二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 『イナGO』-アドニス〜永久欠番のリベロ〜 ( No.35 )
日時: 2012/11/27 16:07
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第十五話 『マルセイユの友』

大切な人に、靴をプレゼントしてはいけないらしい。
なぜか。
その靴を履いて、遠くへ行ってしまうから。

な〜んて、ばかばかしい迷信だと思ってた。

おれの部屋の隅には、ぼろくそのスニーカーと、一度しか履いたことがない新品のスパイクがある。
成長期真っ盛りのおれの足には少し小さいかもしれないそれは、どこかきらめいて、どこか哀愁を帯びていた。

人間の文明がどれだけ進歩しても、無くなることのない迷信はおれの胸に巣食う。

そのスニーカーとスパイクを見るたび、ドラえもんに頼んで、タイムマシンであの時に戻って、あの時のおれを殴りに行きたくなる。
大切なものは、自分から手放すんじゃねぇ!!
……って。

——————2年前 フランス マルセイユ

「おれのパス落としたら樹海に投げ込むぞ!!」

おれは前線の男子にパスを出した。

「あり得ない。毎日君の本気のパス受けてんのは誰だと思ってんの?」

そいつは余裕を見せ、シュートを打った。
キーパーの奴がそいつの放ったシュートをキャッチ。

「ラファエル!いいシュートだ!どんどん打ってこい!ミコトももっと積極的に!!」

さっきシュートを打ったのはラファエル・アルドワン。
少しくせっ毛な銀髪に、翡翠の目をしている。
肌は日に焼けていて少し黒い。
ヨーロッパ人のくせに肌が黒いってどういうこっちゃ。

「忘れたのかよパトリス!おれは打たないんじゃねぇ!!打っても入らねぇんだ!!」
「あ…ごめん」

GKの奴は罰が悪そうにする。
こいつはパトリス・ルノワール。
亜麻色の髪は短く切りそろえられており、目はオレンジだ。
優しそうな印象を持たせる。

「ハァ…。みんな頭に血が上りすぎてるよ。頭は凍結—グラッセ—、心は灼熱—フラム—。みんなで決めたスローガン—合言葉—じゃない」

ブロンドヘアの女の子が呆れて肩をすくめた。
この子はステファニー・ラ・フォルジュ。
長いプラチナブロンドの髪に、色素の薄いピンクの目をしている。
黙っていれば可愛いが、おれやラファエルがバカをやるせいで常に眉をひそめている。

「まぁ、そう言うなってステファニー。ここにいる連中はみんなサッカーが好きで仕方ないんだ。熱くもなるよ」

パトリスがステファニーに諭した。
ステファニーは不満そうだ。
彼女は合言葉にある[頭は凍結—グラッセ—]ができていないことにご機嫌斜めのようで。

「それは……わからなくもないけど」
「じゃぁ、頭冷やす意味でも他のスポーツしよう」
「「賛成!!」」
「結局スポーツになるのね……」

ラファエルの提案にステファニーは項垂れた。