二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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仮面ライダーW Jのライダー/裁きを受けろ
日時: 2010/08/16 15:29
名前: sunbell (ID: wgp3kh6n)

プロローグ「逃げるT/秒殺」


風都——


「ハッ、ハッ、ハッ」

その男は、雨の中を必死で走っていた。
あまりの豪雨は男の視界を狭め、極小の水の弾丸を降らせ、地面を濡らし、彼の走りを阻害していた。
だが、男はそんなことなど気にせずに走り続ける。
正確には、逃げ続ける。
彼は今、追われているのだ。

「なんだってんだよ、くそっ」

悪態をつきながらも、その表情は焦燥に満ちている。
しばらく走って、振り切れそうに無いと判断した男は、開き直って立ち止まる。

「こうなったら仕方ねぇ…!」

男は振り返ると同時に、懐からある物を取り出す。
全長約10センチほどの棒状。巨大なUSBメモリのような形状で、表面にはゴツゴツした「T」の文字がある。
ガイアメモリだ。
人間を異形の超人・ドーパントへと変身させるアイテムである。
男はスイッチを押す。

<タイラント!>

メモリの起動を表す電子音声・ガイアウィスパーが雨に包まれた道路で響く。
男は手にしたタイラントメモリを、喉に現れた生体コネクタへと突き刺す。
タイラントメモリは男の体へ挿入、収納され、同時に変身を発動させる。
男は灰色の鈍い光に包まれて形を変え、光が収まると変身が完了していた。
灰色を基調とした頑丈そうで大柄なボディ。背中には剣山のようなものが出現し、右手には鎌、左手には鉄球が装備してあった。
タイラント・ドーパントである。
ガイアメモリの売人によると、【暴君の記憶】を宿したタイラントメモリは物理的な攻撃力、防御力に特化しており、同系統のメモリにバイオレンスメモリがあるらしい。
異形とはいえ超人になったことで、男の心は安堵と高揚感に包まれた。
これなら相手が誰でも返り討ちだ。
そう思っていたが——


<ジャッジメント!>
「!?」


追ってくる人影から聞こえたガイアウィスパーに、男は動揺する。

(あっちも持ってるのか! ……いや)

今の自分は【暴君】。何者も寄せ付けない自信があった。
しかし、現実は甘くない。
不明瞭な人影が腰の前辺りで手を動かす。
豪雨によって男には聞き取れなかったが、人影は静かに、そして確かに呟いていた。



「変身」

カチャッ。

<ジャッジメント!>



「?」

連続して聞こえるガイアウィスパーに首を傾げるが、突如、人影の周囲に風が巻き起こる。

「まっ、まさか、仮面ライダーか!?」

小さな台風は、人影の周囲の雨粒を薙ぎ払う。
視界が良くなった後に男が目にしたのは、まさしく仮面ライダーだった。

罪人つみびとに——」

そのライダーは武器を構えると、断罪の言葉を口にした。

「——裁きを」



数十秒後、タイラント・ドーパントはメモリブレイクされ、メモリは砕け散った。




「もしもし……」

一方、その様子を物陰で観察している者がいた。
携帯電話に向かって、ある事実が語られる。



「新しい、仮面ライダーです————」



————
はいどうも。sunbellです。
仮面ライダーというかガイアメモリが好きなので書かせていただきます。
一応説明もしますが、本編を見ないと分からない部分があると思います。すみません。


〜ストーリー〜

ある依頼を受け、それに絡んでいたドーパントと対峙するW。しかし謎のドーパントと少年の手によって、メモリブレイクを阻止されてしまう。
少年達を退け、逃がしたドーパントを追うWが見たのは、Wでもアクセルでもない仮面ライダーだった。

一方、園咲家にはある人物が来訪していた。
彼は記録上存在しないとされている男・園咲徒助。
琉兵衛の弟だった。

〜〜

みたいな感じですかね。
では、よろしくお願いします。

Page:1 2



Re: 仮面ライダーW Jのライダー/裁きを受けろ ( No.5 )
日時: 2010/08/16 15:30
名前: sunbell (ID: wgp3kh6n)

