二次創作小説(紙ほか)

Re: カゲロウデイズ 挿絵あり 【混濁リザルト】執筆中 ( No.108 )
日時: 2013/07/06 18:27
名前: 麻香 (ID: BHyaz.jF)

≫Story*??? 〜闇色リコール〜


“その日”はいつもと変わらないように思えた。
いつもと変わらない、一人で起きる朝。
お父さんが先に起きていて朝ごはんを食べていたけど、言葉を交わすこともなく、昨日のうちに買っておいたパンを口に運ぶ。

お父さんは暴力はふるっても育児放棄をしているわけじゃない。
必要ならお小遣いだってくれるし物も買ってくれる。
必要最低限の“父親”は演じてくれる。
だから今日もいつもと変わらない平凡な一日を送れる。

だけど変化は学校の体育の授業の後に起こった。

いつも体育の授業は、頭が痛いとか風邪気味だとか言って休む。
着替えの時に身体の傷を見られたら厄介だしね。あと単純に面倒くさい。
集団で集まってなにかをするってのが、本当に、本当に…………………………だるい。

でもさすがにそう簡単に隠し通せるわけもなくて、本日は絶対参加を言い渡されてしまった。
仕方なく他の人が着替え終わるのを待って、誰もいなくなった更衣室で服を脱ぐ。
授業の前はそれでなんとかなった。

まったく。わたしも馬鹿だったんだ。
気を許して、油断して、今まで造り上げてきた“秩序”を自分で壊してしまうなんて、さ。

授業の後。
何も考えずに殺風景な部屋で一人服を脱いだ時。

「——————さん、いる?」

声がした。クラスの、女担任の声だ。
同時にガチャリと更衣室の扉が開く。

「遅いから見に来たんだけど————————」

担任と目が合う。視線がぶつかる。
その目が、スッと下に——————わたしの背中に向けられる。
隠すには遅すぎた。

担任は、自分は女だし女子更衣室にノックなしで入ったところで何の問題もないと思っているんだろうけど、わたしには大問題だ。
特に相手が「ちゃんとした正常な人間」の場合は。

「ちょっと、どうしたのそれっ!?」

担任がずかずかと近づいてきてわたしの肩を掴む。
若干の抵抗を試みたけど、それには私はひ弱すぎた。

「……………お父さんに、でしょ?」

「……………………。」

わたしの家の複雑な事情は聞いているはずだから、担任が即座にその答えを出したのも納得できる。
わたしの背中の傷が誰につけられたのかくらい、簡単に。

「ね?先生にできることならなんでもするから、一人で悩まないで?」

「……………………っ」

担任の手が触れている肩が熱かった。
悩んでなんかいない。助けを求めてなんかいない。今さら許しを請う気もない。
人と集団を作るのも協力するのもだるいけど、わたしは、それ以上に——————

「警察に行って全部話しましょう?そうすれば————」

「………いい加減にして……!興味本位で近づくなら最初っから知らないフリしてよっ!!」

「!」


————嘘ばっかり言う人間を信じるのが、一番面倒くさくて、大嫌いなんだ。


担任を押しのけて外に飛び出す。
この世界は本当に面倒くさいことばっかりで疲れる。

          >>>

そして今日も“処刑”が始まる。

悲鳴だってもう出ないほどに。慣れて、疲れてしまった。
痛みを拒むのではなく受け入れて流しながら、わたしは終わりを待つ。
…………終わりなんてないんだけど。
「こんなこと」で、わたしの“罪”が償われるとか絶対に——————


その時、至って静かなものだった部屋の中に、インターホンの音が響いた。