二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- しゅごキャラ×鋼の錬金術師〜あむの旅〜
- 日時: 2010/01/20 18:09
- 名前: 瑠美可 ◆rbfwpZl7v6 (ID: 9FUTKoq7)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=10918
ああ、また消えていましたw よく消えるな〜。
またコピーするので、応援よろしくお願いいたします!
でも諦めません。何度でも蘇ってくるので、また応援よろしくお願い致します!
お、クリックありがとうございます!
どっちか知らなくても、片方だけ知っていればぜひ読んでください! わかりやすいように描写を入れていくつもりなので^^:;
鋼原則沿いに、あむちゃんが加わっていきます。
え、ただせ君? イクト? 彼らは時々でてきます!
初めまして瑠留です。消えるので名前をカタカナにしました。が瑠美可(るみか)にまた変わりました^^;改めて応援よろしくお願い致します。しゅごキャラと鋼の錬金術師が大好きなので、コラボさせてみました。鋼のテーマが主になります。ちょっとシリアス気味ですが、たまにはギャグも入れたいと思っています。
鋼もしゅごキャラも、どっちも面白いので楽しい小説にして行きたいと思います。たま〜に遊戯王が混ざりますが、ただのキャラなり相手なので知らなくても大丈夫です。
しゅごキャラと鋼の錬金術師が大好きなので、コラボさせてみました!
あむちゃんが鋼原作沿いのお話(全部沿っているわけではなく、たまにオリジナルの話も入ります)で旅をしていきます♪
しゅごキャラのメンバーはちょっとづつ出てくるので、期待して待っていてください!
どっちか知らない方でも、ある程度の補足は入れますので是非読んでください。つまらない、と思ったら戻るボタンをクリックしてくださいね。
原作のアニメサイト
しゅごキャラ!
http://shugo-chara.com/
ハガレン
http://www.hagaren.jp/
以下注意
①エドウィン好きな方は読まないほうがいいと思います。あむがエドと仲良くなる描写が多いので;; 短編で補充していくつもりですが、そのことは理解していてください。
②常識とマナーは守ってください。荒らし・チェーンメールはお断りです。
③しゅごキャラ! の中で出してほしいキャラがいたら遠慮なく言ってください。あむちゃん以外はあまり出ないので、出て欲しい子がいたらリクエストしてください♪
!本編!
プロローグ
>>1
第一章 砂漠の町で 第二章 明けない日
>>2->>5,>>6,>>7 >>8 >>9
- Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師〜あむの旅〜 ( No.1 )
- 日時: 2010/01/19 13:12
- 名前: ルミカ ◆rbfwpZl7v6 (ID: XHLJtWbQ)
プロローグ
真っ白だった。上も、下も、右も、左も。どこを見ても、何も見えない。ただ白としか表現できない空間だ。
その空間の中央に、一人の少女が佇んでいた。
年の頃は十代の前半。黄色と白のチェック柄のパジャマを着ている。眠っているのか、眉は閉じられたままだ。そして肩にかかる程の桜色の髪が、あちこちはねてしまっている。朝起きたばかりの人のようだ。
「……」
少女の顔がコクンコクン、と上下に揺れる。どうやら本当に眠っているらしい。しかし立ったまま眠れる、と言うのはある意味ですごい。
「ん」
その時、少女の眉間がかすかに動いた。ゆっくりとその眉が重そうに開かれる。眉が完全に開かれると、意志の強そうな金色の瞳が現れた。現れた途端、金の瞳に戸惑いの色が浮かぶ。
「ど、どこ! ここ!?」
少女は辺りをキョロキョロと見渡しながら、叫んだ。しかし、見えるのは何もない空間だけである。
「ゆ、夢! 夢に決まっているじゃん」
少女はそう自分に言い聞かせる。そして、両手で自分の頬を思いっきり引っ張った。かなり力を込めているらしく、手が少し震えている。