園咲邸——

風都の一角で、荘厳な雰囲気を携える豪邸。言わずと知れた園咲家である。
玄関にある吹き抜けの階段から、二人の人物が降りてきていた。

「それで…。!」
「!」

白いスーツの青年・加頭順と、園咲家のゴッドファーザー・園咲琉兵衛だ。
加頭が琉兵衛に話しかけていたようだが、彼らは同時にあるものに気づく。
玄関を入った所の、中央ホールに立つ人物に。

「やあ兄さん。加頭君も」

その男は、実に穏やかな物腰で話しかけた。
ゆったりとした帽子を被った壮年の男で、見上げる顔には人懐こい笑みを浮かべている。
右隣には大きなキャリーケースが置いてあり、左隣には一匹の犬がいた。

「お帰り、徒助」
「お久しぶりです」
「ただいま兄さん。そうだね加頭君」

先程インターホンで彼の帰宅を知っていた二人は、それぞれの感情や表情で出迎えた。
男の名は園咲徒助そのざきあだすけ。琉兵衛の弟だ。
琉兵衛達が階段を降りると、加頭は一言。

「では、私はこれで」
「うむ」

琉兵衛に、そして徒助に一礼すると、玄関口へと一直線に向かう加頭。
相変わらずのポーカーフェイスのまま、徒助の横を通り過ぎた加頭だが、

「ああ、加頭君」

徒助に呼び止められ、振り返る。

「何か?」
「T2(ティーツー)」

徒助の口からその言葉が出た瞬間、加頭は持っていたケースを床に落とした。が、表情に変わりはない。
そんな加頭に、徒助は最初と変わらない、優しげで人懐こい笑みを浮かべたまま口を開いた。

「うまくいってるかい?」
「ご心配なく」

無表情で平然と答えると、加頭はスーツケースを拾い上げ、そのまま邸宅を出て行った。

「加頭君のポーカーフェイスは相変わらずだねぇ」

階段にいる琉兵衛に歩み寄りながら、徒助は笑う。

「はっはっはっ。徒助こそ、その笑顔を崩さないじゃないか」
「ははは、そうだね。あ、紹介しよう」

徒助はそう言うと、隣に佇む犬を紹介し始めた。

「この子は僕の愛犬、ドーベルマンのカルロスだ」

紹介された黒いドーベルマン・カルロスは、一言も発さず、口を閉じたままお辞儀をした。
その左前足には何かの入れ物がベルトで巻かれており、下向きに開く口をボタンで留められていた。
琉兵衛はカルロスの顔、そして前足を一瞥すると、頭を撫でた。

「そうか。よろしくカルロス」
「……」

威厳を保ちつつ優しげな声を掛ける琉兵衛。
カルロスは目を瞑って、琉兵衛の手を受けいれた。

「おとなしいだろう?」

徒助が話しかけた。

「本当にとてもおとなしくてね、鳴いたり吠えたりしないんだ。……あ、”この子の分”も、作ってもらえるかい?」
「もちろん」

ゆったりと琉兵衛は頷いた。

「おお、そうだった」

琉兵衛は思い出したように、手に持っていた物を徒助に見せる。
それは、園咲家が使用する金色の上位ガイアメモリと、そのフィルター、ガイアドライバーだ。

「君に頼まれていたものだ」
「おおぉぉぉ……。ありがとう兄さん!」

徒助は感極まった声を出すと、琉兵衛からドライバーとメモリを受け取る。
そして、ドライバーを装着した。

「では早速」

徒助は「R」のメモリを起動した。

<レイジ!>

メモリをドライバーの挿入口に挿し込むと、徒助はコンパスの針のような形をした無数の赤黒い模様に包まれていった。

Re: 仮面ライダーW Jのライダー/裁きを受けろ ( No.6 )
日時: 2010/07/27 11:33
名前: つぼみ (ID: Heq3a88y)

おおおお・・・。
いきなりわくわくする展開に・・・、続き楽しみにしてますねオリャ(ノ-o-)ノ ┫

Re: 仮面ライダーW Jのライダー/裁きを受けろ ( No.7 )
日時: 2010/08/16 15:30
名前: sunbell (ID: wgp3kh6n)

