二次創作小説(紙ほか)
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.103 )
- 日時: 2013/03/02 23:04
- 名前: ノヴァ (ID: uY/SLz6f)
第4話「〜ここが魔界!? 雷夢のゴスパン〜」
「ライム〜、こっち向いて〜!」
ミカに頼まれ、雷夢は振り向きながら視線を向ける。
パシャパシャ!
その瞬間に、ミカがカメラのシャッターを切る。
そう、今雷夢は鳳家でミカとテトとアテナ、そして未來を観客にファッションショーの真っ最中。
ただし女装の。
「おおっ! このアングルは……ライム〜ちょっとポーズ変えてくれる? もっとこう……恥ずかしそうに、照れ隠しみたいな!」
「こ、こう……?」
雷夢は裾を押し下げるようにスカートを握ると、恥ずかしげな表情をしてみせる。再びカメラのシャッター音が鳴り響く。
「そうそう、そんな感じ! じゃあ次いこうか!」
「雷夢さん、次はこれです」
アテナが持ってきたのは、淡い青色のワンピース。いったいこれで何着目なのだろう。
「いい加減にしてよ! 写真撮られるなんて聞いてないよ!」
雷夢が涙を浮かべて反論すると、テトが不敵な笑みで写真を見せびらかした。
「いいのかのう、雷夢殿? 雷夢殿が写真撮らせるのを渋ると……この写真を学校中にばらまいてやるのじゃ!」
「な……お前っ!」
「別に雷夢殿が自分の恥ずかしい姿を皆に見せたいのなら構わんが……」
「ーーーーっ!! わかったよ着ればいいんだろ着れば!」
雷夢は激昂すると裏の試着室に入った。
それにしても、テトの尻尾を触っただけでこの仕打ちはひどい。どれだけテトは自分の尻尾を掴まれたくないのだろうか。
そんなこんなで着替えを済ませると、雷夢は試着室を出た。
「やっぱり可愛い〜! さっそく写真撮っちゃうね〜」
雷夢がポーズをとると、さっそくミカは写真に収め始めた。
自分の醜態を晒すわけにはいかないので、今はミカとテトに従うしかない。次いでに言うと恥ずかしい。自分でもやりたくないポーズをとらされているので、いわば悔しい。
「(覚えてろよ……。いつか絶対後悔させてやるからな……)」
そんなことを思いながら、雷夢は黙々とポーズをとり続けた。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.104 )
- 日時: 2013/03/03 10:39
- 名前: ノヴァ (ID: 6.Nua64i)
「雷夢さん、次はこっちに来てください」
「今度は何させるつもりだよ……」
渋々三人についていくと、たどり着いたのは巨大なプール。恐らくよく見る25メートルプールの数倍の面積があるだろう。しかも、あちらこちらに様々な設備を施されたエリアがある。砂場があったり、人工の波を起こしていたりとバリエーションが豊富だ。
「てか、この時期にプールに水があるって……。そういやここ暑くない?」
「それはもちろん、常夏を再現していますから温風を送っていましてよ」
「それ電気代半端なくね?」
なにしろこの広さを常夏クラスまでに暖める温風だ。電気代もばかにならないはずだ。
「大丈夫です、鳳邸は自家発電ですから電気代は問題ありません。火力発電ですので、そこから出る温風で暖めておりますから地球にも優しいですよ」
「火力発電って個人が持てるようなものじゃない気がするんだけど」
その前に二酸化炭素とかはどうしているのだろうか。火力発電なら燃焼させた時の風でタービンを回して発電するから、二酸化炭素がてんこ盛りのはずだ。
「雷夢さん、ちょっとこっち向いてください」
「えっ、なに……んぐうっ!」
雷夢がアテナの方を向くと、いきなり口に何かを突っ込まれた。さらにその中から口に何かが注がれていく。
ごくごくごく……。
そして飲んでしまう。
「……っはぁ! な、なに飲ませたアテナ!?」
「へへ〜。これですよこれ」
「なんだ……ってそれあのときのドリンク!」