「ひ、ひはい」
痛みは現実のものだったらしい。少女の顔が少々歪んだ。その後、さっと頬から両手を離した。
「う、そ……なんで? これって夢じゃないわけ?」
少女が呟く。
「そう。ゆめじゃない」
その問いに答えるように、声が響いた。透き通っているかなり高い声。
直接語りかけているのではなく、空気全体を使って伝えているような不思議な声だった。
「だ、誰!?」
辺りには誰もいない。人の気配はおろか、何かがいそうな感じすら感じることはできない。
「みえなくていいの」
声は落ち着いた口調で言う。言っている意味がよくわからず、少女は声に尋ねる。
「何で・・・何でよ。どうして『見えなくて』いいの?」
数秒、沈黙が流れた。声は何を考えているのだろう。目の前に相手が居ないので、表情を伺うことはできない。携帯で話しているときのようだ。声の調子だけが、相手の機嫌を感じられる手がかり。いつもより、余計に神経を使う。
「今、教えるわ」
声がポツリと答えた。その刹那。
「!?」
少女は、両手首を捕まれるのをはっきりと感じた。人間の手によって捕まれた感覚だった。
しかし、自分を握っているはずの相手は目の前にいない。ただ白いだけ。透明人間が、目の前にいると言うのだろうか。
手首の拘束から逃げようと、少女は手に思いっきり力を込めた。そして自分の方に手を引っ張る。
しかし握られる力はかなり強く、抜け出すことができない。握る力が強くなっていく。手首の痛みも強くなっていき、手首は赤く染まり始めていた。
「な、なにすんの・・・・・・」
少女は搾り出すような声で、握っている相手に言った。見えないが、さっきの声の主だろう。
「たすけてほしいの」
面をくらい、少女は非難の声をあげる。
「なんであんたを! それより離してったらぁ!?」
最後だけ、語尾が上がった。突然足下の感覚が無くなったからだ。床に立っていたはずなのに、それがない。
足を見やると、足は垂れ下がっていた。本当に床が抜け落ちたらしいことを悟る。
同時に腕を捕まれていることで、助かっていると言うことも。
「たすけて。あのせかいを。じゅんびはしてあげるから」
「どういうことよ!」
しかし、答えはなかった。今度は動物が唸るような、低い音が聞こえてきた。そして辺りが急に寒くなり始める。
「さむっ・・・・・・」
少女は身を震わせた。パジャマは夏用で素材が薄い。冬のような気温では、寒すぎるのだ。
その時、冷たい空気が自分を撫でていくことに気づく。ぼさぼさの髪が、右に流れていこうとする。
風だ。風がどこからか吹いているのだ。どうやら声の主の仕業らしい。どこまでもいじわるな性分のようだ。
「こらっ! あたしに風邪を引かせる気!?」
返事はない。それどころか、唸るような音はどんどん強くなっていく。やがて突風が、少女を襲う。
風の強さに、少女は思わず目を閉じる。風が少女を、白い空気を、一気に吹き飛ばしていった。
〜つづく〜
- Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師〜あむの旅〜 ( No.2 )
- 日時: 2010/01/19 13:14
- 名前: ルミカ ◆rbfwpZl7v6 (ID: XHLJtWbQ)
「……むちゃん」
遠くで誰かの声がした。だが目の前はまっくらで何も見えない。まだ夢を見ているのか。どこか暖かく、心地よい感じがする。あったかい毛布にくるまれているかのようだ。
「あむちゃん! あむちゃんったら!」
今度ははっきりと声が聞こえた。高い少女の声。
そして肩を大きく揺すられる。そこで自分が眉を閉じていることに気づく。
(あ……あたし寝てるんだ)
あむと呼ばれた少女は、内心ほっとしていた。さっきまでのあれは、夢だったのだ。従って世界を救うとか、ゲームのような話は現実ではないのだ。
(しっかし。変な夢だったな)
あむは目を開かずそのまま寝返りを打った。何となくもう少し眠っていたかったのだ。するとザラっとした嫌な感覚が手首あたりにした。
(な、何か砂みたいな感覚が。まさか砂の上に寝ているとか?)