つぼみさん<<
ありがとうございますw
といっても園咲サイドは一旦終了ですが。

ーーーーーー

???——

ある人物が、出かける支度をしている。
支度を終えたその人物は、机の上に置いてあった物品を手にし、服にしまった。

その内一つは、「J」とかかれたガイアメモリだった。





病院——

「紀本先生ですか?」
「ああ」

翔太郎は件の医者に会うため、その勤務先の病院を尋ねていた。
依頼を受けた後、翔太郎は紀本医師に何かトラブルがあったと推測し、彼の身辺を探ったが、これといったトラブル(借金など)は見られなかった。
その課程で対人関係も調べたが、これといって敵もいない普通の人物らしい。
当然フィリップによる検索も行ったが、絞りきれなかった。
こうなったら本人に事情を聞くしかないと考え、ここへ来た次第である。
要は体当たりだ。

受け付け口で応対する看護士は、一瞬考える仕草をすると、

「少し待ってください。今勤務表を……」

やや申し訳なさそうに言ってカウンターの横からファイルを持ってくる。
ページを開いてそれを読みながら翔太郎の前に戻った。

「あー、そろそろ——」

何か言いかけて、看護士は翔太郎の後ろの様子に気がついた。

「あ。あちらが紀本先生です」
「ん?」

看護士が手で示す先に翔太郎が振り向くと、そこには眼鏡をかけた短髪の男が自動ドアから外に出て行くのが見えた。

「あいつか……。ありがとよ!」



「おいあんた!」
「ん?」

翔太郎が病院の外に出て呼びかけると、紀本は怪訝な表情で振り返った。
四十代前後の男の様子には、どこか疲れた感じがある。

「紀本和也(きもとかずや)だな」
「……そうですが、君は?」

紀本は翔太郎を上から下まで眺めた。

「俺は左翔太郎。探偵だ」
「……」

カッコ良く決める翔太郎に、紀本は目をパチクリさせる。

「あんたが手術を遅らせてる守原香蓮について話がある」
「……」
「……?」

翔太郎が訊いても、紀本は答えなかった。というか、未だ目をパチクリさせてる。

「……どうした?」
「……」

すると、紀本は表情を崩さずに、いきなり翔太郎に詰め寄った。

「!」

開口一番、紀本はとんでもないことを小声で口にする。



「助けてくれ」
「は?」



紀本は表情を変えない。
続けて言う。

「脅されてるんだ……!」
「なに?」

翔太郎は気づいた。
紀本が表情を変えないのは、感情を表に出せないぐらい緊張しているからだと。

「だからあの子の手術もできないんだ」
「脅されてるって……誰にだ?」
「それは……」

答えは向こうからやってきた。
二人が耳にしたのは息を吐く獰猛な音。
同時に聞こえた方向に振り向くと、そこには怪生物が立っていた。
トカゲに似た頭部と、鋭い爪を携えた四肢。特に足の親指に当たる爪は、他のものより大きめで鋭利だ。

「あいつだ……!」
「なるほど。ドーパントか」

紀本は震え上がると、翔太郎の後ろに隠れた。

「お前……命は見逃してやったのに」

ドーパントはそう言って紀本を指さす。

「わ、私は医者だぞ。患者は助けなければならないんだ……!」

震えながらも宣言した紀本に、ドーパントは舌打ちした。
紀本側の理由をだいたい把握した翔太郎は、ダブルドライバーを取り出した。

「ここは俺に任せて、あんたは安全な所に逃げろ」
「あ、ああ」

ドライバーを装着しながら翔太郎が言うと、なぜかすんなりと、紀本はその場を走り去った。

「逃がすか!」

ドーパントがそれを見逃すはずもなく、立っていた場所から走り出す。

「フィリップ!」

翔太郎は紫のメモリを取り出しながら、感覚を共有した相棒に声をかけた。

『オーケー、翔太郎』

遠く離れた鳴海探偵事務所の地下ガレージ。
そこで、フィリップは緑のメモリを起動した。

<サイクロン!>

一方翔太郎も、メモリを起動。

<ジョーカー!>

各々違う場所で、左右対称のポーズを取る。

「『変身!』」

フィリップが緑のサイクロンメモリをドライバーに挿し込むと、それは翔太郎のドライバーへと転送。
送られたメモリを翔太郎はドライバーにセットし、続いて黒紫のジョーカーメモリも、反対側にセットする。
メモリを挿入したドライバーを、両手を交差させ、横に広げるように斜めに倒す。

