二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ( No.410 )
- 日時: 2012/11/05 19:28
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
時間が経ち、夜になった。夕飯後、バンの自宅にやってきた私はインターホンを押した。
『ピンポーン』
押したのと同時に玄関のドアが開く。目の前に現れたのは、山野リンだった。
健太と直太も一緒に現れて、私を見て思わず首を傾げた。
「あれ、ハルさんじゃないですか。急にどうしたの?」
「こんばんは。今日はバンに泊まりに来てもいいって言われてさー・・・・・・君たち、聞いてない?」
「ああ、出かける前に聞きましたよ。さっそく、中に入ってください」
リンに促され、家の中に入ることにした。健太と直太は顔を見合わせながら、怪訝そうに首を傾げていた。
「そういえば、今日は何かあったっけ?」
「ハロウィンよ」
「ああ、ハロウィンって・・・・・・もしかして、アレでしょ?」
健太が思い出しながら、私に手を差し出す。もしかして知ってるのか?
そう思っていると、健太がニンマリと笑って言った。
「Trick or treat! お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞー!!」
「そう言うと思って、あんたたちの分も用意しといたよ」
あらかじめ準備しておいたものを出し、健太たちにお菓子を差し出す。
リンも素直に受け取りながら、満足そうに頷き合って笑った。
「なるほどね、ハロウィンはそうやって悪戯しちゃうものなんですね」
「リン、あんた・・・・・・何も知らないの?」
「だって、私もそう言うのやったことがないんですよ」
「マジで? 友達の家でやったことないの?」
「はい・・・・・・健太たちもそう言ってましたから」
そういえば、3人とも過去に虐待されていたことがあったのを思い出す。
兄弟なのに、虐待を受けていたのは辛かったかもしれない。それでも、バンがついていてくれたおかげで少しずつ、心を癒すことができたのだ。
「そうだったのか。じゃあ、今度はバンがいる時にでもやろうよ」
「良いですね! それより、バックに入ってるのは?」
バッグの中に入れてあるものが気になったのか、リンは思わず首を傾げた。
私はキラーンと目を輝きながら、満足そうに頷く。
「フッフッフッ・・・・・・よくぞ聞いてくれました! これ、ハロウィンバーションの仮装用なのだよ」
その言葉を聞いて呆れるリンたち。バンを待ち伏せて驚かせるのに、有利だと思っていたのだ。
「は、ハロウィンバーションの仮装って・・・・・・何に変身するんですか?」
「それはね、あいつが帰ってきてからのお楽しみということで・・・・・・リンたちは先に寝ちゃいなさい」
「分かりました。さぁ、寝ようか」
2階に上がって、リンたちと別れた後にバンの部屋に向かった。
(さて、あそこで待ち伏せればいいだけの話)
バンの部屋のカーテンを使って閉め、さっそく着替えに取り掛かる。
私服からハロウィン用の仮装バーションにチェンジして変身した。
「よし、これでどうだ!」
魔女に変身し、背中にマントを取り付けたのと同時にポーズをとった。
色は全体的に赤となっており、バン好みと言えるかどうか微妙なところである。
「あとはアイツが来るのを待ち伏せるだけか」
よーしと言いながら、幼馴染が帰ってくるまでの間に待ち伏せておこうと考える。
その間を利用しつつ、ゆっくり過ごしながら待つことにした。
深夜1時ちょうど、深い眠りに入っていた私は微かに微妙な物音を聞いて目を覚ました。
『カツーン、コツーン』
バンが帰ってきたようだと分かった。私は慌てて、ドアの反対側に身を潜めた。
同時にドアが開く音がして、誰かが中に入ったことに気づく。
「たらいまぁー・・・・・・そこにいるんだろォ?」
ドアを閉めたのと同時に言い放った瞬間、目を閉じた。いつから気づいたのかと思いつつも驚く。
恐る恐る、目を開けると・・・・・・幼馴染のバンが目の前にいることに驚いて、動揺を隠せなかった。
「うぉわっ、本当に帰ってきたァー!」