アテナが笑顔で持っているそれは、紛れもなく月曜に雷夢が飲んで一騒動起こすはめになったあのドリンクだ。
「それ、確か限定発売とか言ってなかったか?」
「いや〜、この前楽天国市場覗いたら売ってたんですよ。なんでも人気があったので通常販売することになったそうです」
「お前はまた僕を一週間性転換させる気か!」
この前飲んだそれは、効き目が一週間あったためにどう誤魔化すかを必死で考えたのだ。どうにか元に戻るドリンクを飲んだから二日で済んだものの。
「大丈夫ですよ。これ一時間用ですから、すぐに戻りますしすぐに効果出ますよ」
「まさかそんな早くに……」
雷夢は猛烈に嫌な予感を感じ、視線を自分の身体に向けてみた。
胸が出ている。
アテナに背を向けてパンツの中を確認したが、やはり無い。
「さてさて、これからが本番ですよ……」
後ろから嫌な視線を感じ、ぎこちない動きで雷夢が振り向くと、そこには下心丸出しの眼で雷夢に迫るアテナ、テト、ミカがいた。
「雷夢さぁ〜ん……覚悟ぉ!」
「おわっ!?」
アテナに飛び掛かられ、雷夢は床に押し倒された。その隙を逃さず、テトとミカが両腕を押さえつける。
「アテナ殿、固定完了なのじゃ!」
「こっちもオッケーだよ」
「じゃあ、さっそく……」
そう言うと、アテナは雷夢の服を脱がせ始めた。
「ちょっ、何すんだよ、離せぇ!」
「雷夢さん動かないで……。上手く脱がせられませんよ……」
遂には雷夢の下着にまでアテナの手が浸入してきた。それにしてもテトとミカはどんな力で雷夢を押さえつけてるのだろうか。以前鳳家のメイドが十数人でやっと着替えさせた自分をたった二人で押さえつけてるのだ。しかも身動きが全くとれない。
「それでは脱ぎ脱ぎしましょうね〜♪」
「ちょっ、まっ……あーーーーーっ!!」
「おぉっ……これはすごいっ……!」
「雷夢殿可愛すぎるのじゃ……」
アテナとテトが、眼を輝かせて雷夢を見ている。
ミカは雷夢の目の前に置いてある鏡の横でうっとりした表情をしている。
その鏡に映っているのは、すらりとした肢体を輝かせ、あるものを身に付けて立っている雷夢。
そのあるものとは、ピンクのビキニ。
ぶっちいぃぃぃんっ!!
雷夢の堪忍袋の緒が、数本まとめてぶったぎれた。
「お前らあぁぁぁぁっ!!」
『ぎぇぇぇっ!?』
いったい自分でもどこから取り出したのかわからないが、雷夢はおびただしい数の竹串を三人に投擲し、メッタ刺しにする。
「ら、雷夢さんどうしたんですか!?」
「ま、まさかキレちゃった!?」
「……その通りだ。報いを受けてもらう」
雷夢が邪悪なオーラを発しながら近づくと、その前にテトが立ちはだかった。
「雷夢殿! これ以上抵抗するとこの写真を……」
「それがどうした」
雷夢は竹串を数十本握ると、テトが持っている写真に向けて打ち出した。竹串は狙い通り、全て写真を貫通して写真を細切れにしていく。そして残ったのはテトが握っていた部分だけ。あとは床で細かいごみくずと化している。
「あ……あ…………」
唯一の最終兵器を失ったテトが、絶望したかのように怯えだす。
「雷夢さんごめんなさい! 私達が悪かったです、やり過ぎました!」
「だ、だからその竹串を早く……」
「全身に突き刺して欲しいか? なら今すぐにやってやるよ」
「ライム落ち着いて……ねぇ、お願いだから……」
ミカの涙目の訴えも、雷夢は聞き入れることはなかった。
『いいいいいやあぁぁぁぁっ!!?』
鳳邸のプールに三人の悲鳴が響き、そして静寂が訪れた。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.105 )
- 日時: 2013/03/04 20:17
- 名前: ノヴァ (ID: HDoKOx/N)
「まったく、なんで私がわざわざ迎えに行かなきゃなんねぇんだよ……」
ギューリットは鳳邸の長い廊下を歩いていた。アテナとテトが昼過ぎには迎えに来てくれとの事だったからわざわざ迎えに来てやったのだ。
そうして歩いていると、アテナ達がいるといっていたプールにたどり着いた。