<サイクロン! ジョーカー!>

突如、翔太郎を中心として竜巻が発生した。

「!」

荒れ狂う強風によって、紀本を追いかけようとしていたドーパントは吹き飛ばされる。
風が止み、ドーパントが体勢を立て直すと、目の前には一人の戦士が佇んでいた。

風都を守るヒーロー・仮面ライダーWである。


「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」






一方、それを見ているある人物が、「Z」と印されたガイアメモリを準備していた。

Re: 仮面ライダーW Jのライダー/裁きを受けろ ( No.8 )
日時: 2010/08/23 19:45
名前: sunbell (ID: wgp3kh6n)



『翔太郎、あのドーパントは?』
「紀本って医者を脅してた奴だ。理由は分からねぇ」

事情を知らないフィリップに、翔太郎は簡潔に説明した。

『なるほど。彼は手術の延期を強要されていたわけか』
「らしいな。とりあえず、ドーパント相手ならすることは一つだ」
『メモリブレイクだね』

メモリブレイク。ドーパント(超人態)を倒すことで、中身の人間を殺さずにメモリを破壊する方法だ。

「邪魔をするなァ!」

トカゲのようなドーパントは、Wに正面から突進する。

「そうは……いかねぇな!」

その攻撃を躱し、背後にキックを見舞う。

「ぐっ!」

前のめりになり倒れたドーパントはしかしすぐ立ち上がり、両手の鋭利な爪で攻撃してくる。
斬り裂き攻撃を避けつつ、Wはドーパントに再び蹴りを見舞う。
一瞬怯むドーパントだが、奴はその場からジャンプした。

「!」

そして上空から、足の一際鋭い爪を引っかけるようにWを蹴った。

「ぐぁっ!」

Wのボディの表面から火花が散る。
どうやら結構なダメージだったらしい。

『翔太郎、あのかぎ爪には要注意だ』
「ああ。なら遠距離で行くぞ!」
『分かった』

Wはドライバーから二つのメモリを抜き取り、新たなメモリを同時に二つ起動。

<ルナ!><トリガー!>

ルナメモリとトリガーメモリによって、Wはサイクロンジョーカーからメモリチェンジする。

<ルナ! トリガー! >

黄色と青のルナトリガーとなる。

「はぁっ!」

出現する銃・トリガーマグナムを持ち、エネルギー弾を数発撃ち放った。
が、ドーパントは俊敏な動きでそれを躱していき、再びジャンプキックを放とうとする。

「当たらない!」
『どうかな?』

嘲るドーパントに対するフィリップの言うとおり、放たれた弾は軌道を変え、飛びかかるドーパントの正面に回り込むように集まった。

「うわぁっ!」

エネルギー弾の勢いで、ドーパントは上空から吹き飛ばされる。

「がっ……」
『翔太郎今だ!』
「ああ!」

Wはドライバーからトリガーメモリを抜き取り、トリガーマグナムに挿入した。

<トリガー! マキシマムドライブ!>

マグナムを変形させ、両手で構える。
敵ドーパントは体勢を立て直そうと立ち上がるが——

「『トリガーフルバースト!!』」

黄色と青のエネルギー弾が、変幻自在に軌道を変えてドーパントを襲う。



しかし、ドーパントは倒れなかった。
更に、マキシマムドライブは当たってさえいない。


「何!?」
『どういうことだ!』

Wは二人とも驚愕するが、敵ドーパントも、同じように驚いていた。
両者の間に割り込むように、円盤状のエネルギー体が浮かんでいた。灰色と紫色が混ざり合って、混沌とした配色だ。
それが消えると、その先に異形の怪人が存在していた。
異形で、もはや人の姿ですらない。
シルクハットを被ったような、スイカ二個分ぐらいの大きさの丸い物体が浮かんでいる。その周りを、大人の頭を軽く握りつぶせる程度の大きさの機械のような手が、六つ回っていた。その指は爪状で、左右対称な長さになっていた。全体像は、さながら太陽か時計盤をイメージする。