ふざけ半分に考え、あむはうっすらと目を開けた。
きれいな青空が広がっていた。驚いて目をぱっちり開くと夏のように強い日ざしが襲ってきた。眩しいので、あむは目を細める。
「ど、どこ!?」
あむは身体を起こし、キョロキョロしながら言う。
「あ! あむちゃん!」
あむの顔を覗き込む少女の姿があった。
大きさは人間の拳ほど。濃いピンクの髪をサイドテールにし、頭には大きなハート形の飾りがついたサンバイザーを被る。
そして赤形のチア・リーダーを連想させるような服を着ている。
「ラ、ラン・・・・・・」
ランは見てわかる通り人間ではない。
『しゅごキャラ』と言う不思議な生き物だ。
某モンスターではないので注意。
『しゅごキャラ』は、一言で言えばなりたい自分が形になったものである。
人間ならば性格を変えたいと思ったことがあると思う。例えば運動が得意になりたい、明るくなりたい、もっとかわいくなりたい・・・・・・等々思いつかないくらいある。『しゅごキャラ』はその願いが目に見えるような形で現れたものなのだ。
「ここどこ?」
あむは身体を起こす。
ザーと身体中から砂が落ちる音が聞こえた。
どうやら本当に砂の上に寝ていたらしい。
辺りを見渡すと、見渡す限り灰褐色の砂ばかり。ぐるりと頭を回転させても、どこまでも砂は広がっていた。
「砂漠じゃない?」
「いや、それはわかるけど」
問題なのはどうして自分が砂漠にいるかだ。あむは、頭の中でいままで起きたことを思い出していた。
変な夢を見て、それから、それから・・・・・・
”「たすけて。あのせかいを。じゅんびはしてあげるから」”
夢の言葉が脳裏に蘇る。あむははっとした。
「そうだ。あいつよ! 夢の声のやつ」
砂漠に放り出したのは、夢の声の主に違いない。あむはそいつを探そうと考え、砂漠の中に一歩踏み出した。
「ちょ、ちょっと」
ランが慌ててあむの前に回り込む。するとあむは思い切り怒鳴った。
「ラン!」
一瞬ひるんだように見えたランだったが、負けじと言葉を継ぎ返す。
「お、落ち着いてあむちゃん! この砂漠の中をどうやって探すの!?」
「えっと」
あむは顔を伏せた。そしてうんうん唸り始める。
「ほら。やっぱり」
ランが呆れの成分が混じったため息を吐き出す。ランの言葉にあむは、返す言葉が見つからない。そのまま黙り込んでしまった。
「あ」
黙り込んで下を見ていたあむは、砂の中に何かが埋もれているのを見つけた。埋もれている物体の黒い部分が、少しだけ砂から顔を出している。
「これって……」
あむは地面にしゃがみこんだ。そしてまさかと思いつつ黒い物体の上にある砂を手で払っていく。日光に長く当たっている砂はとても熱く、焼けたフライパンに手を突っ込んでいる気分だ。しかし熱さに耐えながら、あむは砂をはたいて行った。
「あむちゃん! これって学校の鞄だよね?」
砂まみれになっているのは、あむが通学用に使っている鞄であった。中学生が通学に使うような、スクールバッグである。
ある程度の砂が取れた所で、あむは鞄を持ちあげて見る。昨日何も入れていないはずなのに、ずっしりとした重い感触がする。
「なんで重いんだろ」
鞄を地面にいったん下ろし、開けてみる。と、そこには様々なものが収められていた。水が入ったペットボトルが数本とそれと同じ大きさの銀の缶。外には”携帯食料”とプリントされたラベルが貼られている。それらが鞄の中に入るだけ入れられていた。隙間なくびっちりときれいに揃えられていた。
「え? こんなのあたし入れてない。もしかしてこれが夢で言っていた準備ってやつかな?」
タダの夢はいよいよ現実味を帯びてきた。どうやら立ち止まっていることは許されないようだ。
「たすけて、あの世界を……」
あむは夢の言葉をなんとなく呟いてみた。その言葉の主の真意はまだわからない。でも、何か理由があって助けを求めてきたのだ。どっちにしろそいつを捕まえないとモトの世界に戻ることも出来ないことは目に見えている。
