二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜
日時: 2011/08/10 00:10
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)

これは、自分用の小説です。
コメ来たとしても、返信できません。すみません。



〜各物語の目次〜
【君に出会えてよかった】>>2

Page:1 2 3 4 5



Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.16 )
日時: 2011/08/11 00:30
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)

—記憶—

「涙…」

俺と三橋は声をそろえて言った。





その日の夜、
久しぶりに泉からメールがとどいた。

明日、田島のお見舞いに行くとの事。


西広を始め、
俺達は少しずつと、勇気を出すようになった。




翌日。
西広病院へ行き、田島の病室に入った。

すると…



「久しぶり…」


そこには、水谷と泉の姿があった。


「俺も…来てみたよ…。」

水谷が、顔と目を少し赤らめて言った。


今日は、三橋がきていないようだった。
なんせ三橋は、隣県に住む中学生だから、
こっちに来るのも大変なのだ。


「悠一郎…まだ寝てるの…?」

「うん。」

田島は顔を布団で隠して
眠っていた。

田島の事はもちろん心配。
だけど、昨日のオキも西広の事も頭がいっぱいだった。

「辰太郎くん…大丈夫…かな」

俺がそう小さい声で呟くと、
田島が《バサッ》と布団を大きく
振りはがし、

「辰太郎…って…西広辰太郎…!?」

っと、目を大きく開き聞いてきた。

俺は、ちょっとびっくりしたけど、
うんと首を縦に振った。

すると、

田島は、人が変わったかのように、
俺に飛びついて来た。



「辰太郎は…辰太郎は何処…!?」


かなり興奮している様子だった。


そして田島はまつばづえをついて、
部屋を出て行った。



そして、
部屋の外から聞こえた声。






「辰太郎…俺だよ…カズトシだよ…。」



確かに、田島の声だった。




オキカズトシの記憶の田島は
完璧にオキの記憶になったそうだ。


西広もびっくりしていたみたいだけど、
強く強く抱きしめてこう言った。

「俺…絶対カズトシの体…治してあげるから」

と。


その時、
俺の携帯に
1本の電話がとどいた。

電話に出てみると、
電話の相手は、三橋だった。

「廉くん…どうかした?」

「オキくんが…カズトシくんの指が…動いたんっだ…!!!」

俺は急いでその事を皆に伝えた。


「もしかして…俺が元に戻る日が来るのが…そんなに遠くないって事なのかな…!?」

オキの記憶の田島は、
西広に強く言った。






そして…







「俺…自分に会いたい。」




オキのこのコトバで

新たな新展開がはじまるのだった。








Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.17 )
日時: 2011/08/13 20:32
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)

