二次創作小説(紙ほか)

Re: カゲロウデイズ 挿絵あり 【奔走アピア】執筆中 ( No.22 )
日時: 2013/06/13 21:56
名前: 麻香 (ID: iNyRJaKN)
プロフ: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/844png.html

≫Story*Ⅰ 〜奔走アピア〜

O2)嫌な予感が現実へと変わる時。


「なに疑ってるんですか、団長さん。もちろん最高に美味しいですよ!」

少しムッとした表情になるモモを見て、キドがちょっと慌てた様子で言い訳した。

「いや………あ、えっと……疑ったわけではないんだが………っ。キサラギが美味しいと言ったケーキ、というのが少し気になってだな………」

その妙な言い回しに考えること数秒。
オレは、ある重要なことを忘れていたことに気づく。

モモは——————異常どころか破壊的なセンスを持つ、いわゆるセンス音痴なのだ。
本日、胸元に変な顔文字がプリントされた、オシャレというより罰ゲームに近い服を着ていたりとか。
ファミレスに行くと毎回、カレーにパフェやらコーヒーゼリーやらをドバドバ大量に入れることとか。
最大の難点は、本人がそれを自覚していないということである。

そんなモモが、絶品だと褒め称えるケーキ。
オレたち一般人————否、人間が食していいもののはずがない。

「…………モモちゃんが美味しいっていうなら、美味しいんだよ。たぶん。」

フォローしようのない微妙な空気の中に、頼りなさすぎるフォローを入れたのは、ちくちくと編み物をやっていたマリーである。
一応メデューサということになっているマリーだが、自分の言葉に照れたようにコソコソとキドの後ろに隠れる姿からは、威厳のカケラも感じられない。

「さっすがマリーちゃん!そうそう!そのケーキ、本当に美味しいから!えっと、ちょっと待って………」

マリーの言葉に何故か少し感動したらしいモモは、持っていた鞄の中からゴソゴソと何かを取り出した。
それは、ここに来る途中で貰ったらしい一枚のチラシだった。
大きくカタカナの店名が書かれている下に、これまた大きく看板商品らしきケーキの写真が載っている。

「おっ、美味しそうじゃないっすか。それは……チョコレートケーキっすかね。」

バイト帰りらしくタオルで汗を拭っていたセトがそう言うと、「キサラギが美味しいと言ったケーキ」の辺りから雑誌に目を落として話を聞き流していたカノが、ぱっと顔を上げた。
いつものニヤケ面が貼りついている。

「美味しそうじゃん。でもさ、チョコレートケーキの上にかかってるドロドロのソースって何?チョコソース?」

確かにセトとカノの言う通り、写真のケーキはふんわりして美味しそうだった。
…………本当に、上にかかっているソースがただのチョコソースであるならば。

だがオレの嫌な予感は現実となり、モモは呆れたようにこう言ったのだ。


「チョコソース?そんなのかけてもつまんないじゃないですか。これはもちろん、デミグラスソースですよっ!」


刹那。一瞬だけ華やいでいた室内の空気が、凍りついた。