二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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銀魂 留め置かまし大和魂
日時: 2012/04/07 17:38
名前: もも風 (ID: YTT42QuR)

ほとんどの方が初めましてだと思うので、初めまして!
もも風と申します。

今まで小説は二回ほど書いた事がありますが、銀魂は初めてです。
よろしくお願いします♪



注意書きは…そうですね……


                     荒らさないで下さい!!


そんだけです!

…嘘です。ごめんなさい

一、上のように、荒らし禁止
一、亀に五百㌔のおもりをつけたくらい更新が遅いと思われます
一、忙しくなったら、放置するかも…
一、相変わらずの駄作
一、時々、史実も入ってくると思うので、あしからず…

こんな感じですかね。




★登場キャラ★

オリキャラ(主人公)
真選組の方々
鬼兵隊の方々
万事屋の方々
桂一派
     etc

Page:1 2



Re: 銀魂 留め置かまし大和魂 ( No.2 )
日時: 2012/04/11 23:35
名前: もも風 (ID: YTT42QuR)

其の零


美津side

この日は春の終わりを思わせる、大雨だった。
私…滝野美津はある人物に呼ばれてここ“京”に来た。
約束の時間はとっくに過ぎている。

「よう…」

大太鼓をドンと鳴らしたような低い声を聞き、振り返ると、その人はいた。

「『よう…』じゃないよまったく!私がどんだけ待ったと思ってるのよー!久々の再会なのに、どういう了見だこらぁ!!」

「相変わらずうるせぇ奴だな…これじゃあ、何の感慨もわかねぇ」

「う… う る せ え だぁぁぁぁ!?」

私はピキピキと青筋を立てた。

「人を呼んどいて『うるせぇ』とは何よ!?何の感慨もわかないのはこっちの方だっつーの!!」

しかし、私の投げる言葉は彼には届かないらしく、表情はまったく変わらない。
そういうところが腹立つのよ!

「言いてぇことはそれだけか?そろそろ用件の方に入りたいんだが」

「望むところよ!」

何を勘違いしたのか、私は身構えた。
そして彼の口は開かれる。

「間者だ」

「は?」

的外れの単語が出て来た。
かんじゃ?何が?

「てめぇには間者をやってもらおうと思ってな…金なら払う、稼いでるんだろ」

「そりゃあ、お金ならあるに越したことはナッシングだけど…患者?やってもらうって言われても私、すこぶる元気でごぜぇますよ?」

「…てめぇに頼んだのは間違いだったみてぇだな」

と言い、彼は踵を返す。

「ちょ、ちょっと待てぇ!かんじゃでしょ?あのかんじゃ!さ…最近流行ってるよねー… えぇと…」

頭をフル回転して思考を巡らせる。
かんじゃってなんだ…患者じゃないみたいだけど…

「内通者だ」

「そうそう!内通者!って…」





ん?
内 通 者 ??






「私が内通者!?」

「……他をあたるか」

彼は再び踵を返し、去ろうとする。

「待って、待って! 内通者…間者って、いったいどこの!?誰の!?」

「聞いたことはあるだろう…真選組。目障りな番犬だ」

「しんせんぐみ…」

その言葉を噛み締めるように呟いた。

確か真選組は、江戸の武装警察だと聞いたことがある。
後は、幕府の手足で将軍の守護をしていたり…必要あらば仲間でさえ斬ったり…江戸の騒ぎの中心にいたり…と評判はよくない。

ようは、真選組の間者として彼らに近付き、その行動や戦法を監視したり報告したり…とゆうことらしい。

「向こうに行ったら支持はする。てめぇは女だが、その腕さえ買われれば問題はねぇだろう」





………
乗り気なんてしない。だけど、引き受けた。

私には、もう何もすることがない…
したいことも、しなきゃいけないことも。

〝あの時〟から無くなってしまったんだ。

ならばこの人の望みがどんなに過激で悪いことでも、目をそむけよう。

それにこの人は…晋助は、私にとって大切な兄だから。

Re: 銀魂 留め置かまし大和魂 ( No.3 )
日時: 2012/04/11 23:36
名前: もも風 (ID: YTT42QuR)


