二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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バトテニ-If you can become happy-
日時: 2010/02/14 11:37
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

亮です。 
こんにちは、または初めまして。
初めましての人は、是非トモダチになってくださいね。
もう1つ、−無駄な感情−っていうの書いているんですけど・・・
そっちのデータがほとんど消えちゃったので立て直し、と言うわけです(涙)

ちょっと怖くて、でも泣けちゃうような小説を目指しています!

応援ヨロシクです。
では、どうぞ。





何処にいても、キミのことを思っている。
何をしていても、キミのことだけは忘れない。

If you can become happy.

俺は精一杯、キミの幸せを祈ろう。

俺たちの太陽だったキミへ。
キミの仲間だった俺たちより。

今を、大切にしてください。


      


【注意事項】 >>1
【参加者名簿】 >>2

【序章】 >>3>>4>>5>>6>>7>>8>>9

【一章】 >>10>>11>>12>>13>>14>>15 

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Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.13 )
日時: 2010/02/10 18:02
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)


 10 取り戻す




跡部は、香澄を抱きしめた。
もちろん、香澄は抵抗した。

「あ、とべさん? 離してください! やめて・・・」(香澄)

香澄の言葉には応えず、跡部はきつく、香澄を抱きしめる。
ただ、思い出して欲しかった。
人を信じる気持ちを。
この世界で、まだ何も経験していない俺には、香澄の気持ちを理解するのは難しい。
だけど、信じることを忘れ、疑うばかりでは悲しいだけ。
そして、疑いはやがて憎しみに変わり、人も変える。
香澄が、変わってしまうその前に。
取り戻して欲しい。 心を。

「跡部さん・・・」(香澄)

始めは抵抗していた香澄も、徐々に、その温かさに安心を覚える。
黙って、跡部の肩に頬を埋めた。

温かい。
人って、こんなにも温かかったんだ。
凍り付いてしまった心が溶けていく。

この人のことを信じたい。
この人と同じように温かい人を、信じたい。
信じる気持ちを、失いたくない。
自分を、失いたくない。

“信じられる皆のためなら、自分の命を省みない”

あの決意を、もう1度。

どれほど時間が経っただろうか。
泣いていた香澄は泣きやみ、落ち着きを取り戻した。
昼から始まったゲームだが、もう夕暮れだ。

「落ち着いたか?」(跡部)

それまできつく抱きしめていた跡部も、それを緩め、香澄の顔を見る。
まだ、悲しみからは逃れられない。
だが、前を向いている。

「ありがとうございました。 跡部さん。 大丈夫です」(香澄)

強くなりますから。
愚かな自分は、捨てますから。

再び、その瞳に輝きが戻る。
そして、香澄ははにかむ。

「そうか・・・」(跡部)

跡部も、安心したようにはにかんだ。

これで、香澄の心は、変わっていないことが確認できた。
それと同時に、コイツが1人では崩れてしまうかもしれない。
そう感じた。
強くなるには、時間が掛かる。
きっと、俺自身も。
まだ、弱い。

「側にいてやるよ」(跡部)

強くなるから。

大切な人を、この手で守るために。


もう1度、香澄を抱きしめる。
香澄も、抵抗なんてしなかった。





Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.14 )
日時: 2010/02/11 18:22
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 11 最初の別れ




香澄と跡部は、その場にとどまることは止めた。
ここは、香澄にとっての“最初の別れ”の場所だ。
「場所を変えよう」、跡部がそう言い出した。

「海堂・・・」(香澄)

香澄は、おそらくもう息をしていないだろう海堂の手を取った。
流れ出る血。
もう、死んでいる。

「乾先輩・・・」(香澄)

そして振り返り、乾のほうも見た。
悲しい、悲しい、別れ。
裏切られた悲しみでいっぱいだったけど、今は、別れる悲しみで胸は満たされている。
違う人のように、変わってしまった乾。
その裏には、どんな葛藤があったのか。
もう、何も分からないけれど。

「さようなら・・・」(香澄)

そう簡単には強くなれない、人間の心。
香澄は再び涙を流した。
跡部も、後味の良くない表情だ。
それでも、立ち止まったりしない。
何処へ向かえばいいかなんて、分からないけれど。

「行くぞ」(跡部)
「はい」(香澄)

この人を信じよう。
そう決めた。



歩いていくと、川が見えた。
ここは、森の何処なのか。
地図を見ても、イマイチ分からない。

「これじゃ、いけねーなァ、いけねーよ」(桃)

自分の頭を、クシャクシャっといじる。
誰かに会いたい気もするし、会うのが怖いというのも少しある。
生き残りたい。 こんなコトで死にたくない。
だけど、誰かを殺すなんて、絶対にイヤだ。
自分の気持ちの整理が出来ない。
桃は、なかなか最初の一歩を踏み出せずにいた。

草の茂みをかき分け、川に出る。
そこには、河村がいた。

「タカさん!」(桃)
「桃!」(河村)

