二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- LILIN
- 日時: 2011/12/09 00:48
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: 1kkgi9CM)
ロサンゼルス(Los Anjeles)はカルフォルニア州の一部だそうです……この小説の本来の舞台は本州のナパバレー(←実はテキトーに決めた)だったのですが、確か今のところ小説内では仄めかしはいない様な気がします。
ちなみに、Los はスペイン語の男性冠詞だそうで、ロスの由来はそのまま「天使」という意味だそうです。
……設定おいし過ぎはしませんかw
〜 小説世界観〜
EVAシリーズの開発は日米で検討されていた。しかし、当時の科学ではEVAシリーズ構築の礎をはっきりすることはできなかった。
ちょうど、その時代、アメリカでは数々の異星人目撃情報あり、偶然、米軍事衛星からもその姿はとらえたれた。
その現場は南アメリカのアマゾン湿地帯。ただちにアメリカは例の異星人確保のため、軍隊を投入した。
その過程で発見された異星人は後にアダム以来発見されてかった使徒だと判定され、体長が約15メートルもあり、肉眼ではほぼ半透明で月の光でないと輪郭は捉えられないと報告書にかかれた謎に満ちた生命体だった。これに目を光らせたアメリカはこの異星人を上書きしてEVAの礎とし試作機が完成。
そして世界初試作機はアメリカが一足先に開発したと思われた。しかし、相次ぐ実験の失態に、このEVA試作機は学者たちに丸投げされてしまい、ついには試作機のことは極秘とされてきた。
のちにEVA初号機、零号機か日本で開発され、アメリカのEVA試作機はその阻害にならないように、後のEVAの名づけや、非戦闘機の所以を含め、虚数単位を用い“EVAi号機”とされた。
注*)
・基本内容とストーリーは{新世紀エヴァンゲリオン}を参考にしてます。
・本編では新たにEVAi号機が登場←本編オリジナル設定故グーグルで検索しても出てきません(泣
・もちろん、本家の登場人物も抜擢してますよ〜
〜登場人物〜
鳥居 雄 (トリイ スグル)
・15歳の少年。愛読家。
・アメリカ在住の日系人、両親が行方知らず、祖母だと名乗り出た老婆に育てられることになったが……?
・再開発された“EVA_i号機”のパイロット候補生の一人。
驫木 零時 Sanchez (トドロキ レイジ サンチェス)
・ネルフカルフォニア支部戦闘指揮官の好青年
・加減を知らず、頭ごなしや出任せが多いトラブルメーカー
・スグルと同じ境遇にあり、できる限り彼の良き理解者となろうとする。
市井 スミレ (しせい すみれ)
・零時の秘書かつEVA_i号機の開発責任者
・健康管理のため、スグルと同居することに!?
・言動が少しばかり男勝り
Jack Hernandez (ジャック ヘルナンデス)
・スグルと同じくEVAのパイロット候補生となる少年
・スグルのことを新入りと呼ぶが、実は自分もそうだったりしている
・涙もろく、感動巨編では必ずハンカチをご用意
☆以下、エヴァンゲリオンのレギュラーメンバー方々☆
>>1 プロローグ
第一章
>>2キオクノウミ
>>3始まりの末端
>>4願望への案内人
>>5いたずら女の粋な計らい
>>7アブナイ花を摘もう☆
>>8A−11地区
>>9ブレイクファースト
>>10ブレイクファースト2
>>11ブレイクファースト3←NEW!!
>>12QUEEN pece←NEW!!
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- Re: LILIN (スレッド変えて活動再開します ( No.1 )
- 日時: 2011/12/30 19:46
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: TQ0p.V5X)
プロローグ
今日まで、準備はできたんだ。やれる。
真っ暗で、生暖かい液体に満たされてゆく操縦席で。
実験開始前、まるで夏の肝試しに選ばれたようなその空間で冷静に、そんなことを自分に言い聞かせてみたが。席に深々と腰の重心を後ろにして腰かけ、軽く目をつぶる。……どうしてだろうか、この空間に入ってから、本番前にも関わらず大分リラックスしている。
その空間……筒状のカプセル、L.C.Lと呼ばれる液体、極秘に開発された巨大な人造人間。自慢ではないが、これらの中に順応するすべての準備がすでに数十日前からできていた。この実験をどうにかして成功させなけば……と、先ほどコックピットから見下ろせた、ガラス張り通路の科学者たちは言うのだ。
この失敗の先に未来はないから。そこで抜擢されたのが自分なのだから。
なんとしても成功しなければならない。
実践訓練時には体中が好奇心という刺激に埋もれていき、同時に栄誉と武者震いを喚起していた。そんなふうにロマンと興奮を感じる自分はまだ15歳の身なりだけど、こいつに乗るには十分な条件らしい。
しかし、いざ本番となるとボーとしてしまっている。全く意味がないじゃないか。
---------L.C.L注水完了しました。神経回路97%まで接続
----------パイロットコードEパターン、識別完了。心拍数、シンクロ率ともに異常なし
---------OK、そのまま第三段階へ移行。……回線をコードEのみに繋げてくれ。……気分はどうだ?
