二次創作小説(紙ほか)

Re: [イナクロ]-想いは時空を超えて((オリキャラ募集締め切り ( No.39 )
日時: 2013/02/03 22:52
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第12話 『もう一人の恋人』

プロトコル・オメガとの試合終了後、おれたちは楕円状になって座った。
優一さんとじっくり話ができていないため、何故彼がここに来たのか、どうして歩けているのか—天馬から聞いた話だと、優一さんは足をケガして車いすでの生活を余儀なくされている—を話すことに。

「天馬君、君の知るおれの歴史は、おれが12歳、京介が7歳の時の事故が原因でサッカーをできなくなってしまった、ということだね?」
「はい」
「あの事故は起こらなかった。その結果、おれも京介もサッカーを続けることができた。かなりのレベルに成長したおれ達に、サッカー留学の話があって———」

そこから先は聞くに堪えない話だった。
サッカー留学の話が舞い込んできたまでは良かった。
が、剣城の家には余裕が無く、行かせられたとしても1人だけだった。
両親がリビングで頭をひねっているところを目撃し、話を聞いてしまった優一さんと剣城。

『おれ…行かないよ』

優一さんは剣城に行かせるように両親に言った。
だが、剣城はサッカーに飽きたなどと嘘をついて、優一さんに行けと言った。

「剣城がそんなことを……!?」
「本気で言っているはずがない。
でも京介は、自分のサッカーに関わる物を全て処分して、二度とボールを蹴ることはなかった…。
それが京介の精一杯の優しさだって……。
だから、あいつのためにも、尊ちゃんのためにも、サッカー留学することを決めたんだ」

ぼんやりとして聞いていたおれの頭は、いきなり酔いが醒まされた。
剣城の優しさを汲んでサッカー留学を決めたのは分かった。
というか分かる。
だが、おれのためというのはどういうことだ?

「優一さん、おれの為ってどういうこと何スか?」

聞くと、優一差は妙に熱っぽい視線でおれを見つめて来た。
その蜜色の目に、剣城京介を見た気がした。

「信じられないと思うけど、君とおれはこの時間の流れの中では恋人同士だった」
「え………!!?」

驚くと同時に、合点がいった。
先ほど優一さんにときめいてしまったのは、違う世界で優一さんと付き合っていたからなのだと。

「おれは他人と重ならないプレーをする君に興味がわいて、新雲学園の試合を見に行った。パスとカット以外はからっきしだったね」
「痛いとこつきますね……」
「でも、チームメイトの力を90%引き出せる選手は君以外にいない。おれはどんどん君に惹かれていった。
サッカー留学の話を君に聞かせた時、君はこう言ったんだ」

『優一さんは天才です。おれが行けない高みへ行ってきて下さい』

「君はサッカープレイヤーとしての自分の限界を悟っていた。だからおれに夢を賭けた」
「……………………」

鬼才と天才は相性が良い。
おれの近くには必ずと言っていいほど天才が1人はいた。
ラ・ピュセルにいた頃はラファエル、ステファニー、パトリスがいた。
新雲では太陽と出会った。
太陽とおれが他人になっているのなら、この時間の流れでおれの相棒は優一さんなのか。
十中八九そうだろう。

「だけど、おれはどんなに思い通りに行かなくても、諦めの悪い尊ちゃんが好きだ。サッカーはつらくて当たり前……。君がずっとそう思っていられるように、ね」

何が悲しいのか分からない。

何が苦しいのか分からない。

ただ、剣城を想って、胸が痛い。