二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ( No.773 )
- 日時: 2012/11/27 22:48
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
短編6の続き(ハル視点)
やがて時間が経過し、夜10時ちょうど。居酒屋で食事しながら、酒を飲んで語り合った。
私はカルピスサワー、バンは日本酒、光一はビールを飲んでいる。
「ハルもしばらく見ないうちに大きくなったな」
「そりゃあ、女の子っぽくなったでしょー」
「まぁ、ハルはいろいろあって大変だったらしいと聞いてたんだ。でも、元気そうで良かったよ」
光一はビールを飲みながら、私を見つめて言う。しばらく会っていないというのもある。
そのプランクを感じさせない成長を伺うことのできる機会を設けたいという思いがあってこその再会。
光一と一緒にいる時間を大切にしたいという思いがあったから、もう1人の兄と過ごしたい気分だ。
「でも、氷介兄さんが死んでから6年になるし・・・・・・その、兄さんが生きてくれたらって思ってたのに、先に逝っちゃうのが嫌だった」
酒を注ぎながら聞いていたバンはお猪口を持って煽る。
光一がいるので、大丈夫だろうと思っていた。しかし、もう1人の兄の存在を失いたくなかった。
氷介が生きてくれたら、光一と再会できたかもしれない。そう思えるのは、過去の事件の記憶が残っているからだ。
「ハル、俺がいたから生きてこれたのもあるだろ」
「バン・・・・・・」
「ヒョウちゃんがいない時は寂しいって思ったよ。でも、ヒョウちゃんは天国から見守ってくれてるはずさ」
「そうね。兄さんがいないのが辛いけど、バンがいるから寂しくない。それに・・・・・・」
幼馴染ともう1人の兄・光一がついていてくれているから、寂しいと思ったことはない。
しかし、事件直後に叩きのめされた現実を受け入れられるはずがない。それを感じていたのか、孤独になってしまった自分の背中を強く押しながら励ましてくれた。
「バンには感謝しているもん。あの時、落ち込んでた私を支えてくれたのがバンだったんだよね」
「ハル、おまえ・・・・・・」
「私、バンがいなきゃ生きていけないって思った。正直にハッキリ言って、感謝したかったんだ」
隣に座っているバンを見て、強く頷きながら言い放つ。
光一も満足そうに頷いた。自分の代わりに支えてくれた人がいるなら、バンに感謝するべきだ。
そう言えるのは、山野バンという青年の存在があってこそ----------
「・・・・・・俺は別に大したことしてないからさ」
「うん、ありがとう。でも、バンはいつも私の話を聞いてくれた」
「そりゃ、おまえの愚痴なら聞いてやれるけどな。まぁ、光ちゃんにも愚痴を聞いてもらったら良いさ」
バンは向かい側の席に座っている光一を見ながら、コクリと頷く。
彼の話を聞いていた光一は苦笑しながら、チラリと見やる。ふと、1人の青年がこちらにやってくるのが見えた。
「もしかして、光一?」
中学時代の知り合いだった人だ。名前は誰だったかと思い出しながら考え込む。
数秒間、考え込んでいた光一は相手を見て驚く。
「まさか、おまえ・・・・・・中学の時、一緒だった鏑木!?」
「久しぶりじゃん、いつの間に帰ってたんだよ!」
アメリカから帰ってきたことすら知らない。その青年は光一が日本にいたときに通っていた学校の同級生だという。
青年の名は鏑木進也。今は東京の会社で働いているそうだ。
「うん、アメリカから帰ってきたんだ。僕も鏑木に会えるとは思わなかった。今は1人?」
「あぁ、そうだよ! オレ、彼女にふられたんだぜ!!」