機内の無線が響く。それを合図にするように機内が蠢き、コックピットも暗闇から解放される。眩まないよう、閉じていた目に少量の光が入るようにして慣れさせる。
気分と言われれば、この冷静な自分が恐ろしく感じることぐらいだ。その旨を伝える。
「……不思議な気分なんだ、サンチェス。妙に落ち着いててさ。自分が自分じゃない。そんな気分なんだ。誰かが俺を見ているような。」
もしくは、自分を俯瞰してみているような------------
「……いやきっと成功させてみせるよ」
少しばかり沈黙が入る。
--------ははっ。逆に、緊張のしすぎが原因じゃないか?
「確かに、昼間からじゃ眠れなかったほどだったさ」
--------この実験は夜間行わなければ色々まずいのさ。勘弁な
「さすが、やり慣れてるよな」
--------……う、うるせぇ!
無線の向こうからにこやかに笑う声がした
--------大丈夫、お前は訓練生の中でもシンクロ率やら体力からなにもかも優秀だったんだ
失敗するはずがない。そういって彼は再び笑ったようだ。
--------システムオールクリア。総員シェルターより退避しました。準備は万全です
---------承知した。現時刻23:52これよりEVA_i号機の有人起動実験……始動
次の瞬間、その空間が呻きだす。稼働のために神経経路を流れる電流によるものらしい。内部器具が点滅し何らかの数値を取っている。どうやらいよいよ実験開始だ。しかし、それでも腕が操縦桿をだらしなく握る。思い通りに体が動かない。
とてもリラックスしている。重苦しい体が今度は眠気に包まれている。体が前かがみに、自然に前へ重心を落として、目が閉じてゆく。
---------第一拘束具、続き第二、第三拘束具解除
---------稼働時のプラグ内圧値および神経パルス値、いまのところ誤差範囲内です
---------シェルター、オープン。誘導班はジオフロント内まで先導。E、まずは現地点よりA−04地点まで歩行してくれ…………どうした、E? おい、答えろ
夢に似ている。何もかも自分が想像している癖に。自分が体験している妄想なのに。他人事のように痛みや責任を感じなくていい世界。友人の導く声がしだいに輪郭を失って、広がり、散漫する。耳にはぼんやりとした音声とでしか認識できない。失敗……その二文字の重さが今はどうしても分からなくなった。なんだってよいのだと思うことにした。ただ眠れれば。この気分からは覚めないのだと。
夢の中で眠るなんて面妖な話だと思うが。
その時、自分にそそぐ光量が一層多くなった。コックピットから入る光、人工の光じゃないことに気付く。白い純白の光に染められ、影となる部分は漆黒の闇のように何も見えない部分と昇華し。ただ、白光が当たる部分しか見えない。
突如、耐え難い眠気に襲われている自分に誰かが寄り添っているのが気配で分かった。ここには自分一人しかいないはずなのだが……誰が居るというのか。
その誰かは手を伸ばす。表情は伺えない。漆黒の影に染まってなって何も見えない。ただ自分に手を伸ばしている……その手を弱弱しい右手で受け取る。握ると柔らかい、光のお蔭かもの凄く白い手。その手に引かれると同時に自分の色も白と黒に統一されていることに気付く。……今ここには輪郭を作るペンの色と漆黒の闇の黒、陽だまりのように暖かい白しか存在しない。他の色は何もない。
☆
事態は芳しくない。
今回執り行ったEVAの稼働実験はこれまでも失敗に終わっていた。
原因のプロセスは常に以下のようなパターンによってなる。
--------i号機依然沈黙、次いでこちらからの信号に応答ありません
---------同機、プログラムが警告サイン発令。システムにロックがかかり究明ができません
--------シンクロ率上昇! 80、90、102、まだまだ上がっていきます!! 安全値を既に突破しています
--------プラグ内圧が減少。同機内の神経パルスおよび神経伝達情報が著しく発達しています。
「そのまま抑え込もうってか。実験中止だ。パイロット救出を最優先事項とし、サルベージ決行」
まず、決まって神経組織が一時的に強化され、パイロットの運動神経から神経情報を流し込み、そいつの脳に働きかけ、動きを封じていた。
---------パイロットに関する保存データがすべて喪失しました。数値が出せない以上、生存状態が把握できません。くそっ! またへそ曲げやがって。
「……まずい。参謀官、最終段階までにあとナンボだ?」
----------あと10〜20分程度。妨害していない訳じゃないけど、ヤローがメインを掌握していて作業が捗らない。
「こちら司令部、誘導班に通達 こちらからの応答はない。そっちは手動でエントリープラグを奪取。なんならL字ペンチで捻じ伏せろ!」
----------今回も力技なのかよ! 了解!
