二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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  inzm ——愛する君に伝えよう、
日時: 2012/07/13 21:35
名前: 舞雪 (ID: 6kwRIGzI)

    


          ——わたしの言葉が意味をもたないのならば、せめて君に伝えよう?——







はじめまして、舞雪といいます。
またまたスレッドを立ててしまいました。懲りない奴なんですよ〜・・・((
今回はアニメ沿いしかもあんまり見てない第一期にしたい———! ですね! というかします!

超苦手な恋愛系です。
改稿が無駄に多いのは仕方な痛い痛い!
・・・ってことで、まあよろしくお願いします。



      主スレ = 『<inzmGO> 永遠の眠り姫......』










  第一章:やっと出会えた君たちへ

(1)アイタイヨ >>1
(2)答えが自ずからでるまでのカウントダウン >>2
(3)確かに軌道は狂いはじめていて >>3




12/07/03 蒸し暑い妹の部屋から

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Re:   inzm ——愛する君に伝えよう、 ( No.1 )
日時: 2012/07/03 21:14
名前: 舞雪 (ID: 6kwRIGzI)

   第一章:やっと出会えた君たちへ




(1)アイタイヨ

















  好きだった。普通の女の子として。







「———白鳥? なんで泣いてるんだ、」




 あのとき。
 わたしがどうしても堪えきれなくなって泣いちゃったとき。
 気づいてくれたのは君だけだったね、まあそれは、ただ単に今まで君が知らなかったからなのかもしれないけれど。


 独りぼっちで、誰もいなくなって、鍵のかかった教室の隅の隅で、警備員さんが巡回する足音を聞きながら、うずくまってるのはしんどかった。
 でもそうしろって言われてたから動けなかった。横に置いた鞄に寄り添うように、バカみたいに三角座りするわたし。
 明日一番に登校してきたクラスの子に見つかるまで動くな、そういうゲームなんだって。
 もし失敗して先生か何かに見つかったら怒られるのはどうせわたしだったし。逆らう理由はなかった。家に帰るのも嫌だったから。
 このまま夜を過ごすんだ。そう思ってた。



 だけど、



  




 まだ教室の時計が『7』もさしていない時間に扉が開いた。





 どく。心臓の鼓動がはっきりと聞こえる。

  
 

 

 顔を出したい。誰かに見つけてほしい。
                               ———合判した感情がわたしを苦しめる。
 顔を出しては駄目。見つかりたくない。










 ぎゅっと目を瞑ってからどれだけ時間が経ったんだろう。
 扉は開いたときよりもゆっくりと閉まった。誰かはわたしに気づかずに帰ってしまった。
 永遠に続くかと思うくらい長かったし、でも、時計はさっきとほとんど同じところをさしていた。
 ふう、と一息つく。
 と途端に視界が歪んできた。

 何したかったんだろう。何してほしかったんだろう。

 溢れだす熱い何かが制服の胸の部分を濡らす。
 我慢してもしきれない嗚咽がさらにその熱い何かが流れ出すのをそそる。
  




「う・・・うぐぅ・・・ッ」




 本日二回目の涙というやつだ。
 昼休みには君が慰めてくれたけど、今は居ない。心臓が苦しい。

  
 痛い。


 怖い。


 止めて。





 幻聴だろうか、こつっこつっと先ほどの警備員さんよりも軽い足音が聞こえたような。
 うずくまっている真っ暗闇のなかでは何も見えない。
 否、わたしが見ようとしないだけなんだけどね、





 あはは。


 わたし、遂にあたまがおかしくなっちゃったのかな。


 あったかい。それでいて確かな形がある。



 あれあれなんだかおかしいな。

 これじゃあまるで———誰かがわたしを抱きしめてるみたいじゃない。










「・・・ごめんよ白鳥。俺が気づいてやるべきだったな、すまない」


「ご、豪炎寺くんなの・・・?」




 涙を袖で拭くこともせずに顔を上げると、そこにいたのは幻なんかじゃない、本当の、君だった。
 力強い腕で抱きしめられて。君のあたたかさが直に伝わってきて。

 ごめん、謝らなきゃいけないのはわたしのほうだ。

 口にだそうとしたけど言葉にならなかった。

 その姿は君の目には苦しんでいるように映ったのかもしれない。もっと強く抱きしめる君。



「ひ、昼休み、は・・・ぐっ・・・」



 無理するな、そう言う君の顔はすぐそこにあった。

 
  



 なんで泣いてるんだ、掃除用具置き場にしゃがみ込むわたしの隣に座って尋ねてきたのが君だったから恥ずかしくて逃げた。

 正直言うとずっと君を見てたから。

 サッカー部のみんなと楽しそうに話してる君。
 真剣な目をしてサッカーしてる君。
 わたしなら絶対に挫折してしまいそうな長編小説を楽々と読みきってしまう君。
 悠然と廊下を闊歩する君。


 ———そんな君が全部大好きだったんだ。







「わかってるから。心配しなくてもいい、俺が助けてやる」



 わたしの目をしっかり見つめる君を見上げて、まだ零れてくる涙も気にせずに頷く。
 今喋ったらきっと言葉にならないだろう。
 そう思っていても声を出そうとしてしまうわたしを制御するかのように、君は優しい微笑みを浮かべながら目をかるく閉じ首を横に振った。



「もうそのことは忘れろ。じゃあ・・・帰ろうか」


Re:   inzm ——愛する君に伝えよう、 ( No.2 )
日時: 2012/07/04 14:44
名前: 舞雪 (ID: 6kwRIGzI)

