二次創作小説(紙ほか)
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.58 )
- 日時: 2013/01/23 20:16
- 名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
第2話「〜また居候!?過去の母と運動会〜」後半
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ピリリリリ、ピリリリリ、ピリッ。
ぽち。
「はぁ〜、よく寝たな。さて、と。」
雷夢はいつも通りに午前5時に起床した。もちろんいつもの朝練のためだ。
早朝の肌寒さに耐えながら着替えを済ませ、本棚から愛用の教科書を取り出す。
「あれっ?そういやギューリット来ないな。」
いつもならこのタイミングでギューリットは来るはずなのだが、何故か今日はその気配がない。朝食でも作っているのかと思ったが、耳を澄ませてもその類いの音は聞こえない。
「いったいどうしたんだろ?」
そう言いつつ雷夢は廊下に出た。行き先はもちろんギューリットの部屋だ。
「あ、雷夢殿。おはよ・・・なのじゃ、ふぁ。」
ふいに廊下のコーナーからテトが出てきた。目も閉じかかっており、欠伸混じりに話しているところを見ると、どうやら寝起きらしい。
「あ、おはよテト。ところでギューリット知らない?朝練の時間なのに部屋に来なくて。」
「あ〜。ギューリット殿は今はお留守なのじゃ。」
「はい?」
予想外の返答に雷夢は首を傾げた。
「先程トイレから戻ってきたらの、ギューリット殿に出くわして、『ちょっと用事で出掛けてくる。雷夢には朝練は無しって言っといてくれ。めざまし7までには戻るから。』と言って行ってしもうたのじゃ・・・くぅ。」
どうやら限界がきたらしく、テトはたったまま寝ていた。
「いったいどうしたんだろギューリット。・・・てかテトを部屋に戻さないと。」
雷夢はテトを背負って寝かしつけると、自室のベッドに戻った。
当然すぐに意識は飛んでいった。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.59 )
- 日時: 2013/01/23 22:44
- 名前: ノヴァ (ID: BoToiGlL)
「おいチョコ!そこ違うぞ!『の最高君主にして』が抜けてんだよ!」
ああ、もう。いちいち言わなくても分かってます!
「ほれほれ、もう一度最初から!」
はいはい、わかりましたよ。えーっと・・・。
「偉大なる地獄の最高君主にしてハエ騎士団の・・・。」
ガララ。
「母さん、いるか?」
わぁ!ギューリットさん、いきなり出てこないでください!
ああ、せっかくいいところまで言えたのに・・・。
「どうしたギューリット。」
私のことは無視ですかっ!
「おお、すまねぇチョコ。で、母さんに聞きたいんだけど、チョコのゴスロリってどこで買った?」
え、このゴスロリ?
「それなら、確か原宿だな。けど店自体はないぞ、死霊がやってたけどチョコが祓ったからな。」
「なるほどな。あんがと、じゃ!」
そこまで言うとギューリットは窓の外に身を投げ出した。
「でぇぇぇ!?」
ドスーン!
予想通り落ちました。飛行魔法薬塗ってても何かに跨がってないと飛べないのは分かっているはずなのですが。
「ギヒヒヒッ!落ちた落ちたぁ!」
ギュービッドったら子供のように喜んでます。さらに、下に落ちたギューリットを見ようと体を乗り出し始めた。
「あ、ギュービッド様そんなに乗り出したら・・・。」
ズルッ。
「のおぉぉぉ!?」
ドシーン!
忠告が間に合いませんでした。それにしても口調といい、姿といい、落ち方といい、どれだけ似ているのでしょうかこの親子。
「うーん・・・。ムグッ!」
息苦しくて雷夢は眼が覚めた。しかしなぜだか目の前が暗い。
「い、いったい何が・・・。」
雷夢は状況を確認しようとしたが、何かに頭を抑えられて動かせない。
「すー・・・。すー・・・。」
ふと、上の方から何かが聞こえてきた。恐らくは寝息。
「(だ、誰か寝てるのか?)」
寝息の主を確認しようと、雷夢は先程より少し強く頭を動かした。
むにゅ。
すると、なにか柔らかい物が雷夢の顔に触れた。
「ん〜・・・。・・・のじゃ。」
「・・・・・・のじゃ?」
その言葉で雷夢は確信した。この柔らかいもの、そしてこの寝息の主を。
そう、二度寝の前に雷夢が会った人物。テトだ。
その瞬間、雷夢は身体が熱くなった。
「(やばいやばいやばいやばいやばいっ!!)」
このままでは、雷夢は自分の中の大切な物を失いそうな気がしてきた。
必死になって頭を動かすも、相変わらずテトの腕は雷夢の頭を拘束していた。もがいてみると、左腕は自由のようだったのでそれを手探りでテトの頬まで持っていき、
ぎゅうぅぅぅ。
引っ張った。というよりはつねった。
「ん〜・・・。はっ!なぜ我はここに!?・・・って何しとるのじゃ雷夢殿!」
「お前が勝手に来たんだろ!」
やっとテトの拘束から解放された。
「えっと、我はトイレに行って雷夢殿に会って・・・。そこから少し記憶が飛んで・・・。またトイレに行って、戻ってきたらベッドに抱き枕があったからそれに思いっきり抱きついて寝たのじゃが・・・。」
「その抱き枕って多分僕だ。」
まさかとは思ったが、この事件の原因はテトが寝ぼけて部屋を間違えたからだった。
「まさか、雷夢殿・・・。我が寝ている間にやらしいことをしたのでは・・・。」
「んなわけねぇだろ!小学生だぞ僕は!」
超高速で否定した。
「まあ、よいのじゃ。まだ寝させてくれるかの・・・。」
そう言ってテトは再びベッドに倒れこむ。
間髪いれずに雷夢は叩き起こした。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.60 )
- 日時: 2013/01/26 21:43
- 名前: ノヴァ (ID: HDoKOx/N)
「あ、おはようございます雷夢さん。」
リビングに降りていくとアテナがいた。どうやら自分が来るまでテレビを見ながらパンを食べていたらしく、テレビは「めざましテレビ」の占いが映っており、テーブルにはビニールの包み紙が置いてあった。
「ギューリットまだ帰って来てないの?」
「あ〜まだ帰ってきてないみたいです。」
「じゃ、僕も一緒にパン食うかな。」
そう言って雷夢がパンに手を伸ばした時だった。
「やっほー!今帰ったぜ!」
ギューリットの声が響いた。
『めざまし7!』
めざましテレビの朝7時のニュースを告げる声も響いた。
「どうだ、ちゃんとめざまし7の前に帰ってきたぞ!すげぇだろ、ギヒヒヒッ!」
正直どうでもいい。
「てかギューリット、朝早くからどこいってたの?」
「ああ、仕事探しだよ仕事探し。」
全く予想だにしなかった答えが帰ってきた。てっきり近くを流れる落合川にヘビやらカエルやら取りに行っているのかと思ったのだが。
しかしなぜ仕事探しなのだろうか。
「てか、なんで仕事探しなんてやってんのさ?」
「確かにそうですよね。なぜにお仕事を?」
「ああ、それはだなモグモグ・・・。」
口にパンを詰め込みながらギューリットが説明した・・・のだが相変わらず長かったのでまとめると、
1・取り合えず家にはギュービッドがくれたお金がまだ残っている。
2・しかしこのまま収入がないといつか使いきってしまう。