—自分—

「俺…自分に会いたい。」

オキのその言葉に、
俺達は協力しようと思った。

オキは、事故に遭って、
気を失ったまま、もう1年は経つ。

オキ自分自身、
今の自分の状況が分からない。

ただ…

俺と三橋が見た、あの涙…。
三橋が見た、オキの指が動いたこと…。
俺は、それがどうしても気になった。

「もしかしたらさ、カズトシの記憶、そんで、悠一郎の記憶が戻るってのが、近いんじゃねーぇ!?」

今まで無言だった
水谷が立ち上がった。

その言葉に対し、

「だよなー!!!だったらさ、少しでも早く2人の記憶が戻るように、早速カズトシの入院している病院、行こうぜ!!!」

泉も立ち上がった。




「皆…ありがとう………本当にありがとう…」




オキは俯いて
涙を流した。


見た目は田島なのに、
中身はオキ。
俺は、久しぶりに田島の涙を見て、
やっぱり、この人は田島じゃないのだと、改めて感じたんだ。


そして、
俺達は、オキの入院している病院へ行った。



「みっ…みん…な…っ!!!」



そこには、
電話をくれた三橋が、横になっているオキの手を
ぎゅっと握って座っていた。


「…これっが…俺…。」

オキはゆっくりと自分の体へと進んでいく。

そして…



「辰太郎…俺…死んでるの…?」
オキは、ベットの自分の顔を見つめながら言う。

西広は、首を横に振りながら、
「大丈夫、死んではいないよ。…今にも起きてくれそうな感じなんだけどね…。」
その西広は、少し涙目になりながら言った。


涙目になっている西広を見て、オキは、




「…そんな悲しい顔…しないでよ。大丈夫…俺…絶対に死なない。…だから…そんなに悲しまないで…っ…う…っ」

オキは堪え切れずにいた涙を流し、
西広に抱きついた。

西広もオキを強く抱きしめ、

「うん…。ごめん、オキ。…俺っ…絶対に助けるから。オキが戻ってきてくれること、信じてるから…。」

あの2人の涙は、
未だに忘れられない。



目の前に、横になって目を覚まさない自分を見て、いつ自分がどうなるかも分からない状態におかされている恐怖。


大事な幼馴染が、もう、1年以上も目を覚まさない恐怖。




2人はどれだけ怖い気持ちでいるのだろう。




もちろん、俺達も田島の体は生きているのに、
記憶は何処へ行ってしまったのだと、
不安と恐怖でいっぱいだった。



結局この日は、
オキは目を覚ますことがなかった。



オキの記憶の田島も、
段々と体調も回復してきた。


最初は、オキも何がどうなったか分からない状態だったけど、
俺にも、他の皆にも、普通に接するようになった。

俺も、この機にオキの他に、
三橋、それに西広とも仲良くなった。

三橋だけ、隣の県だから、あまり会う事ができないけど、
メアド交換したから、電話とかメールとかもよくするようになった。

そして、気を失っているオキも、
三橋と同じ隣の県の病院で入院しているから、
オキの事は三橋に任せた。


そして、最初は違和感がありまくりだった、見た目田島、中身オキも
慣れれるようになった。



田島の記憶は、相変わらず戻らなかったけど、
体の方は順調に回復していった。




そして、ついに…—————。



Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.18 )
日時: 2011/08/13 23:26
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)

—気持ち—

「退院おめでとー!!!」

田島は無事退院した。
それは、あの事故から3週間のことだ。

田島の事は、ちゃんと田島のお母さんに説明した。

記憶喪失で、違う人の記憶が混ざってしまったということ。

すると、田島のお母さんは微笑んで言った。
「そう…でも、悠一郎は悠一郎だもの。分からないことがあったら、遠慮なしに言ってね。」
と。

するとオキ記憶の田島も微笑んで、
「うん」
と答えた。


これからの事を考えると、
やっぱり学校に通わないのはまずいと思ったんだ。
だから、記憶はオキだとしても、田島は田島だから。

水谷にも協力してもらって、
先生やクラスメートにも説明した。

でも、やっぱり分からない事が多いみたいで、
一番最初の時のように、落ち込んでいた。


「悠一郎?大丈夫???」


休み時間に俺が話しかけると、応答なし。


水谷も、
「お〜い、悠一郎???」
と声をかけると、やっとその声に気付いたのか、

「えっ、あ、うん。…何?」


俺と水谷は顔を見合わせて、

「カズトシ、今の君は‘悠一郎,だよ。」
と言った。


オキ記憶の田島は小さく、うん、と頷いて
ポケットから鏡を出した。

そして、自分の顔を見ながらこう言った。

「…この、‘悠一郎,くんって、どういう性格の人?」

突然の言葉で驚いたけど、
俺は、はっきり田島の性格を言う事ができた。

「とにかく元気な子。それで、明るい!!時には優しい時もあるなぁ〜」

「そーそ!!!そんで、馬鹿!!でも、とにかく明るくて、一緒にいると元気もらえるよなぁ〜。プラス思考で、マジいい奴!」

水谷も続けて言った。


すると、
オキ記憶の田島は、溜息をついて
鏡をポケットにしまった。




「…俺とは正反対…。」





その言葉を発すると
しばらく黙りこんで、
また口を開いた。




「なんで俺が…悠一郎くんの体にはいっちゃったんだろう。…こんなウジウジした性格の奴が、悠一郎くんの体ん中入っちゃった…。こんな性格で悠一郎くんやってたら、本人に失礼だよな…。」