「ラン、いこっか」
「どこに?」
「あそこ」
あむが砂漠の向こう側をまっすぐ指差した。そこには小さく、黒い四角の集まりがうっすらと見えている。
「すっご〜い! 町だ!」
町に砂交じりの風が吹き抜けていく。そんな中で、ランは声を上げてキャキャっとはしゃぐ。本当に能天気なしゅごキャラだ。
あむとランは砂漠から見えた町へと来ていた。そこは全く知らない町だった。道路はレンガで舗装され、立ち並ぶ家々もレンガ造り。まるでアフリカの国に来てしまったかのようだ。道行く人々の服装は、長いシャツに長いズボン。多分強い日差しを防ぐ為なのだろう。
今歩いているのは円形状の広場だ。中央には噴水があり、多くの人々が行きかっている。
「う〜……砂漠の中歩いたから、靴の中が砂だらけだし」
あむは立ち止まると建物の壁に片手をつき、片方の学生靴を脱いだ。ひっくり返すとジャーと砂が、蛇口をひねった水道のように出てきた。同じ要領で反対側も砂を靴から追い出す。
「うわぁ! あむちゃんは砂だらけだね」
しゅごキャラは地面に足をついていない。いつもあむの肩の辺りを飛んで——いや浮いているのだ。だから砂などは無縁のようだ。
「あんたは浮いてるからでしょ」
「えへへ」
ランに不満をぶつけながら、あむは靴を履きなおす。町の中に砂漠の砂はさすがにない。それで不快感から開放されると思うと、あむはほっとした。
「でも暑いな〜シャワーとかないのかな」
あむは汗をぬぐいながら言った。
砂漠の中で強い日差しを受けてきたあむの全身は、すっかり汗でびっしょりになってしまっている。額に桜色の髪がべっとりと張り付いてる。
「しっかし服もなんで制服になるかな」
さっき気づいた。自分の制服はパジャマではなく、制服であると言うことに。
白いワイシャツの上に、黒いジャケット。スカートは赤と黒のタータン柄で、膝上まである。そこに学生靴…・・・といつもと変わらない格好。でもこの町の人々にとっては珍しい格好らしい。ごくたまにだが、すれ違いざまに視線を感じることがある。その視線にたじろぎながら、あむは歩いているのだ。
「シャワーはないけど食べ物屋ならあるよ?」
ふいに前方にスタンドが見えてきた。木彫りのカウンターの前に人々が座れるように、小さな円形の椅子が数十個近く置かれている。今は昼時ではないのか、ポツポツ見える程度だ。
「あ〜そういえば朝ごはんまだじゃん」
その時タイミングよくあむのお腹が音を立てた。ランが声を立てて笑い出す。
「あむちゃんのお腹って素直だね!」
「う……」
いつもなら怒鳴り返すところだが、空腹でやるきが起きない。朝……と言っても今何時かわからないが——目が覚めてからあむは何も食べていない。いい加減食べないと餓死してしまうだろう。
「食べないと死ぬし……あそこで何か食べよっか」
あむは脱兎のごとく店へと駆け出していた。
- Re: しゅごキャラ×鋼の錬金術師〜あむの旅〜 ( No.3 )
- 日時: 2010/01/19 17:37
- 名前: ルミカ ◆rbfwpZl7v6 (ID: 9FUTKoq7)
「いらっしゃい」
店に着くなり、エプロンをした男が笑顔で出迎えてくれた。ここの地方は日差しが強いからか、肌の色があむよりも黒っぽい。
「そこに座ってくれよ」
男に指示された場所は中央よりの場所だった。あむはそこに腰かけ、体を伸ばしながら一気に息を吐く。
「あ〜疲れた……」
「お疲れ様だな。何にするかい?」
「えっと……これ何ですか?」
あむは、ロープで垂れているものを指して尋ねる。
見た目は川魚に似ている。しかしそこからは手と足が生え、全身は墨のように黒い。そして身体全体の皮膚は水分が失われてしまっている。
「お嬢ちゃん『スナイモリ』を知らんのかい。このリオールの名物だよ」
「イ、イモリ」
イモリのような爬虫類が大嫌いなあむは、その姿を想像をしただけで吐き気が起こってきた。そしてそのそれを払うかのようにブンブン、と首を数回大きく振った。聞かなきゃよかった、と心の中で後悔する。