3・なので学校に行っていないギューリットが働いて金を稼ぐ。
ということらしい。
「というわけで、町に行って求人の広告探しまくってたわけ。」
「な、なるほど。」
ギューリットの言い分はごもっともだ。確かこの家は8000万とかその辺りの値段だったはずだ。それから皆の生活用品や家具類の分を差し引いて、今ギュービッドが残したお金の残高は2700万辺りが妥当だろう。
確かにこのまま使えばいつか尽きるだろう。
「んで、雷夢。修行のスケジュールがちょっと変わるかもしれねぇから、そんときは自主練しとけ。」
「分かったよ。・・・てかテトは?」
「そう言えばいませんね。」
恐らくはまた雷夢の部屋のベッドに横になっているのだろう。全く、先程叩き起こしたというのに。
「おーい、テト!起きてこーい、飯だぞー!」
「は、はいなのじゃ〜・・・。」
ギューリットが呼ぶと、二階から力ないテトの声が聞こえた。やはり寝ていたようだ。
「あ、そうそう。お前は今日は走り込みな。」
「え、なんで!?」
「だってお前リレーのメンバーになったんだろ。」
「あ、だった。」
ギューリットに言われて思い出した。昨日の騒動で忘れていたが、自分は地域対抗のリレー選手だった。そもそもその練習での疲労を取るために飛行機公園に行ったのが騒動の始まりだったのだ。
「お前に恥かかせたくないからな。『あいつリレー選手に選ばれたのに遅いな〜ww 』なんて言われたくないだろ?」
「ぐっ、確かに・・・。」
その前に「ww」なんて言う人間は早々いないだろう。某動画サイトではあるまいし。
「というわけでリレーが終わるまで黒魔法修行は抑え気味でいくからそのつもりで。」
「雷夢さん、私もビシビシ指導させていただきますので覚悟してくださいよ!」
「そういや誰だっけ、登校初日に僕の目の前で息切れしながら走っていたの・・・っておおぅ!?」
「雷夢さん、それ以上は言わないでください。」
雷夢がアテナの足の遅さを指摘しようとした瞬間、アテナのエンジェル・ビットが全てこちらを向いて砲撃態勢をとっていた。先端がほんのり光っており、いつでも発射OKという雰囲気をかもし出している。
そこまで足が遅いのを言われたくないのかこいつは。
「じゃ、アテナも走り込みな。」
しかし、それは無駄に終わりアテナは無言で滝のような涙を流していた。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.61 )
- 日時: 2013/01/27 15:04
- 名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)
「よし、じゃあ走り込みいくぞ!」
ギューリットに連れられて、雷夢とアテナは飛行機公園にたどり着いた。確かにここなら広くて走るのにはもってこいだ。またフルーレティが来たら話は別だが。
「てか私もなんですか、ギューリットさん?」
「当たり前だろ!お前も走っておけば、もしも誰かが休んでリレーのメンバーにお前が抜擢された時に役立つだろ?」
「ギューリット、さすがにそんなことは・・・。」
そこで雷夢は開きかけた口を閉じた。なぜなら自分の尻の辺りにエンジェル・ビットが飛んでいるからだ。別に見えるわけではないが、ヒュンヒュンいっているので大体想像がつく。
恐らくこのまま話していればこのエンジェル・ビットは雷夢の尻に刺さっていただろう。
「仕方ないですね、はい・・・。」
しかしアテナはそんなことをしていないかの如く、涙を再び流していた。
「んじゃ、そこに二人とも並べ。」
ギューリットが指定した所に二人は並んだ。するとギューリットは遠くの方に見える木を指差した。
「あそこまで行ってUターンして戻ってこい。大体100メートルあるから、タイムが簡単に出るだろ。」
「えぇ!?あそこまで走るの!?」
「当たり前だろ!位置について〜・・・。」
アテナも雷夢もギューリットのスタート宣言を聞き、急いで構えた。
「よ〜い・・・。」
ごくり。
二人とも唾を飲んだ。
「ど・・・おおぅい!?」
「おっと、ちょっと済まねぇな退いてくれ!ガハハハッ!!」
いきなり、一陣の風と共に誰かがギューリットの脇を駆け抜けていった。ギューリットはその勢いで回転し目を回して倒れた。
「のおぉぉぉ・・・・。」
「い、いったい誰でしょうか。今の・・・。」
「えっと、多分母さんのクラスに転校してきたっていう「涼風さやか」だと思う。あの足の速さに、独特の『ガハハハ!』っていう笑い方だから多分そうかも。」
未来での母親から聞いていたが、確かにとてつもない身体能力だ。しかし今の時点では黒魔法によるもののはずだから、もう少し格が下がるだろう。
「いてて・・・。なんだよなんだよなんだってんだよ〜!」
「てかなんでポケモンネタ?」
「いいから、早速改めて始めるぞ!位置について〜・・・。」
ごくり。
「・・・あ、てかこんなことしなくてもよかった!」
どべっ。
雷夢とアテナはその場で転けた。
『はぁ!?』
「いや、実はこんなときにぴったりの黒魔法があったの忘れてたぜ。」
「もっと早く思い出してくださいよ!」
「そうだよ、ギューリット!」
「わかったわかった。教えてやるからちゃんと見とけ!」
するとギューリットは木の方を向いて呪文を唱えた。
「ルキウゲ・ルキウゲ・クロアプターレ!」
そのとたん、ギューリットの姿が一瞬にして消えた。そしてまた同じ場所に現れた。
「はぁ、はぁ、どうだすげぇだろ!」
『ごめん全然わからない(です)。』
一瞬消えてまた現れただけなのでどこがすごいのかわからない。
「じゃあ分かりやすくやるから見とけ!ルキウゲ・ルキウゲ・クロアプターレ!」
再びギューリットが消えた。しかし今度ははっきり分かった。
高速で走っているのだ。先程はそれが早すぎて認識できなかったらしい。
木まで行ってきたギューリットが戻ってきた。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、どうだ・・・。これが私の考えた黒魔法、『クロックアップ魔法』だ。」
「なんかどっかで聞いたような名前ですね。」
「てかなんでそんな疲れてんの?」
「アホ!バカ!まぬけ!おたんこなす!すっとこどっこい!あっちまで行って戻ってくるのを二回、合わせて200メートル走ったからだよ!」
「あ、思い出しました。」
アテナが急に口を挟んだ。
「ギューリットさん、その魔法『仮面ライダーカブト』からパクりましたね。」
「パクってねぇ!リスペクトって言え!」
同じような物だと思うが、アテナの言った単語を聞いて雷夢も思い出した。
「けど、僕が知ってるクロックアップって高速移動する能力だったと思うんだけど。それだったらなんで疲れてんの?」
「あのな、それは『ディケイド』のカブトの設定だろ!本家とは設定が違うの。」
聞いてて意味が分からなかった。
「じゃあ特別にありがたく教えてやるから聞いとけ!」
ありがたくとか言っておいて、やはり長かったのでまとめると、
1・もともとクロックアップは仮面ライダーカブトやその他の仮面ライダーが使える能力である。
2・それは周りの時間を遅くするような能力なので、他人から見れば高速移動しているように見える。
3・しかし、ディケイドに登場する際にその設定が複雑だったので、ただ高速移動する能力に変更された。
とのこと。
「だからお前らには早く見えても私は汗水垂らして普通に走ってんの!」
