二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ( No.759 )
日時: 2012/11/27 10:20
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

短編6の続き(ハル視点)

バンは欠伸交じりに机の上の写真立てを見た。その写真には氷介と一緒に撮った時のものだ。
アメリカにいた時に2人で撮っていたから、光一には会えていなかった。当時、アメリカに住んでいた時は氷介といがみ合ってケンカしたこともあった。

「懐かしいなぁ、兄さんと光一兄さん、顔はそっくりなのにケンカしまくってた」
「もしかして、双子だったのか? 俺は知らなかったぞ」
「うん、双子だよ。目の色は違うけど、顔は似てたよ。2人ともケンカするほど、仲が良かったよ」

氷介のことを思い出していると、忌まわしき記憶がよみがえってしまう。
その辛さを忘れることができない。もう1人の兄・光一に会いたいという気持ちが強かった。
できれば、再会できる時間が欲しい。兄と一緒に失われた時間を過ごしたいと思っている。

「あの時、ヒョウ兄さんが生きてたら会えてたかもね」
「ハル、どうしたんだよ・・・・・・いつものおまえらしくないぞ」
「そっ、そんなことないもん。兄さんが生きてくれたら、光一兄さんに会えたかもしれない」
「俺さ、よく分かんないけど・・・・・・光一さんはお墓参りに行くかもしれないよな」
「うん、帰ってきた時に連れて行ってあげたい」

光一が帰ってきたら連れて行くつもりでいた。天国にいる兄の氷介もきっと喜んでくれるはずだ。
もちろん、幼馴染のバンも一緒に連れて行かなきゃダメだと思う。

「バンも一緒に行こうよ」
「ああ、俺も付き合うよ。ヒョウちゃんに辛い思いさせたくないからな」
「うん、そうだね! ところでさ、空港まで迎えに行った方が良くない?」
「あぁ、そうだな。俺も一緒に行っていい?」
「良いよ。光一兄さんがバンによろしく言っといてくれってさ」
「ふーん、まあ良いけどさ。冬休みだし、帰る必要ないと思うぜ」

バンは肩を竦めながら、右手で写真立てを取る。バンも氷介のことが忘れられないでいるのだろう。
辛い思いしてまで生きている価値すらない・・・・・・そう感じたのはいつからだったか。
それまでに生きる楽しみ、学校に行く楽しみすらなくなっていたが・・・辛くても支えてくれた幼馴染がいて当たり前。
寂しさを感じさせないオーラを纏いながら生き続け、明るく振舞っていた。
その裏腹にバンだけは分かっていた。辛い思いして明るく振舞いながら生きるのはどうなのかと諭されたことがあったのを思い出す。

「フフッ、そうね。どこで飲む?」
「やっぱりあそこで良いんじゃないの?」
「居酒屋でいいの? バーに連れて行かなくても」
「はしごして行くのもありだけど、光一さんって強い方?」
「さぁ、聞いてないけど・・・・・・強いのかな。バンみたいに飲めるわけじゃない気がする」
「そっか。でも、空港まで迎えに行くのは良いとして・・・・・・ミソラタウンを案内してやった方が良いかもよ」

ミソラタウンを案内した方がいいと思う。バンの言うとおり、案内した後に居酒屋で食事するのもありか。
よく考えたら、間違いなく案内できるかもしれない。そうと決まれば、連絡したいところだ。

「いいね! よーし、それで決まり!!」
「まぁ、いつ到着するかは知らされてないんだろ?」
「うっ、そうね・・・・・・」

いつ到着するかは聞かされてない。まぁ、電話が来たら聞いてみるつもりでいる。
兄との再会を待ちわびていたので、バンと一緒に迎えに行くことにしていたのだ。

 
数日後、午後2時ちょうど。空港にやってきた私はバンと一緒にベンチに座りながら待っていた。
光一がこの時間に到着すると言っていたので、その時間に合わせて来たわけである。

「光一兄さん、どこにいるんだろ?」
「さぁな。この辺をうろついているかもしれないんじゃないか」
「うろついてるなら良いけど、兄さんの身に何かあったらどうするの?」
「うっ・・・・・・そりゃ、助け出すに決まってるだろォー」

バンと話しながら、楽しそうに接していたその時。背後から聞き覚えのある声がして聞こえた。

「ハル?」

振り返ると、氷介に似た青年がキャリーケースを引っ張りながらやってきた。
見覚えのある緑色の髪に青緑の目、間違いなく兄の光一だった。服装はストリート系ファッションを着用している。