「そ…そんなこと…」

「本当は、今ここにいるのは…本当の悠一郎くんだったのに…。」

オキ記憶の田島は
やっぱり本人の言うとおり、性格が全く違った。

自分を責める姿を見て、
俺も水谷も、助けたかった。


「そんなに、自分責めないでさぁ〜!いずれかは皆記憶戻るだろー?」


水谷も助けたかったから声をかけた。



でも…



その気持ちは伝わらなかった。






「俺の気持ちなんか、皆分かんないだろ!!!しかも、いずれか記憶戻るっていっても、いつ戻るか分かんないじゃん!!!戻るかも分かんないじゃん…戻らなかったらどうするんだよ!!!」


水谷は、ただ助けたかったから言ったのに。
だから、その言葉に頭にきた水谷は、


「…悠一郎を思って言ったのに…そんな言い方ないでしょう…!!!」

「…俺、悠一郎くんじゃない。…俺は…俺は‘オキカズトシ,だ…!!!」


その時、
俺は何もできず、
2人を止める事ができなかった。




その後も、
3人バラバラだった。


水谷のところに行っても、
「俺は、ただ助けようとしただけなのに、あんな言葉ってねぇよ」
ってしか言わなかったし、


オキ記憶の田島のところに行っても、
「誰も俺の気持ちなんか分からないよ…」
ってしか言わないし…。



だからね、この日1日、3人バラバラに過ごした。



帰り道、
俺は当番の仕事で遅くなった。

教室は、俺一人。



「…結局…帰りもバラバラかぁ…」



そう思って、昇降口に向かった。











「待ってたよ、勇人」












そこにいたのはオキ記憶の田島だった。

さっきとは違って、笑顔だった。


そして、



「さっきはごめん。…俺、パニくってて…」

と謝ってきた。

俺も、こうやって仲直りできて、すごく嬉しかった。

「大丈夫、俺もなんかごめんね。カズトシの気持ち、分かんなくて。」

俺達は、
少し夜空に近い空の下を語りながら歩いた。

「んーん。その事は気にしないで。…俺…文貴に謝りたいんだけど…許してくれるかな…?」

オキ記憶の田島は、少し顔を赤らめて言った。

「大丈夫!文貴、いいやつだから!たぶん、文貴も仲直りしたいと思うよ」



誰だって、喧嘩した時は頭にくる。

けど、少し経ったら、
仲直りしたいって気持ちになるんだ。



「うん…明日、謝ってみるよ…!!!…あ!!!」

「…ん?」

オキ記憶の田島は、空を指差して、

「今、そこ、流れ星流れた!!!」

と言った。

そのとき俺は残念ながら見る事ができなかった。

でも、オキ記憶の田島だけでも
流れ星を見る事ができて本当によかったと思う。



流れ星の‘願いがかなう,という伝説。
それは本物だったのだから。



Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.19 )
日時: 2011/08/14 20:31
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)

