二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去 ( No.854 )
- 日時: 2012/12/04 10:33
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
短編5の続き(ヒロ視点)
翌朝、チュンチュンと雀の鳴く声が聞こえる。カーテンの隙間から太陽の光が差し込まれていた。
徐々に意識が戻り、眠そうに目を開けて起きる。周りを見回すと幼馴染のナオがいない。
「痛っ・・・・・・2日酔いか」
ズキンズキンと痛みを堪え、上半身を起こす。気だるそうにナオの話を聞いていたつもりだった。
なのに、そんなことで怒るとは想像していなかった。ナオはきっと、学校に行っているのだろう。
「はぁ・・・・・・何なんだよ、もう」
そう言って、2日酔い止めの薬を飲んで呟いた。目の前に幼馴染がいるわけではないのに、何でこうなってしまうのか。
何もかも信じたくないというのもあったが、僕は浮気していない。ただ、ある女性と会って話していただけなのだ。
『プルルル・・・・・・・』
CCMの着信音が鳴り、眠そうに目を擦りつつも取り出す。
さっそく、CCMを開けると幼馴染の長月レオンだった。こんな時間に電話してくるとは珍しい。
「おはよ・・・・・・」
『おはよーヒロ! 昨日、かなり酔っ払ってたよな』
「レオン、何でそんなこと知って・・・・・・・」
『お前を見かけたんだけど、声をかけてみようと思って。そしたら、酔っ払ってたからさ。大丈夫か?』
レオンの心配そうな声を聞いて、見かけたのなら良いと思って納得する。
それだけでは納得するはずがない。レオンが電話してきた理由を問い質す。
「レオン、電話してきたのには何か理由があるわけ?」
『ヒロォ・・・・・・おまえ、ナオを泣かせたろ?』
「何で知ってんだぁー・・・・・・・痛っ」
ズキンズキンと痛みを堪え、ナオに対する複雑な思いを抱いていた。
僕には生き別れの妹がいたけど、そこで会うハメになろうとは想像していなかった。
レオンがそこまで知っているのなら、どうして----------------------
『さっき、ナオに会って聞いたぞ。おまえ、ナオがいるのに泣かすなんてダメじゃないか!』
「レオン、おまえに何が分かるんだ! 僕の気持ちを分かってくれる人なんているわけないだろォー」
乱暴にそう言って、CCMの通話を切った。レオンにも言うことができない。
ナオにも本当の気持ちを分かってほしかった。ただ、それだけだった・・・・・・その願いを聞き入れられるはずもなく、ソファに横たわる。
(ナオのバカやろォ・・・・・・僕の本当の気持ちを分かれよな)
そう思いながら、目を閉じた。だんだん、深い眠りに引き込まれていく。
あれから何時間くらい経っただろうか、目を開けると外は夕方になっていた。
眠そうにボーッと起き上がり、周りを見る。ふと、その前に座って寝ている青年を見つけた。
「あれ・・・・・・・」
目を凝らすと、ハルの幼馴染である山野バンだった。穏やかな寝息を立てながら爆睡している。
なぜ、バンさんがここにいるのかも分からなかった。とりあえず、彼を起こすことにした。
「バンさん、起きてくださいよ」
「んぁ〜?」
眠そうに目を開けるバン。その視界にボンヤリと僕の姿が映り、寝惚け眼でボーッと見つめている。
ようやく、僕を見て眠そうに欠伸しながらも背伸びする。
「ヒロ起きたのか、レオンが心配してたぞ」
「えっ・・・・・・・」
「レオンのヤツ、何か元気がなくてさ。話を聞いたら、ケンカしたらしいんだって?」
「うっ・・・・・・いや、そのっ」
今朝、レオンと電話してケンカしたことを思い出す。
ナオのことで怒られたけれど、幼馴染としての思いはまだ強かった。
「そんなことで誤魔化すな。ナオが泣いてるとこ見ちまったんだよ」
「ええっ、どこで?」
「あぁ、大学で。ハルと一緒にいたのを見かけてさ、おまえは学校にも来ないで何してた?」
どこにいるんだと言いたいばかりに僕を見て言うバン。彼の優しさは純粋なところがあると言えよう。
だが、妹に会ったなんてことを言えば驚かされてしまうだろう。そのことで悩んでいた僕は誰にも言えないでいたのだ。
「その・・・・・・」
「何も言えないでいるんなら、今回は見逃してやるよ。でも、ナオの様子を見る限りだとショックを受けてるぞ」
ナオがショックを受けている?