「ここか。おーい、アテナ、テト、雷夢! 迎えに……」
ギューリットは入り口を開けて絶句した。目の前に見えるのは、無惨にも服や身体をズタズタにされ床に磔にされているテト、アテナ、そしてミカだった。
「あ、ギューリット。こっちも片付けが終わったとこ」
磔になっている面々の傍らに、いつもの服を来ている雷夢が立っていた。
「雷夢……これどういう事だよ……」
「えぐっ……えぐっ……雷夢さんをみんなで女装させてて……ドリンク飲ませて水着を着せてあげたら……堪忍袋の緒が切れて……こんな状況です……」
磔にされたまま、アテナが涙混じりで説明する。元はといえば自分達が調子に乗ったのがいけないのだ。
「ま、それなりに反省してるみたいだし、磔はここまでにしといてやる」
『すみませんでした……』
雷夢は三人の縁に沿って刺さっている竹串を抜いてやる。
「まったく、僕を怒らせるとどうなるかわかったか」
『充分に分かりました……』
「じゃあさっさと帰るぞ。飯が待ってるからな」
そう言ったギューリットに続いて、雷夢達は鳳邸をあとにした。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.106 )
- 日時: 2013/03/05 21:29
- 名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
「さて、午後から何するかな……」
雷夢は自分の部屋で悩んでいた。本来なら午後までファッションショーのはずだったらしいが、雷夢の暴走により午前中に終了したのだ。
そしてその空いた時間をどうやって潰そうかと悩んでいたのだ。
「なんか暇潰しになるものないかな……」
仕方がないので、本でも読むことにした。手に取ったのは以前麗奈がくれたオカルト本だ。そういえば麗奈とはあれ以来話すことがあまりない。
「ら、雷夢さん〜……」
「ん、どうしたアテナ?」
アテナがえらくどんよりした顔で入ってきた。
先程の竹串がこたえたのだろうか。
「なんか……エンジェル・ビットの様子が……」
「エンジェル・ビット? ちょっと展開してくれるか?」
そう言うとアテナはエンジェル・ビットを背中に広げた。
その中に雷夢は何かの違和感を感じた。
「あっ、このビット……」
雷夢が手に取ったビットは、他の物と違い火花が時々散っている。しかもよくよく見てみると、所々に煙が出たり火花が散っている物がかいまみえる。
その数、計16機もあった。
「もしかして昼前の竹串でかな?」
「いえ、違和感は昨日から感じてたんですけど……。先程からなんかだるくなってきて……」
昨日からとなると、雷夢の竹串が原因ではないらしい。そうなると考えられるのは。
「アテナ、ちょっとエンジェル・ビット分解してみて」
「はい? 別によろしいですけど……」
そう言うとアテナは、どこから取り出したのか工具箱を片手にエンジェル・ビットの分解を始めた。
そしてその中から出てきたのは。
……黒焦げになったナメクジの死骸。
「これのせいだな」
「ですね」
念のため異常が認められた他のエンジェル・ビットを解体してみると、出てくるわ出てくるわ。G様に百足に蜘蛛にその他大勢の虫の死骸。
「これ……ここまで壊れてるとパーツを手にいれないと修理ができないですね」
「じゃあ、パーツ手にいれないと戦闘に支障が出るかもな……。で、そのパーツってどこ売ってるんだ?」
「魔界です」
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.107 )
- 日時: 2013/03/06 18:11
- 名前: ノヴァ (ID: /B3FYnni)
「なるほど。アテナのエンジェル・ビットを修理するのに魔界へ材料調達に行かないといけないのか……」
雷夢とアテナは、リビングにいたギューリットにエンジェル・ビットの件を伝えた。しばらくギューリットは怪訝な顔で悩んでいたが、不意に口を開いた。
「じゃあ、魔界に行くか!」
「い、いいんですか!?」
