二次創作小説(紙ほか)

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照二千突破!】 ( No.138 )
日時: 2013/04/03 23:20
名前: ノヴァ (ID: /B3FYnni)


第6話「〜UMAと雷夢と、時々ドラゴン〜」


暖かい朝日が射し込む黒鳥家。そこではいつものように、和やかな朝食が始まっている…………はずだった。
ダイニングルームに漂っているのは、空気と殺気。そして鋭い眼光だけだ。
部屋の片隅には、ギューリットとアテナが横たわっている。二人とも、ここで繰り広げられた戦いに破れたのだ。
机を挟んで相対するのは、雷夢とテト。二人だけ。
「さすがに『これ』は譲れないよ、テト」
「それはこっちの台詞ではないかのう? この戦いは我か雷夢殿のどちらかしか勝者はいない……。ならば我が勝つしかなかろう!」
並び立つ二人は、それぞれの武器を手に取った。
「くっ……このギューリット様が……『あれ』を手にできないとは……」
「あの二人……どちらが手にしてもおかしくないです……」
アテナとギューリットは、歴戦の強者二人を床から見上げ、一言口にすると再び意識を手放した。
「では行くのじゃ……」
「いつでもこい……」
二人は互いに精神を集中させる。そして一度の静寂が訪れたかに思えた。
『ううおぉぉぉぉっ!!』
二人は眼にも止まらぬ速さでその手にした武器を延ばした。


たった1つの鯛焼きに。


「最後の鯛焼きは僕のだ!」
「なにを申すか雷夢殿! この鯛焼きは我が食べてこそ真価を発揮するのじゃ!」
そう。黒鳥家一同が総力を結した戦いの火種になったのは、何を隠そう、1つ残った鯛焼きなのだ。
この鯛焼きはそこかしこで売られている鯛焼きではなく、未來が先日くれた最高級の鯛焼きなのだ。
未來曰く、予約は1年待ちとのことらしい。
それを雷夢達は食べていたのだが、最後に残った1つを巡り、4つ巴の戦いに発展したのだ。その中でギューリットとアテナは破れ去ったのだ。
「このっ……! いい加減に諦めろっ!」
「雷夢殿こそっ……!」
互いに鯛焼きを掴んだ箸を離そうとせず、一進一退の攻防が続いいた。
「なら奥の手を……。ていっ!」
雷夢はテトの口に向かってあるものを投げつけた。それはテトの口に見事に収まる。
「こ、これは……」
そのとたん、テトの鯛焼きを掴む力が弱まった。雷夢はその一瞬を逃さず、鯛焼きを自らの口に運びガッツポーズを決める。
「ら、雷夢どにょ〜。マタタビなんてぇ、反則……ヒック」
先程雷夢がテトに投げつけたのは、先日テトが購入していた猫用のマタタビだ。実を言うと、いざという時の為に数個を拝借したの。世の中何が幸いするかは分からないものだと知った。
「テト、1つ言っておく。強いものが勝つんじゃない。勝ったものが強いのだ!」
「それはそうかも知れんがぁ〜……」
テトは本格的に酔い始めたらしく、呂律が回らなくなってきている。取り合えず台所から水を汲んできてのませてやった。
すると、よったせいかテトは顔を机に伏せて眠り始めた。
「じゃあ、みんなが起きるまでテレビ見とくか」
雷夢はテレビを点けると、ソファーに座った。
しかし、雷夢は気づかなかった。


朝の青空に、流星が走り、それが山に落ちたことに。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照二千突破!】 ( No.139 )
日時: 2013/04/05 23:02
名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)


そして翌日。月曜日なので、当然雷夢達は学校へ行く。
「おっはよー、三人とも!」
家を出るなりミカが待ち構えていたように話しかけてきた。もはやこの一連の動作が雷夢達のトレンドにさえなりつつある。
「おはよ、ミカ」
「おはようございます、ミカさん!」
「あ、聞いて聞いて! 昨日朝っぱらから流れ星が流れたんだよ! 凄くない?」
「まさかぁ。星が出てる早朝ならまだしも……」
普通、流れ星は夜に見られる物だ。朝方から見れたという話は聞いたことがない
「ほんとだよ! だって結構光ってたし、消えるかと思ったら山に落ちたんだよ!」
『落ちたぁ!?』
おかしい。流れ星は大気圏に突入した隕石が超高温で熱せられて光かがやく現象だ。大概の場合は大気圏を突破する前に燃え尽きるのが定めだ。
となるとミカが見た山に落ちた流れ星は流れ星ではない。


人はそれを隕石と呼ぶ。



「えっ、今日の課外活動で隕石探しですか?」
学校に着くやいなや、雷夢達は未來に相談を投げ掛けた。内容は、今日の午前中に予定されている、近くの山での課外活動で、ミカが見た隕石を探せないか……というものだ。
「ちょっとばかし気になって……。大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ。今日の課外活動は山の生き物をそれぞれで観察してもらうものなので、どさくさに紛れて探せば問題ありません」
突然の質問に、未來は最初は珍しく驚いていた様子だったが、どうやら問題は無さそうだ。ちなみにその横では、穂香が何やらメモ帳に書き込んでいる。恐らく今の事を後々誤魔化しやすくするためだろう。
「それにしても、昨日の朝なら他にも目撃者がいてもいいんですが……。隕石が落ちたなんてニュースは聞きませんね」
「偶然、ミカさんだけが見ただけでは? 昨日は日曜ですし、テレビを見ていた方々が多かったから……なんてことも」
「ま、取り合えずそういうことにしとこう」
キーンコーンカーンコーン……。
ガラガラ……。
朝のチャイムと共に、清井先生が教室に入ってきた。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.140 )
日時: 2013/04/08 17:04
名前: ノヴァ (ID: /B3FYnni)


「今日の課外活動は、この山の生物を色々探したりしまーす!」
今、雷夢達を含めた5年1組と清井先生は、学校からさほど遠くない山に来ていた。ちなみにこの山は、ミカが隕石が落ちたと言った山でもある。
「今回は各自で集まって観察等をすること!仲間外れがいないように!」
清井先生が5年1組の面々の前で、課外活動について様々な説明をする。
説明が終わると、全員にハンドブックが配られた。何でも、この山の動植物が網羅された図鑑らしい。いったいどこで調べたのやら。
「では、解散!」
清井先生の声で、クラスメイト全員が散らばり、それぞれチームを作っていく。
「あ、雷夢さん雷夢さん」
ものの数秒でアテナやテト、ミカが集まってくる。
「そんじゃ、行くとしますか」
雷夢達4人が山の入り口に向かい、足を踏み出した時だった。
「おっ、そこの4人。仲間に入れてくれないか?」
いきなり後ろから呼び止められた。振り向くと、そこに立っていたのは、巨大なゴーグルを付け、上に長く伸ばした髪が特徴的な男子だった。
「えっと……確か優馬だったっけ?」
三日国 優馬(みかくに ゆうま)。第2小でも有名なオカルトマニアだ。と言っても、雷夢のように黒魔法好きではなく、未確認生物やUFO等の方向のオカルトが好物らしい。本人曰く、「世界の未確認生物は全て目撃した!」とのこと。
「それにしても、何でまた私たちのチームに?」
アテナが聞くと、優馬は何やら持参したバッグをまさぐり始めた。
「これを探すためだよっ!」
そう言うと優馬は、雷夢達に向かって何かを突き出した。どうやら、A4用紙にプリントされた写真らしい。
「これって……ツチノコ?」
そう、それにプリントアウトされていたのは、胴が太く短いヘビ。
誰がどう見てもツチノコだ。
「何でツチノコ探すために僕達のチームなの? 他のチームでも変わらないと思うけど」
「いやぁ、なんだか黒鳥のチームからツチノコ見つけられそうなオーラが出てんだよ!」
いつから自分達にそんなオーラが発せられるようになっただろうか。いや、発せられるはずがない。
「どうする?」
「ついでに私達の探し物も探してもらいましょうよ」
「けど1つのこと以外には興味をもたないあいつのことだから、多分協力しないぞ」
「ならば仕方ないですね……。あっ、優馬さん、UFO!!」
「えっ、どこどこ!?」
アテナの虚言を真に受けて、優馬は空を高々と見上げる。
その隙に雷夢達は、山への道へと孟ダッシュした。
「なんだよ、どこにもUFOいないじゃん」
優馬が振り向いた先には、もう誰もいなかった。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.141 )
日時: 2013/04/15 20:54
名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)