其の一



「局長ぉぉぉ!副長ぉぉぉぉ!」

朝。
真選組屯所内では静寂な早朝をかき消すような慌しい声が響いた。

「うるせぇぞ山崎!朝飯食ってる時に埃を立てんな!マヨネーズに入るだろうが!!」

「そんなこと言ってる場合じゃないんです!沖田さんが!」

「ん?総悟がどうかしたのか」

宥める様な声で近藤が聞く。

「あの野郎ぉ…またサボるつもりか」

土方は食べるのを止めて、山崎を見た。
息が切れている山崎は落ち着かせるように間を置いて口を開く。

「沖田さんからの連絡です!丸●デパートで立てこもり事件発生!!」





一時的に美津side

              ——数時間前——

薄桃色の着物と、栗色の髪がさらさらと風になびく。
私はやっとの時間をかけて江戸の地を踏んだ。

「やっと着いたぁ」

江戸は久しぶり!懐かしいなぁ。
ま、懐かしむ思い出なんかございませんが。

「って言っても…真選組なんて、どこで活動してんだ?」

もっと晋助に色々聞いとけばよかったなぁ。

「まあ、そこら辺歩いてれば見つかるか!」

気楽に行こう。
…と決意した時、フラッと睡魔に襲われた。

「はれ…?そういえば寝てなかったかな、私…」

とりあえず、目の前にあったデパートに入りベンチでも見つけて仮眠とるか…
デパートに入ってフラフラ彷徨っていたその時

「いてっ…」

誰かにぶつかった。

「おいお前。気をつけろぃ」

「ほーい…すみません」

……後の事はよく覚えていない。
確か、デパートの中でベンチを見つけて、誘われるように座り込み、そのまま寝てしまったのだと思う。
少しして、周りがガヤガヤうるさい事にはなんとなく気づいてた。
誰かが叫ぶ声も。






              ——現在——

丸●デパートの周りは真選組のパトカーで囲まれていた。
今、デパートの中には沖田を含む数十人の人質をたてに、攘夷浪士が立てこもっている状態だ。

「おい総悟。中の状況はどうなってる?」

土方はデパートの中にいる唯一の見方に電話していた。
電話できているってことは、沖田はまだ浪士たちに見つかってないようだ。

『あまりショッピングができる状況じゃありやせんねぇ…ったく折角の有給休暇が台無しですぜ』

「誰が有給休暇を許したんだ?てめぇは後で始末書書いてもらうからな!」

『そりゃ無いですぜ土方さん。俺ぁ今こうやって仕事じみたことしてやってんですから、“休暇”は無理でも“有給”はいいですよね』

「意味が分かんねーし!だいたいてめぇはなぁ…」

「トシ。今は言い争ってる場合じゃないだろ」

これ以上は長引きそうだと思ったのか、近藤が土方を制止した。

「それよりも総悟。お前は電話してて大丈夫なのか」

『心配ご無用…と言いてぇところですが、そろそろやばいかもしれやせん』

デパート内では攘夷志士によって全出入り口を塞がれ、数名の浪士が中を徘徊して客を見つけ次第、広間までつれて行かれ、人質となる。

『俺は広間を見わたせる、ちょっと離れた所に居るんですが…どうしやしょう。見つかったら斬ってもいいんですかぃ?』

「いや、あまり刺激しない方が…」

と近藤が言いかけて止めた。
一人の隊士が、屯所に今立てこもってる浪士から要請があったと報告があったからだ。
要請内容は、指示に従うこと。「何を」とは言わない。ただそれだけだった。
こっちがその要請を受けなかったり、時間稼ぎするようであれば、構うことなく人質を斬ると。