「早めに修理しないと、戦力が下がるからな。早いとこ魔界に材料調達だ!」
「よかったじゃんアテナ。それじゃ僕はこれで」
雷夢は回れ右すると自分の部屋に向かって歩き出した。
「ちょっと待て雷夢、お前もこい」
しかしギューリットに頭を掴まれまた回れ右をされる。つまりまたギューリットの方を向くわけで。
「え、アテナの事情だから僕はいいでしょ?」
なにも雷夢までついていくことはない。この件は本元のアテナと魔界の案内をするギューリットだけが行けばいいことなのだ。つまり雷夢はついていく需要がない。
「アホ! バカ! マヌケ! おたんこなす! すっとこどっこい! 魔界に行く滅多にない機会だぞ。お前がついていったらその分お得なんだよ!」
「なんで僕がついていくのがお得なのさ」
「お前の社会見学だよ。魔界には行ったことないだろ?」
確かに行ったことはないが、魔界と言って連想するものは。
1・闇に包まれた空間。
2・荒れ放題の大地。
3・緑がまったくない山々。
4・所々に骸骨が転がっている。
まったくいいイメージがない。そんなところに行っても雷夢が学ぶものなど何一つない。気がおかしくなるだけだ。
「お前魔界をどんなイメージに思ってるんだ……。別にこっちとはなんら変わりはないよ。ただ自然や建物が外国っぽいだけ」
「その発言が正しければいいんだけど……」
雷夢が祈るのは、ただ正気で帰ってこれるかどうかだけだ。
「それじゃ、さっそく行きましょうか」
「それなら我に任せてほしいのじゃ」
雷夢達が振り向くと、いつの間にかテトが立っていた。まさかこいつ猫だから気配を消せるのではないだろうか。
「任せてほしいって、どういうことだ?」
ギューリットが尋ねると、テトは顔色を変えずに言い返した。
「我の力なら魔法を使わずとも魔界に行けるのじゃ」
場所は変わって黒鳥家の庭。そこに雷夢達一同は集結していた。
「てか、魔法で魔界行けるからテトは必要なくね?」
雷夢が聞くと、テトは指を横に振って答えた。
「それは違うのじゃ雷夢殿。魔界に魔法で行くには条件があるのじゃ」
「条件?」
「あ、そうか『サンザシの木』! あれがないと魔界に行けねぇ!?」
何やら聞き慣れない単語が出てきたが、どういうことなのだろうか。
「どういうこと、ギューリット?」
「魔界に行くにはサンザシの木に囲まれた空間の中で瞬間移動魔法をかけないといけないんだ……。忘れてたぜ……」
「そうだったんだ……。じゃあどうすんのさ?」
「だから我の力が必要なのじゃ!」
テトがドンと胸を張って主張した。
「どんな力だよ、それ」
「まぁ見とくのじゃ」
そう言うとテトは雷夢達に背を向けて手を突き出した。
「ぬぬぬ…………っ!」
そのとたんに、雷夢達の前で信じられないことが起きた。テトが手を突き出した辺りに、裂け目が生じ始めたのだ。
テトはそこに手を突っ込むと、重い扉を開くように力を込めて押し広げていく。
「ふんぬーーーーっ!!」
ふとテトの腕を見ると、血管が何本も浮き出ている。相当の力を出している証拠だ。
「てーーーーーーいっ!!」
テトが腕を左右いっぱいに広げると、裂け目がこれでもかという位に広がった。見ると裂け目の先には違う景色が広がっている。
「ふぅ……。接続完了じゃ!」
『すごぉい…………』
雷夢達はただただ呆然としていた。目の前での出来事が飲み込めない。
「テト……これってどういう……?」
「うむ、人間界と魔界の通路を開通させて強引に繋げたのじゃ。これで魔界に行けるのじゃ!」
「よし、それじゃ……ってちょっと待っててくれ」
ギューリットはそう言い家の中に戻ったかと思うと、すぐに風呂敷に包まれた何かを持って戻ってきた。
「よし、それじゃ行くぞ!」
ギューリットが持ってきた物の確認はともかく、雷夢達は魔界への通路に足を踏み入れた。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜※コメ待ってます! ( No.108 )
- 日時: 2013/03/07 17:08