「なるほど。けどそれじゃ早すぎて完全に怪しまれますよ。」
確かに。ピストルの音がしたと思えばすでにゴール!なんてことがあれば一発で終わりだ。
「言っとくけど、さっき私がやった見たいに上手く調整すれば他人からはお前が早く走っているようにしか見えないわけ。分かったか!」
「うん・・・。けどそれってズルじゃあ・・・。」
「黒魔女は騙してなんぼなの!わかったら練習始めっぞ!」
そんな定理は聞いたことがないが、とにかくリレーではイカサマをすることになりそうだ。
しかし、雷夢達は気付いてなかった。
遠くの山から自分達を睨み付けている紅い眼光に。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.62 )
- 日時: 2013/01/29 17:16
- 名前: ノヴァ (ID: uY/SLz6f)
「ふぅ・・・。雷夢が過去に行ってもう二週間か。上手くやれてるかしら?」
私はリビングでお茶を飲みながら呟いた。
ギュービッドが言ってたロベの手下ってのはまだ来てないけど、いずれ戦うことになるんだから、気を引き締めないと!・・・なんて思ってもどうしても雷夢のことが気になっちゃう。やっぱり大事な我が子だもんね、気になるのは仕方がないか。
「気晴らしにテレビでも見ようっと。」
テレビを点けると、なんかのバラエティー番組みたい。
『いやぁ、紫苑さん。今日も綺麗な服で美しいですね〜!』
『でしょお?私はファッションのことについてはなんでもわかるしぃ、昔からいろんな服を着ているからぁ、その日どんな服を着れば自分が一番綺麗になれるかが分かるのぉ!』
あ、メグ。確かメグは今じゃトップクラスのファッションコーディネーターだったっけ。たまに会ったりするけど、雑誌やらテレビやらで引っ張りだこみたい。
けど相変わらず自己チューで何よりです。
「えっと、ファッションはあんまり興味ないから次は・・・。あ、スポーツか。」
『バッター三振!これで小嶋直樹選手、今シーズン全バッターを完封だぁっ!!』
ぬぉう、今度はエロエース!今は夢叶えてプロ野球選手やってるって言ってたけどすごいことしてるね。ルルちゃんと結婚してからスケベっぷりが無くなっていればいいんだけど・・・。
「ほんじゃ次は・・・。」
ピロロロ、ピロロロ。
あ、電話!
「はい、黒鳥ですけど・・・。」
『あ、黒鳥・・・いや、千代子さん久しぶりね。』
えぇ、舞ちゃん!?いったいどうしたの?
『ここのところ余り連絡取れてなかったから、ちょっとね。ところで大形くんとは上手くいってる?』
「そんなこと言われてもね・・・。雷夢が産まれてからずっと海外で仕事だから、ちょっと寂しいかも。そっちは?」
『こっちも大変でね、検察官の仕事が山積みよ。出雲くん、次の仕事は?』
『次は、東京地裁で行われる殺人事件の裁判での仕事が入っています。』
わっ、舞ちゃんまだ出雲くんをパシリにしてたんだ。
『違うわよ!出雲くんは私の忠実な秘書!パシリなんかじゃないから。』
はぁ、そうですか。けどなんか役割的には余り変わってないような・・・。
『あ、私そろそろ次の仕事だから。それじゃ、また。』
切れちゃった。はぁ、いつになったら帰ってくるんだろ。
「・・・京のバカ。」
「ごめんね、君にそんなこと言わせるなんて。夫の名が廃るよ。」
その言葉を聞いて振り向くと、そこには自分の夫、黒鳥京がいた。
「ただいま、チョコ。」
「あ、う、ん・・・。京ぉ〜!!」
私は思いっきり京に抱きついた。こんなことするの何年ぶりだろう。
「けど、なんで戻ってこれたの、仕事は?」
「そんなもの、君に会いたくてたまらない思いが押さえられなくなって、黒魔法で終わらせて来たよ。」
「あ、けど雷夢は・・・。」
「雷夢のことはギュービッドから聞いてる。過去に行ったんだろ。」
さすがギュービッド。侮れません。
「そうそう、これお土産。」
京が鞄から取り出したのは、大きな(といってもハンドボールぐらいの)水晶玉。
「これを使えば雷夢のことを見守れるよ。」
本当!?ありがとう、京!
私はお礼代わりにキスをしてあげた。こんなのも久しぶり。京の顔も優しく微笑んでる。
「けど、今は直に雷夢に会いたい。チョコもそうだろう?」
当たり前じゃない、大事な二人の息子でしょ!
「決まりだね。じゃあ、早速行こうか。」
「わかった!」
私たちは久しぶりに手を繋ぎ、呪文を唱えた。
『ルキウゲ・ルキウゲ・リボビナーレ!!』
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.63 )
- 日時: 2013/01/29 22:04
- 名前: ミラ (ID: i8xnxoYW)
これ面白いです!
また来ます!
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.64 )
- 日時: 2013/01/30 13:18
- 名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
ミラさん、こんな小説にコメントしてくださってありがとうございますm(__)m
更新頑張ります!
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.65 )
- 日時: 2013/01/30 19:02
- 名前: ミラ (ID: i8xnxoYW)
いえいえ!!(>_<)
「こんな」なんて!
すごく面白いですよ!
あっ私はタメOKです
続き楽しみにしてます!
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.66 )
- 日時: 2013/02/03 00:09
- 名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
すみません。書いてる時間が時間なので、今回はキャラ更新でいきます!m(__)m
「黒鳥千代子」(くろとり ちよこ)
・皆さんご存知、本家の主人公。
・現代(雷夢達が今いる時代)では普通に黒魔法の修行をギュービッドと共に行っている。
・記憶レスは相変わらず。(コンパクトの分身は時系列的には出てくるのは後の話だが、本家では記憶レスで忘れているということにしています。)
・未来では大形と結婚し、雷夢を授かっている。(互いにベタボレ。)
・ある意味この話の出来事のきっかけを作った人物。
「ギュービッド」
・こちらも本家ではお馴染みのチョコのインストラクターの初段黒魔女。
・機関銃攻撃は十八番中の十八番。(言わせてなくてごめんなさいm(__)m)
・未来では性格と容姿が瓜二つの娘、ギューリットを授かっている。(結婚相手は不明)
・未来ではギューリットとよく喧嘩している。過去では仲は良好。
「黒鳥 京」(くろとり きょう)
・未来でチョコと結婚した大形京。
・雷夢が産まれて間もなく、海外での仕事をしていたため雷夢とのコミュニケーションが取れていなかった。(同時に悩みでもある。)
・歳が歳なだけにぬいぐるみは付けていない。代わりに魔界の王になるのは諦め、黒魔法も使うのを自重している。(今となっては魔界の支配は眼中にない。)
・前述の通り、妻のチョコとはお互いベタボレ。
今回は以上の3キャラをご紹介させていただきました!
