二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ( No.641 )
日時: 2012/11/23 12:59
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第33章の続き

(ストーリーモード:バン)

居酒屋にやってきた俺はハルと一緒にカウンターに座り、注文する。

「いつもの。あー日本酒で」
「私はコロッケ定食とカルピスサワー」

ハルは食べる気満々でいたのか、事件のことはとっくに忘れていた。
まぁ、あんなことがあったから辛いことを忘れたいというのが本音だ。
そういえば、直紀から聞いたことを思い出した。ハルが動揺していたのを見て驚いたって言っていたのだ。

「ハル・・・・・・」
「んー? 何ー」
「おまえ、何か動揺してたらしいけど・・・・・・何かあったのかぁ?」
「なっ・・・・・・・」

何でそんなことを知っているのかというような顔をしている。
流石にそこまで驚かなくてもいいのに・・・まぁ、しょうがないか。

「直紀から聞いてたんだよ。酒飲んで寝てたら、メールが来て・・・おまえ、急にどうしたの?」
「バンに言っても分かるはずがないもん」
「なんだよォ、俺に言えないことでもあるのかよ」

ハルの気持ちが分からなくもなかったし、話を聞くだけならいい。
それでも、悩みを聞いてやれるのは俺だけ。彼女を知り尽くしているのは、幼馴染という間柄だ。

「おまえなぁ、1人でほっつき歩くの危ないぞ」
「だって・・・・・・」
「母さんから連絡があって、ハルが帰ってないって言うし・・・・・・ったく、さんざん探した挙句の果てに見つけたかと思えば巻き込まれてるじゃないかぁー」

酒を注ぎながら、お猪口に入れる。母の真理絵から話を聞いて知ったのがきっかけで捜索しながら歩いていた。
そしたら、裏通りの方で何か騒いでいそうな感じがして嫌な予感がしたのを覚えている。
あの時、そこに駆けつけなければ死んでいたかもしれない。1人で歩いていたら危ないだろう。

「うっ・・・・・・・」
「それとも帰りたくなかったのか。言いたいことがあるなら言えよ」
「・・・・・・帰る気になれなかったんだもん、バンに会えないのが嫌だったんだよ!」

帰る気になれないでいたのなら、夜道を歩いているわけだと納得する。
俺に会えないのが嫌ってことは何か悩んでいたはずだ。そうじゃない限り、逆らうことはできない。

「ふぅん・・・・・・まぁ良いや。帰りたくないなら、ここにいれば?」
「ちょっと待ってよ、何でこうなるの?」
「だって、嫌な顔してんじゃん・・・・・・おまえ、俺と一緒に居たいって言いたいの?」
「うっ、こんなことは言いたくないけどさ! でも、バンと一緒なら良いって思うけど・・・・・・」

カァーッと頬を赤らめながら、思わずカッとなって言うハル。
そんな幼馴染を見て、照れているのが分かる。俺も話を聞きたいと思っていたところだし、せっかくだから聞いてやるか。

「そもそも、女の子が出歩いていい時間じゃないんだ。そんなこと分かってて、裏通りに行くのは危険だぞ」
「ごめんなさい・・・・・・」
「俺がいたから良かったものの、1人で行くのは良くないぞ」

確かに女の子が出歩いていい時間ではない。こんな時間に出歩いてたら、バレてしまうのも時間の問題だ。
それを承知して、歩いているのを見たら不思議がるだろう。ハルはマイペースを貫いているので、お咎めはしたくない。

「だって・・・・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃない。自分が何をしたか分かってんの?」
「うっ・・・・・・」
「本当に反省しているなら良いけどさ、ただでは帰せないな」

ハルが反省してるなら良いけれど、ただでは済まさない。幼馴染であれ、お灸を据えておかないといけない。
ますます顔を青ざめていくハルの表情を見て、そこまで説教されるとは思わなかったのだろう。
俺は右手ででお猪口を持ちながら、酒を煽って飲んだ。ハルは俺を見て、うなだれたまま呟く。