「じゃあ普通のものをください。後飲み物は水で」
「あいよ」
そう言うと男はカウンターの下で作業を始めた。かなり手早く食べ物を皿に乗せ、あむの目の前に置いた。変なものが出てくるかと思ったが、普通に食べられそうなものが出てきてあむはほっとした。
「いっただきま……」
両手を合わせいただきます、と言いかけた時だった。ドスンと物が当たる音がして、続いてガシャンと何かが割れる音。親父があー! と非難の声を上げながら、カウンターから乗り出す。客たちもどよめいている。振り返ると、ラジオがきれいに割れていた。
その近くに青銅色の鎧が立っていて、申し訳なそうにしているから、こいつが壊したに違いない。どうやら席から立ち上げる時に上のひさしにぶつかり、落としてしまったようだ。
「お客さん! 困るな〜だいたいそんな格好で歩いているから……」
文句を続けようとする店の男を、少年の手がさえぎった。金髪を三つ編みにし、赤いコートをまとっている少年。小柄でその顔つきは結構生意気そうだ。金の瞳は全然反省の色を浮かべていない。
「まあ待ってって。すぐに直すから」
「直すって?」
店の男が腕を組んで言う。
その横で鎧はどこからかチョークを取り出し、壊れたラジオの周りに複雑な図形を描き始めた。やがて完成すると、一声。
「じゃいっきま〜す!」
その瞬間空気が震えた。稲妻に似た白い光がバチバチっと発生し、皆の視界を白に染めていく。やがて光が収まった時には、ラジオが元に戻っていた。コードを挿したままなので、なにやら声が聞こえてくる。
「驚いた! あんた奇跡の術が使えるのかい!?」
「う、うそ…・・・」
あむは目の前の光景を呆然と見つめていた。何でラジオが直ったのだろう? 変な図形を描くだけで直るなんて聞いたことがない。やっぱりここは異世界なのか……と改めて痛感させられる。
「奇跡の術? これ錬金術ですよ?」
「エルリック兄弟って言えば、結構名が通っているんだけどね」
その瞬間客の一人が声を発した。
「エルリック兄弟? 確か兄が国家錬金術師の」
そして別の客がその言葉を継ぐ。
「『鋼の錬金術師』! エドワード・エルリック!」
その言葉を合図にしたかのように、客たちは一斉に鎧を円状に取り囲む。あむは何のことか分からず、店の男に尋ねる。
「国家錬金術師って何ですか・・・・・・」
「国家錬金術師は、国の試験を通った錬金術師のことさ。その試験ってのが難しくてね。全国でも200人位しかいないって聞くよ」
でも錬金術がわからないあむは、質問をさらに続ける。
「錬金術って」
「錬金術は物質を理解し、分解し、再構築する科学技術さ」
少年があむの方に歩み寄りながら言ってくれた。しかし辞書のような解説にあむはさらにこんがらがるだけであった。少年は苦笑いを浮かべる。
「わかりずらかったか? まあ物質を変化させる術っていえばわかるか? 例えば水を錬金術を使うと氷にできるんだぜ」
「うん。それならなんとなく……」
すると少年はにっこりと笑い、広場の方に駆け出してしまった。それを客に囲まれていた鎧が慌てて追いかけていく。
「兄さん! まってよ!」
その姿を目で追いながら、あむは自分の足に何かが当たったのを感じた。目をやると、銀の時計が落ちていた。
「あれ」
あむはしゃがみ込み、足に当たった時計を拾い上げた。それからまじまじと見つめてみる。
中々しゃれた懐中時計だ。銀色で日の光を浴びて、静かに輝く様子はどこか月を思わせる。
表の蓋の部分には細かい細工が施されている。ライオンを思わせる生き物が中央に大きく浮き彫りされ、その後ろには、五亡星。そして下半分はハートの形がいくつもつながり、鎖のようになっている模様が半円にそりながら描かれている。
「それ銀時計じゃないか……!」
あむの左横の客が裏返った声で言った。そんな声で言われるのであむは少しびっくりした調子で返す。