本編は後日更新に取りかかろうと思いますので・・・。
悪魔情「そこんとこ、よろしく!」
セリフ盗られたΣ(・ω・`)!?
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.67 )
- 日時: 2013/02/06 17:39
- 名前: ソラ (ID: JnbcEu1t)
悪魔情さんww
どーでもいいですが私大形京意外と好きです(どうでもいいですねごめんなさい)
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.68 )
- 日時: 2013/02/09 17:05
- 名前: ミラ (ID: i8xnxoYW)
私も大形くん好きです!!
イケメンなのが嬉しい・・・(-∀-)
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.69 )
- 日時: 2013/02/09 17:48
- 名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
「ほんじゃ、クロックアップ魔法の練習を始める!」
雷夢とアテナが仲良く体育座りで座っている前で、ギューリットはどこから取り出したのかも知れぬ小型のホワイトボードとマジックペンを持っていた。
「お前らがやるのはクロックアップ魔法を限界まで度合いを調節し、かつどれだけ普通に走っているように見せるかの特訓だ。あくまでも正規の手段だからな、インチキ等では決してないからな!」
ばりばりインチキではなかろうか。
「ギューリットさん、やっぱりそれは反則じゃあ・・・。」
「インチキなの!反則ではなーい!」
「どっちも同じだと思うんだけど・・・。」
「いいからはじめっぞ!まずはお前らにクロックアップ魔法を伝授しないとな。」
こんな感じで軽く言ってはいたが、自分達がなかなか修得出来ないので、最終的にはギューリットはやさしい教師からスパルタ熱血教師へと変貌していた。
「おい雷夢、気合い入ってねぇぞ!もっと熱くなれよ!」
「十分に熱いわ!動画のネタキャラと化したどこぞのテニスプレーヤーか!」
こんな会話が、先程からずっと続いている。恐らく一時間は経っているだろう。
しかし、なんとかクロックアップ魔法は修得できたわけで。
「よし、じゃあ今度はクロックアップ魔法のスピード調整の特訓だ。お前ら、ここに並べ。」
そう言われ、雷夢とアテナはギューリットに指定された場所に立った。
すると、ギューリットは少し先にある木を指差した。
「まずは、ここからあの木までクロックアップ魔法を使って走ってこい。もちろん、他人からは普通に走っているようにみえるようにな。」
「うん、わかった!」
雷夢はスタートラインに立ち、丹田に力を入れ軽く息を吸った。
「ルキウゲ・ルキウゲ・クロアプターレ!」
呪文を唱え走り出すと、急にギューリットの動きが遅くなった。いや、ギューリットだけではない。アテナ、そして空を飛ぶ鳥さえも動きが遅くなっている。
「取り合えず呪文は成功だけど・・・。大丈夫かな?」
そんなことを思いながら、雷夢は木まで走って戻ってきた。ギューリットの前まで戻ってくると、腰の横辺りを叩いた。ギューリット曰く、クロックアップ魔法は時間経過でも効果は消えるが、ここを叩けば即座に効果を消せるのだという。
「ぉおう!?雷夢、お前速すぎるぞ!そんなんじゃすぐバレるっつーの。」
「やっぱりダメか・・・。」
「当たり前だろ、次アテナ。」
アテナも同じく走ったが、やはり結果は雷夢と同じだった。しかし、白魔女が黒魔法を使っていいのかが疑問に残る。
「やっぱり無理ですよぅ。なにかコツみたいなのを教えていただかないと・・・。」
「確かに。コツとかないの、ギューリット?」
「えっとな、これを教えるとあまりお前達のためにならないんだけどな・・・。」
すでに、スパルタ教育という雷夢達のためにならない教育をしているのは自分ではないだろうか。
「仕方ない、教えてやる。」
『教えて教えて教えて教えてぇ!!』
いきなり雷夢達に詰め寄られ、ギューリットが腰をついた。
「わかったからわかったから!えっとな、コツとしたら・・・力の調整をホイップクリームを出すようにゆっくりと、蛇口から落ちる水のように少しずつやること!わかったか?」
「なんか、えらい分かりやすい表現だったけど・・・。わかった!」
雷夢は再びスタートラインに立った。
「えっと、ホイップクリームを出すようにゆっくりと、蛇口から落ちる水のように少しずつ・・・と。」
そして、息を吸って呪文を唱えた。
「ルキウゲ・ルキウゲ・クロアプターレ!」
そして走り出すと、先程とは大きく違っていた。周りの動きが普通より少し遅いだけで、ほとんど大差ないのだ。
木の根元まで行くと、後ろからギューリットの声が聞こえた。
「おぉいぃらいむぅ、せいこうだぞぉぉ!」
魔法の効果で若干ゆっくり聞こえるが、ほとんど問題はなかった。
そうして、雷夢はアテナとギューリットのところまで戻ってきて腰を叩いた。
「おお、雷夢!成功だ、めっちゃキテるぜ〜!!」
「すごいじゃないですか雷夢さん!普通に走っているようにしか見えませんでした!」
「や、やったぁー!!」
雷夢は嬉しさのあまり飛び上がり、辺りを跳ね回った。
「・・・っ!?」
すると突然、アテナが表情を険しくした。
「どうした、アテナ?」
「・・・雷夢さん、ギューリットさん。私たち、どこからか見られています。」
「な、なにっ!?どこだ?」
ギューリットが少し慌ててアテナに尋ねながら、周りを見回した。
「いえ、この近くからじゃありません。どこかもっと遠くからです。・・・けど、ものすごく威圧感と邪悪さを感じます・・・。」
「えっ!?いったいどこから・・・。」
雷夢も辺りを見回したが、特に何も怪しい物はない。
「・・・もう見られていないみたいです。私達が感じたのに気づいたんだと思います。」
「なら一安心していいか。・・・けど、私にもわかった。なにか、威圧感と・・・復讐の念みたいなのがな。」
「いったいなんだったんだ?」
ひとまず、三人は腰を下ろすことにした。
「取り合えず、まずは家に帰るぞ。後の修行は家でして、そのあと飯食って作戦会議だ。」
そしてギューリットの先導のもと、雷夢達は家へと急いだ。
黒く巨大なそれは、ゆっくりと森を蹂躙していた。荒々しく息をし、歩くたびに足元が大きくへこむ。そしてその口から、時たま小さな炎を揺らめかせながら。
「・・・ク・・ロト・・・・リ・・ライ・・・・ム・・。」
やがてその姿は鬱蒼と繁る草木の中に消え去った。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.70 )
- 日時: 2013/02/10 18:37
- 名前: ソラ (ID: JnbcEu1t)
ミラさん、すごぉ〜く遅れましたがこんにちは!
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.71 )
- 日時: 2013/02/12 19:04
- 名前: ミラ (ID: i8xnxoYW)
こんにちはっ!
巨大な黒いものっ!?