「何だあいつは!?」
『ドーパント……なのか?』

ドーパントだとしても異形すぎる。ゾーン・ドーパントと同等、いやそれ以上に。
二人が、そして敵ドーパントが動揺していると、

「まあその通りかな」

軽い感じの声が聞こえた。
目を向けると、いつのまにか異形のドーパントに向かって歩み寄る少年がいた。
見たところまだ十代半ばだろう。髪に緑色のメッシュが入っていた。
笑顔の少年は、異形のドーパントの斜め前に立った。

「あぁ? 誰だ?」

翔太郎が突然の訪問者に対して疑問を投げかけた。
すると少年はお辞儀をし、一方的に喋り始めた。

「初めまして仮面ライダーWよ。僕は糸來唯月(しくるいつき)というとあるどっかの組織に所属する者だ。まあ特に目的も無く君たちの邪魔をするんでよろしく。ああそっちの君。ここは僕が相手するから君の用事を速やかに解決したまえ」

無駄に大仰な口調の少年は、後半部分は動揺していたドーパントに向けて言った。
ドーパントは、どちらにしろこの状況をチャンスだと思ったのか、紀本が逃げた方向へと走り出した。

「あっ、待て!」

Wもそれを追いかけようとするが、少年は着ているコートの内側から何かを取り出した。

「言ったでしょ? 邪魔をすると」

ガイアメモリだ。

「!?」
『こんな子供が!?』

未成年者がガイアメモリを使用する。それはバード・ドーパントの一件以来だ。
少年はメモリを起動した。

<フォレスト!>
「年齢など関係ないさ。安全対策もバッチリ☆」

少年は悪戯っ子のような笑みを浮かべると、躊躇いなく右手の甲に現れたコネクタにメモリを挿した。
植物の幹や蔦のようなものが彼にまとわりつき、その姿を『森の記憶』を再現したフォレスト・ドーパントへと変える。

「さあ、どうするんだヒーロー!」

Re: 仮面ライダーW Jのライダー/裁きを受けろ ( No.9 )
日時: 2010/09/04 21:47
名前: sunbell (ID: wgp3kh6n)

フォレスト・ドーパントは、右手から蔦を伸ばして鞭撃を繰り出してきた。

「くっ!」

迫り来る複数の蔦をWはマグナムからのエネルギー弾で打ち落とすが、それで手一杯になる。

「あぁくそ! このままじゃ紀本が危ねぇ!」
『時間が惜しい。ヒートメモリで一気に片付けよう!』
「分かった!」

相手のメモリは森。いわずとも火が有効なのだ。

「追加追加追加ァ!!」

フォレストは同じ言葉を連呼しながら、その通りに蔦の数を増やしていく。

<ヒート!>
<ヒート! トリガー!>

増え続ける鞭撃に耐えながら、Wはルナメモリとヒートメモリを交換し、すぐにマキシマムドライブを発動する。

<トリガー! マキシマムドライブ!>
「『トリガーエクスプロージョン!』」

両手で構えたトリガーマグナムから、とてつもない勢いで豪炎が放射された。

「のわ!? くそっ!!」

フォレストは両手を掲げ、地面から木の根っこらしきものを出現させる。その鋭利な先端を、Wに向かって放ち、その質量で相殺しようとした。が、所詮は燃えやすい木。ヒートトリガーのマキシマムの前では、それは塵に等しい。
フォレストにマキシマムドライブが直撃した。

「がああぁぁぁ!!」

あまりの高温、高出力に、フォレストは全身を炎上させながら悶える。
しかしそれも数秒。
フォレストは爆発した。
後には、地に倒れ伏す少年と、砕けたフォレストメモリが残された。