川の畔に座っていたのは、紛れもなく河村。
他には、誰にもいない。
桃は安心し、その隣へ行って座った。

「良かった、生きてたんだね。 桃」(河村)
「そりゃ・・・簡単には死ねないッスよ」(桃)
「そうだね」(河村)

穏やかな河村。
疑うトコロなんて、1つもないのに。
胸に広がるのは、疑いの感情。

「桃? 大丈夫?」(河村)
「え、大丈夫ッスよ」(桃)

信じています。
だから、答えてください。

「タカさん・・・」(桃)
「ん?」(河村)

息を吸う。
どうか、予想通りで有りますように。

「乗って、無いですよね?」(桃)

その言葉に、河村は傷ついたような表情をした。

「・・・俺ってさ、そんなに信用無かった?」(河村)
「え?」(桃)
「イヤ、乗っているように見えるのかなーと思って」(河村)

と、言うことは。

「乗ってないんですか?!」(桃)
「当たり前じゃないか! 何言ってるんだよ、桃」(河村)
「そうか、そうッスよね」(桃)

桃は笑った。
変わっていない、先輩。
何もかも、疑うコトなんて無い。

河村は、桃の変化に気がついていた。
そして自分も、この状況について行けてはいなかった。
体力面でも、精神面でも、桃は自分より勝っている。
だが、桃は動揺を隠せずにいる。

「桃・・・ 香澄ちゃんには、会えたかい?」(河村)

河村は、おそらく桃の一番気がかりなことを口にした。



Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.15 )
日時: 2010/02/12 18:37
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 12 守りたいモノ




桃は、その言葉に反応し、河村のほうを見る。

「いえ。 会えてないです」(桃)
「そっか・・・」(河村)

心配だよな。

「無事だと、信じてるんスけどね。 どうしても、心配です」(桃)

香澄は無事だ、そう胸を張って言えない自分に腹が立つ。
情けない。
仲間なら、信じてやれよ。

「そんなもんだよ、桃。 俺も、桃に会うまでは、ずっと心配してた」(河村)

“心配してた”
過去形にしたが、本当は、会ってからの方が心配でたまらなくなった。
こんなに、不安そうな桃は、初めてな気がして。

「心配じゃないほうが、おかしいよ」(河村)

まともな人間なら。
仲間のことを思うのは当然で。
最期の瞬間まで、仲間を信じ続けるのも当然で。

「心配はしない信じるだけって、当たり前だったのにな」(河村)

そんなの、テニスだったら簡単に出来るのに。
試合中だったら、心配なんてしない。
だって、信じているから。
それが、当たり前だったのに。

「そうですね・・・」(桃)

出来ていたことが、出来ない。

「どうする? 香澄ちゃんを探す?」(河村)
「はい。 やっぱり、会いたいッスから」(桃)

桃ははにかむ。
香澄ちゃんと再会するまでは、桃の手を汚すことはさせない。

「俺も、協力するよ」(河村)

全力で、援護する。

そんな河村の思いに、桃は気がつけなくて。

「ありがとーございます」(桃)

“援護する”これが、何を意味するのか。
桃にはまだ、分からない。

「取りあえず、隠れながら進もうか」(河村)

優しい笑顔が、消えてしまう。



桃と河村は、川に沿って歩いた。
隣には草が茂っていて、いざとなれば隠れられる。

「大丈夫か? 桃」(河村)
「へーきッス!」(桃)

河村が先を歩き、時々後ろを振り返る。
その状態でずっと進んでいった。

しばらくすると、森から抜けられた。
だからと言って、何があるワケでもなく、海が広がっているだけだった。
舟も何もない。 陸も見えない。
此処は本当に、“BR法”のための島なのだ。
10年ほど前には、此処で、自分たちと同じように苦しみながら死んでいった人が居る。

「海が、キレイッスね」(桃)
「そうだね」(河村)

ふと振り返ると、森の反対側に大きな塔が見えた。
桃は地図を広げ、塔の位置と施設名を調べる。

「あれは、大人達がいるトコロ・・・見たいッスね」(桃)

指を指しながら、河村に伝える。
桃の指の先を、河村も見た。

「あそこに、竜崎先生が・・・」(河村)

言いかけて、言葉をつまらせる。
あの悲劇が、頭の中でリピートされる。

そんな感傷に浸っていたときだった。
どこからともなく、弓が飛んでくる。

「桃ッ!!」(河村)
「え?」(桃)

河村は、咄嗟に桃をかばい、倒れる。
ガザガザと、茂みから音がした。

「誰だッ?!」(桃)

大声を張り上げる。
すると、1人の男が出てきた。



「やるねー、2人でかばい合うなんてさ」



桃の、“最初の後悔”の始まりだった。





Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.16 )
日時: 2010/02/13 18:02
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)

 13 最初の後悔




出てきたのは、氷帝学園の滝萩ノ介。
手には、弓と矢が握られている。
河村は、起きあがり桃の前に立つ。

「タカさん・・・?」(桃)

