二次創作小説(紙ほか)

Re: [イナクロ]-想いは時空を越える((オリキャラ募集!! ( No.10 )
日時: 2012/12/17 19:27
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第1話 『全てが消えた日』

1学期に大きな大会はないため、残りの日数を学習と普段の部活に注ぎ込む時期に突入した。
ホーリーロード決勝から3ヶ月が経って、チャリで通学路を行きながら朝練のことを考えた。
サッカー部の特設グラウンドでボールを蹴る。
蹴った先には復帰したばかりの太陽がいる。
真住に殴られてへこみ、雛野先輩のコメントにとどめを刺される。
おれ達を根淵先輩と佐田先輩が微笑ましそうに見ている。
そんな光景をイメージするだけでも楽しくてしょうがなくなってくる。

敷地内の駐輪場に自転車を止めて、エナメルを肩からかけた。
グラウンドまで歩いていく。
途中、バスケ部と卓球部の奴らがランニングしながらおれの脇を反対方向に通り過ぎていった。
サッカー部専用のグラウンドに来ると、いつもいるはずのない連中がいた。
野球部の奴らがバッティング練習をしているのだ。

何でだ?
おれは幾度も通う場所を間違えるほど方向音痴ではないし、時間を間違えるようなヘマはしない。
入学当初こそ迷子になったこともあるが、新雲の教科ごとに生徒が教室を移動する移動方式授業にもなれた今ではそれもない。

おれが勘違いして朝練があるものだと思いこんでいたんだと自己完結し、校舎内に入った。
教室まで行く途中に、各部の連絡事項が記載されているホワイトボードがある。
そこにはバレー部、ハンドボール部、テニス部など、新雲にある部活動の名前が書かれたプレートが貼ってある。
その中にサッカー部はなかった。


————え?

一旦ホワイトボードから視線を外し、二度見してみた。
が、やはりサッカー部のネームプレートはなかった。

頭が混乱している。
とりあえず、太陽を探さなければと思い、教室まで駆けた。
ロッカーにエナメルを押し入れ、学校中の廊下を走り回った。
教室に太陽の姿はなかったため、日の出と共に起きて来るあいつは校舎のどこかにいるのだろう。
壁がない開放的な図書センターにあの橙の髪を見つけた。
他に男子が2人いたが、おれは太陽以外の奴のことなんか眼中になかった。

「太陽!」

名前を呼ばれて太陽は素直に振り向いた。
だが、向けてくる表情がいつもと違っていた。
いつもはここでささやかな笑顔を見せるのだが、怪訝そうに眉をひそめている。

「なぁ、サッカー部って今日、朝練無かったっけ?」
「無いよ。そもそもサッカー部は新雲にないよ」

この返答はある程度予想していたが、実際聞くとかなりきつい。

「あと、君は誰?」
「おい……冗談きついぞ」

声がぶるぶる震えている。
エイプリルフールじゃあるめぇし、そんな言葉聞きたくねぇ。

「おれは和藁尊で、お前の相棒だよ」
「知らない」

行こうぜ、と太陽の隣にいた男子が促し、太陽は行ってしまった。

太陽が、おれを知らないなんて……
新雲にサッカー部がないことよりもショックだった。

相棒が……
うちのエースが……
太陽が……

———おれを知らない?

その事実が冷水のようにおれにたたきつけられた。