「はぁ……はぁ……。なんとか撒いたみたいだな……」
雷夢は後ろを向いて、優馬がついてきていないのを確認した。雷夢を含めて、全員が息を切らせていた。それほど遠くまで走ったということだ。
「一息ついたら隕石探しを始めましょうか」
「賛成なのじゃ……」
テトが雷夢に寄りかかるようにして座り込む。
「座るなよ。足に乳酸溜まるぞ」
無理を言ってテトを立たせると、仕方なく肩を貸してやる。
時々テトが頬擦りをしてきたが、特に気にしないでおいた。



数分後。
「よし、そろそろ始めるか」
「じゃあミカさん、隕石が落ちた辺りまで案内お願いします」
「まかせてよ!」
そしてミカの先導のもと、雷夢達は山道を進み始めた。途中、幾度となく落ち葉で足を滑らせたりなど様々なアクシデントがあったが、どうにか場所の特定が出来そうな場所に辿り着いた。木々の間から町が小さく見えるので、ここからミカの家を探せば、ある程度の位置は掴めるはずだ。
「えっと……あった、あそこ!」
「ああ、あれか」
ミカの指差す先には、確かにミカの家と自宅が見えた。
と、雷夢は何やら自宅のベランダに何かが見えた気がした。
「アテナ、双眼鏡持ってたよね? あったら貸してくれない?」
「はい、どうぞ」
雷夢はアテナから双眼鏡を受けとると、真っ先に自宅のベランダを見た。
「あれ、ギューリットだな……」
「ベランダってことは、洗濯物干してるんじゃないですか?」
「いや、あれは……」
双眼鏡の先で雷夢が見たものは、確かにギューリットだ。しかし、何やら体を横に倒し、両手を組んだ状態で両肘と片膝をリズミカルに曲げて合わせているのだ。
さらには、準備体操のアキレス腱伸ばしの体勢になると、両手を顔の前でぐるぐる回し始めた。ここまでくると、さすがに雷夢もギューリットが何をやっているのかは予想がつく。それに追い討ちをかけるように、ギューリットの目の前には小型のディスプレイが置いてあり、ギューリットと同じ動きをする黒人の男性が映っていた。いや、ギューリットがその男性の真似をしているだけか。
「何、ビリーズブートキャンプやってんだか……」
「えっ、ギューリットさんビリーズ踊ってたんですか?」
「わ、我にも見せるのじゃ!」
テトは雷夢から双眼鏡をひったくると、すぐさま自宅を覗き始めた。

ぶしっ!

テトが鼻血を吹き出した。

「ど、どうしたテト!?」
「ら、雷夢殿は見ない方がよい……」
テトはポケットティッシュで鼻に詮をしながら答えた。しかし、いったい何を見たのだろうか。
ぶしっ!
振り向くと、アテナも鼻血を吹き出して後方にすっ飛んでいた。
「いったい何を見た? 何を見たんだ二人ともーっ!?」
「じ、実はですね……」
鼻をハンカチで押さえながら、アテナがとんでもないことを口にした。


「ギューリットさんは腐女子です」


「………………はい?」
雷夢はただただ呆然とした。アテナの言ったことの意味の脳内での理解速度がフリーズしていた。
「ギューリット殿……ビリーズを踊り終えたと思ったら、ソファーに座って……BL本を……」
「あー……うん。なんでアテナ達がそれで鼻血を出すのかがわからないんだけど」
「実は、ギューリットさんが見ていたページの絵が、とてつもなく過激なもので……」
「どんだけ性能いいんだよこの双眼鏡」
一言で切り捨てると、雷夢は先に進み始めた。そして、何気無く右手の森を見てみた。
「なんだあれ……?」


雷夢の視線の先に見えたのは、巨大な卵だった。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.142 )
日時: 2013/04/16 20:58
名前: 幸音 (ID: JryR3G2V)

すっごい楽しみです(続き)

頑張ってください

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.143 )
日時: 2013/04/16 21:04
名前: ノヴァ (ID: .1vW5oTT)

幸音様、感想ありがとうございます!m(__)m

多忙かつ複数小説掛け持ちしているので、更新は遅いですが、必ず書きます!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.144 )
日時: 2013/04/18 20:24
名前: ノヴァ (ID: uY/SLz6f)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


「なんだよ……これ?」
雷夢が近づいてみると、その卵はかなりの大きさがあった。明らかに鶏卵の数十倍の大きさがあり、目測30センチといったところだろう。間違いなく鳥類の卵ではないことはわかる。世界一大きなダチョウの卵でさえ、この卵の大きさには敵わないだろう。
「どうしたんですか、雷夢さんってなんですかその卵!?」
「とてつもなくでかいのぅ……」
雷夢のもとに駆け寄ってきたアテナとテトも、この卵を見て驚きを隠せないようだ。しかしなぜか二人はよだれを垂らし始めた。
「それ……鶏卵何個ぶんでしょうね……じゅる」
「玉子焼き、いくつできるかのぅ…………ごくり」
「……何で食欲フルスロットルでこれを見る」
『雷夢さん!(雷夢殿!) それ食べさせてくださいったぁっ!?』
「落ち着けお前ら」
二人の脳天に竹串を突き刺してやると、ようやく二人は落ち着いたようで、普通に卵を眺め始めた。
「にしても、いったいなんなんですかねこの卵?」
「僕に聞くなよ。こういうのテトは詳しくないのか? 情報伝達系の仕事してたんだろ?」
「それが……我にも分からぬ。こんなもの見たことも聞いたこともないのじゃ」
どのみちこの卵については八方塞がりなわけだ。さて、この卵をどうするかが問題だ。
「持って帰って温めるか? 何か産まれるかもしれないし」
「それはいいかもですね! ……で、どうやって持って帰ります?」
言われてみれば、こんな物が今所持しているリュックサックに入るわけ、
「案外簡単に入ったのじゃ!」
あった。
「あっ、ライム何その卵!?」
するとそこに、存在が空気になっていたミカがやってきた。ミカもよだれを垂らして卵を見つめていたので竹串を突き刺しておいた。人の道を少し外したやつらは卵を見て食欲しか沸いてこないのだろうか。
「なんかあったから持って帰ろうかと」
「そうなんだ……ってそろそろ帰らないと! 集合時間に間に合わなくなるよ!」
「うそ? なら早く行くぞ!」
テトに卵をリュックに詰め込ませると、雷夢達は急いで山を下った。
このあと何一つ動植物をまとめていなかった為、雷夢達が怒られたのは言うまでもない。



「と、いうわけなんだけど」
今、雷夢達は自宅に戻り、卵をテーブルに置いてギューリットにこの件について説明した。
「これはさすがに見たことないな……。ま、私に言えるのはこれが人間界の物じゃないってことだ」
「どういうこと?」
「つまり、この卵は魔界の物ってことだ。証拠に魔界の臭いがプンプンするぜ」
雷夢も試しに嗅いでみたが、特に変わった臭いはしなかった。
「ま、孵せば何の卵かわかる。というわけでジャッジャジュワーン!」
ネコとネズミが融合した教育テレビの某番組のキャラクターを連想させる効果音でギューリットが取り出したのは、カプセルのようなものだった。大きさは件の卵より一回り大きく、卵がすっぽり収まりそうだ。
「これはその名も、『孵るんデス』!中に卵を入れるとあっという間に孵るんだぜ!」
「そんなもんいつ買ったのさ」
「スキュラのやつが、『迷惑かけたお詫びに』ってくれたんだよ」
そういえば、スキュラは今頃何をしているのだろうか。何不自由無く生活できているといいが。
「よし、じゃあ卵を入れるぞ」
ギューリットは孵るんデスの中に卵をいれると、電源ボタンを押した。その途端、卵が急に光り始めた。


Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.145 )
日時: 2013/04/22 21:14
名前: ノヴァ (ID: uY/SLz6f)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


孵るんデスの中で、卵がこれでもかというくらい震えている。その震えといったら、雷夢達が机を4人がかりで押さえつけてもまだ震えているほどだ。
「こ、これ大丈夫なの!?」
「大丈夫だ、問題ない」
かなりさっぱりとした表情でギューリットが返して来たので、取り合えず信じてみることにした。
その間にも、卵の震動はどんどん激しくなっていく。こうなってくると前言を撤回せざるをえなくなってくる。
と、そのとき、ピキピキと音をたて突然卵にヒビが入ったのだ。
「こ、これは……」
「もしかして……」
「どう考えても……」
「やはり……」
そして4人は顔を見合せると叫んだ。

『孵化するーーーー!?』

ドカァン。
そんな音をたてて、孵るんデスが爆発した。

「おわっ!?」
衝撃で雷夢は吹っ飛ばされ、壁に思いっきりぶつかった。
机の上を見ると、孵るんデスは粉々に吹き飛び、破片がそこらじゅうに散乱している。そして孵るんデスがあった場所では灰色の煙が上がっていた。
「おいおいおい、卵大丈夫なのこれ!?」
「知るか! 多分粉々だろうな……」
ギューリットが机の上を見ながら呟く。煙はとっくに晴れたが、そこには卵の中身は無い。
「そんな……」
「産まれるはずだった命が……こんな簡単に……」
「一目見たかったのじゃ……」
「きゅーん……」
「……ちょっとまて、なんだ最後の声は?」
最初の声は雷夢だ。その次にアテナの心に染みる声を聞き、テトの会えなかったことによる寂寥の混じった声を聞いた。
では最後の場違いな気の抜けそうな声は誰のだ。声質からして明らかにギューリットではない。となると他に考えられるのは。
恐る恐る、雷夢は声が聞こえた方を向いてみた。

「きゅーん?」
ダイニングの上で、翼を持った小さな竜が首を傾げてこちらを見ていた。



「可愛いですね〜」
「見ているだけで癒されるのぅ……」
それぞれがかなり顔をふやけさせ、アテナとテトは先程産まれた竜を撫でていた。雷夢からしてみれば、竜を撫でている二人の顔を見ているだけで、軽く1時間は過ごせそうな気がするが。
「まさかドラゴンの卵とはな、さすがの私もビックリしたぜ」
ギューリットがス魔ホを片手にリビングに戻ってきた。先程、目の前の竜のことを調べると言って出ていったのだが、この様子だと調べ終えたらしい。
「で、こいつはどんな竜でどんな生態なの?」
「どうやらそいつは魔界の竜、ドラゴンの子供みたいだな。ゴンドラじゃないぞ、ドラゴンな。あ、カビゴンでもないぞ」
最後の方は何を言っているのだろうかこいつは。これが母の言っていた「ギュー一族の笑えないオヤジギャグ」というやつか。
「しかもこいつはとんだドラゴンでな。まぁドラゴンだから飛ぶんだけど」
「くだらないオヤジギャグはいいから、早く聞かせて」
「わ、わかったわかった!」
雷夢が鋭い眼光で睨み付けてやると、ギューリットは再び話始めた。
「こいつ、どうやらこの竜の子供らしい」
「えっと、なになに……? 『ジラント』?」
ギューリットが見せたス魔ホの画面にはそう書かれていた。下の方に描かれた姿も、頭の王冠を除けば、白い身体に深紅の翼は確かにあのドラゴンと同じだった。
「こいつは結構すごいドラゴンでな、その力強さと神々しさから火の国の守り神としても崇められてるんだぜ!」
「それにしても、そんなドラゴンの卵がどうして人間界にあるんだろ? テトみたいに魔界と人間界を繋ぐトンネルでも作らなきゃ無理だよね?」
「別にテトみたいにしなくても、サンザシの木があれば行けるが……。まだ詳しいことはわからないな」
「そっか……」
「うふふ〜。かわいいね、かわいいね〜」
「いつまで撫でても飽きんのぅ……」
アテナとテトを見ると、未だにジラントを撫で続けている。身体を揺すってみるが、全く反応しない。ダメだこいつら、早く何とかしないと。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.146 )
日時: 2013/04/30 18:27
名前: ノヴァ (ID: 6.Nua64i)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

「落ち着いたか?」
「はい……」
「我、我が身を三省するのじゃ……」
「それは明らかに使いどころおかしいぞ」
今現在、アテナとテトは涙目で雷夢を見つめている。
あのあと、いつまで経ってもジラントへの愛撫を止めることが無かった二人に、竹串を刺してやったのだ。言うこと聞けば痛い目に合わずに済んだものを。
「あ、そういえばこの娘の名前、『ランちゃん』でいいですか?」
「勝手に名前決めんな。あとなんで、メスってわかるんだよ」
「漢字よくわかりましたね……。いや、実は男の子にある大事なち」
「ストップストォォォォップ!!」
危ないところだった。止めてなければあとで嫌な目で見られそうな予感が半端ない。それはそうと何故アテナは乙女なのに普通に下ネタ紛いの発言をかませるのだろうか。単に羞恥心を知らないだけなのか。
「ただでさえ火の国で崇められてる竜の子供なのに、ましてや飼うこと前提で名前つけるなんて、ダメだよねギューリット?」
「別にいいんじゃね?名前付けるくらい」
返答に要した時間、僅かに2秒であった。
「いいの、そんなんで……」
「名前付けるくらい、別に罰はあたんねぇだろ。だろ、ランちゃん?」
「きゅーん!」
ギューリットの笑顔の質問に、ランちゃんは跳びはねながらの首肯というアクロバティックな返答をして見せた。
本当にこんなんで大丈夫なのだろうか。



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黒魔女4級ドリル
第1問・死者を甦らせるのに必要で無いものを、選択肢から全て選びなさい。
「死体の首・死体が着ている服・墓場の土・塩気のない黒パン・ひっくり返したフランスパン・赤ワイン・ただのブドウ汁・賢者の石」

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「えっと、この問題は確か……。服と黒パンとブドウ汁以外だったよな」
今雷夢は、自室で黒魔法ドリルを熱心に解いている最中だ。毎日やっているはずなのに、何故か久しぶりのような気がしてならない。恐らくは神の悪戯なのだろう。そうだ、きっとそうだ。
ちなみに今解いていた問題の答えの説明は、パンは塩気が無いと不味く、ブドウ汁は発酵していないためワインにならない。つまりはどちらも「生命がない状態」を表しているのだという。
「えっと、次は……『なりきりカメラ魔法の手順を正しくかけ』……」
なるほど、全くわからん。
ちなみに、何故雷夢が4級の問題を解いているのかというと、先日黒魔女しつけ教会から速達の手紙が届けられ、「自分より高位の黒魔法使いの悪事を見逃さず、その者を捉えた勇気を評し黒魔法使い5級に認定する」とのことだった。
よって4級黒魔法使いを目指して勉強中なわけなのだ。
「さてと、次の問題は……」
そう言って雷夢がページをめくった時だった。

「大変大変大変です〜!!」

「どらじぇ!?」
空いていた部屋の窓から、突然何かが雷夢の脇腹にフライングヘッドバットを食らわせたのだ。
「ってああっ!? 大丈夫ですか!?」
「大丈夫……だと思っているのか?」
雷夢が起き上がってみると、そこには謎の二頭身の未確認生命体が立っていた。
「誰だよ、お前?」
雷夢が質問を投げ掛けると、その生命体は胸を張って弁舌を奮い始めた。