うぅー・・・続きが気になる・・・
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.72 )
- 日時: 2013/02/12 21:29
- 名前: ノヴァ (ID: L3izesA2)
『ガツガツガツガツガツガツ・・・。』
黒鳥家のダイニングで、雷夢、アテナ、ギューリットが夕食を掻き込む音が延々と響く。
『ガツガツガツガツ・・・。』
やがてテーブルの上に置いてあった皿の料理は、無事三人の胃に収まった。
「ふぅ〜、食べた食べた〜。」
アテナが膨れた腹を擦って吐息を漏らす。
「よし! それじゃ、さっそく・・・。」
「寝るか!」
「違うだろっ!!」
ツッコミ混じりに、雷夢はギューリット目掛けて竹串を投げた。
「いでぇあっ!? わ、わかってるわかってる! 会議だろ会議。」
目をバッテンにしてギューリットが弁解する。
「じゃあ、今日の昼に公園で感じたあの威圧感。あれについて談義しようと思う。」
「あれは・・・。何とも言い難い感覚でした。なんていうか・・・。レベルが違いすぎて話にならないくらいのプレッシャーでした。」
アテナが重々しい口調で話す。雷夢にはプレッシャーなどは感じられなかったが、それを見てそのプレッシャーがただならないものであるのは理解できた。
「で、これからどうすんの? そのプレッシャーの源でも探る気?」
「ああ、その通りだ雷夢。」
「今からですか・・・?」
「そうだ、早いうちに手を打たないといけない。・・・そんな気がしてならない。」
「うえっ、寒っ!?」
雷夢達は今、郊外にある山に来ていた。見下ろして見ると、飛行機公園がぼんやりと見える。
「多分、ここに間違いありません。少しだけですけど、あのときのプレッシャーが感じられます。」
「てことは、プレッシャーの主はここから俺たちを見ていたってことか。」
「・・・・・・。」
雷夢は黙っていた。何故なら、自身が今までに体験したことのないプレッシャーを感じていたからだ。
「あっ!? 雷夢さん、ギューリットさん!!」
アテナが足元を懐中電灯で照らしながら叫んだ。
雷夢とギューリットはアテナに駆け寄ると、懐中電灯の光の先を見た。
そこにあったのは・・・。
「足跡・・・だな。」
三人はしばし絶句した。
ギューリットが言った通り、そこにあったのは足跡だった。どうやら犬や狼のようだったが、驚いたのはその大きさだ。
大きさが、普通の犬や狼に比べダンチだった。恐らく十数倍はあるだろう。
「なんなんだよ・・・これ。」
「こんなのがここにいるなんて・・・。もし、町なんかに降りてきたらっ!」
「おい!! 雷夢、アテナっ!! 一旦降りるぞ、装備を整えて・・・。」
バキバキボキボキベキィッ!!!
ギューリットの言葉は、凄まじい轟音で掻き消された。
雷夢たちが音のした方を向くと、幾多もの木がへし折られ、その残骸の奥から何かが姿を現した。
その途端、雷夢達を凄まじいプレッシャーが襲った。
「あ・・・あ・・・。」
「こいつが・・・このプレッシャーの主・・・。間違いない!」
グオオオォォォォオオォォォッ!!!
その「何か」は天高く咆哮すると、雷夢達目掛け跳躍した。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.73 )
- 日時: 2013/02/14 20:01
- 名前: ノヴァ (ID: BoToiGlL)
『のわあぁぁぁぁっ!?』
雷夢達は本能的に、もと来た山道をダッシュで逆走し始めた。
グオオオォォォォオオォォォッ!!!
その後ろから、黒い何かが咆哮と共に迫ってくる。あちらが走る度に地響きがするので、何度も足がもつれる。
「こ、このままじゃ追い付かれるよ! ギューリット、箒で飛べないの!?」
「ここじゃ木が邪魔して飛べねぇっ! もう少し広い場所に行かないと無理だ!」
「口より足動かしてぇぇぇっ!?」
ドシャァァッ!
壮大な音と共にアテナが足をもつれさせ転倒した。
それを逃さず、何かはアテナに飛びかかった。
「き、きゃあぁぁぁっ!!」
「アテナーーーっ!!」
「てやぁぁぁぁっ!!」
ドゴォッ。
どこかで聞いた声と共に激突音が辺りに響いた。
雷夢が黒い何かを見ると、顔に誰かが一撃を加えていた。
しかも、その誰かを雷夢は知っていた。
可愛いげに揺れる猫耳、愛玩の如くふりふり動く尻尾、後頭部で結ばれた4つのテール。
「全く、雷夢殿もひどいのじゃ! 我を差し置いて出掛けるなど!」
「テ、テト!?」
そう。今では立派な黒鳥家の一員で、今朝雷夢を抱き枕と間違えて眠っていたテトだった。
テトは飛び上がって空中で回転すると、雷夢達の前に降り立った。
「テ、テト・・・。なんでここに?」
「それはこっちのセリフじゃ!」
テトは雷夢に叱責すると、ここに来た経緯を話始めた。
それをまとめると、
1・学校が終わったあと空き地で丸まって昼寝をしていたら、いつの間にか夜になってしまった。
2・急いで家に帰ると、ちょうど雷夢達が箒で家から飛び立つところだった。
3・それを追いかけてここまで来た。
とのことらしい。
どうりで姿が見えずに雷夢達が存在を忘れていたわけだ。
「って、いったいなんなのじゃあれは!? 取り合えず蹴っ飛ばしたが、よかったのかの!?」
「うん、バリバリOK。」
すると、月明かりが木々の間から射し込み、黒い何かを照らし始めた。
「あ、あれは・・・。」
「ヘルハウンド・・・? でも、でかすぎませんか?」
月明かりに照らされたその姿は、以前フルーレティが大量に従えていたヘルハウンドによく似ていた。しかし、大きさがその時の個体の数十倍はある。
「なんだよこの大きさは・・・。」
「てか、今のうちに逃げよう! テトに蹴られて倒れている今なら、充分引き離せる!」
「よし、行くぞ!」
そして、雷夢達は一斉に走り出した。しばらく走ったところで咆哮が聞こえたが、追いかけてくる様子はなかった。
「いや〜、助かりましたよテトさん!」
「ほんと、テトが来てなかったら今ごろアテナがどうなっていたか・・・。」
「いや、礼はよい。我はとにかく晩御飯が食べたいのじゃ!」
今、雷夢達は自宅に戻って、ダイニングルームで談笑していた。
あのあと開けた場所をやっとこさ見つけて少し前に箒で戻ってきたのだが、もうすでに9時を回っていた。
「ほい、できたぞ! テトの好物の焼きそばだ!」
ギューリットが巨大な皿に、山盛りの焼きそばをついでやって来た。
「おぉーっ! うれしいのじゃ! いただきますモグモグ・・・。」
テーブルに置かれて五秒と経っていないのに、テトはすでに口いっぱいに焼きそばを頬張っていた。どれだけ腹が減っていたのだろうかこの猫娘は。
「おい雷夢、アテナ。お前ら風呂入ってこい。さっき走ったから汗かいてるだろ。」
「あ、わかった。アテナ、先入っていい?」
「別にいいですよ。その間にテレビでも見ときますから。」
アテナがそう言うと、雷夢は自分の部屋から着替えを持ってきて、一番風呂をゆっくりと堪能したのだった。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.74 )
- 日時: 2013/02/15 18:23
- 名前: ノヴァ (ID: HDoKOx/N)
パァンパァン!