今回も、か。
「やはり。また“取り込まれた”のかね」
隣に来た人物、髭を少し蓄えた彼は既に救出を諦めているようだった。
「副司令、それはまだ言いかねます」
「この現象に直面するのは何回目かね、サンチェス」
「今回含め、5事例目です。内、生存者は」
「そんなことまで聞いてないじゃないか」
「3人です、これはそんなことなんかじゃないんですよ」
「……それでも君は“試す側”にいる。この世にはあの類の化け物に乗れる人間自体ごくわずかなのだからね」
それでもふるいに落とす奴が、あの化け物さ。仇を見るような目で彼はガラスの外の巨体を見つめる。
「恨むべき存在だよ、あれは」
「恨まれるのは私たちの方です」
確かに。彼はそっと宣い、そのまま本部に背を向け歩き出した。
「どこに行くんです? どうせならパイロットの生存を確認なさった方が」
「……今回の責任は私にあるからね。委員会に報告してくるよ」
「助かるかもしれないんです、今回の事はそれで事故で済む」
「“そう”ならなければ、不祥事だよ。五分五分じゃ話にならないだろう」
話を付けてくる。彼はそのまま本部を後にした。
「……舐めんな」
心なしに呟いてから、何事もなかったかのように救出作戦の重要拠点を迎えた。
- Re: LILIN ( No.2 )
- 日時: 2011/08/19 23:20
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: PDV9zhSY)
第一章PART 1
キオクノウミ
10月某日、季節はそろそろ秋と呼ばれてもおかしくない、そんな日頃のこと。
幼い頃、鳥居スグルは地元の海に訪れた。
少年のはしゃぐ声、波の押し寄せては引くあの潮の香りに満ちた音、それ以外目立って耳に入ってくるようなものはなかった。さすがにこの季節になると海水浴に来る人々は居ない。みんな背中を十分黒く焼いてそれで海水浴に行った気分なのにスグルはそれが納得がいかないようなのか、今日は祖母を連れてここに来た。
スグルは一番乗りしようと浜辺まで走った。一緒に連れて来た祖母にこの一番を取られないように。しかし少年が振り向くと、まだ祖母は10メートルくらい後ろをとぼとぼ歩いていた。そのことが気に入らないのかスグルはほっぺを膨らます。
「もう、おばぁちゃ〜ん! 早く早くぅ!! 」
なるべくおっきく。走るのをやめ、スグルはそう意識して祖母に叫んだ。甲高く響く幼い少年の声。波の音に負けず、彼女のもとへその声は届いたはず。はっとしたように気づき、そのまま速度は緩めはしないが返信をしてくる。
「は〜いちょっと待ってね。ほんとうにお前は元気があるわねぇ」
彼女は若干砂浜に足を取られながらも、やっとのことでスグルのもとに足を運ぶ。
まがった腰を押さえながらも、スグルを見ながら目を細めている。
「ふふふ。す〜は〜……海だぁぁぁぁぁ!!!!」
またスグルは叫んだ、海に。波に声がさらわれた。そんなことがおかしいのか今度は思いっきり笑い出す。束の間の幸せをかみしめようとしているようにも聞こえる笑い声だ。
「海だわね、確かに」
「ねぇねぇおばぁちゃん」
スグルが向き直る。
「どうしたの」
「なんで、どうして海はこんなに“赤い”の?」
スグルは目の前に広がる事実のありのままを質問した。同じはずだ、どうして山が大きいのか、どうして空は青いのか、どうして太陽は眩しいのか。そんな類の質問をぶつける。
「さぁ、なんでなんだろうね。いつからか赤いもの。いつかは分からないものだよ
はじめっから赤かったような気がする。そんな気分ねぇ」
祖母はまだ目を細めている。しかし、それはさっきスグルを見つめた時とは明らかに違う。その奥が何かしら儚い思いで塗り替えられていた。
「ただ、ここの海はホントは昼のお空の色だったね」
「へ〜、おばぁちゃん物知り〜!」
「だから今のような色じゃないの。こんな色じゃないのにね」
次に彼女は何かに落胆したかのように顔を少し曇らす。
「なんで赤いのかな……?」
そんな彼女を気にしてスグルは同じような質問を続ける。
「なんでだろうねぇ」
「う〜ん。……そうだ! おばぁちゃん」
何か思いついたのかスグルが祖母に、その得意顔を見せつける。
「なんでか知ってさ。……僕ウミの色を変える偉い人になる!!」
「えぇ?」
「ウニ! ううん、ウミ、ウニ……ん?」
「あはは、それはすごいねぇ」
