二次創作小説(紙ほか)
- Re: [イナクロ]-想いは時空を超えて((オリキャラ募集締め切り ( No.37 )
- 日時: 2013/01/27 22:56
- 名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)
第10話 『剣城優一』
おれにとってサッカーは、つらくて当たり前の物だ。
つらいなら、やらなければいい。
じゃあ何故やるのか?
おれはこう考えている。
才能に恵まれない選手はこの世に腐るほどいる。
天才と呼ばれる選手もまた然り。
だが、おれは異端だった。
点取り屋としての能は皆無。
エースにはなりたくてもなれない。
誰だって追いつけない足の速さ。
精密機械のように正確なパス。
凡人と似て似つかない。
天才と似て似つかない。
———鬼才 Genie
おれにできることは限られている。
だから、おれはできることを限界を超えて極めて、チームを勝利のイスに座らせる。
そのために今、パスを出す!!
「天馬!止められるんじゃねぇぞ!!」
「分かってる!!」
おれのアシストで天馬が真マッハウィンドを決め、1−0で先取点を取った。
その後、プロトコル・オメガが一気に攻め込み、DFに集中しなければならなくなった。
フェイのクリアで何とか勝機につなげることができた時、蠱惑的なテノールが響いた。
「おーい!!」
声がしたのは観客席の非常口前だった。
逆立てた緋色の髪に、蜜色の双眼。
誰かと似ている気がする。
「「剣城?」」
天馬もおれと同じことを思ったらしく、声が重なった。
その男は観客席からフィールドに降りてきて、おれと天馬に寄ってきた。
「剣城……じゃねぇよな?」
「あぁ。おれは君たちの知っている京介ではない。京介の兄、剣城優一だ」
「優一さん……?」
何だこいつ、おれの彼氏の兄貴と知り合いか?
ちょっとだけ妬いたのは内緒だ。
「天馬君に、尊ちゃんだね?」
「足は……もう、大丈夫なんですか?」
「話は後だ。今はあいつらと戦おう」
パラレルワールドから頼もしい味方の登場だ。
優一さんはユニフォームを纏い、ピッチに立った。
「おれ、嬉しいです!優一さんとサッカーできるなんて」
「おれもだ。それに…君と一緒にプレーできるなんてね」
———尊ちゃん
名前のように優しく微笑む優一さんに、剣城を重ねて不覚にも胸の高鳴りを覚えた。
これが剣城だったら最高の口説き文句だ、と妄想してしまう。
決して浮気ではない。
剣城優一という男が剣城京介と似すぎていて、ぐらついただけだ。
全て剣城愛しさゆえだ。
「ディフェンスは任せて、優一さんはシュートに集中して下さい。おれがパスを出します」
火照った心をさまそうとして、いつもチームメイトのスコアラーに言っている台詞を、優一さんに向けて言うことしかできなかった。