「えーなんでよォ・・・・・・」
「1人で出歩いた罰だ」

そう言って、左手でハルのおでこにデコピンを食らわす。

「あでっ、何すんのよー」
「あー? だから、出歩いた罰だって言ってるんだ。本当に性懲りもないヤツだなぁ」

そう言って、酒を煽りながら言う。彼女は構わずに反論して顰めた。
まるで、俺に不満をぶつけて言うかのように、涙目で訴える。

「バン、酷いよ! 説教なんてしなくても良かったのに・・・・・・」
「今回は説教してやったんだから、ありがたく思えよ。俺に感謝しろ」
「うっ・・・・・・あ、ありがとね。何で私があそこにいるって分かったの?」
「ああ、実は-------------------------」

ハルを見て、ポツリポツリと話し始める。



事の発端は2時間前に遡る。いつものように、居酒屋で酒を飲んでいた。
夜11時ちょうど、酒を飲んで、ゆっくり過ごしながら寝ていた。その時、CCMにメールが来ていることに気づく。

「んぁ? 誰だよ・・・・・・」

こんな時間にメール?
そう思いながら、不思議そうにCCMを開いてメールボックスを見る。
1通のメールが来ていて、それを開くと差出人は幼馴染の船津直紀だった。

【バン、ハルが帰ってないんだって! 見かけた?】

ハルが帰ってない・・・・・・いったい、どういうことだ?
いつもは部活を終えて帰ってきているはずだ。ハルに何があったのか知らない。
そう思いながら、電話帳を開く。直紀にテレビ電話をかけた。

『あっ、バン!』
「よォ、直紀・・・・・・ハルとケンカでもしたかぁ?」

そう言いながら、直紀をからかって言ってみる。直紀はツッコミを入れるはずもなく、沈痛な表情をして顰めていた。
その様子を見て、何かあったようだと察して問いかけた。

「直紀、急にどうしたんだよ。沈痛な表情して・・・・・・」
『ハルが帰ってないんだ!』
「はぁ・・・・・・メール見たけど、どういうことだよ」
『僕たち、バンの家を訪ねたんだ。その時にバンのお母さんに会って話してたんだけど・・・・・・』

自宅を訪ねてやってきたという直紀の言葉を聞いて間違いないと確信する。
母さんはそんなこと言ってなかったけど・・・・・・ハルの身に何かあったことは確かなようだ。

「それで?」
『それで話していた時、ハルの様子がおかしくなって・・・・・・』
「あん? ハルの様子がおかしくなったァー?」

直紀が言うには、バイトがあるから帰るって言った後に動揺を見せたらしい。
それが収まるはずもなく、不安そうに立ち去りながら走り出してしまったというのだ。
直紀の話を聞く限り、1人で出歩いていることは間違いなかった。

「ったく、あのバカ・・・・・・1人で悩みを抱えてんのか。しょうがないな、俺がハルを探すから寝てろ」
『うん、任せたよ。おやすみ』

テレビ電話を切り、CCMを閉じた。残っていた酒を煽りながら飲んだ。
ハルを探すついでにどこかで目撃した人がいないか聞き出すしかない。

(待てよ、深夜だよな・・・・・・こんな時間に目撃している人なんていないかぁー)

深夜だから、夜中に目撃している人がいない可能性も有り得る。
だったら、帰りにコンビニで缶ビール買ってから探すのもありか。

「バンくん、飲み過ぎはいかんぞ」
「分かってますよー女将さん」

ヒックと呻きながら、席を立つ。ふらつくけど、少しなら大丈夫だ。
レジに行って、会計を済ませた後に居酒屋を出た。近くにコンビニがあったので、缶ビールを買う。

「ありがとうございましたー」

コンビニを出て、ミソラ商店街を歩きながら缶ビールを煽って飲む。
どこかで彷徨いながら歩いているのかもしれない。ハルのことだから、夜に出歩くのが好きなわけではない。