今度は祖母の方が大笑い。青く澄みきったお空を見つめ、そのまま首を固定する。
「そうかい、そうかい、息子のような子に海賊王になってやる! って真顔で言われた際にはきっとこんな気分になるんだろうねぇ」
「海が青いなら、お空の色頂いちゃおう!」
「それじゃぁ、お空の色がなくなっちゃうじゃないの」
大笑い健在、まるでそのまま幼い少年の屁理屈を誘い出そうかと言うような嘲り。
次の言動はまたどんな奇想なのか期待しているようだ。
「空のお星あるから大丈夫なの!」
少年はそう言って膨れる。
「ほう、そういえばお前は夜が好きだったねぇ。もし昼間でもお星が見えたらお化けが出て……怖い事ばっかだよぉ?」
「う〜、で、でも。晴れてお月様が見えるとき、お家から見えるウミ綺麗だよ」
「さもありなん」
ははは、そう彼女は笑い続ける。決しておかしいんじゃない。ただ少年の言うもっともな意見が素直すぎて笑っている。
「それじゃぁ、お前はお空のお星をすべて見守ることをしなくちゃいけないじゃないか、いつも」
それから笑い疲れたのか、そのまま上向きになった気分の余韻に浸った。
「スグル」
「うん?」
「なんでウミが赤いか。分かったら是非聞かせておくれ」
- Re: LILIN ( No.3 )
- 日時: 2011/12/30 14:43
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: TQ0p.V5X)
第一章PART2
始まりの末端
俺の中の海はそれだけだ。祖母はそれから病を患い、逝ってしまって。もちろん元々両親が蒸発してしまった俺には他に身内は居ない。故にこの海が“家族”と結ばれる唯一の思い出だった。
この後、誰の申し出かは分からないけど孤児院に預けられて、14歳になるまでの7年間を過ごした。おかげで今日まで色々な人に大切にされてきたと思う。家族なんかよりもずっと多くの人にね。まぁ、それから孤児院にこの施設の人物が訪ねてきて……また安息の地から離される結果となったのだけど、それはまたの機会で話すよ。
上記の通りの内容を俺は同じテーブルに座る3人の聞き手に。聞かせるというより、独り言のように伝えた。
時刻は12:00の昼時。社員食堂の窓側席のテーブルに俺たち4人は座っている。
何の変哲もない俺のなりゆきを“先輩”たちは真摯に聞いてくれ、一人は涙を堪えもせず、次いで嗚咽を交える。
そもそもなんでこんな話をし始める羽目になったのか少し整理してみる。確か、一昨日からから新入りとなった俺の自己紹介を兼ねて4人で昼食取ろうという話になって……。
新入りなら何かしら話してみーと言われ、俺の成りの果てを話すことになったんだっけ。
「おぉ!! 新入り! なんて生涯してんだ畜生! 涙がと、止まんねぇ!」
隣に座っている、まさにガキ大将ばりな青年が顔面をくしゃくしゃにしながら俺の思い出に突っ込む。
「生涯って大げさな。これで終わる気ないよヘル」
仕方ないのでそのまま背中を撫でてやることに。いいんだ! いいんだぜ! とヘルナンデスは弁解しながらその手をそっと払った。
「ホント、君って結構ハードな人生してるよ。僕憧れちゃうなぁ」
今度は向かいの席の先輩……ターナーが感想を述べる。彼は胸のあたりで手を組んで目を閉じ、俺の話を自分と置き換えようとしているようだ。すぐに良いもんじゃないことに気付いてもらいたい。
「そうっすかね? 俺としてみれば、皆さんの方が大変そうだけど。」
なんせここに来るほどなんだから。おっと、今の一言は腹に押し込める。
「そんなことないよ。ねぇ、両親がいなくて寂しくも健気に生きるって大変なんだよねぇ」
「はぁ。ま、まぁそうですね……」
どちらの感想も感情の表し方も一抹の不具合がある気がするけど、共感は得られたようでほっとした。
「それだけか? もっと他にも聞かせてくれていいぞ。そこからまさかの某ホラー展開だとか」
その先輩の隣の先輩が……どうにも他の二人とは感じが違う質問をする。
「俺が言うのもどうかと思いますが、文哉さんはもっと人の生涯のハードさを重んじた方が」
「人の成れには多く耳を傾ける。それが武士道に準ずる者の礼儀だと。感じる心の深さよりも量が大事だってこともある。それは君のためでもあることだ」
「はぁ……武士道ですか。勤勉家なことで」
なんだ、あんたマニアか。
ヴォオンン! キ-----------------------ン!