—夢—

「おやすみー」

夜10時。
オキ記憶の田島は、2段ベットの上から
そう言った。

俺は2段ベットの下から、
上を見上げるような感じで、

「おやすみ〜」

と返した。

俺にとって10時は
寝るのには早すぎる時間だったから、
携帯を弄っていた。

もしかしたら、水谷からメールがくるのかと思って、
携帯のトップ画面を見たけど、
メールは1件も入っていなかった。

そして俺は、
知らない間に、夢の中に入っていた。





—————————————。



「ゆーと!!!」


夢の中では、
誰かが俺を呼んでいた。

その声は、優しくて、とても懐かしかった。
自然と涙が流れてきそうな…。

…そう、これは俺のお母さんの声。

夢の中のお母さんは、
白いワンピース姿で、
ただ緑色の草だけが生えている原っぱに立っていた。

そして、俺の方に近づいてきて、

「勇人、あなたは本当に立派に育ってくれたわね。…これからも辛いことが多いかもしれないけど、お母さんも、神様も皆、勇人の味方だから…」

そう言って、お母さんはゆっくりと姿を消していってしまった。



——————————————。




「い…行かないで!!!!!!!!!!」


目を覚ますと、
俺は大声でそう叫んでいた。

不思議な夢を見たせいか、
大声で叫んだことが、これっぽっちも恥ずかしくなかった。

時計を見ると6時半。
ちょうど起きる時間だった。


俺は、寝てるオキ記憶の田島を起こそうと、
上へ行ってゆっくりさすりながら、
「悠一郎、朝だよ。起きて」
と言った。

「う…う…ん…」

昨日の事で色々あったから
疲れているのだと思い、無理やり起こすのはやめた。



顔を洗って、
台所に行って朝食を食べた。


「今日の朝食は、卵焼きかぁ〜。おばさんの卵焼きは絶品だよ。」

俺はそう言い、
頬張って食べた。

田島のお母さんも嬉しそうな顔をして
「そぉ!?ありがとう、嬉しいわ!!!」
元気のなかった、田島のお母さんも、
少しは慣れたのか、表情が柔らかくなった気がする。


卵焼き…

昔を思い出すなぁ…

俺のお母さんの卵焼きも…すっごい美味しかった…。


「そういえば、悠一郎はまだ寝てるの?」

「あ、うん。そろそろ起こしてきた方がいいかな?」


俺がそう言うと、




《ピンポ〜ン》


家のチャイムが鳴った。


「おばさん、俺が出るからいいよ。」


こんな朝から誰だろうと思い、
玄関を開けた。


「おはよう…。」


玄関前に立っていたのは、
水谷だった。

しかも、寝癖が酷く、目も腫れていた。

「…どうしたの…こんな早くに…しかも、目、すっげ腫れてる。」

すると水谷は、
深く深呼吸して、

「昨日は本当にごめん。」

と頭を下げてきた。


俺はその姿を見て、ホッと安心した。
やっぱり皆、仲直りしたかったんだ、って。

そして俺は思った。


この腫れた目、喧嘩の事で夜遅くまで泣いて、眠れなかったのだろうと。




「そんで…悠一郎にも謝りたいんだけど…。」



「俺が、どうしたって???」



突然の声にびっくりして、声のした後ろを振り返ると、
そこには、準備万端のように制服姿の田島がいた。



「悠一郎…いつの間に…」



そして、水谷は、真っ赤にした顔を下げて、

「悠一郎、昨日は本当にごめん…っ…。」
と言った。


でも田島は、
何があったのか分からないような、
まるで、記憶喪失にでもなったかのような
ポカンとした顔で、水谷に、

「え?あぁ、電車の中で揉めた…カツ丼とケーキの事か?…あぁ〜別にいいよ、あんなん。まー皆一緒に食べるのが、一番うめぇ〜んだけど!」


まるで、本物の田島のようだった。



…いや、ようだったじゃない。



これは本物の田島だ。




だって、オキは、電車の中の事なんて知らないし…





「悠一郎…なの…!?」

「カズトシじゃない!?」


俺と水谷は、
夢中で田島に問いかける。


すると…


「はぁ!?なぁーに変なこと言ってんだー?俺は田島悠一郎。」


この田島は、
正真正銘の田島悠一郎なのだ。

そして、田島の家で飼っている、犬やら猫やらが、
一斉に田島に飛びついた。

「うわぇ!?く…くすぐってぇーよ!!!」

さすが、動物を操れる田島悠一郎。


本物だと分かって俺達も、動物たちと一緒に田島に飛びついた。


「うぇ!?な…勇人!文貴!おまえらまでいきなりなんだよ!!!」

「うわぁ〜ん!!!悠一郎おかえり〜!!!」

「本物の悠一郎だ!!よかった、本当によかったぁ〜!!!」



この時俺は思った。


昨日オキが見た流れ星、
今日俺がみたお母さんの夢。

きっと神様が、
俺達を助けてくれたのだと。





Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.20 )
日時: 2011/08/14 21:46
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)