- 名前: ノヴァ (ID: HDoKOx/N)
通路を抜けると、そこはどこかの路地裏だった。先の方で道を行き交う人達が見え隠れする。
「ここ魔界なの? なんか普通の町の路地裏にしか見えないんだけど」
「路地裏だからそうみえんだよ。とにかく表に出るぞ」
「あ、ギューリット殿。ちょっと待ってくれるかの?」
そう言うとテトは、先程作った通路の端を掴んで閉じ始めた。すると通路はどんどん狭くなり、遂には消えた。
「ふぅ……。こうしておかぬと魔界警察がうるさくてのう」
「じゃあ、行きましょう!」
そうして路地裏から表通りに出ると、目の前には西洋のような街並みが広がっていた。白い雲が流れる青く澄んだ空、きれいな石畳の道路、緑が茂る川沿い。どれをとっても雷夢が想像していた物とは全く正反対だ。
「ここは……火の国だな。結構活気あるじゃねぇか」
「火の国? ってことは他にも国があるの?」
「そうそう。ここ火の国の他にも、『涙の国』、『死の国』、『悪霊の国』とあるのじゃ。で、ここは火の国の言うなれば城下町じゃ。あそこに城が見えるじゃろ?」
雷夢がテトの指差す方向を見ると、そこには巨大な城が建っていた。距離的に恐らくは郊外にあるのだろう。
「あそこで火の国の王プルトン様がここを統治しておるのじゃ」
「へぇ、結構詳しいんだね」
「これでも魔獣の頃は情報収集の仕事をしておったからの、色々知識はあるのじゃ」
「よし。じゃあ私とアテナは材料調達行ってくるから、お前らはそこら辺りでゆっくりしとけ。あとこれを……」
ギューリットは風呂敷の中に手を突っ込むと、なぜか釜飯の容器を取り出した。
「なんで釜飯の容器なの?」
「あのな、魔界では釜飯の容器は高級品なんだよ。魔界は基本物々交換で物を手にいれるから、それさえあれば大概の物は手に入れられるんだよ! ついでにほれ、二つ持ってけ」
ギューリットがさらに雷夢に釜飯の容器を渡す。これはこれでかさばって持ちづらいし重い。こういう理由である意味高級品なのかもしれない。
「それじゃ、行くぞアテナ」
「わかりましたギューリットさん。雷夢さん、また後で!」
そういい残すと、二人は通りを曲がって行ってしまった。
「じゃあ我らも行こうかの、雷夢殿!」
こうして始まった雷夢とテトのお出かけだが、色々な物を見て回ったり、買い物をしたりと、結構楽しい物だ。食事だけはご遠慮させてもらったが。何故ならば、イモリの串焼きやらカエルの干物、果てはガラガラヘビの丸焼きだ。食う気が逆に失せる。
「ところで雷夢殿」
「ん、どうしたテト?」
「こうしていると……何だかカップルみたいじゃの!」
「そ……そうかな……?」
確かに、男女二人で歩いている今の雷夢達は、他人から見ればカップルに見られるかもしれない。仲良くしているからなおさらだ。
「へへ〜……えいっ!」
「ちょっ、テト!?」
いきなりテトが笑顔で腕を組んできた。おまけに身体を引っ付けてくる。
女の子からこんなことをされるのは初めてなので、雷夢は顔が朱色に染まってしまう。
「これならもっとカップルに見えるであろう?」
「あ……うん、そうかもな……」
何だか恥ずかしい。しかし、何故だか悪くない感覚だ。別にテトとは恋人関係ではないのだが。
すると突然テトが立ち止まった。
腕を組んでいたので雷夢はよろけてしまう。
「……っと、どうしたテト?」
「いや、今なんか路地に何か見えた気がしての……」
そう言ってテトは来た道を戻り始めた。そして、先程通り過ぎた路地に入っていく。
「あっ! 雷夢殿、来てくれるかの!?」
テトが驚いたような声で雷夢を呼び立てた。
雷夢が路地裏に入ると、テトがこっちに向かって手を降っている。急いでそこに向かうと、そこには少女が一人倒れていた。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜※コメ待ってます! ( No.109 )
- 日時: 2013/03/08 07:35
- 名前: ソラ (ID: JnbcEu1t)
いつもながら続きが気になる展開ですね!!