突如、食堂の一角に付けられたスピーカーが狂ったような爆音を吐き散らす。
空気が一斉に振動を誘われ、食堂のほぼ全員がその音量に嘆くように耳をふさぐ。
------------あー アー あー ただいまマイク故障中、耐えろー馬鹿どもー
「いきなりなんすかコレ」
耳をふさいでいるが堪らず、目の前の先輩に助け船を求めた。
「あぁ、また使いだしたの? 三か月前まで連絡用に使われていたんだよ。前々から音が割れすぎてて聞こえないし、雑音はいるし皆迷惑してるんだよね」
「久しぶりに聞いた気がするこんな音質」
-----------金が回らないんだ、仕方ないだろうが
ちょ、聞こえてる〜ぅ!?
「それで。ついこの間、労働団体のお蔭で新しいスピーカーに代える為にねぇ。しばらく職員が持ってるケータイに通信するようになったはずなんだけどねぇ。そういうデジタル的なの嫌う人だから、今しゃべってる人。ちなみに若社長」
「えらい所に就職してしまった!」
--------------正常正常。
いや、今故障中て言いませんでしたか?
--------------諸君!! 14:30より、パイロットコードg、コードy、コードi。上の者は各自プラグスーツに着替え地下3Fにおいて待機するように。以上だ
ブッチッとスイッチが切られた音の後、やっと食堂に喧騒が蘇った。耳を固くふさぎ過ぎたのか何人か聞き直しを要求するも多々ある。
なんて社会的組織なんだろうか。そして何てとこに新入りしてしまったのだろうか。
色々自問したいことは多くあるが、ひとまず今流された情報を確かめたい。
「今の……シンクロテストのメンバーっぽいね」
倒した椅子をもとに戻しながらターナーは冷静に詳細を教えてくれた。
「一気に3人と来たか。もしかしたらこの中で呼ばれた人居るんじゃな〜い?」
席に座り、ターナーは俺たち3人をからかうように見つめ始めた。
すると、すっと手が挙がった人物が一人。
「あ、俺そうっすよ」
ヘルだった。
「うん? そうなんだ。……意外だね」
途端に彼の態度が変わった。
極端に感情を表したりしないけど、その代り、彼の目が緊張で強張った気がした。
妙な空気になってしまったのを不審に感じたのかヘルが俺に目配せしてくる。
「たぶん……俺もっすかね」「え、スグル君も?」
続けざまに驚愕したせいか、瞳は既にある種の関心を押さえつけるかのように、俺とヘルを見つめたまま動かない。そのまま何か言い出さそうとしていようだ。
「スグル君、いいかな」
「「は、はい」」俺とヘルの声が重なる。
「ほら、ラーメンのびてるよ」
「え? ……はい?」
「ツウの中には伸びた方がおいしいって人がいるけどね、そんなの厳禁! コシがあって命なんだよ。一番おいしいのを無駄にしちゃだめだよ」
☆
「全く、プラグスーツ着なれていないからって、これから2時間も時間かけるって行っちゃったけど。文哉」
「しょうがないだろう、あれは唯着るだけではなく、いくつか面倒な過程があったりするしな」
文哉が宥めると、ターナーは椅子の背もたれに踏ん反り返った。
「行儀悪いぞ、イカロス」
「いーのいーの」
軽く返答しながら、ターナーは二人が去った通路側を見つめる。
「……そっか。でもあの二人。随分早くないかな、文哉?」
「そうだな、しかし、司令の考えあってのことだろう。何か早めに伝えておく理由があるのかもしれない」
「金銭的な理由以外でぇ? それとも初めだけでも駒数を揃えておこうと?」
「……舐めてるのか?」
「別に君の兄貴を舐めるつもりはないよ。でも、既に5人いる中で。スグル君やヘルにはどこまで伝えるんだろうって考えていただけ」
「…………お前が思う所も分からぬでもないが、俺たちは何も伝えることはできないだろ。口が軽いのも気を付けろ」
「わかってるよ、だからとっさに誤魔化したじゃん。それに言えないでしょ、あの人以外」
険悪顔で見ら目付けてくる文哉にターナーは微笑みかけた