「あのなぁ・・・・・・人の部屋に入っといて、そこで佇んでるんだ?」
「バンが帰ってくるまで待ち伏せてたんだよ」
「俺を待ち伏せねぇ・・・・・ってか、そんなことはどうでも良いや」
かなり飲んだのか、バンの目は据わっている。その様子を見る限り、酒を飲んで帰ってきたらしい。
全身に包帯を巻いているのか、上下には黒ずくめの服を着用していた。
まさにミイラ男だと言っていいだろう。バンのことだから、酒を飲んで酔ったのかもしれない。
「どれだけ飲んだのよ」
「うっせぇ、飲んでて悪いかぁー?」
「別に悪くないけど、そんなになるまで飲んだの?」
「あそこのパーティー、ハロウィン並みにやってた。LBXバトルには出たけど、相手が強くてな」
「へぇ・・・・・・じゃあ、何を飲んでたか教えてよ」
「ダーメ、おまえには教えられないよ」
バンはベッドにダイブして、大の字になるように寝転がった。
私はあることを閃き、バンの前に歩み寄って座り込んだ。
「ねえ、バン」
「んー・・・・・・? なんだよ」
眠そうに上半身を起こし、私を見つめる。
バンに向かって、ある言葉を言い放ってみた。
「Trick or treat! お菓子くれないと悪戯しちゃうよー」
「あーそんなことだろうと思って買ってきた」
「・・・・・・え?」
バンはフラフラと歩きながら、机の上に置かれているバッグを開けて取り出す。
そこで出したのは、ケーキ屋さんで買ったクッキーだった。
「あっ、買ったのか。いただきます」
クッキーを頬張りながら食べる。眠そうに見つめているバンは何か思い出したのか、私に話しかけた。
「そういえば、ハルからお菓子もらってないな」
「今頃になって、それ言う?」
あはは・・・・・・と言って笑いながら、バンをからかった。
今頃になって気づくのが遅いと言いたいところだけど、今日は許してやることにしようかと思っている。
「別に忘れてたわけじゃないからさ、俺も言っていい?」
「え、良いけど・・・・・・あんた、もしかして---------」
「そ、あれだよ。Trick or treat! 俺にもお菓子くれよなー」
「そう言うと思ったよ。ハイ、どうぞ」
そう言いながら、バンにお菓子を差し出す。それを受け取り、さっそく食べてくれた。
「うん、おいしいな。まあ、悪戯するわけにはいかないよな」
「何それ、酷い! ミイラ男もまあまあ似合うよね」
「なんだ、そりゃ。俺はそういうタイプじゃないからな」
バンは苦笑しながら笑って答える。素直で優しい彼はいつも眠そうに話を聞いてくれた。
そう思うと、何か居た堪れなくなってきた。
「どうしたんだ、ハル?」
お菓子を食べ終えたバンは首を傾げる。
そうだ、ルークと似ている。そういう性格が好きだったから、次第にバンのことが好きになっていったのを思い出した。
「ねえ、バン・・・・・・」
「なんだよ、急にどうしたー?」
ギュッとバンの服の裾を掴んで、泣きそうになるのを堪える。
兄のことが忘れられなくて、未だ悪夢を見てしまいそうで不安になった。
その様子を察したバンは右手で私を優しく抱きしめる。
「なんだ、怖い夢でも見たのかぁ?」
「っぐ、バンじゃないと・・・・・・ダメになりそォ・・・・・・」
嗚咽を上げながら泣くのを堪えそうになる私の涙を優しく拭き取った。
バンは苦笑しつつも、氷介のことを思い出してしまうのだろうかと思いながら察していたのだろう。
「バーカ、そんなことで怖がってどうすんだよ。俺がついてるから大丈夫だぞ」
「うっ、うん・・・・・・」
「しょうがないな、これくらいにして寝よう。なぁ?」
バンは苦笑しながら、部屋の電気を消してくれた。
同時に私はベッドにダイブして横たわる。気づけば、バンの腕の中に居た。
(バン・・・・・・)
隣で穏やかな寝息を立てるバン。彼がいるから、何かと安心できたのだろう。
今夜はバンのおかげで安心して、ゆっくり眠れそうだ。
「おやすみ、バン・・・・・・」
そう言いながら、ゆっくり目を閉じる。
今宵は良い夢を見ることができるようにしたらいい。
転寝しながら、意識がまどろんでくる。そして、深い眠りに落ちた。
The End---------------------------------