二次創作小説(紙ほか)

Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.285 )
日時: 2013/12/09 20:58
名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode


〜番外編その2「ある日の一子」〜



「おい、起きろティコ」
「……うーん。もうちょっと寝かせてぇ……」
布団の中から一子はわざとらしい口調でベッド脇の高校生らしき少年に返事を返す。薄目で少年を窺うと、やれやれと言いたげな表情で溜め息をついていた。ちょっとからかってやろう、と一子の口は新たな言葉を紡ぐ。
「ティコじゃなくて、本名で呼ばなきゃだめ。そうしないと布団から出てあげないもんねぇ」
「……全く、お前ときたら」
一子のわがままっぷりに呆れながらも、少年はその顔を耳元に近づける。
「起きて……い、ち、こ」
「へへっ、やっぱガブリンはそうでなくっちゃ!」
ガブリンことガブリエルのその言葉を聞いた瞬間、一子はベッドから跳ね起きガブリエルの胸に飛び込み、そのまま抱きついた。
「こら、一子。寝起きに胸ぐらダイブは自重しろって言ったろ?」
「ちゃんと自重してるもん。ほら、早く修行始めよ?」
「……一子、今何時か分かってその言葉を言ってるのか?」
そう言ってガブリエルは机の上の時計を指差した。その時計の針がが指しているのは──。
7時半。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? なんでもっと早く起こしてくれなかったのよガブリン!」
「いや……ちゃんといつもの時間に起こしに来てやったんだが……。お前の寝顔が可愛すぎて起こす気が失せた」
「もう、そんなデレデレ発言して許されると思ったら大間違いよ! ガブリンのバカバカバカァッ!!」
恥ずかしそうに顔を赤らめて顔を掻くガブリエルの胸を一子は両手でポカポカ叩く。当然ながら全然効いていないようだ。
「ほら、早くしないと遅刻するぞ。ガブリエ・ガブリエ・ドレスティアーレ」
「ちょっ、勝手に『着替え魔法』かけないでよ!」
ガブリエルが呪文を唱えると、その目の前で一子が宙に浮きパジャマが勝手に脱げて足元で綺麗に畳まれる。それと同時にタンスから洋服が飛び出し、一子の身体に纏われていく。今日の服はヒラヒラの真っ白なワンピース。水色の縁取りもされていて、可愛いの一言に尽きる。
「ほら、ランドセル持って朝食食べてきな。抜くと身体に毒だぞ」
「ていうかさ、別に朝食食べなくても大丈夫だから。急がないと遅刻するよ!」
「へぇ、残念だなぁ。一子が朝食食べなくて」
先程のお返しとばかりにガブリエルはわざとらしい口調で呟いた。
「な、何よ……」
「今日の朝食、俺がお前の為に作った美味しい美味しいサンドウィッチなんだけどなぁ」
「えっ、ガブリンのサンドウィッチ!?」
実を言うとガブリエルのサンドウィッチの味は天下一品、唯我独尊の味なのだ。その味といったら、アルバイト先の喫茶店での看板メニューになるほどで。
「お前が食べないなら全部食べちゃおうかなぁ?」
「ごめんごめんごめん、やっぱ食べる!」
「だったらゆっくり食べてけ。学校は『瞬間移動魔法』で近くに飛ばしてやるから」
「ううっ……。ガブリン大好きっ!!」
ガブリエルの天使のような施しに喜びが溢れ、一子は再びガブリエルに抱きつく。まぁ実際大天使なのだが。
ガブリエルの腕にくっつきながら、二人はダイニングへと向かいサンドウィッチを摘まみ始めた。
「さっきは怒ってごめんね。お詫びに今日は一緒に寝てあげる」
「なら、今日は気持ちよく安眠できそうだな」
仲睦まじそうにサンドウィッチを食べあう少年と少女。その姿は誰がどう見ても、ただの一組の恋人同士にしか見えないだろう。