「頑張ろうよ文哉。あの後輩たちのためにも。もう二度と、あの人が彼らに“犠牲になれ”と言わせないためにも」
- Re: LILIN ( No.4 )
- 日時: 2011/12/31 00:03
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: TQ0p.V5X)
シンクロテストがひと段落ついた頃、またもやあのガラクタ発音器でコードiとコードgの2名は司令部に来いと言われた。……つい二、三日前新入ったばっかりなのだから自重してくれや。場所わかんないし。と思っていたら偶然にも同じく呼び出されたヘルナンデスが道を案内してくれた。
着いた場所は場所は……海賊船の甲板を大舵部分から眺めたようなように、奥に行くにつれ一段下がっていて、ついでに奥の方の配線やサーバー類、モニターが雑多に設けられているのが目に入る。のくせ、そのモニターはとてつもない量の情報をスクロール状に流し続けている。あの人見づらいかもな……つい職員に同情してしまう。しかし、なんといっても一番目を引くのは中央に作られた馬鹿デカい……バーチャルのような、実体がないが触れたら8割方感電死する赤枠のモニター。ハッキリ言って何の仕組みや、そもそも何のためのパーソナル巨大空間なのか不明だ。照明も普段は抑えられているのか少しくらい。その分、ここの不気味さも際立てられるというものだ。
「ようこそ。こちらが当館の作戦司令部。ターゲット捕捉時、米国の国家軍事的事情は全てこちらに移るように法案が改正された。一般には決して出回らない情報だから知らないのも無理はないか。言ってみれば、そーゆう怪しいところから世界的特務機関として扱われている訳が分かるだろう。ちなみにこの国にはもう一つ同じような機関がマンハッタンにもあるんだが指揮権としてはこちらよりは弱い」
左に居る司令、零時さんは挨拶も疎らに、そう言って頬を吊り上げた。
カルフォニア州にもNYすら抜ける部分はいくらでもあるってことさ、と言い放つ。ということはきっとここの広さも世界一なんじゃないかと思ったのかどうかは知らないけど、ヘルナンデスが感嘆する。
「やっぱり、でっけーなぁここは!」
「そうだろうそうだろう」
「核シェルターみてぇだ。ホントあんた。意外に格がある人だ」「意外には余計だ」
零時さんの手刀がヘルの額を手首を使って、なんでやねんする。なんだそれ。
「大阪文化」
……オーサカ?
まぁ、いいや。
確かに核シェルターならアメリカの軍事なんぞ総なめしてしまうのはなんとなく分かる。
しかし、この施設の場所はカルフォニア州の観光地の一角なのだ。世界的にVIPなお役人を守ったところで本命の大統領が黒焦げになってしまうなら何の意味があるのだろうか?
「……軍事って。そんなヤバいところに就職したのか」
はっきり言って二人のはしゃぎっぷりにはついていけない。
発想や見解がついネガティブに触れてしまう。
そんな俺の落胆に寄り添うかのように俺を見ながら驫木さんは、そのまま話を進める。
「まぁ、ここは余りにも機密が多くてな、いくつか大統領にも明かされてない情報も保管されていたりする。最近ではそうだな……火星人」
「おぉすっげー!」
「そうだろ〜。君もそう思ってくれるかな? スグル」
いきなり話題を振られた。……どう答えりゃぁ良いんだよ。
「どうって、君の思う所を聞きたいに決まっているじゃないか」
「……なんか週刊ニートの日常とか思いっきり地球産なのもありそっすね、それ」
「ふふん。世界的にも内密にされていることから憧れの彼女の身体検査の結果すらあるという、もはや。ここは宝島だい」
そんなの二、三個あさったら先進国の飛行機にすら特攻されそーだな。
「そんなのが我々特務機関の生命線となるのだよ」
零時さんはさも詰まんなさそうに溜息した。
既にふれてもないが、あえて言わせて貰う。なぜ聞こえる?