「…なめやがって」

土方は舌打ちした。
奴らは“ただ支持に従うこと”という要求をしてきた…ということは、それを承諾してしまえばその後、どんな無理な要求を押し付けられるか分からない。

「総悟。敵は何人か分かるか?…総悟?」

沖田から応答が無い。
だがしばらくすると、声が聞こえた。しかし…

『攘夷志士24名、人質約100名…』

「!!?」

土方と近藤の顔が引き締まった。
声の主が変わっていたからだ。沖田じゃない…

『まさかこんな所に真選組がいたとはなぁ…まぁ、これで屯所に要請する手間が省けるってもんだが』







デパート内。
沖田は土方達との連絡中に浪士達に見つかり、携帯を取り上げられる。

「さぁて…潜入していた鼠さんにお礼しとかなきゃなぁ…」

と浪士が刀の柄に手をかける。

「止めろ。真選組の身内の人質の方が、奴らには有効的だ」

しかし、もう一人の浪士に制止されてしまった。
その浪士の言葉を聞いて、沖田は微笑した。

「俺ら真選組がそんな甘い考え、持ち合わせているとでも思ってんのか」

沖田の挑発的な態度を見て、一人の浪士は頭にきてたようだが、もう一人の浪士は変わらない表情だった。
刀も取り上げられ、成す術も無いので、沖田は抵抗することなく広間に連れて行かれた。

Re: 銀魂 留め置かまし大和魂 ( No.4 )
日時: 2012/04/11 23:37
名前: もも風 (ID: YTT42QuR)


其の二


美津side

私はあまりの騒がしさに目が覚めた。
うぅ…まだ眠いのに……
どこの誰だい!もっと静かにできんのか!

と思い、体を起こした。

「ふわぁ〜〜…もー何?」

大きな伸びをして目をこする。

「あれ?」

周りに人は誰一人居なかった。
声のする方…広間に向かってみると、そこには大勢の人がいた。

「これって…」

遠目からでもよく見える。
立っている浪士風の人は数名。あとは手を後ろで縛られて、皆座らされていた。

よく分かんないけど…なんかやばい状況って事だけは分かるよ。

これは…デパートから出してくれなさそうだし、話が通じる人達じゃあなさそう。
じゃあ、どうするかって言うと…そりゃあ力でねじ伏せるしかないよね。

私は隙を窺いつつ、気配をなるべく消すよう試みた。
すると…

「?」

座らされてる数名の人達の中の、一人のさわやかな感じの美少年がこっちに目を向けた気がした。
気のせいよね…






「おい。ちょっと」

私が少しずつ近付いて行くと、あの少年が一人の浪士風の男に声をかけた。

「ウ●●してぇんだが」

「あ?逃げるつもりだろ、我慢しろ」

しかし、彼はまるでその場に居る全員に聞かすような大声で叫んだ。

「だめだぁぁぁ!!漏れちまう!!」

その場に居る皆が動揺した。
もちろん、浪士たちも。



……あっ!

隙ができた!!



もちろん私は、この隙を逃さなかった。
刀を抜き、走る。
一番手前にいる男を切り倒し、その腰のものを奪う。

「ギャア!!」

男は声を上げて崩れ落ちた。

私は男から奪った刀を、あの少年の前に投げ捨てた。

「何だ!?このガキ!!」

「おのれ…よくもそいつを!」

その場の浪士だと思われる全員が、私に殺気を放っていた。

「うおおおおおおおお!!」

五人の男が私に斬りかかって来た。
私は少し腰を低くして、身構える。
そして、五人を充分引きつけて…

「ぐはっ!」

「ギャ…」

まとめて斬りかかって来た五人はあっという間に血飛沫をたてて絶命する。
何が起きたのか分からず、誰もが唖然としていた。

「おい!いきなり人に斬りかかるとはどーゆー了見だぃ!!ちょっと危なかったじゃないのー!!」

私は甲高い声で叫ぶ。
その言葉を聞いて我に返ったのか、浪士たちは次の行動を取ろうとする。
一人ずつ人質をたてにしようとしてる…!