「おいらの名前は悪魔情! 悪魔が名字で情が名前ね。そこんとこ、よろしく!」

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.147 )
日時: 2013/04/27 17:28
名前: ノヴァ (ID: FX8aUA2f)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


「悪魔情……。ああ、情報屋の悪魔か」
「おや、ご存じで?」
「まぁ……、ギューリットから聞いたことがある」
ギューリットの話だと、こいつは魔界でも腕利きの情報屋で、手紙の速達なども兼ねているらしい。あとは母親曰く、ケーキの中で寝てたりと意外にヌケたところもあるという。
それは情報屋として致命的だと雷夢は思う。
「そうだった、大事な話があるんでした! すみませんがこの家の黒魔女関係の方々を全員連れてきてもらえませんか!?」
「えっ!? うん、わかった!」
あまりにも悪魔情がただならない剣幕で急かしたてるので、雷夢は急いでギューリット達を呼びに行った。
結果家中を駆け回ることになったが、なんとか全員を悪魔情の前に連れてくることができた。
「で、話ってなんだ悪魔情?」
「あ、はい。実は、魔界から『あいつ』が人間界に逃げ出したんです!!」
「なに、あいつって?」
雷夢が言うと、悪魔情は重々しく口を開いた。

「魔獣ヤマタノオロチです……」

「ヤマタノオロチだと!?」
悪魔情がその名前を発したとたん、ギューリットはかなり驚いた様子で身を乗り出した。
「ヤマタノオロチって、あの日本の神話のあれ?」
「ああ、そうさ」
ヤマタノオロチ。それは日本の神話に出てきた、異形の超大蛇である。8つの頭に8つの尾を持ち、その大きさは、7つの山と7つの谷を蹂躙できるほどだという。
よくある昔話では、スサノオノミコトがクシナダヒメを狙いにきたそれを酒を飲ませ、頭を全て切り落とし、身体を全て縦に裂いたことで退治されたと言われ、その尾から出てきたと言われるのが、クサナギノツルギだという。
「でもなんで日本の神話に出てきて、しかも退治されたのが魔界にいるの?」
「ああ、実はヤマタノオロチは魔界の魔獣なんだ。神話の時代に現れたのは、魔界を抜け出したやつだろ」
黒鳥雷夢、11歳にして衝撃の真実を知った。まさかヤマタノオロチが魔界の生物だったとは。土星の環にかけて驚きだ。
「じゃあ、退治されたのになんで魔界にいるのさ」
「実は魔界にはごく少数だけどまだいるんだよ。神話みたいにでかくはねぇけどな。せいぜい山ひとつってのが関の山ってとこ」
「で、そのヤマタノオロチが逃げ出したってなんで分かるのじゃ?」
確かに、保護目的などで監視されてるならまだしも、状況的に監視されてないはずなのに何故なのだろうか。
「じ、実はとある1固体が黒魔女を襲ってまして、黒魔法剣士達がそれの討伐に当たっている最中に人間界への門を作り出して逃げ出したんです!」
「討伐しきれなかったのか!?」
「はい、あと少しというところだったらしいのですが、何者かの妨害を受けて怯んでる隙に……」
「妨害?」
「なんでも、高度な黒魔法の使い手だったらしいです。顔は確認できなかったうえに取り逃がしたそうです」
「にしても、普段はおとなしいはずのヤマタノオロチがなんで……」
「え、あれっておとなしいの? 神話では人脅して食ってたのに?」
「それは猛烈に腹を空かした時だけだ。しかも何十年も食わなかった時ぐらいだ。普通はそこまで腹は空かさないはずだ」
「なんか行動原理がサメみたいじゃのう」
ここでふと、雷夢は会話中のある名詞が気になった。

「あのさ、ギューリット。黒魔法剣士ってなに?」

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.148 )
日時: 2013/04/29 19:51
名前: 幸音 (ID: JryR3G2V)

ノヴァ様やっぱりこの様な
     すごい物語を書けるなんて
     すごすぎ×100デスね
     
     どうしたらこの様な物語を
     書けるんですか?
     
     できれば教えてください!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.149 )
日時: 2013/04/30 18:25
名前: ノヴァ (ID: HDoKOx/N)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


幸音様

えっ、えっとですね……僕的にはただ思いつくまま親指が画面を駆け巡っているだけなんですけどね……。

しいて言うなら、

「思い付いたネタはそのまま書く!」

でしょうか?(行き当たりばったりで書いているともいう)

あとは、いろんな小説を読んで知識を広げたり、この小説自体黒魔女さんの二次創作ですから、本家を読んだりとか……。

とにかく、色々な小説を読むことでしょうか?

小説初心者が失礼しましたm(__)m
独自の考えなので、ご了承くださいm(__)m

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.150 )
日時: 2013/05/09 23:05
名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

「なんだお前、黒魔法剣士も知らないのかよ」
なんなのだ、この上から目線は。腹の底から沸き上がった微かな怒りを、雷夢は必死に抑えた。実をいうと、雷夢は傲慢な上から目線が大嫌いなのだ。
「いいか、長くなるけどよく聞けよ」
ギューリットの話は毎度毎度長いので要約すると、
1・黒魔法剣士は6段以上の黒魔法使いや黒魔女で構成された組織である。
2・黒魔法剣士は全員、自身の魔力を纏わせた武器を用いて戦う。
3・基本的には、人里に出現した凶暴な魔獣の討伐や、それらの撃退を目的としている。
とのことだった。
「つまり、今回悪魔情が伝えたかったのは、その黒魔法剣士達がヤマタノオロチを人間界に取り逃がした……ってこと?」
「いえいえ、それだけではなくてですね、ヤマタノオロチは結構なダメージを負ったはずですので、体力の回復の為に人間をつかうかもしれないとのことで……」
「つまり?」
雷夢が問うと、ギューリットが説明を始めた。
「ヤマタノオロチは自分がダメージを負って動けなくなると、自分の鱗から生体端末を生み出すんだ」
「生体……端末?」
「ああ、ヘビの形をしているんだけど、それは人間に噛みついてその人間のエネルギーを吸いとって、それをヤマタノオロチに与えるんだ」
「……エネルギー吸われた人間はどうなるの?」
「命に別状はないが、しばらくの間は疲労で動けなくなるな」
「それやばくない!?」
仮に人が密集する場所にそれが大量に放たれようものなら、パニックに陥るのは必然だろう。そうでなくとも、大勢の人間が疲労困憊するなかでヤマタノオロチが復活し、町中を蹂躙しようものなら……。雷夢はこれ以上考えないことにした。
「早く生体端末を破壊しないと!」
「雷夢のいう通りだ。悪魔情!」
「は、はい!」
「お前、生体端末の画像あるか?」
「あ、はい! えっと確かこの辺りに…………あった!」
悪魔情は背中をまさぐると、自分の伸長より大きな丸められた紙を取り出した。1つ思ったが、あの紙はいったいどこにしまっていたのだろうか。丸められているとはいえ、明らかに悪魔情自身の伸長の二倍はある紙だ。あれ以上に折り畳めば可能かもしれないが、そのような折り目は見当たらない。まぁ、以前ギュービッドもどこに入っていたのか分からないアタッシュケースを黒コートから取り出した事もあったので、その類いなのだろ。
それはともかく、悪魔情がその紙を広げると、そこには雷夢が見覚えのあるヘビの画像がプリントされていた。
「これって…………ツチノコ?」
寸胴な体、平べったく広い胴。間違いなく幻の珍蛇、ツチノコだった。
「昔から目撃されたツチノコって、生体端末だったの!?」
「あ、いえいえ。元々ツチノコ自体はちゃんとした生き物ですよ。ヤマタノオロチがただ単にそれを真似して生体端末を作っただけですよ」
確かに、ツチノコ生け捕り1億円という現代だ。間違いなく人前に行けば人の方から集まって来るだろう。ヘビのくせに生意気だぞ。
「で、生体端末はどこにばらまかれたんだ?」
「えっと、この町ではありませんね。場所もちゃんと特定出来ています」
そう言うと、悪魔情はどこにしまっていたのか、ス魔ホを取り出して操作すると、日本地図の画像を出した。
「黒魔法剣士達がヤマタノオロチに付けたGPSの反応がある場所で消えました。それは……ここです!」