遠くから、運動会恒例の花火の音が聞こえる。
「おい、二人とも早く着替えろ!」
「わ、わかってるって!」
「こうなったのもギューリットさんのせいですからね!」
アテナがこう言うのは、第一小の運動会当日だというのにギューリットが寝坊して、全員を起こしそびれたのが原因だ。
明日は運動会だから、朝練は無し! などと言っておいてこれだ。おかげで全員8時まで爆睡していたわけで。
「よし、着替え終了!」
「アテナはどうだ!?」
「こっちも準備はいいです!」
ふと、雷夢は黒鳥家のメンバーが一人いないのを思い出した。
「そういえばテトは?」
「あいつは今日特にやることないし、『好きなだけ寝てていいぞ。私たちは運動会行くから』って昨日伝えておいた!」
「ギューリットさん! お弁当持ってきました!」
見ると、アテナは手提げのバッグを二つ程抱えていた。しかもかなり大きいもの。よく持てたと感服したいが、今はそれどころではない。
「よし、クロックアップ魔法で一気に第一小まで行くぞ!」
雷夢達は駆け足で玄関の扉を潜り抜けると同時に、呪文を唱えた。
『ルキウゲ・ルキウゲ・(ガブリエ・ガブリエ・)クロアプターレ!!!』
「あ、ライム〜! こっちこっち〜!」
第一小に着くなり、ミカがテントの中から雷夢達を呼んでいた。なぜだか久しぶりに会う感じがして仕方がない。
「あ、ミカさん! おじゃましてよろしいのですか?」
「大丈夫だよ、ライム達なら大歓迎だよ!」
いや、いかにも自分の所有物の如く発言しているが、このテント自体は第一小の物だというのを忘れては困る。
「そういえば、テトちゃんは? 一緒じゃないの?」
「ああ、テトなら運動会で出番ないから家で寝てるよ。」
そう言った途端、ミカはしかめっ面になった。
「ええ〜っ。テトちゃんが来るのを楽しみにしてたのに〜!」
ミカは頬まで膨らませて、少し不機嫌気味・・・いや不機嫌だ。おまけに耳やら尻尾やら出てきてしまっている。
「ところで、僕たちって開会式とか出なくていいの? 一応選手だし・・・。」
雷夢が聞くと、ミカは不機嫌さを抑えた様子で答えた。
「えっと、鳳さんの話だと出なくても大丈夫だって。」
「えっ、鳳さんもやっぱり来てるの?」
「ここにいますわ。」
後ろから話しかけられ振り向くと、そこには未來が立っていた。無論三人のメイド+穂香のおまけ付きだ。
「私達の出番は午後の最終種目ですから、それまで気長に観戦しましょう。」
「ところで、未來ってどこに座ってるの?」
「ああ、私達は隣のテントで座っておりますので、何かありましたらお話しをしに来てもよろしいですよ。」
未來はいつもの笑顔で告げると、メイド達を引き連れて行ってしまった。
「それじゃ、私たちもゆっくり観戦するとするか。」
ギューリットに言われ、雷夢達はテントに座って運動会を観戦することとなった。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.75 )
- 日時: 2013/02/16 22:15
- 名前: ノヴァ (ID: uY/SLz6f)
『ふあぁぁ・・・。』
眠い、ひたすらに眠い。少しでも油断すると眠ってしまいそうだ。それは隣にいるアテナやギューリット、ミカにも言えることだ。全員まぶたは半開き、下手をするとうたた寝に入りかけていることもある。
「ふぉんと、暇すぎて欠伸が出ますよ・・・ふあぁぁ。」
そう、アテナが言った通り、暇なのだ。朝からずっと観戦しているだけで、特に出場する競技もないので、かなり暇だった。
しかし、この苦痛もあとわずか。雷夢達が待ちに待った本家の競技があと少しで始まるのだ。「地域対抗リレー」が。
「雷夢さん、そろそろ集合の時間ですよ。」
「え、もうそんな時間だったっけ?」
未來に言われプログラムを見てみると、リレーは今やっている組体操の二つ後だった。
「おいミカ、そろそろ出番だぞ!」
「あ、う〜ん・・・。」
寝ぼけ眼のミカを連れて、雷夢は入場門に走って行った。
『それでは、次が今回最後の競技となります、「地域対抗リレー」です!』
放送が流れ、雷夢達を含む参加者全員が入場する。一度に四地区、1チーム20人という大がかりなリレーで、この運動会の一種の目玉と言ってもよいものだった。
「やっぱり二つに別れるんだな。えっと、こっちにいるのは・・・ミカとテトか。」
ちなみにテトは、リレーの選手だというのを思いだし、ついさっき来たばかりだ。
全チームが二つに分かれ準備が整うと、最初の選手がスタートラインに立った。ピストル係が立ち、ピストルを構える。
「位置について・・・。よーい・・・。」
ズギャァァァァァァンッッッ!!!
その爆音で、会場の空気が凍りついた。無論ピストルの音ではない。雷夢が音のした方を見ると、先程まで何も無かった校庭の中央に深い亀裂が入っていた。まるで爪で切り裂かれたかの如く。
「グルルァァオゥッ!!」
間髪入れず、何かが校庭の中心に降り立った。そこにいたのは、山で出会ったあの巨大ヘルハウンドだった。
『キャァァァァァァッ!!』
会場にいた人達が、それを見て一瞬で悲鳴を挙げ我先にと逃げ出した。
「ルキウゲ・ルキウゲ・テンポラーレ!」
すると、なぜか観客が全員動きを止めた。いや、止まっている。
そこにギューリットが人混みを掻き分けて駆けつけた。
「ギューリット、どういうことなの? 人がみんな止まってるけど・・・。」
「今、この辺り一帯に『時間停止魔法』をかけた。あんまり騒ぎを大きくするといけないからな。」
「グオォォォォォ!!!」
ヘルハウンドが咆哮をあげて、こちらに向かってきた。すかさず横跳びでかわす。
「ガブリエ・ガブリエ・キャノラーレ!!」
ドギュドギュドギュドギュゥゥン!!!