「ぎ、銀時計?」
「ああ」
今度はあむの右横の客が話し込んでくる。
「国家錬金術師の証『銀時計』……まあ国家錬金術師だということを示してくれる身分証のようなものだ」
「へぇ〜」
改めて覗き込むが、あむにとってはただの時計だ。しかし、ん?と思う。
「えぇぇえええええ!?」
突如あむの黄色い声が辺りに響く。カウンターの後ろのビンが軋む。
「こ、これあのエドワードって人の大切なものなんじゃ」
「確かに」
周りの客たちが一斉にどよめき始め、あむの手の中にある銀時計へと視線を向ける。あむは自分が見つめられているようで何だか恥ずかしくなった。頬が紅潮する。
「これどうすればいいんでしょう?」
「お嬢ちゃんが届けてあげればいいんだよ」
客たちが笑顔で言う。
「へ? なんであたしが届けるんですか?」
あむが問いかけると客たちは蜘蛛の子を散らすように一斉に、四方八方へ逃げ始めた。仕事が、これから用事が等と適当な言い訳をしながら。
「昼代タダにしてあげるからさ? な、いいだろ?」
しまいには店の親父まで。片目をウインクさせ、茶目っ気たっぷりに言った。しかしその顔には面倒なことには関りたくないとデカデカと書かれている。
あむはしかめっ面をすると、黙々と遅い朝食にありつき始めた。騒動のうちにすっかり冷めてしまっていたが、それはあむのお腹を確実に満たして行った。
「いたた」
強い日差しの中、あむは顔を擦った。
午後になり日差しはますます強くなった。おかげで日光に攻撃された肌は赤くなり、ひりひりとして痛む。今は日陰を歩いているので幾分かましだが、照りつける日差しは容赦ない。
「大丈夫? あむちゃん?」
そう言うランは、早くも真っ黒だ。泥人形がそのまま動いたらこんな感じになるだろう。肌の色はすっかり日焼けしてしまい、この町の人々と変わらないくらい。だが当の本人はそのことに気づいていないらしく、平然としたままである。肌が焼ける痛みも感じないらしい。
「ここは日陰だからね」
あむとランが歩いているのは住宅街だ。石造りの家々が並木のように左右に広がる。ただどこからも人の気配がしない。風が通り抜ける音だけがする。
「それにしてもエドワードさんとアルフォンスさん……こっちに本当に来たのかな?」
店の親父に言われたとおりに来たのだが、二人の姿は見当たらない。
「もしかしてこの先かな?」
*
それは突然目の前に現れた。白く大きな神殿。支える四つの柱は、天に届きそうなほど高い。まるで空を支えているかのよう。そして神殿を守るかのように、大きな杖を持った男の石造が柱にくっつくように配置されている。何だか成金趣味だと思うのは、あむが田舎ものだからだろうか。
神殿の前は広場になっていて、そこは多くの群集で埋め尽くされていた。住宅街に人がいなかったのは、ここに来ていたからだろう。
「この地に生ける神の子らよ。祈り信じよ、されば救われん」
遠くから老人のしわがれた声がする。それを人々は静かに聞いている。
「太陽神レトは汝らの足元を照らす。見よ。主はその御座から降って来られ、汝らをその諸々の罪から救う。私は太陽神の代理人にして、汝らが父」
「あ〜もうっ」
あむは人々を強引に押しのけながら、エルリック兄弟を探していた。弟のほうは鎧だからすぐに見つかるだろうと高をくくっていたが、中々見つからない。
そして教主様の有難いお言葉は、かえってあむをイライラさせている。何となくだが好きになれないのだ。
どうしてみんなここまで信じるんだろう、とあむは口に出さずに思う。
「あむちゃん、もしかして建物の中なんじゃない?」
「あ、そうかも」
あむは人の輪を抜けると、神殿の中へと入る道を探す。
すぐに『入り口はこちら』と書かれているプレートが見つかった。そして中へと足を踏み入れる。
——中で何が起きているのかもわからずに。
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