そんなことさせない!

私は駆けた。
そして、浪士たちが人質を取る前に彼らを斬り倒した。
残るは一人…

「!!」

しかし、間に合わなかった。
最後の男はすでに小さな女の子を左手に掴んでいる。

「っくそ!どうなってんだこいつ…目にも見えねぇ!」

どうやら、私の身軽さに動揺しているらしいが…今の私にはそんなことよりも違うことで頭がいっぱいだった。

「こらぁぁぁ!子どもをたてにするたぁ男のすることじゃないわよ!この卑怯者!!それでも誇り高き志士かい!!」

その言葉が癇に障ったらしく男の顔が険しくなった。

「それ以上近づくんじゃねぇぞ…このガキを死なせたくないならな」

「女の子に向かってガキとか言うな!」

(つっこむとこ、そこぉぉ!?)

男は動揺していたが、隙はつくらなかった。
これじゃ、反撃できない。

途端、男は勝ち誇ったかのように低く笑った。

「くくく…これでここに居る全員、死ぬことになったなぁ。お前のせいでよぉ…さあ、刀を捨てな」

男は真っ直ぐに私を睨みつけた。
ただ、私だけを真っ直ぐに…


………
本来なら、ここで刀なんて捨てない。
けど


   —カランッ—


私は遠くに刀を投げ捨てた。
男は笑みを絶やさない。

「あーあ…これで終わりかぁ…」

そう言いながら両手を上に上げて、降参の形をとった。

そして、確信の笑みを返す。

「あんたが」

「っ!?」

男は驚愕の顔をした。
首もとに刀の切っ先が添えて合ったからだ。

「動くんじゃねぇ」

刀の持ち主…あのウ●●発言の少年は低く告げた。

浪士の男は私に気が取られ、この少年が刀を使って縄から自力で解放した事に気づかなかった。
そこに勝機が生まれた。
男が女の子を人質に取った時点で、彼は気づかれないように後ろに回り込んでいたのだ。

そして今、人質を取っている男は私に刀を向けた状態で…彼に刀を突きつけられている。
これ以上、浪士の男には逆転する余地なんて無かった。








…かくして

この丸●デパートの事件は無事解決。
人質は全員、解放された。

はぁぁ…ついてないなぁ。
まさか江戸に来た途端、事件に巻き込まれるなんて。
こんなことしてる間に昼になっちゃったよ…

私がその場を立ち去ろうとすると

「おい!」

タバコ臭い男に呼びとめられた。
















       色々すみません(´・ω・`;A)
      ここで二話終わらせてしまいます。

Re: 銀魂 留め置かまし大和魂 ( No.5 )
日時: 2012/04/08 15:39
名前: もも風 (ID: YTT42QuR)