「君は本当に現実的になってしまって」
「現実的も何もプライヴェ—トな内容じゃ?」
「そう、私たちは主にそのような仕事もしている」
俺の疑問符をそのまま踏みつけ、何にもなかったように淡々と彼の口は動く。
前に10歩ほど歩き出た後、デスクワークの職員に何かを指示し、それから俺たちに振り向く。
「本題に入ろう。今日君たちにここに来てもらったのは、うちの業務内容を知ってもらいたいからともう一つ。君たちの訓練が如何に重要か話したい。聞いてくれ」
瞬時に零時さんの表情が強張った。
「最初に。今から話すことはここでは誰でも知っている。もちろん機密だが、外の人間に他言無用というわけじゃない。言ったところで誰も信じないと思うからな。知っている人間はこのことはタブーにしている。知らない人間には是非とも幸せに居てもらいたいからさ。君たちもそうしてやってくれ」「な、何を?」
ヘルが恐る恐る聞く。俺もそれに頷いた。
「そもそも君たちが訓練すべき目標、およびその要因である正体。世間ではモンスターと呼ばれるに可笑しくない生命体。我々はそれらを“使徒”と呼んでいる。」
「使徒……?」
「今はそのサンプルや正体を見せられる資料はないんだが。奴らの目標は把握している。とっても簡単なことさ。人類をささっと滅亡させることだ。昔見ていたヒーローアニメーションに出で来る敵キャラと同じ願望を持っている」
簡単さ。そういった時の彼の顔は鋭さが消え、柔和になった。
「君たちはそのヒーローとして日夜、体、心を鍛える。敵を仇に枕を濡らせという事それが君たちの訓練意義に繋がる。私たちはそれを全力でバックアップする。戦闘においても然り」
「化け物。資料ねーって得体のしれない奴らなんだろ? どうやって戦えって? 機械仕掛けのロボットでもあるならまだしも」
「良い発想だ。大丈夫、そのための訓練さ、来てくれ。先ほど職員に申し出たらそのロボット擬きを見学させてくれるそうだ」
つづく
- Re: LILIN ( No.5 )
- 日時: 2012/02/18 00:57
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: TQ0p.V5X)
連れて来られた場所は先ほどよりも照明が明るく、人にも動きがあった。ガラス窓越しの仕事が丁寧そうな爽やか兄さんや、手が真っ黒になるまで機械弄りに没頭しているおっさんらが懸命に汗と涙の結晶を作り上げる。が……その結晶の姿に思わず目を剥く。
この世界に銃刀法があるように、この不毛な土地にもそれなりの法律を作ってくれと真剣に考えてしまった。例えば……体長十五メートルはあろうと思える、ビル4階分巨大のロボット業務禁止令とか。それじゃぁ、正義の戦隊ヒーローが活躍出来ないじゃないかっとお叱りを受けてしまうのだけど、目先の幸福には代えられないような気がする。
「極秘に製造を行ってるって聞いたが、こいつぁすっげぇなぁ。これが“EVA”」
「そうだぜ、まだ実験段階だけど。まだパイロットを乗せてロクに歩いていやぁしない、設計者に似て運動音痴か」
「音痴って、スミレさん運動ぐらい意外にできそうだけどなぁ」「意外に、は余計っしょ?」「そうかなぁ」
ミカン色の作業ズボンにグレーのタンクトップという、何とも無防備な女性がヘルを諭す。長身でショートカットの茶髪が特徴的な彼女は傍から見ればロシア製のリ○ちゃん人形のように肌が白い。
「装備や骨格もちゃんとしてやってるのに休日の腹だし親父みたいにノロマ。たとえ人造人間でも現代の人間が育てた“ガキ”はどうしてこうも情けねぇの?」
「ちゃんと潤滑油を打っておけばそんな心配は要らないはずだがな、お前はもっとこいつの事を知るべきかもしれん」
「ちゃんと知ってるよ、零時。そこら辺の下手な業務用油よりも無菌状態のサラダ油の方がコイツは好んで動くさ。はい、これ発注リスト。来週のB番までちゃんと諮っておいて」「あぁ……ってまたこの部品なのか?」
「おや? その部品知ってるなんて。ちょっとはEVAに興味でも芽生えたかい?」
女性が差し出したバインダーを驫木さんが受け取り、何枚かめくる。
常に冷静な雰囲気を感じられる人だけど、この時のバインダーを持つ手元は例外中の例外のようだった。
「報告書の上覧にいつもピックアップされているんだ。嫌でも覚える。しかしこんな沢山……」
「さぁ、そうと分かったらヒヨっ子連れてないで今すぐ行け、さっさと行け、走って行け」
「……しょうがない。たく、人使いが荒すぎる……スグル」
そこではっと我に返った。
もし名前が呼ばれなければ、俺は目の前に広がる怪奇を呆然と眺め続けるところだったかもしれない。
「え? あぁ、なんでもないです。続けてくれて……」
実際には何でもなくない。目の前の怪奇。巨大ロボット、先には人造人間と呼んでたのが引っかかる。これほど巨大な兵器らしき危ないものを作っている……益々不安になってきてしまう。
「初めは確かに驚くかもな。こんなでっかい化け物を開発していることに」
「あれが、貴方が言っていた力を貸してほしいという奴ですか」
「そうだビックリだろう? ここに居るといつもこうだ。現に俺も今、報告書を見て腰が抜けそうだ」
「失礼ですけど、こんな事のために……俺をここへ?」
呆然としていたせいなのか、少し口が軽くなってしまい不躾なことを言ってしまった。首の部分に重石がかかったように垂れ下がる。そんな俺に零時さんは追い打ちを立てるかのように言う。
「そう。ここに就職させた。その方が君にとってもいい経験になると思ったからね」
「あれに乗ることが?」
「尊い命を救う立派なことだ、自信持っていいさ」
零時さんはそう言って何か微笑ましいものを見たかのような表情を見せる。
「そこの君! そんな遠くに居ないでさ、こっちおいでよ」
「お、おっす」「さぁ、急げっ!」
突如、スミレさんなる人に呼ばれ、思わず同意する。
タッタっと走って彼女の元へ。おしおし、と彼女はその迅速な行動に満足そうだ。
なんだろ、悪い気がしない。
「え…っと・。スミレさんでしたっけ、よろしくお願いします」
そしてどうしてかかしこまってしまう。
「こちらこそ、市井スミレよ。ここの技術開発の参謀役さ。たまに零時の補佐もやってるからいつでも声掛けてくれよ」
「そうだったんですか、道理で仲がよさそうで」
「うん? まぁ、大学の同期生だし。それに……彼、いつか私の亭主になるらしいぜぇ」
「そ、そうなんですか!」
「へぇ! よかったじゃんスミレさん」
「まぁね。国籍日本のままで……でも姓名はせめて市井にしてもらうつもりさぁ。あんま好きじゃないんだけど、驫木サンチェスよりマシでしょ? な〜によ、サンチェスって。だからいいっしょ、零時?」
「あぁ、それで構わないさ。別に反対するような人も」
親すら元々ないからな。
……え?