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜※コメ待ってます! ( No.110 )
- 日時: 2013/03/08 18:34
- 名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)
ソラさんお久しぶりです!
よし、ソラさんやこれを見てくれる人の為に書くぞ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おい、大丈夫か!?」
雷夢は女の子に駆け寄り、脈を計ると同時に女の子の身体を揺すって呼び掛けた。
幸いなことに脈はあるが、目を覚まさない。
「雷夢殿、こんなものが……」
テトが雷夢に何かを差し出した。どうやら名刺のようだ。恐らくこの子の物だろう。
<洋服専門店「ドレシッド」>
店主「■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■
名刺の下半分は汚れて見えないが、どうやらこの子は「ドレシッド」という店の関係者らしい。
「雷夢殿、その店この先にあるのじゃ!」
雷夢が女の子を背負ってテトの元へ行くと、確かに<洋服専門店「ドレシッド」>と書かれた看板が目についた。結構大きな店らしく、覗きこむと大量の洋服が目に入った。
「とりあえず、ここの店の人には悪いけどお邪魔しよう……」
雷夢とテトは女の子と共に店の中に入っていった。
「う……んっ…………」
「あっ、起きた!」
店の奥の畳の上で寝かせて数分、女の子が目を覚ました。
「あの……ここは……?」
「ドレシッドっていう店だよ。君、店の少し近くで倒れてたんだよ」
「あ、あなた達が助けてくださったんですか!? だとしたら感謝します! 私、『クラリス・ハルート』と言います」
女の子は深々と頭を下げて自己紹介してくれた。どこかで見たような顔だったが、名前を聞いて思い出した。ルパン三世の映画に出てきた女性、「クラリス」にそっくりだ。なんと言えばよいか、それをそのまま相似縮小した感じだ。大体、中学生以上高校生以下といった身体だ。
「僕は黒鳥雷夢。修行中の黒魔法使いなんだ」
「我はテトと申す。雷夢殿の従妹じゃ」
雷夢達が自己紹介すると、クラリスは顔を上げた。見るとその顔は涙で濡れていた。
「ど、どうしたの!?」
「すいません……見ず知らずの私を店まで運んでくださって……。いつもお客さまの為に頑張って働いて……その疲れで倒れたという自業自得だというのに……」
「そんなことないよ。さすがに人が倒れてたら助けないと。それに、お客さんの為に働いてるなら自業自得なんかじゃなくて、少しは休んだ方がいいっていう神様の慈悲の心配りなんだよきっと」
「おおっ、いいこと言うのぅ雷夢殿!」
雷夢はドヤ顔になるのを必死でこらえた。しかし言葉の効果はあったようで、クラリスは涙を拭って満面の笑顔を見せていた。
「ありがとうございます、元気をくださって! 疲れは取れましたから、仕事にかからないと……」
「じゃあ、僕たちも手伝うよ!」
靴を履いて奥に去ったクラリスの後ろ姿を、雷夢達は追いかけた。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜※コメ待ってます! ( No.111 )
- 日時: 2013/03/09 10:30
- 名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)