其の三



「はい?何でしょう」

振り向くとあの少年と、タバコ臭い男、背の高いゴリラっぽい男が立っていた。
タバコ男が口を開く。

「お前…何者だ」

…何者とは
名前を聞きたいんだろうか、
それとも…

とりあえず、軽く返してここを去ろう。
やらなきゃならん事もあるし。

「いやー何者と聞かれやしても、あっしはただの旅の者でして、へっへっへ…」

三人の痛い目が私を指す。

仕方ない、ここは真面目に答えよう。
こうゆーのは苦手なんだよね。

「えーと。私は滝野美津です…江戸にちょっくら用があるんで京から参った者でごぜぇやす」

駄目だぁ
どうしても軽々しくなっちゃうよ。

「京から?いたったい江戸に何の用でぃ」

「え……と、そりゃあー」

…ううん、駄目。
嘘はつきたくないな。
省くところを省いて説明しよう。

「私、真選組って人達に会いたいって思って…」

それ以上は言えなかった。
タバコ男の表情が厳しくなったからだ。

なにこの人…怖い。

「真選組に何の用だ」

晋助に頼まれて、間者として真選組に入ろうかなって思ってます。

…何て言えねぇ。

「いやー…ちょっとね。だから…真選組に会わなくちゃいけないから、私はこれで!」

私が踵を返して走り去ろうとした時

「おい!ちょっと待って!」

もー何よぉ。
急がないといけない訳じゃないけど、今日の内に会っておきたいんだから!
そう思い再び振り返る。


あ……。


この人達、明らかに私に敵対の目を向けてる。

もしかして…


「…貴方達が、真選組…?」

私の問いかけには答えなかった。
でも、多分そうだ。

そして、もう一度あの男が口を開く。

「真選組に何の用だ」

低く、冷たい声。
彼の言葉は不信感を隠さない。


この人達が…真選組。

だったら、もう誤魔化すのは止めよう。


私は彼らに向き直り、頭を下げた。

「私を、真選組に入れてください!!」


………
静寂が周りを包む。

やっぱ駄目か?

「てめぇ、何が目的だ?」

おぉう、鋭い。
さっすが怖い顔してるだけありますなぁ。

すると、ゴリラ男が代わって話し始めた。

「トシ、最初っから疑ってやるな。…すまんが、うちは女隊士は入れんようにしとるんでな…」

あれ?
女だって気づかれてる。
この男装、間違ってたかな。

一人で考え込んでると、さわやか少年が指摘する。

「それで男装してるつもりだったのか?悪ぃが顔と仕草を隠し忘れてるぜぃ」

ぬお…不覚。

「お…女だからなんだってんのよ!要は腕でしょ!?剣の腕!!」

「女は男に比べて剣は劣る」

あら、カッチーン!

「女だからってなめんじゃないわよ!私なら、そんじょそこらの男なんて必殺の瞬殺だからね!!」

その言葉に腹立てたのか、怖い顔の男は剣を抜く。

「へぇ…腕に相当の自信があるみてぇだな。そこまで言うんだったら相手してやる…俺に認めさせてみろ。そうすりゃあ考えてやらんこともねぇ」

「お、おい。トシ…」

「上等だこらぁ!」




こうして
挑発に乗りっぱなしの一騎討ちが始まった。

Re: 銀魂 留め置かまし大和魂 ( No.6 )
日時: 2012/04/11 23:34
名前: もも風 (ID: YTT42QuR)


其の四



美津side

こんな人通りが多いデパートの前では戦えない、と。
私は真選組の屯所の庭まで案内された。

「真選組副長、土方十四郎だ」

「ふ…副長ぉ!?」

え、てことは…真選組で二番目に偉い人?
うわぁ、まじか。

「どうした?臆したか?」

土方さんは不適に笑う。
私は、この挑発には乗れなかった。むしろ…

「ううん。副長が相手してくれるなんて光栄だな」

副長ともなれば剣の腕は真選組内でも指折りものだろう。
そんな相手と戦えるなんて、初めから私の腕を確信してくれてるのかもしれない。
私は、彼と向かい合わせに立ち、刀を抜く。
土方さんはその様子を食い入るように見ていた。

「そいつぁ、打刀じゃねぇな」

その目は、私の刀に向けている。

「へ?あぁ、そうそう。これは小刀。脇差ってやつかな」

普通の侍が使う打刀に比べて短い刀。それが脇差。
私はこの脇差をいつも愛用していた。

「いいのか?それで負けても俺ぁ知らねぇぞ」

打刀より短いということは、打刀より間合いが狭いということ。
当然、相手よりも不利になる。

…常識ならね

「いいの、いいの。敵の刀がどうであれ、気にするこたぁ無いっすよ」

むしろ、これがいい。

土方さんも納得してくれたらしく、両者構える。



……土方さんの気迫がピリピリ伝わってくる。
やっぱりこの人、強い人なんだなぁ。

そのまま睨めっこしてても始まらないので、私から仕掛けた。

「っ!?」

しかし、彼の機転は早く、一撃目は受け止められてしまう。




私は昔から誰よりも身軽だった。
相手が私に斬りかかる時には、いつの間にか斬られている。
目にもとまらぬ速さで戦場を駆け、刀を振るう。
だから私には間合いをあまり考えなくてもよかった。
逆に、女の私には打刀は重い。
速さを追求するなら、重い打刀より、軽い小刀の脇差の方が都合が良かった。