悪魔情が突きつけたス魔ホの画面に表示されていた場所は、岐阜県だった。


Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.151 )
日時: 2013/05/06 10:24
名前: Dr.クロ (ID: /PtQL6mp)
プロフ: http://www.pixiv.net/member.php?id

バトスピのほうをお願いします!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.152 )
日時: 2013/05/06 15:53
名前: ノヴァ (ID: BoToiGlL)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

Dr. クロ様。


しゅ、宿題が…………。出来れば明日辺りに………………。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.153 )
日時: 2013/05/06 16:00
名前: Dr.クロ (ID: /PtQL6mp)
プロフ: http://www.pixiv.net/member.php?id

そうですか・・・・
あ、キャラ投稿しました

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.154 )
日時: 2013/05/09 21:31
名前: 桜 (ID: ylDPAVSi)

こんばんは!
黒魔女さんのファンです!
全部読んでみましたが…ハイスペックですね!
またちょこちょこ訪れまーす♪

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.155 )
日時: 2013/05/09 23:03
名前: ノヴァ (ID: HDoKOx/N)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

桜様、コメントありがとうございます!m(__)m

ハイスペックなんて……僕なんてまだまだですよ。


けど、これからも僕はこれを書いていきます!


度々更新するので、その時にはまたご覧になってください……。

感想も大歓迎です!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.156 )
日時: 2013/05/11 11:24
名前: ノヴァ (ID: BoToiGlL)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


「ぶぇっくし!!」
雷夢のくしゃみが、果てしなく広がる空に吸い込まれて行く。
「大丈夫ですか、雷夢さん? ティッシュありますよ」
「ああ、大丈夫だよ。ありがとな、アテナ」
アテナが差し出したポケットティッシュを、雷夢は丁重にリターンさせた。
今、雷夢達はホウキで東京〜岐阜間の上空約2000メートル付近を飛行しているところだ。アテナは自身の杖、雷夢、テト、そしてギューリットはホウキなのだが、本数が足りないとの事で、雷夢の後ろにテトが乗っているという形だ。
何故このような場所にいるのかと言うと。
1・ヤマタノオロチが岐阜県に巣くっているのが分かったので、雷夢達で討伐隊を編成した。
2・しかし平日だった為に土曜日まで待たなくてはならなくなった。
3・土曜日になったのでいざ出陣。
という訳だ。
「それにしても、これ他の者には見えておらぬのか?」
確かに、目下雲一つなく、生い茂る緑の見える山々が見えていた。更に目測数百メートル先には、東京〜大阪間と思われる飛行機も飛んでいる。
テトが心配するのも頷ける。
「大丈夫ですよ。エンジェル・ビットを私たちの周りに展開して、他人からは見えないようにフィールドを作ってますから。場合によっては密入国だって可能ですよ!」
「何犯罪起こそうとしてるんだお前は」
「でも、やっぱり高いのは怖いのじゃ……」
テトはこの高さに怯えたのか、雷夢に抱きついてくる。
「しっかり掴まっておけば落ちないから安心して。で、でも……」
「なんじゃ、雷夢殿?」
「さすがに……そんなくっついてると……恥ずかしい……」
「す、すまぬ雷夢殿!」
即座にテトは離れて、雷夢の肩を掴んだ。やはり女の子と引っ付くのは自分の性に合わない。この前の魔界でのデート紛いな買い物の時もだったが、何故にテトは自分にくっつく事が多いのだろうか。
「てか一つ思ったんだけどさ、なんでこんなに息苦しくないの? 高度2000メートルだよねここ」
「それは確かに我も思ってたのじゃ」
高度2000メートルもあると、確実に空気も薄くなるはずだ。さすがに富士登山とまではいかないが、それなりに息苦しいはずなのだ。しかし、現に雷夢達は普通に会話したりすることができている。
「ああ、それもエンジェル・ビットのお陰ですよ。エンジェル・ビットが空気の濃さを地上と同じようにしているので、私たちは大丈夫ですよ」
「だといいんだけど……。てかアテナ、腹膨れてるけど何か入ってるのか?」
「ああ、これはですね……」
アテナが片手で服をめくると。
「きゅーん!」
ランちゃんが入っていた。
「連れてきちゃったの!?」
「だって一人でお留守番なんて可哀想じゃないですか!」
「じゃあせめて手提げのハンドバッグくらい持ってきて入れてあげればよかったのに」
「あ、その手がありましたか」
まったく、と言いたげに雷夢は頭を掻いた。
「おっ、そろそろ岐阜だぞ」
ギューリットが手元のス魔ホのマップを見て告げた。
「よし、一気に降りるぞ! ついてこい!」
そう言うとギューリットは身体を大きく前に傾けスピードを上げて降下し始めた。アテナもそれに続く。
「テト、しっかり掴まって!」
「わ、わかったのじゃ!」
テトが自分にしっかり掴まったのを確認すると、雷夢は身体を大きく傾け、ギューリットとアテナのところへホウキを加速させた。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.157 )
日時: 2013/05/18 21:40
名前: ノヴァ (ID: BoToiGlL)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

「よし、到着!」
雷夢達4人と1匹は、岐阜の山中に降り立った。11月とはいえ、さすがに薄着だと寒さがきつい。こんなことなら上着を持ってくるんだった。
「雷夢殿、これ着るかの?」
そう言ってテトが取り出したのは、以前クラリスの店で買った自分のゴスパンだった。今の今まで存在を忘れていた。
「いや、ちょっと待て。お前、それどこから出した」
「えっと、ちょっとアテナ殿に手伝ってもらって、コネクトしたのじゃ」
見ると、テトの横でエンジェル・ビットが5つ浮遊して、幾何学的な魔方陣を形成していた。もしやあそこに手を突っ込んで引っ張り出したのだろうか。
「てか、お前そんなゴスパン買ってたのかよ。よく買えたな」
「ああ、この前魔界に行ったときにちょっとね。そんじゃ、着替える場所探さないと……」
「雷夢殿、着替える場所探さなくとも、おしゃれ魔法があるではないか」
「あ、そういやそうだった」
これも今思い出したが、あの時クラリスからおしゃれ魔法を習って習得していたのだった。それにしても地味に記憶レスになっている気がする。やはり母からの遺伝なのだろうか。父の遺伝子頑張ってくれ。
「えっと、確か呪文は……。ルキウゲ・ルキウゲ・ドレスターレ!」
雷夢が呪文を唱えると、瞬きする間もなく雷夢はゴスパンにフォームライドしていた。ちなみに先程まで着ていた服はテトの腕に掛かっている。
「カッコいいですね、雷夢さん!」
「ら、雷夢殿…………惚れ惚れするのじゃ……」
「その意見万人に通用するのか……?」
雷夢自身ファッションセンスは母譲りで余り高くはない。その為自分にどの服が似合うのかが分からないのだ。やはり頑張れ父の遺伝子。そして惚れられても困るぞテト。
それにしてもこのゴスパン、かなりの保温性を有しているらしく、着たとたんに寒気が一気に吹き飛んだ。二の腕や膝は丸見えなのに、どうなっているのか。
「よし、それじゃ生体端末潰しながらヤマタノオロチを探し、討伐するぞ!」
『おおーーーっ!!』
掛け声と共に雷夢達は山を進み始めた。