「よし、早く紀本を……!」
『あ、翔太郎っ』
「何だよフィリ……。!」

すぐにでも先程のドーパントを追おうとしたWだったが、あることに気がついた。
ルナトリガーのマキシマムを無効化した(?)、異形のドーパントがまだ健在だったのだ。

「ああッ! こいつもいたのか!」

Wはトリガーマグナムを構えるが、ドーパントに反応はない。
それどころか、突如動き出したドーパントは倒れた少年に近寄り、周囲を回転しながら浮遊する手を二つ使って少年の体を掴む。そのまま、建物の向こうに飛び去ってしまった。

「? 何だったんだ……」
『ああ。……それより翔太郎!』
「へ? ……ああそうだ! まだ残ってる!」

Wは近くに置いていたハードボイルダーに跨り、紀本が逃げた方向へと急いだ。



「ハッ、ハッ、ハッ」

紀本は遠くの場所まで走ってきていた。
しかし、その努力をあざ笑うかのように、正面にトカゲ型ドーパントが着地した。

「ひっ!!」
「どうやら……」

ドーパントはかぎ爪を紀本に向け、何やら怒りを込めた口調で言う。

「脅す程度じゃダメらしいな……!」

そのまま紀本に近づいていく。
紀本はあわあわと後退した。

<ジャッジメント!>
「!?」

突如として聞こえるガイアウィスパー。
ドーパントは辺りを見回すが、人影はない。少しでもいた人々は先程逃走している。
Wがメモリをドライバーに挿し込んだ時のような音が一回なり、誰かの声と、再び同じガイアウィスパーが響き渡る。

「変身」
<ジャッジメント!>

またしても小竜巻が巻き起こる。
ドーパントは腕を前にして凌ぐと、ある一点を注視する。
ある一本の木からガイアウィスパーが聞こえ、そこを中心に風が巻き起こったのだ。

「誰だ!」

ドーパントが声を荒げると、それは姿を現した。
木の陰から悠然と歩み出たそれは、仮面ライダーだった。

「罪人に——」

Wではないそのライダーは、持っている武器をドーパントに向け、断罪の言葉を呟いた。

「——裁きを」





「お前も仮面ライダーか!」

ドーパントは謎のライダーを警戒し、紀本を放置してすぐさま戦闘態勢に入る。

「……」

一方、無言のライダーは、右手に持っている長剣の切っ先をドーパントに向けた。

「?」

両者の間には距離がある。
何か特殊な攻撃がくるのだろうかと思っているドーパントだったが、あることに気づいた。
剣の持ち手には引き金のようなものがあり、さらに切っ先には銃口らしきものがあることに。

「!!」

時既に遅し。
ライダーが引き金を引くと、剣先から弾丸が発射された。
散弾銃か何かのようで、ドーパントの体の数カ所から一度に火花が散る。
一度は後退する程度で耐えるも、ライダーは容赦なく引き金を引く。
連続して散弾がドーパントを直撃する。

「があぁぁ!」

無理矢理後退させられ、背中から地面に倒れてしまう。

「……」

無言のライダーは、まるで非情な制裁者のようにドーパントへ歩み寄る。剣先は向けたままだ。
ちなみに、紀本は近くに倒れ込んでいる。

「……」
「くそっ……」

ドーパントは苛立たしげに呟くが、

<サイコキネシス!>

またしても聞き慣れないガイアウィスパーが響き渡った。
これにはライダーも動きを止めて辺りを見回す。
その人物達はすぐに見つかった。
二人組だ。
片方は角刈りの男。手にガイアメモリを持っており、今起動したのはこの男だろう。
もう片方は、ショートヘアを整えた若い美女。襟の高いマントを纏っていた。
二人は並んで状態でライダーに歩いてくる。
途中で、女も懐からガイアメモリを取り出し、起動した。

<スパイダー!>

それを合図に、男は左手の平に現れたコネクタにメモリを挿す。
男の姿が金色の光で覆われている間に、女は襟を引っ張って右肩を露出させ、そこにあるコネクタにメモリを挿す。
女が鈍い光と蜘蛛の糸に包まれるのと入れ替わりに、男は黄色を基調とした細い怪人、サイコキネシス・ドーパントと姿を変える。
そして、女もスパイダー・ドーパントになった。




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