「そいじゃぁ、市井。そいつら頼む!」
「氏名で呼ぶんじゃない! 慣れ慣れしく名前で呼びやがれ!」
「頼んだ、スミレ〜」
それじゃぁ、俺は仕事があるから。
零時さんはそう言って去って行った、走って……案外、色々素直な人だったみたいだ。
「今、尻に敷かれそうだっと思わなかったかい、スグル君」
「いや、そんなぁ。少しだけ」
「はははっ。君もきっとそうだのに」
「……うぐっ」
地面を一生懸命掘っていたら、でっかい石にシャベルの先端が跳ね返された時と同じような声が出てしまった。
「それじゃぁ、君ら3人をご案内だろ? 任せときなって、こんなとこよりもっと穴場紹介しっちゃうからさ」「さっすが、スミレさん、太っ腹」
それから俺たちはスミレさんの大雑把な案内聞いた。
ホントにおおざっぱとでしか言いようがない、とりあえず、内容は割愛。後で少しばかり触れたいと思っているので乞うご期待。
「だからさ、どっか〜ん。って爆弾落とされてもビクともしないのよ、ここは。侵入するにはショベルカーやらツルハシなんかじゃ1億年かかるわね。地上のエントランスから専用のエスカレーターで改札口通った方がいいの」
「ショベルカーとツルハシって作業量に結構違いが」
「お・な・じ・よ。同じ☆」
「同じですか☆」
なんだかスミレさんが強引に説明するとどんなに気が遠くなる話でも、どこか身近に感じる。
「ふ〜、やっと改札だね。以上だけど、他に質問あるかい? ないと今夜は帰さないよ」
「何言ってんだ」
改札とはその通り、駅にあるようなものと全く違いがない。ここ、ネルフには専用の路線があり、もちろん専用のトレインが走っている訳で、専用の……うん。
「そうだよねぇ、見る人によっては税金泥棒そのものかもね。事実、シュワルズ○ッガ—州知事もかんかんなのよ。ここでの成果は直接私たち開発グループの成果であるから、失敗には怖いほど当然の代償が付く。まぁその皺寄せは全て零時にいくから、私たちとしてはまだいいか」
ただ単に「色々お金かかってますねぇ」 とインテリっぽく質問しただけなのに。
殆ど一人で話を広げ、遂には「でも、また部品予算任が……。あー!」と、突如改札のど真ん中で叫ばれた。どう収拾つけろっていうんだ。
「今頃シュワちゃんにキレられているのかしら、零時。昔からあいつゴツイ男には耐性がないからなぁ。相手はターミ○ー○ーだし……う〜ん」
「えっと……もしも〜し」
「やめとけ、スグル」「なんでさ」
「一旦考慮が始まるとさ、ケリつけないと夜眠れないってよく言ってるんだこの人」
「大人になっても悩むんだね」
ねぇ〜。
とよく分からん同意をヘルと交わした。
「あ、そうか」
まるで本当に頭の上の電球が点いたように思いついたスミレさんが俺たちの方を向いてその内容を話す。
「もし、シュワちゃんが、同意しないならばだよ?」「はい」
「うちの幽霊諜報部ことパパラッチどもを動かして、司令部のお蔵入り情報コレクションも唸る、“花”を摘んできてもらうとするのは?」
「……願うなら冤罪を生むような真似しないで」
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