「で、生体端末って見つけたらどうすればいいの? もし本物のツチノコ殺しちゃったら偉いことになるし……」
実際、ツチノコは岐阜県加茂川郡白川村を中心に目撃情報がかなりあるのだ。生体端末と間違えて本物を殺したりした時には、その手の研究者から狙われそうで怖い。
「ああ、悪魔情によると、頭に軽い衝撃を与えれば消滅するらしいぞ」
「例えば?」
「まぁ……お前の竹串とか?」
「効くのか……これ?」
「雷夢さん! いました!」
アテナが指差す方向を見ると、確かにそこには地面を這っていくツチノコがいた。噂には聞いていたが、やはりシャクトリムシのように移動していた。
「それじゃさっそく……それっ!」
雷夢が軽く放った竹串は、緩やかな放物線を描きツチノコの頭部に突き刺さった。
すると、ツチノコはくたばった様子で動かなくなり、やがて身体が霧散した。
「やっぱり生体端末か」
「よし、次だ次!」


Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.158 )
日時: 2013/05/12 11:26
名前: Dr.クロ (ID: /PtQL6mp)
プロフ: http://www.pixiv.net/member.php?id

バトスピのほうにコメを!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.159 )
日時: 2013/05/14 21:23
名前: るい(幸音) (ID: JryR3G2V)

ふわぁすごい!!
色々な物語を掛け持ちしているのですね!!尊敬、尊敬しちゃいます!!

よくそこまで出来ますね!!るいにはできませんよ!!


頑張って書いてください応援します!
(プレッシャーかけてませんよ!)

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照三千突破!】 ( No.160 )
日時: 2013/05/21 15:29
名前: ノヴァ (ID: uY/SLz6f)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode



「へあっ!!」
ザクリ。
「へあっ!!」
ズブリ。
「とぅ、へあっ!!」
ザク、ズブ。
「こ、これで何体目だよ…………」
雷夢は他の3人が次々と発見するヤマタノオロチの生体端末に向けて竹串を投擲していく。しかし数が半端ではなく、一体全体何体倒したのかが分からなくなってきた程だ。ヤマタノオロチは鱗から生体端末を生み出していると言っていたが、生体端末の出しすぎで肉だけになってもらえないだろうか。
「雷夢さん、頑張ってくださいよ! 雷夢さんが頼りなんですから!」
「じゃあその僕に休ませる時間をくれないか?」
現に雷夢はこの一時間ほど延々と竹串を投げ続けているだけなのだ。そろそろ体力が尽きそうだ。
「そうだとして、休んでる間に現れたらどうするんですか?」
「お前のエンジェル・ビットとかそこら辺の小石とかあるじゃん! 僕ばっか働かせないでよ……」
「すまんのぅ、雷夢殿……」
「じゃあ、少し休んでからまたヤマタノオロチ探しを再開するぞ」
「ふぅ、やっと休める……」
一息ついて雷夢は近くにあった石に腰を下ろした。だいぶ放置されているのかかなり苔むしている。手触りの感触が心地いい。
雷夢は持参した麦茶のボトルを取りだし、それを口に含んだ。やはり飲み物は麦茶に限る。
「雷夢さん、雷夢さん!!」
突如、慌てた様子のアテナの声が響いた。
「ど、どうしたアテナっ!?」
「見てくださいよこれ!」
駆けつけた雷夢達はアテナの指差す方向を見た。

そこには、崖にぽっかりと口を広げる洞窟があった。

雷夢達が近づいてみると、その洞窟はかなりの広さがあり、戦車が軽く編隊を組んで行進できそうな程だ。
「もしかしたらこの中にヤマタノオロチが……?」
「もしかしたらじゃなくて、当たりみたいだな」
雷夢は洞窟の奥から何かの気配を感じ取って身構えた。テトもアテナも同様だ。
すると、突如奥から生体端末の大群が押し寄せて来たのだ。
『シャアアァァァァァッ!!』
「行くぞ、みんな!」
「わかってるぜ!」
「雷夢さんも頑張って!」
「さぁ、ショータイムじゃ!」
「きゅーん!」
「ランちゃんは隠れてろ!」
「きゅーん……」
それぞれの声を皮切りに、洞窟内の戦闘が始まった。
『シャアアァァァァァッ!!』
生体端末は津波のように雷夢達へと押し寄せてくる。しかし、こんなので止まっているわけにはいかないのだ。
「じゃまだぁっ!!」
雷夢はそう叫ぶと、手にした竹串を高速で投擲し続ける。こんな状況を想定して、今回はストックを含めて1000本もの竹串を用意していたのだ。リュックの中から次から次へと雷夢は竹串のホルダーを取り出して正確無比に生体端末に命中させていく。
アテナに目をやると、エンジェル・ビットを展開して砲撃を行っているようだった。しかし、狙いをつけているのか発射までの時間が長い。
「アテナ、狙うなよ! 前に撃てばいいっ!」
「はいっ!」
雷夢の助言を聞いたアテナは、エンジェル・ビットの数を数倍に増やし、ガトリング砲の如くビームを照射していく。
「もっとじゃ、もっと、もっと来い!」
テトは何処から取り出したのか、2本の棒を両手に持ち、それを回転させながら突き進んでいく。テトの元に飛び込んでいく生体端末は全て2本の棒の一撃を喰らって霧散していく。
そのような戦闘を繰り広げながら、前進する事数十分。突然洞窟の先に光が刺したのだ。
「あそこかっ!」
雷夢達は真っ先にそこへと突き進んだ。
すると、そこはかなり開けた場所で、一見すると東京ドームほどはありそうだ。
と、暗闇の中からドスの聞いた声が響いた。

『待っていたぞ……愚かな黒魔法使いよ……』

そして、暗闇の中から何かが迫ってきた。
小山ほどもある巨大な体躯、粘液を滴らせる8つの顔、力強く地面を叩きつける8つの尾。
魔獣ヤマタノオロチだった。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.161 )
日時: 2013/05/21 20:05
名前: るい (ID: JryR3G2V)

おぉ、なんかすごくヤバイ事になってきましたねww
次が、楽しみです!!

次はどんなことになるのかなぁ?
うん、すーーーごく楽しみです!
ノヴァさん頑張ってください!!
応援していマス!!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.162 )
日時: 2013/05/21 21:18
名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

るい様、コメントありがとうございます!!m(__)m


頑張って書いてまいりますので、よろしくお願いします!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.163 )
日時: 2013/05/22 16:00
名前: ソラ ◆Xk2Y3a6f4k (ID: O35iT4Hf)

お久しぶりです!

雷夢くんかっこいい!!
頑張れ〜
ノヴァさんも頑張って下さい!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.164 )
日時: 2013/05/22 17:22
名前: ティル (ID: cJYcwzou)

お久しぶりです!(覚えてないでしょうが)
テトの、「さぁ、ショータイムじゃ!」って、メタルギアのスネークの、「ショータイムだ」が元(?)ですか?
違ってたらすみません!
執筆、頑張って下さい!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.165 )
日時: 2013/05/22 18:42
名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

ティル様


あ、そんなのもあったんだ……。作者的には仮面ライダーウィザードの決め台詞から拝借しました。

「さぁ、ショータイムだ」

他にも結構ネタを散りばめているので、探してみるのも楽しいかと。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.166 )
日時: 2013/05/22 18:43
名前: Dr.クロ ◆m1RYkHhkGM (ID: /PtQL6mp)
プロフ: http://www.pixiv.net/member.php?id

バトスピ更新は?