ドレシッドの仕事を手伝ってみてわかったが、三人がかりでもなかなか終わらない程の仕事量だ。クラリスはこれを毎日一人でやっていたというのだから、倒れるのは当然のことかもしれない。
服の出品や広い店内の掃除、商品に値札を付けたりと列挙していったらきりがない。
「ところで、なんで今日はお客さんが来ないの? もうお昼近くなのに」
「ああ、今日は定休日で店は閉めてるの。だからその間に仕事を終わらせておかないと……」
「どうせなら週休二日制にしたらよいのにのぅ」
テトがモップをかけながら提案したが、クラリスは額の汗を拭いながら首を横に振った。
「この店、結構いっぱいお客さんが来るんだけど、みんな常連さんで新しい服が出るのを楽しみにしてるの。だからその人達の期待に答えないといけなくて、週休一日制にしてるの」
「結構優しくて真面目なんだね。……よし、さっさと仕事終わらせるぞ!」
『おおーーーっ!!』
「や、やっと終わった……」
やっとのことでドレシッドの仕事が終了した。時計を見ると時刻は午後2時を過ぎた辺りだ。つまり延々三時間近く仕事をしていた計算になる。
「二人ともありがとう。そうだ、お礼に好きな服一着あげちゃう! 好きなの選んで!」
「え、いいのかの!? どれもこれもお高そうなものにしか見えんが……」
「いいのいいの! 二人に助けてもらった恩もあるし、試着も出来るから選んで選んで!」
クラリスに背中を押され、雷夢は渋々服売り場に足を運んだ。雷夢自身ファッションセンスは常人より少し低いだけだと思っている。どうもこうも母親からの遺伝らしい。かといって昔の母親や世界的に有名な配管工の兄弟みたいにオーバーオールなんぞは着ないが。
「へっくし!」
なんで急にくしゃみが? また花粉症かしら……。それとも風邪ひいたかな?
「風邪じゃないさ。くしゃみなんて誰でも何時でも起こるもんだよ」
京ったら机の向かい側でくすくす笑ってる。確かにくしゃみなんて誰でもするよね。気にしない気にしない。
「あ、そういえば明日は同窓会だったな。みんなどんな生活送ってるのか楽しみだ」
「じゃあ、京は明日は早く帰ってきてね。そうしないと同窓会来れないよ」
「それなら早く寝て明日早くに会社行かないと。仕事が山積みだからね」
「京なら終わるでしょ。さて、私も寝ますか……」
そうして私たちは寝室に向かった。ベッド買わなくて大丈夫かな……?
そうして歩いて見て回ったが、これといった服が見つからない。どれが自分に似合うかがわからない。
「あのさ、クラリス。僕にオススメの服とかある?」
そう言うと、クラリスは雷夢の身体をじろじろ見始めた。
「うーん……。雷夢くんに似合うこのサイズの服……。そうだ、あれがあった!」
そう叫ぶと、クラリスは店の奥に姿を消した。しかし程なくして何かを抱えて戻ってきた。
「これなんかどうかな?」
クラリスが持ってきたのは、黒と白の配色のゴスパンだった。背中と腰の部分に短いマントが付いており、ジーパンを膝上で切ったようなスボンもついている。どこか母親のゴスロリに似た部分も伺える。
全体的に見ると、紳士系とワイルド系、二つの系統が絶妙にマッチしている。
「…………よしゴスパン、これに決めた!」
「よかった〜、気に入ってもらえて。試着もしてみたら?」
試着室を探していると、クラリスが指を横に振ってみせた。
「試着室探さなくても、これで一発だよ。ルキウゲ・ルキウゲ・ハルートラーレ!」
次の瞬間、雷夢はゴスパンに着替え完了していた。さっきまで着ていた服は足元に落ちている。
「な、なにこれ!?」
「おしゃれ魔法よ。自分の好きな服に一瞬で着替えられるの。四級魔法だけど、雷夢くんの魔力なら充分に使えるわ。なんなら覚えてみる?」