(2)答えが自ずからでるまでのカウントダウン

















 君が職員室に寄っているのを待ってから、一緒に校舎を出た。
 何も話さずに黙々と歩く。もう七時はとっくの昔に過ぎたのだろうか、暗闇に二人分の靴音だけが響く。



「・・・時間は大丈夫なのか?」


 交差点の信号待ちで立ち止まり、赤いLEDの光のほうを向きながらふいに尋ねられる。

 お母さんもお父さんもきっとわたしのことなんか心配してやしない。
 鞄の取っ手を持った両手に無意識に力が入る。この中にある携帯に電話もメールもしてこないのがその証拠だ。



「してないよ。お母さんたちもまだ仕事のはずだから」

「そうか、」


 心配をかけない為の嘘だったけど、やっと普通らしい声が出せたことにほっとする。
 いつもはクールな君も、少し笑いを堪えるように言った。



「じゃあ公園に寄らないか?」



 わたしは久しぶりの笑みと同時に、いいよ、と返事をする。
 信号が青になり、帰り道の右とは反対の、薄暗い左の道へと抜ける。
 なんだか不思議な心地だ。今日の今日まで恋焦がれ続けていた豪炎寺修也くんがここにいる。わたしのすぐ隣に、肩がぶつかりそうなくらい近くに。
 商店街から遠ざかるにつれて、だんだんと電灯が少なくなってきた。
 目に見える範囲でところどころにぽつんと配置されている様が少し物悲しい。
  
 そのまま、何も喋らずに、どれくらい歩いたのだろうか。
  
 公園———正しくは河川敷———のサッカーコートが階段の下にひっそりと佇んでいる。

 わ、と驚いたように小さく口を開けたわたしに君が言う。



「おまえの家は向こうのほうだから、こっちの道は知らなかっただろう」


 なんていうんだろう。自慢げ、というよりかは懐かしい表情でここから遠くを眺める。


「うん・・・でも、こんな場所があるのも知らなかった」

「フッ、そうか」



 わたしもそっちに顔を向けると、川が流れていた。
 月の光がきらきらと反射している。
 またしても声を上げたわたしを置いて君は階段へ足を踏み出した。風が吹いてはためく、鮮やかなオレンジ色をしたパーカのフード。それを目印に後を追いかけるようにして階段を下りる。
 足元に注意していたから気がつかなかったけど、下りた先には。


 ———不思議な光景がわたしを待っていた。



 これは一体全体どういうことなんだろうか。

 足がすくんでしまったわたしに構わず、君は、そこで思い思いに時を過ごしていた彼らのなかに混じる。
 サッカーコートに散らばった彼らはみんな、わたしを歓迎しているみたいだ。

 夢なのかな。これは夢。再び手に力が入る。
 これは夢。だから、こんなことで泣いてちゃ駄目。



 満足そうに歯を見せてにかっと笑う人。

 照れくさそうに顔を背ける人。

 わたしの名前を呼びながら駆け寄ってくる人。



 そこには、今までずうっと憧れていた君と、君たちがいた。








「———待ってたぜ、白鳥っ!」




「白鳥さーんっ!」




 なんでだろう、懐かしい面子。懐かしい笑顔。懐かしい声に懐かしい景色。


 ———あたまのなかでくるくるまわるそれがパズルのピースのように合致したときには、もう涙が堪えきれなくなっていた。


Re:   inzm ——愛する君に伝えよう、 ( No.3 )
日時: 2012/07/13 21:38
名前: 舞雪 (ID: 6kwRIGzI)

(3)確かに軌道は狂いはじめていて

















「なあ白鳥、この問題ってどうなんだ?」




 クラスの女子たちのナイショ話をわざとらしく遮り隣の席の円堂くんが話しかけてくる。
 まあこの人の場合は、ただの偶然なんだろう。
 自然と浮かんだ笑みで差し出された問題用紙を受け取り、彼がいう問題に目を通す。







  ———昨日。

 やっとのことで泣き止んだわたしをベンチに座らせ、円堂くんたちは立ったまま説明してみせた。

  
 以前からわたしに対するいじめが気になっていたこと。
 わたしのお母さんから、同じ幼稚園だった円堂くんに、「愛玲がいない」と電話がいったこと。
 びっくりした円堂くんのお母さんが円堂くんの友達に電話をまわしたこと。



「良かったよ、豪炎寺が言ったとおり学校にいてさ!」


 そんな感じで今に至る。
 あのとき一緒にいたのは豪炎寺くん、円堂くん、風丸くん、木野さん、半田くん、染岡くん、それから新聞部の一年生。

 今日、ゲームを放棄したわたしの噂が聞こえてくる度に、彼らは気にかけ喋りかけてくれる。
  
 いい人たちだ。







「えっとね、ここ。かけるのを忘れてるよ、」


「・・・ほんとだ! サンキュー白鳥!」



 お得意の満面の笑みで答えてくれた円堂くん。
 問題用紙を大事そうに机になおしたつもりが、わたしのほうを見ながらなおしたもので、それは机のなかでグシャッと潰れているのが見て取れる。
 まあ本人はいいようだから、これでいいんだろう。

 気をつけていても口元が緩んでしまう。


 彼の笑顔はまるでお日様のよう。まわりを照らす太陽そのもの。





“———サッカーやろうぜっ!!”


  
 しかしさすが太陽というだけあって、まわりへの影響力がとてつもない。

 わたしはずっと見てたからわかる。

 円堂守は危険人物だ。わたしにとっても、みんなにとっても。

 その『みんな』のなかに彼自身が含まれているのが少し皮肉だけど、ね。


  
 虚無感のなか、醒めきった自分が真顔に戻っていくのがわかった。


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