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.167 )
日時: 2013/05/22 18:51
名前: ノヴァ (ID: /B3FYnni)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

Dr. クロ様


じ、実は手持ちのスマホでバトスピの公式ホームページ開こうとすると、ブラウザが強制切断という事態に陥っています……。

公式ホームページが使えないと小説が書けない(スピリットの効果の検索などetc.… )ので、状況改善まで行進が出来ないかもしれません。


お待ちしていただいているのに、申し訳ありませんm(__)m

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.168 )
日時: 2013/05/22 18:57
名前: Dr.クロ ◆m1RYkHhkGM (ID: /PtQL6mp)
プロフ: http://www.pixiv.net/member.php?id

パソコンで開けば

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.169 )
日時: 2013/05/22 19:07
名前: ノヴァ (ID: uY/SLz6f)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

パソコン持ってないです(泣)

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.170 )
日時: 2013/05/22 19:11
名前: Dr.クロ ◆m1RYkHhkGM (ID: /PtQL6mp)
プロフ: http://www.pixiv.net/member.php?id

バトスピのウィキで調べれば?

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.171 )
日時: 2013/05/22 21:01
名前: ノヴァ (ID: /B3FYnni)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode

Dr. クロ様、更新完了しました!

とりあえず、公式見なくてもいける範囲で書きました!

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.172 )
日時: 2013/05/22 22:35
名前: ノヴァ (ID: 6.Nua64i)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


「ヤマタノオロチ! 黒魔女を未来永光襲わないことを誓って魔界にとっとと帰れ!」
ギューリットがヤマタノオロチを指差してズバリと言い放つ。
『誰が貴様らのような下衆の言うことなど聞くか。我が眠りを妨げた罪は思い……。我の完全復活の糧にしてくれようぞ!!』
そう宣言したヤマタノオロチは、鎌首をもたげてこちらに迫ってきた。
迫ってきたことで分かったが、ヤマタノオロチの顔はそれぞれ違う種類の蛇で構成されているようだ。コブラ、マムシ、ヤマカガシ、アナコンダ、ニシキヘビ、サンゴヘビ、ガラガラヘビ、ウミヘビ。8割方毒蛇だった。取り合えず頭+ヘッドと呼称しよう。
それと声が多重に聞こえるのも、どうやらそれぞれの首がハモっているかららしい。
「雷夢さん! そんな悠長に構えてないで!」
「えっ、おわっ!?」
ヤマカガシヘッドの繰り出した噛みつきを、雷夢はすんでのところで避けた。あと数秒遅れていたら、間違いなく雷夢の身体はヤマカガシヘッドの口の中だった。
休む間もなくアナコンダヘッドが追撃してくるのに対し、雷夢は竹串をカウンターで食らわせる……が。
『そんな攻撃、我には通じん!』
アナコンダヘッドは怯むことなく雷夢に迫ってくる。仕方なく再び雷夢は避けた。
「くそっ、竹串じゃダメージが全然無い!」
「だったら、これでどうじゃあっ!!」
テトは駆け出しながら側転をし始め、そのまま空中にジャンプしその遠心力を生かしながら、コブラヘッドに踵落としを食らわせる。
『ぐぐ……ぬおぁっ!!』
「にょわっ!?」
しかし、テトの踵落としもヤマタノオロチの動きを極僅かに止めただけで、大したダメージにはなっていない。それどころかウミヘビヘッドでテトを叩き落とす反撃を見せた。
「くっ!!」
テトは受け身を取って着地すると、すぐに距離を離した。
「だったら黒死呪文で……」
そう言うとギューリットは手をヤマタノオロチに向けた。確か黒死呪文は黒魔法使い3級以上で人などを殺すことが出来る黒魔法のはずだ。それなら一撃必殺になるかもしれない。
『させん!!』
「ぬおっ!?」
しかしヤマタノオロチはそれを読んでいたのか、マムシヘッドをギューリットの所に突き刺したのだ。間一髪でギューリットは避けたが、地面にはぽっかりと穴が空いている。
「なめるなよ! サタンよベルゼブルよ、そして墓の上をさ迷う者よ。我の生け贄を受け取り、黒き力を与えたまえ!」
ギューリットが手をかざすと、そこから黒い稲妻のようなものが打ち出され、ヤマタノオロチに炸裂した。
『ぬぅ……おおおっ…………おおおおおおおおおおっ!!』
しかしヤマタノオロチは身体からオーラのようなものを発して、ことごとくその稲妻を消し飛ばしたのだ。少し見にはダメージは無いようにみえる。
「黒死呪文も聞かないって……嘘だろっ!?」
『ははは、怖かろう? 我には貴様ら程度の黒死呪文なぞ屁でもないわ!』
「まじでどうすんだよ、これ……」
「我らにはもう打つ手は無いのかのぅ……?」
雷夢達は落胆し、その場に崩れ落ちた。
しかし、まだ希望はあった。


「まだ私がいるじゃないですか、雷夢さん」


Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.173 )
日時: 2013/05/23 17:11
名前: ティル (ID: cJYcwzou)

そうだったんですね!すみません!
仮面ライダー見たこと無いもので…
友達とネタ、探してみます!(友達とネタ探し大会します!((殴

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.174 )
日時: 2013/05/24 22:06
名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


雷夢達が振り向くと、そこにはエンジェル・ビットを携えたアテナが立っていた。
「そんなこと言ったって……。奴にダメージを与える術がもう……」
「いや、まだ希望は残ってます。取り合えず、ヤマタノオロチが来れないあそこに!」
アテナが指差したのは、先程このホールに入った時の出入り口だった。確かにヤマタノオロチのあの巨体なら雷夢達を追ってくることは出来ない。
「取り合えず、あそこに逃げるぞ!」
『逃がさん!』
出入り口に向かい駆け出した雷夢達に、ウミヘビヘッドとマムシヘッドが殺到する。
「エンジェル・ビット! 『遮る障壁形態』(ブローキングバリアー)!!」
しかし、アテナのエンジェル・ビットが光の壁を作り出し、その攻撃を受け止める。
その間に雷夢達は出入り口に無事避難ができた。
「アテナ、奴に対抗できる手段があるのか?」
雷夢が尋ねると、アテナは何処からか杖を取り出して話始めた。
「私が現時点で使える最強の攻撃魔法……。それが使えればヤマタノオロチを倒せるはずです!」
「最強の……攻撃魔法?」
「はい。私の魔力を全部使う代わりに、ヤマタノオロチクラスの魔獣も一撃必殺で倒せる威力があります……けど」
「けど……なんなのじゃ?」
「魔力の充填にかなりの時間を要するうえに、充填中は全くの無防備にならないといけないんです……」
要するに、攻撃を受ければ一発アウトと言うことだ。
「つまり充填している間、僕達が奴の注意を反らす……ってこと?」
「やって……くれますか?」
「もちろん、やるっきゃないでしょ! でしょ、ギューリット?」
「ああ、もう希望はお前だけだからな。お前に全てを託す!」
「その代わり、失敗なんかしたら許さんからのぅ!」
「皆さん……。わかりました。エンジェル・ビット! 『究極天使巨砲』(エクスエンジェリックキャノン)!!」
アテナがそう叫ぶと、アテナのエンジェル・ビットが全て飛散し、アテナの前で何かを形作っている。少し時間をおくと、次第にそれが何なのかが雷夢にはわかった。
巨大な固定砲台なのだ。地面にしっかりと固定されたボディ、巨大な銃口、目標を狙い打つスコープ。それがアテナの身体を覆うように接続され、両腕もトリガーを収納しているとおぼしきパーツにしっかりと固定されていた。なるほど、確かに移動は出来なさそうだ。
「充填はどれくらいかかる?」
「大体4〜5分くらいですね。それまで、ヤマタノオロチをよろしくお願いします」
「よし、じゃあクロックアップ魔法で撹乱させて時間を稼ぐ! 行くぞ!」
「うん!」
「魔獣の血がたぎるのじゃ!」
「よし、では充填開始です!」
『ルキウゲ・ルキウゲ・クロアプターレ!』
そして雷夢、ギューリット、テトは、戦わなければ生き残れない戦場へと飛び出していった。