「それで飲みまくってんのか、おまえ・・・・・・こっちに来るか?」
「おー良いのか。お二人さん、お邪魔させてもらうぜ」
鏑木を見て、私とバンは顔を見合わせながらも苦笑する。
1人くらい入れば、席が4人ちょうどになるので大丈夫だろう。
「さて、自己紹介しようか。オレは鏑木進也、よろしくな」
「俺は山野バン、よろしくお願いします」
「私は人見晴香です。光一兄さんの妹ですけど、よろしくお願いします」
自己紹介を済ませた後はみんなでトークしながら、楽しく語り合った。
あっという間に時間が過ぎていく。楽しい時間を過ごしたのは久しぶりだった。
気づけば、深夜2時ちょうど。私は隣で酔い潰れて眠っているバンを見つめていた。
光一は酔い潰れたバンを見て、思わず苦笑しつつも溜息をついた。
「バンのヤツ、寝ちゃったのか」
「そうみたい。私は酒癖が悪いから飲まないけどね、カルピスサワーなら大丈夫よ」
「すまんな、ハル・・・・・・鏑木が調子に乗ったせいでウイスキーを飲まされちゃったもんな」
「あはは、大丈夫だよ。バンはこう見えて強い方なんだけどねぇー」
幼馴染のバンを見ながら、頭を撫でて弄る。あんなに酔っ払っちゃって、おまけに眠りこけている。
そんな彼を見ていると・・・なぜか安心できるというのもあるし、心が少しずつ和らいでいった。
「バンには詫びを入れなきゃならんな」
「そうね。でも、バンがいなきゃダメだったかもね・・・・・・」
「おい、ハル・・・・・・・急にどうしたんだよ?」
今まで堪えてきた涙が溢れてきて、思わず号泣した。
幼馴染のバンがいなければ生きていけなかった。心を閉ざしかけていた私の傷を癒してくれる存在があってこそだ。
バンがいたから、兄の死を乗り越えることができた。光一がいるから安心できたのもあった。
「ハル、おまえは1人ぼっちじゃない。いつも強がってるんじゃない、僕には分かるんだ」
「光一兄さん・・・・・・」
「あいつがどんなに心配していたか分かるか?」
「うん・・・・・・」
「バンはなぁ、おまえのことを気遣ってたんだと思う。ハルが暗い顔してたことだって分かるさ」
「兄さん・・・・・・・」
「僕はハルに辛い思いさせたくないんだ。だから、僕もここに住んでサポートするからな」
光一は強く言いながら励ます。そんな私の心の傷を癒してくれた。
兄が帰ってきて、励まされるのも良いけれど・・・いつも優しいバンに癒してもらったことも何度かあった。
目の前に大好きな幼馴染がいるから、ホッとして安心できた。辛くても苦しんでいる私を支えてくれたのだ。
「うん、そうだね・・・・・・」
涙を拭いながら、光一に言うのがやっとだった。その時、テーブルに突っ伏して眠りこけていたバンが目を覚ました。
「んぁ・・・・・・どうしたんだよ?」
「バン、何でもないの。兄さんと話し込んでただけだよ」
「そっかぁーなら良いけどさ。今、何時だっけ?」
「午前3時だよ。そろそろ帰ろうか」
帰る準備をしながら、忘れ物ないかどうか確認しつつもバンを見る。
バンはフラフラとおぼつかない足取りで立ち上がった。これは泥酔しているようだ。
「なぁ、鏑木の家まで送るからさ。会計は誰が払う?」
「俺が払うよー」
バンがヘラッと笑いながら、会計のレジに向かった。
光一は先に鏑木を送ってから帰ると言って、立ち去る。
「会計終わったぞォ〜」
「あっ、終わったんだ。じゃあ、帰ろうよ」
「光ちゃんがいないんだけど、どこ行ったんだ?」
「兄さんなら、さっき鏑木さんを担いで送ってったわ」
「ふぅん、それなら良いや。俺たちは家に帰るかぁー」
先に歩き出したバンの背中を見ながら、後を追いかける。
居酒屋を後にし、私たちは河川敷を経て帰路についた。