突然呪文が聞こえたかと思うと、ヘルハウンドに無数のビームが直撃していた。
「大丈夫ですか雷夢さん、ギューリットさん!?」
「アテナ! 今のは・・・。」
「私のエンジェル・ビットの『砲撃呪文』です。少しは堪えてくれればいいんですけど・・・。」
ズシン、ズシン、ズシン。
黒煙の中から、ヘルハウンドが歩み出てきた。あれだけの砲撃を喰らったはずなのに、目立った外傷が見られない。耐久性がかなりダンチということが目に見えてわかった。
「この前みたいに一発喰らうのじゃあ!」
ヘルハウンドの背後で、テトが跳躍するのが見えた。恐らく、以前と同じように飛び蹴りを喰らわせるつもりらしい。
テトが勢いをつけて飛び蹴りの体勢で突っ込んでいくと、ヘルハウンドも気付いたのか後ろを向いた。
「反撃しようとも遅い! 喰らうの・・・じゃ?」
ガパァ・・・。
テトの突っ込んで来る先で、ヘルハウンドが大口を開けた。
「ちょ、ちょっとちょっと待つのじゃ〜!」
今の状態だと、テトは慣性の法則で止まる事ができない。その先に待っているのは、ヘルハウンドが開けた巨大な口。
「にょわーーーっ!?」
パクン。
ゴクリ。
テトが飛び込むと同時に、ヘルハウンドは口を閉じて、それを飲み込んだ。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
『食われたあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???』
読んで字のごとく食われた。テトが食われた・・・。
「う、うあぁぁぁぁぁっ!!!」
凄まじい叫び声が聞こえたかと思うと、ミカが怒りを露にしてヘルハウンドに突っ込んでいた。
「よくも、よくもよくもよくもっ! よくもテトちゃんをぉぉぉぉっ!!」
「ミカ、不用意に近付くな! 危険だ!」
しかし、ギューリットの声は怒り狂ったミカには届かず、更にヘルハウンドに突っ込んでいく。
「グオォォォォォ!!」
一瞬何が起きたか分からなかった。気づくと、ヘルハウンドはミカに一瞬で肉薄していた。
「あ・・・。」
ガリガリゴリンッ!!
もうそこにミカの姿は無かった。あったのは無惨に抉れた校庭だけ。
ゴクン。
これでミカも食われてしまった。雷夢達はただただ唖然とすることしかできない。
それがいけなかった。そのせいで反応が遅れ、ヘルハウンドが飛びかかるのに気づくのが遅れた。
雷夢は自分の終わりを悟った。
「(し、しまった・・・。父さん・・・ごめん、生きてる間に会えなくて・・・。)」
「いや、そんなことはないさ。」
バゴオォォンッ!!
目を開けると、ヘルハウンドが吹っ飛んでいた。しかも、目の前に誰かが立っている。
ウェーブのかかった髪、右目を隠した前髪。その人物を、雷夢は知っていた。
「やっと会えたな、雷夢。自分の父親・・・黒鳥 京に。」
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.76 )
- 日時: 2013/02/17 16:34
- 名前: ノヴァ (ID: FX8aUA2f)
「え、まさか・・・。父さん・・・?」
雷夢が問いかけると、その男は少し微笑んだ。
「そう、僕はお前の父親の黒鳥京だ。」
やっと会えた。自分がこの世に生を受けてから11年間、会うことができなかった父親が目の前にいる。
「全く、敵に隙を与えるなんて、僕の息子らしくないぞ。」
「と、父さん・・・。」
ゴオォォォアアアァァァァッッッ!!
先程吹っ飛ばされたヘルハウンドが、再び立ち上がって雷夢達に飛びかかった。
「と、父さん! 早くにげ・・・。」
「その必要は無いぞ、雷夢。」
ゴッシャァァァァン!!
物凄い金属音がしたかと思うと、ヘルハウンドが崩れ落ちていた。
そこに、空から誰かが降り立った。またしても、雷夢はその人物を知っていた。
「全く、雷夢に会いに来たのに当の本人が襲われてるなんて。」
「母さん!?」
そう、そこにいたのは自分の母親、黒鳥千代子その人だった。
「久しぶりね、雷夢。」
「母さん・・・。ってそれどころじゃないよ! あいつに僕の友達が二人食われたんだ!」
「なるほど、それで隙だらけだったわけか。」
「って、また来ましたよ!」
見ると、三度ヘルハウンドが強襲してきている。二回もやられて怒り爆発のようだ。
「行けるよね、チョコ。」
「当たり前でしょ、京。」
すると、母はどこからかフライパンを取り出した。まさかさっきのはこれで叩き伏せたのか。
「ルキウゲ・ルキウゲ・トラスフォルマーレ!」
母が呪文を唱えると、先程取り出したフライパンが変形し始めた。きれいな円形が、次第に四角くなっていく。どうやら卵焼きを焼くときに使うフライパンのようだ。
「それじゃ、雷夢達の防御は任せたわ!」
そう言うと、母はヘルハウンドに向かって突っ込んで行った。
突然ヘルハウンドが首を反らせ始めた。猛烈に嫌な予感を感じる。
「みんな、僕の後ろに!」
父の言うことに従い、雷夢達はその後ろに移動した。
「ゴオォォォッ!!」
ヘルハウンドが口を開けたかと思うと、その中から大量の火球が打ち出された。無論こちらに飛んでくる。
しかし父はそれに動じることなく、右手をつきだした。
バヒュバヒュン!
すると、雷夢達に向かっていた火球がことごとく弾けた。
「これはいったい・・・。」
「ただの防御魔法だよ。このくらい消し飛ばすのは簡単さ。」
ギューリットの質問に、父は平然と答えた。
当の母は、信じられないほど軽やかな足取りで火球を避けている。この二人、色々とチート過ぎる。
「さて、雷夢のお友達・・・返してもらいましょうか!」
母はヘルハウンドの火球を避けまくると、その真下にまわる。
「はぁっ!」
バゴン!