「うん、覚えてみる!」
雷夢がクラリスの質問に即答した理由は、単にゴスパンの着替えかたがわからなかっただけなのだが。しかし、程なくして雷夢はおしゃれ魔法の習得に成功した。
ちなみにテトは、まだ服選びに悩んで店内を右往左往していた。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜※コメ待ってます! ( No.112 )
- 日時: 2013/03/09 15:45
- 名前: ノヴァ (ID: HDoKOx/N)
プルルル、プルルル……
テトと雷夢が服を選び終わり、クラリスと井戸端会議的な感じで話していると、雷夢のス魔ホに電話がかかってきた。画面を見ると、ギューリットからだ。
『おい、雷夢。今どこにいる?』
「じつは(ry……ってわけでドレシッドっていう店にいるよ」
紙面の都合で一部省かせていただきました。
『そんなことがあったのか。こっちの用事が終わったから、そろそろ帰るぞ。そっちに行くから待っとけ』
そう言って電話は切れた。いったい場所もわからないのにどうやって来るのだろうか。
「二人とも、これどうぞ」
そう言ってクラリスが持ってきたのは、心地よい香りを漂わせる紅茶だった。
「ごめんね、色々よくしてもらって」
「いいんですよ。冷めてしまいますからお早めに……」
雷夢とテトは砂糖を1〜2個入れると、紅茶を口に含んでみた。
なるほど、美味しい。香りと相まって、薄い味がほのかに口の中に広がる。年端のいったご婦人の気持ちがよくわかる。
いかん、なに美食家みたいになっているのだ。
「ほんとに美味しいのぅ、この紅茶!」
「よかった、気に入ってくれて! 私、仕事の合間に紅茶を飲むのがマイブームで、よく自分なりにブレンドしてるんだよ!」
「あ、そういえばあのゴスパン、冬になったら別のを買いに来るよ」
着てみて分かったが、あのゴスパンは布の表面積が少ない。付属品としてもらった十字が入ったハイソックスと、これまた十字が入ったアームカバーのようなものがあるが、それでも全体的に薄着で、膝や二の腕の一部が露出してしまう。こんなので冬を過ごせと言われたら明らかに凍死しそうだ。
「大丈夫だよ、そのゴスパンは季節に応じて性能が変わるから、夏は涼しく冬は暖かいよ!」
「このゴスパンは通販の布団かよ」
と、その時、店の入り口に誰か着たようだ。影が二つほど見える。
「おーい、雷夢。迎えに着たぞ!」
どうやらギューリットのおでましのようだ。
「じゃあ、僕たち迎えが着たみたいだから帰るね」
「そうなんだ……。また来てくれるかな?」
「いいとも!」
「正午の長寿番組か」
テトにツッコミをいれてやると、雷夢は席を立って入り口に向かった。テトもそれに続き、店の外に出ると来たときと同じように店の前の空間に通路を作った。
「それじゃ、またいつか!」
そう言って通路から人間界に出て通路を見ると、向こうでクラリスが言い表せない程の笑顔でこっちに向かって手を振っていた。
雷夢とテトも手を振り返すと、テトは通路を閉じた。
「それでは、エンジェル・ビットの修理に取りかかりますか! 雷夢さん、手伝いお願いできますか?」
「もちろん、手伝うよ!」
そう言って、雷夢達は家の中に入っていった。
時を同じくして、第二小の校門前。
そこに、一人の少年が立っていた。
「ここが第二小……。僕の長い……いや、終わることのないはずの人生の一ページになってくれるかな? そうでないと困る」
そう言って少年は歩き出すと、影に溶け込むようにその場から消え去った。
第4話「〜ここが魔界!? 雷夢のゴスパン〜」完
〜第5話に続く〜