だけど…

(すごい…)

やっぱり、強い人には止められてしまうもんなんだな。

私はつば迫り合いになる前に後ろに退いた。

つば迫り合いになれば、力の弱い女の私が負ける。
悔しいけど、そんなもんだよね。

「何だぁ?これで終いか」

「んなわけないでしょ!?こっからよ!」

っこいつ。いちいち腹立つ!

隙があるわけじゃないから、どこから攻めてもきっとこの人なら受け止める。
あの守りを破るなら、より強い打撃を打つか、もっと速く動かないといけない。
どうするか…

思考を巡らせていると、今度は土方さんが攻めてきた。

(真正面から!?)

彼は何か仕掛けるわけでなく、そのまま突っ込んできた。
私はそれを受け、弾く…

…つもりだったけど
彼の一撃は思ったより強く、受けた瞬間に手が痺れた。

その一瞬のひるみを逃さず、土方さんの刀が振られる。

私はそれを紙一重で避けると、一太刀振るって体勢が崩れた土方さんにタックルを喰らわせる。

「わっ…!」

「く!!」

両者とも地面に転ぶ。
こうなれば、相手よりも早く体勢を立て直した方の勝ちだ。

(よし…)

こういうのは誰よりも得意。
私は素早く起き上がり、まだ痺れが残る右手でしっかりと脇差を掴み、土方さんに向けた。


   —カキィィン—


!!

何が起こったのか分からず、立ち尽くした。

「トシの勝ちだな」

横であのゴリラ男が言う。




私はまだ立ち上がらない土方さんに刀を向けた。
これで勝ちだと思った。
だけど、次の瞬間に私の右手には脇差は無く、弾かれて地面に突き刺さっていた。

あの時、土方さんは地面に膝がついたまま、私が向けた剣を素早く弾き飛ばした。…らしい。


てことは…

「私、負けたの?」

今の現状に信じられなかった。

「あーあ。どうせなら、そのまま土方さんを斬っちまえば良かったのに」

「おい。どういう意味だ総悟」

二人が話し始めたのを横目で見ていた。
するとゴリラ男が気を使ってくれたらしく…

「落ち込むな。トシをあそこまで追い詰めたんだ、立派なもんだ」

「そんなんで立ち直ると思ってるんですか?負けは負けですよ」

はぁ〜…凹むなぁ。
晋助になんて言おう。

でも、仕方ないなよね。
負けたもんは負けたんだから。

「どうもご迷惑をお掛けしました。私のことは蛇に噛まれたとでも思って、忘れて…」

「何言ってんだ」

私が言い終える前に土方さんが口を挟んだ。

「勝手に真選組に入りてぇって勝負しかけておきながら、今度は勝手に忘れろか?」

…いや、勝負しかけてきたのはあんたでしょ。

「だって、私負けて…」

「俺は、認めさせてみろっつった気がするが」

「へ??」

あれ?そうだっけ??

「やるねぇ土方さん。いつからそんなツンデレになったんですかぃ?」

「誰がツンデレだ!?」

………。

「いいんだなトシ」

ゴリラ男が土方さんに確認する。
そして、彼ははっきりとこう言った。

「いいか?余計な真似はすんなよ。怪しい行動をとったら、迷わず斬るからな」


あっ…

「ありがとうございます!!」




こうして、滝野美津の真選組間者生活が始まった。


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