鈍い音がして、ヘルハウンドの鳩尾にフライパンがめり込む。
そのとたん、ヘルハウンドは苦しそうに身もだえしはじめた。
「グ、グ、グ・・・ゲボァッ!」
べしゃべしゃ。
もがきまくった果てに、ヘルハウンドは何かを吐き出した。
「テト、ミカ!」
それは、ヘルハウンドの胃液がまとわりついたテトとミカだった。雷夢はアテナと共に二人に駆け寄る。
「テト、テト! しっかりしろ!」
「う・・・ら、雷夢殿。た、助けてくれて・・・ありがとう・・・なのじゃ。」
テトがうっすらと目を開けた。どうやら命に別状は無さそうだ。
「テト・・・無事で良かった・・・。」
雷夢はテトを抱き締めた。嬉し涙が止まらない。
「ミカさんも大丈夫です!」
雷夢は二人の無事を確認すると、テトを抱えて皆のところに戻った。振り返ると、母はヘルハウンドと已然格闘していた。
「このままじゃ、埒が明かない。雷夢、行くぞ!」
「え? っておわっ!?」
雷夢の腕を掴み、父は母のところに跳んだ。
「ふんっ!」
父が手をかざすと、ヘルハウンドは吹っ飛んだ。
「雷夢、竹串はあるよな。」
「え、あるけど・・・どうしたの?」
「あれをやるのね、京。」
雷夢は頭に「?」を浮かべた。何をするのか全く予想できない。
「雷夢、それでやつに止めをさせ。」
「はぁ!? 無理だよこんなんじゃ!」
こんな竹串があんな化け物に聞くはずがない。倒せるならとっくにやっている。
「大丈夫、私達がサポートしてあげるから。思いっきりぶちかましなさい。」
「・・・・・・わかった、やってみる。」
振り向くとヘルハウンドは再び立ち上がり、こちらを睨み付けている。
雷夢はヘルハウンドと対峙した。両親の思いに答えるべく、すべての思いを竹串に込める。
『ルキウゲ・ルキウゲ・ファミリアーレ!』
両親が呪文を唱えると、竹串が光はじめた。
「(これなら・・・いける!)」
雷夢はヘルハウンドに向き直り、竹串を構えた。
「ゴオォォォォォォォォォォッッッ!!」
ヘルハウンドがこれまでにない威圧で突進してくる。雷夢はそれに標準を合わせた。
「ぬうぅぅぅおおぉぉぉぉぉっ!!」
ズギャァァァァァン・・・。
雷夢の竹串は光の尾をたなびかせ、ヘルハウンドを貫いた。
- Re: 黒魔女さんが通る!!〜チョコの息子の物語〜 ( No.77 )
- 日時: 2013/02/19 07:09
- 名前: ノヴァ (ID: N.hBywMC)
「取り合えず一件落着ですね。」
今雷夢達は、身動きひとつしないヘルハウンドを取り囲んでいる。ちなみに両親は戦いで破壊された会場をもとに戻している。どうやら「時間巻き戻し魔法」を使っているらしく、辺りがみるみるうちに元に戻っていく。
しかし雷夢は雷夢で苦労していた。
「うえぇぇぇん! 怖かったのじゃ雷夢殿〜!!」
「私もどうなるかと思ったよ〜!!」
「わ、わかったからもう泣くなよ。てか近い近い近い!」
先程までヘルハウンドに飲み込まれていた二人に泣いたまま抱きつかれ、雷夢はあくせくしていた。
「ところで二人とも、体操服どうするんですか?」
どうやらヘルハウンドの胃の中で胃液まみれになったせいか、二人の体操服はボロボロだった。下手に引っ張ると全部無くなってしまいそうだ。しかし何故二人の身体が溶けていないのかが不思議で仕方がない。吐き出されたとき、二人は全身胃液に浸っていたはずだが。
「でしたらこれをどうぞ。」
振り向くと、そこには体操服を抱えた穂香が立っていた。
「え、なんで穂香動けんの? ギューリットの時間停止魔法が効いてるはずなのに。」
「何故かは知らないのですが、私達だけは動けるみたいで。先程まで戦いをお嬢様と観賞させていただきました。」
テントを見ると、こちらに向かって手を振っている未來が見えた。動けたのなら手助けの一つでもしてくれれば良かったのだが。
「会場の修理は終わったよ。全く派手にやってくれたもんだ。」
肩を回して父が戻ってきた。その後ろには母も一緒だ。
「グ、グ、グ、グ、グ・・・。」
全員が振り返ると、先程まで身動きしなかったヘルハウンドが身悶えしている。
「こいつ、動くぞ!」
「む、良くも動く!」
ガンダムネタを飛ばしながらギューリットとアテナが戦闘体勢をとる。
「いや、まて! ようすが・・・おかしい。」
父が二人を制するやいなや、ヘルハウンドが淡く輝き始めた。
「おや、ヘルハウンドのようすがっ!?」
「空気読め。」
空気を読まずにポケモンネタをかましたギューリットに竹串を突き刺す。
そうこうしているうちに、ヘルハウンドが光の中で形を変えながら縮んでいく。やがてその光も収まり、ヘルハウンドが確実に姿を変えていた。
「え、フルーレティ!?」
そこに倒れていたのは、以前二、三回ほど戦いを繰り広げたロベの手下、フルーレティだった。
「でも、どうしてこんな姿に?」
「これのせいだろ。」
父がフルーレティの傍らから何かをつまみ上げた。それは何かの肉片のようで、指先でピクピク動いている。見ているだけで気持ち悪い。
「京さん、それは?」
「多分、『魔獣の核』とか言うやつだろう。これを埋め込まれてたから、あんな化け物になったんだろ。」
「それより、こいつどうすんの? 取り合えず縛っとく?」
「それなら既に。」
見ると、穂香が既に荒縄でフルーレティを縛り上げていた。手をうつのが早すぎないかこいつ。
「じゃ、魔界警察に連絡して連行してもらうか。」
「それじゃ私が。」
ギューリットはポケットからス魔ホを取り出すと、画面をタップし始めた。
『それでは、位置について。よーい・・・。』
バーン!
ピストルの音と共に、四チームの第一走者が走り出した。
あの後、フルーレティを魔界警察に連行してもらい、会場の人々の記憶を一部、両親が『忘却魔法』で消してから、時間を元に戻した。
これでようやくリレーが始まるわけで。
ちなみに両親はテントでギューリットと応援中。
『おっと第二小の率いる赤チームの愛さん、トップの直樹くんに大きく突き放された!』
見ると、二番の愛と一番を走る直樹とかいう男子と、かなり差が開いている。しかし、大丈夫。何故なら次の走者は・・・。
「愛殿〜! こっちなのじゃ〜!」
そう、テトだ。テトならこの差を埋められるはずだ。
直樹が二番走者にバトンを渡した二秒後、愛のバトンがテトに渡された。
「おりゃあ〜!!」
そのとたん、テトは物凄い勢いで二番走者を追跡し始めた。そして遂にはその横に並ぶ。
「雷夢殿! 頼むのじゃ!」
「任せろ!」
走ってきたテトのバトンが雷夢に渡される。しかし雷夢は呪文を唱えない。
唱えたくないのだ。両親が見守っているなか、黒魔法でズルをして勝つなんてことはしたくない。だから今は自身の力で走るのだ。
「うおぉぉぉぉぉっ!!」
第一小の走者に抜かされないように、雷夢は全力で走る。抜かれそうになれば抜き返す。その攻防の果てに、雷夢は第三走者を突き放して未來の元にたどり着いた。
「お願い、未來!」
「任せてください、雷夢さん。」
雷夢からバトンを受けとると、未來は走り去っていった。
「よくやったじゃないか、雷夢。」
「母さん、雷夢のあんなかっこいいとこ見れてよかったわ。」
「そ、そうかな・・・。」
雷夢達は帰宅の路についていた。リレーの結果は、雷夢の頑張りも奏して第二小のトップで幕を下ろした。
「それより、久しぶりに雷夢に会えたから今日は私が晩御飯つくってあげる!」
「ええ、本当!?」
「おっ、僕もチョコの手料理を久しぶりに食べてみたいな。」
「やふ〜! 雷夢殿の母上の手料理楽しみじゃの〜。」
「私もご一緒によろしいですか?」
「いいわよ。ミカちゃんも食べてきなさい。」
「よっしゃ、今日はパーティーだ!!」
『おおーっ!!』
こんな会話を交わしながら、雷夢達は家へと帰っていった。
「あれ、どうしたの大形くん?」
なんか雷夢くん達をずっと見てるけど。
「なんか・・・雷夢くん達の後ろにいるのって、僕と黒鳥さんに似てるねぇ。」
あ、確かに言われてみればそんな気も。
「もしかして・・・。未来からきた僕達だったりしてね、黒鳥さん。」
まさかぁ、って大形くんなんでぬいぐるみ取ってるの!? 大形くん早く付けてよ、桃花ちゃ〜ん!
〜第二話「また居候!?過去の母と運動会 後編」〜
〜終〜
第三話に続く〜