従兄弟に当たる、小海直登という青年が現れた。直登はいつも母親に似て優しいところがある。
直登のそういうところが大好きだったリンの背後に忍び寄る影が迫ろうとしていた。

「リン、親父が荒れてるから気にすんなよ」
「うん、大丈夫! おじさんって、酒浸りだもんね」
「そういう兄貴も似たような感じだな。でも、何か様子がおかしい」

直登はある違和感を感じながら呟く。直登の兄・諒平は毎晩、酒場で入り浸りつつも遊びまくっていた。
リンと直登は兄貴的存在の諒平が大好きだった。心優しい兄だけど、たまにキレやすいところがある。

「リン、ちょっとこっちへ来い」

直登と諒平の父親・小海修一に呼び出されたリンは直登と別れて向かった。
しかし、そこで待ち受ける壮絶な出来事が起こってしまうことになろうとは思っていなかった。



和室のような場所に閉じ込められ、リンは修一による暴力を受けていた。

「がっ!」

衝撃的なダメージを受け、意識が朦朧としてくる。その時、父親がリンに向かって、冷たく言い放つ。

「リン、おまえが来てからは何もかも崩れ去った。何が直史の子供だ!」
「父さんのこと忘れるはずない・・・・・・」
「おまえがいるとムカつくんだよ!!」

そう、冷めた目で見ているかのように呟いているようにしか見えなかった。
リンはそんなことを気にしていられるはずもなかった。直登や諒平に知られたら、大きな騒ぎになるのは間違いない。
それでも、酒に酔っていた修一の暴力を受けながら耐えるしかなくなっていたのだ。

「生意気なガキがいるしな、ったく・・・・・・」
「やめてよ、おじさん。暴力は良くないよ!!」
「あぁ? うるせえ!!」

修一が暴力を振るうのには何か理由があるはずだ。それさえ分かれば、虐待を受け続けずに済んだかもしれない。
そう思いながら、痛みに耐えていた時。和室のドアが開かれ、光が差し込まれたかと思えば----------

「リン!?」

直登が姿を現した。酒によって暴れている父親を見て驚くが、リンが怪我していることに気づいた。
とっさの機転でリンを抱えながら、父親が酒瓶を持って振るう攻撃をかわす。

「直登ォ、俺に手を出す気かぁー?」
「父さん、リンに暴力すんの止めろよ!!」
「うるせえ、リンを離せ!!」

直登は意識を失う前のリンを寝かせ、父親から酒瓶を取り上げた。
リンは虚ろな目つきで見守ることだけしかなかった。直登の機転で警察に連絡して、父親の修一は逮捕された。

「リン、もう大丈夫だからな」

警察に連絡し、意識を失ったリンは救急車に乗せられて運ばれたのだった。