—祝福—

「悠一郎に…カンパーイ!!!」

その日の夜、
俺、田島、水谷、泉の4人で
田島の祝福パーティをいつものケーキ屋さんで開いた。


「ったく…心配掛けやがって…」
泉は、そう言い目をそらす。

「そーそ!!!孝介もすっげー心配してたんだぜ!!!」
水谷も続けて言う。

「…っ俺ぁ別に心配なんてしてねぇ…し・…!!!」

「うっわー照れてる照れてる!!!さすがツンデレ!!!」

「///…」

「皆、心配かけてごめんな。でも、本当記憶戻ってよかったーーー!」


俺はこの光景がまた見れて、凄く嬉しい。

だって、もしかしたら、一生見れなくなると思ってたから。




「そういえばさ、‘カズトシ,はどうなったんだろ?」

水谷がチョコケーキを食べながら言う。


「カズトシって、誰だー???」

「以前、お前の体に紛れ込んだ人。カズトシ、事故に遭ってもう目を覚まさないで1年経つんだってよ。」

「ふぅ〜ん?」

泉と田島の何気ない会話に
俺もオキの事が気になっていた。



田島の記憶が戻ったって事は、
オキの記憶は…!?
オキの身体は…!?



その時、

「記憶戻ったんだね、悠一郎くんおめでとう」

の言葉と共に、

いきなり大きなパフェが、
テーブルの目の前に出された。



その声の人を、
ゆっくりと見上げると
赤ワインのブレザーが目に入った。

これは、泉が通う‘東城学園,の制服。
泉のように、偉い人が入る学校。

恐る恐る顔を見ると、
見覚えのある顔。

それは、西広病院の先生の息子、
西広辰太郎だった。


「辰太郎!!!おまえっ、俺と同じ学校だったのかよ!?」
泉は立ち上がり、驚いた様子だった。

「そうだよ。しかも、同じクラス!なのに、全然気づいてくれないんだもん。面白いから、ワザと声をかけなかったんだー」
西広は笑いながら言った。

そして、続けて、

「悠一郎くん、初めまして、西広辰太郎です。学校は別だけど、仲良くしてね。」

と笑顔で言った。

「あぁよろしく!!!それと、俺んことは、くん付なしでいいぜー!!!辰太郎!!!」

「!!!うん、よろしく、悠一郎!!!」

西広も
改めて本当の田島と友達になった。


そして、今まで笑顔だった西広は、
顔の色を変え、
深刻な目をして、語り出した。


「あのね…皆…———」







西広の話の内容は、オキの事だった。














田島が記憶を取り戻したように、
西広は三橋と一緒にオキの様子を見に行ったらしい。

でも、もうすでにオキの姿はなかったそうだ。

それは、あの世界に行ってしまったのではなく、
意識を取り戻して、退院して行ったらしい。

退院したのは、
凄く嬉しいことだけど…
誰もオキの居場所が分からない。

引っ越してしまったそうだ。

西広が携帯に連絡しても、
オキは携帯を変えてしまったのだとか…。










「カズトシ…何処に行っちゃったんだろ…。」
俺は呟きながら、昨日の事を思い出した。

昨日、オキと話ししたんだから、
きっとそう遠くには行っていないと思ったんだ。


「でも、大丈夫!またカズトシに会えるって信じてるから!」

西広は笑ってみせた。


「辰太郎…」



オキの真実に、
俺達は一気に静かになってしまった。




その時…





「なぁなぁ!!!この苺たっぷりショートケーキ、超うめぇ〜!!!」

能天気な田島は、目を輝かせて
俺達に、食いっぷりを見せてくれた。

それは、この静かな雰囲気を変えようと、
やってくれたのだと、今でも思う。

それが、田島のいいところなんだけどね。



続けて水谷も、

「お!!!マジだぜ!!!この苺の甘酸っぱさと、生クリームの甘さが合わさってまろやかになってる!!!」

と言った。


その2人を見て、俺達もケーキを口いっぱいに頬張った。




考えてみれば、
田島もオキも無事退院できたんだ。
嬉しい事じゃないか!!!



オキが何処にいるか分からないけど、
絶対にまた何処かで会える、
そう心に秘めたんだ。








…この時の俺は、
まだ予測していなかっただろう。

この中の誰かが、
突然姿を消してしまう事を。













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