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.175 )
日時: 2013/05/25 23:06
名前: ノヴァ (ID: 8uCE87u6)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


『はははっ! 待ちくたびれたぞっ!』
出入り口から雷夢達が飛び出すやいなや、ヤマタノオロチは攻撃を仕掛けてきた。しかも今までにやってきた攻撃とは全く違い、毒液やら溶解液などを弾幕のように打ち出して来るのだ。
だが今の雷夢達にはそんな攻撃は無意味に近かった。
「僕らは速いぞ! 着いてこれるかな?」
「弾幕を活かせぬまま死んでいくのじゃ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁっ!!」
クロックアップ魔法の効果を受けた雷夢達にとっては、この弾幕もハイスピードカメラの映像のようにスローモーションで見えるのだ。ヤマタノオロチからは雷夢達は高速で走っているように見えるが、実際は歩いているだけなのだ。
『おのれ、ちょこまかと!』
ヤマタノオロチは怒りにまかせて弾幕を放ち続けるが、未だに雷夢達には命中していない。
「(よし、このままいけば充填も終わる!)」
が、不意にヤマタノオロチが攻撃の矛先を出入り口の方に向けたのだ。
「あたたたたたたたたたたたたたっ!!」
しかし、その弾幕は間一髪でテトが投げた無数の石で防がれた。
ヤマタノオロチが不敵にこちらを向く。
『貴様らが時間稼ぎをして何かを企んでいるのは当の昔にわかっている。現にまだそこには白魔女の熱反応があるからな』
「そうか、あいつピットを使ったな!」
昔、両生類・爬虫類の図鑑で読んだことがある。ヘビは舌の先にピットと呼ばれる器官があり、そこで獲物の熱を感知するのだという。つまり、それを応用してアテナが何かをしているのを見破ったのだ。
『貴様らはここで終わりだっ!』
ヤマタノオロチが再び出入り口に向かって弾幕を打ち出した。すかさず雷夢は竹串を投擲して弾を撃墜していく。
「アテナ! あとどれぐらいだ!?」
「今、75%です! あと2分位はかかるかと!」
あと2分。それだけの時間、雷夢達は弾幕からアテナを守らなくてはいけないのだ。守りきれるのか。
「テト、ギューリット! 何がなんでもアテナを守るぞ!」
「わかってるってーのっ!」
「多少の無理は承知じゃ!」
『ぬぉあっ!!』
そうこうしているうちに、またも弾幕が出入り口付近に殺到していた。
その弾幕を、雷夢は竹串、テトは石つぶて、ギューリットは黒魔法による火球で撃ち落としていく。
「90%……93……94……95…….!」
『されるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
「97……98……99%……」
しかし、ついに弾幕の1つが出入り口に激突した。
「しまった!!」
『もう一撃で沈めてくれるっ…………何!?』
ヤマタノオロチは驚愕した。崩れた出入り口の先で、巨大な固定砲台がこちらを狙っていたのだ。


「……100% イグニッション!!」


その瞬間、ヤマタノオロチの巨大な体躯は、固定砲台からの光に飲まれていた。
『お、のぉぉぉぉれぇぇぇぇっ!!』

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜【参照四千突破!】 ( No.176 )
日時: 2013/05/27 22:07
名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode




「おっ、旨いじゃねぇか!」
「さすがは魔界三大珍味だけのことはありますね!」
「ウナギのような歯応えに肉に含まれるピリ辛成分が調和して、グレイトでベリッシモな味じゃ!」
ヤマタノオロチとの激戦を終え、雷夢達はちょっとした祝宴を開いていた。先程、アテナの光線で美味しくこんがり焼けましたとなったヤマタノオロチをメインにしている。
さすがに雷夢は食べるのを拒否したが、ついさっきアテナが言った通り魔界三大珍味やらなんやらという程の味らしいので雷夢も食してみたのだ。
なんでアテナが魔界三大珍味なんぞを知っているのか疑問に思い問い質してみると、最初に魔界に修行に来た際に予めマークしておいたのだとか。それはそれでおいといて、ヤマタノオロチは確かに旨かった。が、味付けがほぼ無いので、雷夢はギューリットに頼んで出してもらった砂糖と醤油と鍋で甘辛く煮て食べた。
「結構いけるじゃん、これ」
「だろ? 昔、この肉をぶつ切りにして干魚って言って売ったら大繁盛したってくらいだからな!」
「それ羅生門だよね、芥川龍之介の」
もしかして老婆に髪を抜かれていた死人の女性は実は黒魔法使いだったりするのだろうか。
「きゅーん、きゅーん!」
「あ、ランちゃん!」
その声に雷夢が振り向くと、アテナの胸に飛び込むランちゃんがいた。そういえば戦闘開始直前に、ランちゃんに安全な場所に隠れとけと言ったが、そのせいで今の今まで存在を忘れていた。
「心配かけてごめんな、ランちゃん。ほら、これあげるよ」
「きゅーん!」
雷夢が差し出したヤマタノオロチの煮物を、ランちゃんは一口で頬張った。
と、その時、ランちゃんの眼がキランと光った。
「ど、どうしたランちゃん!?」
ランちゃんは雷夢に反応もせず、空中に飛び上がった。いや、それは浮遊していると形容するのが正しい。そんな思考を巡らせているうちに、ランちゃんの身体は白い球に包まれていた。そのままその球が巨大化し、目測プレハブ小屋サイズになると、それが弾け、中から純白の深紅の身体の竜が降り立った。その竜を雷夢は知っていた。


火の国の守護神、ジラントだ。


ジラントは雷夢達の方を向くと口を開いた。
「やっと元に戻ることが出来ました。感謝します、勇敢な戦士達」
「えっ、ちょっとどういうこと!?」
「ランちゃんがワープ進化したぁ!?」
「く、詳しいことを説明してもらえるかのぅ!?」
「あ、はい。わかりました、全て説明します」
ジラントの説明を要約すると、
1・自分の根城でくつろいでいたら、先程のヤマタノオロチが襲ってきた。
2・突然の不意討ちに対応できずダメージを負ってしまい、人間界へと逃げようとした。
3・しかしヤマタノオロチの追い討ちで魔力を奪われ卵になってしまい、そのまま人間界へと飛ばされてしまった。
とのことだった。
「私が元に戻るには、私を襲ったヤマタノオロチの肉を食べて魔力を取り戻すほかありませんでした。先程雷夢さんがヤマタノオロチの肉を食べさせてくださったおかげで、元に戻ることが出来ました」
「そうだったんだ……。元に戻れてよかったですね!」
「じゃあ、ジラントさんはこれから……」
「はい、魔界に戻るつもりです」
「うっ……えぐっえぐっ…………。お別れなんて……寂しいです……」
「もっと…………一緒に遊んでいたかったのじゃ……」
アテナとテトは別れが辛いのか、大粒の涙を流し泣きじゃくっていた。確かに、あれだけ親しんで愛撫していたのだ。泣きたくもなるだろう。
「では、これを差し上げますから、泣くのはお止めになってください」
そう言ってジラントが差し出したのは、1つのペンダントだった。
「これを太陽か月の出ている方に掲げて私のことを念じれば、いつでもあなた方の所へ参ります」
「じゃ、じゃあ……いつでも会えるんですか!?」
「あまり頻繁に呼ばれては困りますけどね」
『やったぁっ!!』
感極まったのか、アテナとテトは互いに抱き着いた。やはり嬉しいのだろうか。
「では、私はこれで」
そう言い残すと、ジラントは大空の彼方へ飛び去っていった。
「それじゃ、私たちも帰るとするか!」
「帰ったらゆっくりお風呂に入りたいです……」
「じゃあ我は昼寝でもするかのぅ」
「じゃ、僕はネットサーフィンでもするかな」
そんな会話を交わしながら、雷夢達は洞窟を後にした。




第6話「〜雷夢とUMAとときどきドラゴン〜」完


〜第7話へ続く〜