「光一兄さん!」

思わず叫びながら立って駆け寄り、光一に抱きつく。
私を受け止め、抱きしめてくれた光一も私だと確信したようで笑顔を見せた。

「ただいま、ハル。久しぶりだな」
「お帰り! うん、久しぶりだね。元気?」
「ああ、元気だよ。ところで、君の幼馴染は?」
「あっ、ベンチに座ってるよ。おーい、バン!」

ベンチに座りながら、CCMをいじっていたバンは私に気づいて、コクリと頷く。
すぐに立ち上がり、私と光一のところまでやってきた。

「えーと、初めまして・・・で良いのかな。俺、山野バンって言います」
「初めまして、僕は人見光一って言うんだ。バン君のことは氷介やハルから聞いていたよ」
「そうですか、こちらこそよろしくお願いします」

バンと光一は握手しながら、お互いに自己紹介しつつも仲良くなった。
光一については幼馴染であることを認識していなかったバン。その時は初対面だったので、潔く覚えていないというのもある。

「自己紹介が済んだ時点でミソラタウンに行きましょうか。ついでに荷物はどうする?」
「ハルは車でバンと一緒に来たんだよね?」
「そうだよ。前にバンを乗せて来たんだよ」

助手席に乗っていたバンは着くまでの間、転寝しながら居眠りしていた。
到着してから起こしたけど、寝惚けていたせいで目を覚まさなかったから置いてけぼりにしてやろうかと思ったりする。

「だからって、俺を置いてけぼりするわけないだろォー」
「あんたが寝てたからでしょ! 寝惚けんのが悪い」
「痛いところを突くなよ。寝てたんだからしょうがないじゃん」

私とバンの会話を聞いていた光一が笑いを堪えながら我慢していた。
まるでケンカを見ているかのように、言い争う私たちを気遣っていたのだと。
その様子を見て、光一を見て話しかける。

「ちょっと兄さん、笑いを堪えるなんて」
「ごめん、ハルたちの会話を聞いてたら面白くてさ。つい笑っちまった」
「フッ、しょうがないわね。そろそろ行こうか」

空港を後にして、駐車場に向かった。


しばらく経って、ミソラタウンに到着。自宅に連れて、母さんに挨拶しに向かった。
家に着くなり、光一を見て驚きを隠せなかった母は呆然として突っ立っていた。

「あなた、本当に光一なの?」
「うん、久しぶりだね。僕の部屋は氷介が使っていたところで良いんだよね?」
「そうね、氷介はあなたの帰りを待っていたのにね・・・・・・」
「まさか、死ぬとは思わなかった。何があったのか知りたいくらいだよ」

私とバンは訝しげに顔を見合わせる。確かに光一が帰ってくる前、氷介は事件に巻き込まれてしまった。
何もかも自分のせいだと責め続けた私の背中を擦りながら励ますバンの存在が大きかった。
幼馴染だからこそ分かる、寂しさというものを感じさせない。光一は未だに信じられないでいるのだろう。

「とりあえず、2階に上がろうか。ハルたちも一緒においで」
「うんっ!」

2階に通じる階段を上り、氷介の部屋に着く。中に入ると、彼が生きていた頃のままになっていた。
光一は氷介が使っていたベッドの上に座り込みながら、周りを見た。

「兄貴が死んだとは思わなくてさ、僕も信じたくなかった」
「光一兄さん・・・・・・」
「僕はアメリカにいた。でも、兄貴が死んだと知らされたのはテレビのニュースを聞いていた時だった」
「うん、知らせようと思ったけど・・・・・・連絡がつかなくてさ」
「そうそう、僕から電話かけてね。まぁ、あの時は受け入られなかったけど・・・今なら分かる。兄貴が残したものを使って、生きるしかないからね」

光一なりに感じ取って、生き続けることで氷介の死を受け入れられた。
アメリカにいる友人たちも気遣ってくれて、どうにか生きるのを諦めるわけにはいかなかった。
唯一、人見家の長女である私のことを気遣い、連絡してくれるようになっていたということもあり、帰国と引越しが実現した。

「ハルに会えてよかったよ。ところで、街中を案内してくれるかな?」
「うん、いいよ! バンも一緒に行こうよ」
「そうだな、俺も一緒に付き添うよ。なんて呼べばいいかな」

バンは言いあぐねていたのか、光一のことをどうやって呼ぶか悩んでいた。
光一は苦笑しつつも、適当に呼んでくれて構わないと言ってくれた。

「適当で良いよ」
「じゃあ、光ちゃんでいい?」
「ああ、それで良いよ。よろしくな、バン」

光一は満足そうに笑顔を見せた。本当に立ち直ってくれたし、そろそろ出かけることにした。
自宅を出て、私たちは街中へと繰り出した。