いや、それは有り得ない。そんなことでケンカしてキレられたら、本当に困る。
僕自身、何も言わないはずがなかった。ナオにも本当のことを打ち明けられたらと思うと胸が痛くなってくる。
「バンさん・・・・・・・」
「なんだ?」
「今から僕の言う通りにして付き合ってくれませんか?」
「良いけど、何で俺なの?」
「まぁ、ナオにも言えない理由が分かるはずだと思うんですよ。決して、僕は浮気してませんから!」
バンさんは何も言わずに黙りこくったが、素直にコクリと頷いた。
幼馴染であれ、妹の存在について言えることがなかった。ナオにも打ち明けられない理由が分かるはずだ。
場所は打って変わり、ミソラ商店街の近くにある居酒屋。
居酒屋の中はとても落ち着いた雰囲気を醸し出していて、隠れ家にもなっている。
空いた席に座り、僕はバンさんと一緒に注文する。
「僕はビールですね。ジョッキでお願いします」
「俺は日本酒かな。熱燗でよろしく」
そう言いながら注文した後、バンさんが僕を見て問い質す。
「本当にここで良いのか?」
「はい。例の女性が現れると思うんで、待っててもらえますか?」
「例の女性? おまえ、浮気してんのかよ」
「だから、浮気なんかしてませんって!」
バンさんに咎められて突っ込まれていたその時、ガランとドアが開く音がして振り返る。
僕に似たアホ毛の女性が突っ立っていた。それに気づき、手を振った。
「おーい、アキ!」
「あっ、お兄ちゃん!!」
スタタッと僕たちのところに駆け寄り、女性は向かい側の席に座った。
その女性を見て驚きを隠せないバン。知り合いにそんな人がいたとは想像していなかったのだろうか。
「この子がヒロの妹?」
「はい。お父さんがいないの知ってますよね。この子は親父のところで育てられて生きてたんですよ」
父親がいないことはバンたちも知っていた。もちろん、ナオも父親の存在なんて知らないはずがない。
アホ毛が出ているのは遺伝によるものだろう。僕はアキと一緒に話しながら飲んでいたのだ。
「へぇ、なるほどな・・・・・・・」
「初めまして、大空アキです。よろしくお願いします」
「俺は山野バン。ヒロの先輩だけど、よろしくな」
大空アキという女性は僕の妹であり、父親の元で育ったという過去を持つ。
ここでアキと再会して以来、入り浸るようになってから喋るようになった。バンやナオたちには知られたくなかった。
「アキ、ヒロが生きてたことも知ってたんだね」
「はい。兄がいるということは母から聞いてました。素直で優しいところもあるし、いつも私の話を聞いてくれるんです」
バンさんに向かって、明るい笑顔を見せた。アキのことはまだ何も話していなかったので、ナオに事情を話すしかないのか。
(ナオに事情を話せば分かってもらえるかもしれない・・・・・・)
幼馴染であるナオの気持ちが分からないまでもなく、似たような感情を持っていた。
アキのことは妹として見ているし、1人暮らししていることも含めて考えると2人で暮らすことになるだろう。
「どうした、ヒロ?」
「何でもないです。僕はもう大丈夫ですから」
開き直ったようにして見せ掛け、ビールの入った生ジョッキを仰いだ。
バンとアキは心配そうに見守ることしかできなかった。