絶対に、香澄ちゃんに会わせてあげるから。
“援護する”そう決めたんだ。

「助け合うんだね、2人は」(滝)
「そうだ。 でも、キミの相手は俺だよ」(河村)
「タカさん?!」(桃)

振り向いたタカさんは、笑っていた。
桃は、既に泣きそうだというのに。
河村の言っていることの意味が、痛いほど分かるんだ。

「桃、逃げろ」(河村)

ほら、思った通り。

「嫌ッスよ、俺も戦います」(桃)

失うのは、嫌だ。

「桃は、香澄ちゃんに会いに行って。 香澄ちゃんだって、早く会いたいだろ」(河村)
「俺だけ会ったって、意味無いッスよ! 一緒に逃げましょうよ」(桃)

今なら、まだ間に合う。
逃げよう、先輩。


「いや・・・ 俺は残るよ。 ここで戦う」(河村)


何で?

「ダメです、先輩!」(桃)
「桃、早く逃げろ」(河村)

どうしてッスか?

「先輩・・・ッ」(桃)

河村の意志は変わらない。
逃げたところで、相手の武器は弓矢。
後ろから狙われる。
それなら、近距離戦で片づけよう。

それで、命を落としたとしても。
後輩を守れて死ぬなら。


「死ぬと決まったワケじゃないけど・・・ 桃を守って死ぬなら、本望だよ」(河村)


その言葉に、もう刃向かう言葉なんて無くて。
一緒に戦いたい、という気持ちの中に、逃げたい、という気持ちも混ざっていて。

「速く逃げろ」(河村)

足が、動き出していた。

「待ってます、先輩!」(桃)

すいません、すいません、すいません。
俺は、卑怯です。 先輩。

「頑張れ、桃」(河村)

それが、最期だった。


「さァ、戯れは終わった?」(滝)
「ん? まァね」(河村)

「始めるよ」(滝)


どんなに後悔しても、しきれない。




Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.17 )
日時: 2010/04/04 19:15
名前: 亮 (ID: nWdgpISF)

14 本望



守りたいモノがある。

俺と歩んでくれた仲間。
歩ませてくれた仲間。
こんな俺を、必要としてくれた、最初で最後の、大切な仲間。



大好きだよ、皆。



「河村、お前はここで俺が殺すよ」(滝)
「殺せるモノなら」(河村)

守るよ、桃。 お前たちを。

「死ね」(滝)

ただでは、死ねない。 死にたくない。
俺は、コイツをここで食い止める。

「死なない。 キミを止める」(河村)

滝が、弓を引く。




桃は、ただ、進めばいい。
キミらしさを、失わず。 進めばいい。
彼女の元へ。



「香澄、香澄ぃ!!」(桃)

桃は、森の中で声を張り上げる。
後悔で、押しつぶされそうな胸を、必死で支えながら。

「何処だよ、何処にいるんだよ!」(桃)

いらだちながら、走る。
河村の笑顔が、頭から離れない。

きっと、もう二度と、見ることはない。

「・・・ッ」(桃)

最低だよ、俺。
結局、自分を優先させて。
死ぬのが、香澄と会えなくなるのが。

どうしても、怖い。

馬鹿じゃねェの。
香澄や、皆と会いたいのは、自分だけじゃない。
きっと、タカさんだって。
叶うなら、もう1度。



皆で—————————————————————



考えても、仕方ない。
まだ、タカさんが死ぬ、そう決まったワケじゃない。
信じろ。
先輩を、信じろ。
もう、自分にはそれしか出来ない。

「クッソォォォ!」(桃)

叫びながら、再び走る。
彼女を捜しに。
桃は、ただひたすら、森の中を駆けた。



「香澄、水飲むか?」(跡部)

桃が走っている川沿いで、香澄と跡部はしばしお休息。
跡部のさりげない気遣いが、香澄は嬉しかった。
跡部とまともに話すのは初めてで、この人のことをほとんど知らなかった。
だけど、今、この状況で、他人にここまで気を遣える彼は、信頼できる。

「はい、ありがとうございます」(香澄)

出来れば、もっと違う形で、彼の良いところを知りたかった。


「誰かを殺す気にもなれねェが、このまま死ぬのも気にくわねェ」(跡部)


跡部は、呟く。
香澄は、まだ自分の気持ちの整理が出来ていない。
それは、跡部も同じで。
“生きたい”か“死にたいか”。
答えは1つ。
だけど、決まらない。 決めたくない。
そして、出来るなら、決めるときまでに、自分が自分であるときに、大切な人と会っておきたい。

「跡部さん」(香澄)

香澄は、遠慮がちに跡部に話しかける。

「何だ?」(跡部)

跡部は、河を見たまま、答える。


「氷帝の皆さんに、会わなくてもいいんですか?」(香澄)


彼の、“大切な人たち”。
会いたいのなら、自分の存在は邪魔なモノだろう。

保留


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