二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.100 )
- 日時: 2012/12/17 09:39
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第33章 再会Ⅲ バンVSカレンの因縁対決
(ストーリーモード:バン)
バンはカレン・キャベルンと対峙していた。
そう、まるで佇まいを感じさせないかのような目つきで睨みつけている。
なぜ、彼女が【殺しのヴィーナス】であるのかということについて解き明かそう。
「さっき、言ったよな。【殺しのヴィーナス】っていうのは、カレン・キャベルンの異名さ」
「ええ、カレンの異名って・・・・・・」
「まぁ、ハルは知らないだろうな。調べていくうちにいくつか分かったことがあるんだ」
彼女について調べていくうちに分かったことが3つある。
1つ目は25年前の惨劇による事件。2つ目は連続爆弾事件。3つ目は【殺しのヴィーナス】について・・・この3つを合わせて纏めると、確かに矛盾しているところが出ているのだ。
「まず、1つ目は25年前の惨劇についてだ。当時、イタリアのミラノで起きたという話だったな」
「ええ、そうよ。何を根拠にして言うつもり?」
カレンは動揺を隠せず、俺を見て躊躇いながら言う。
それでも揺るがないくらい、謎解きに専念するしかない。
「ミラノにあるマフィアの組織で働いていたとされる、父親は何者かによって惨殺された」
「それってもしかして--------------------------」
「そう、例の爆弾によるもので殺された。だが、父親はたった1つの手掛かりを残していたんだ」
カレンの父親はマフィアとして働いていたが、爆弾によるもので惨殺されて亡くなった。
死ぬ前に手掛かりを残したとされているようで、謎はすぐに解けた。
「父が手掛かりを残していた?」
「そう、おまえは何も知らないで育ったということになる。親父さんが残した1つの手掛かりはこれだよ」
1枚の写真を出して見せた。写真には、黒く焦げた電池が写っていた。
その写真が示すのは、父親の手の中に収まっていたというものだった。
つまり、この電池が重要な手掛かりになるということである。
「で、電池?」
「ああ。この電池は親父さんが死ぬ間際に残したものなんだ。なぜ、これが残されていたのか・・・・・・」
「だから、何で残されていたのか知りたいのよ!」
「まぁ、そう言うなよ。それは巧妙なトリックが仕掛けられていたからさ!」
父親が死ぬ間際に残した、黒こげの電池・・・それを使ったトリックがあった。
そのトリックとは、あるものを使って利用したというものだ。
「この電池を使った巧妙なトリック・・・・・・それがあるものを利用して作ったということになるんだ。あるものとは、懐中電灯さ」
犯人は懐中電灯を使って、父親が手に取ったのを見てタイミングを図ったということになる。
俺の推理が正しいのだとしたら、犯人は懐中電灯に爆弾を仕込んだのではないかと思っていたのだ。
「犯人は、あらかじめ用意しておいた懐中電灯に電池を入れて起動させようとしたんだ」
「なんだって・・・・・・!?」
そう考えれば、何もかも辻褄が合う。犯人がもし、起動させるスイッチを仕掛けたとしてもおかしくない。
つまり、手の込んだ仕掛けを仕組んだことになるのだろうか。
「父親が懐中電灯を見つけて、ライトをつけた瞬間に爆発が起きた。それで、その仕掛けに気付くことができなかったかもしれない・・・だから、死ぬ前に黒い電池を掴んで握った可能性が高い」
そこで起きた惨劇、つまりマフィアを巡る騒動によるものではないか。
イタリアではマフィアという組織がいくつもの存在しているのだから、騒ぎが起きてもおかしくないはずだ。
「つまり、イタリアで起きた惨劇はマフィアの組織の者による事件だったんだよ」
イタリアのマフィアによる事件だった。これは父親が殺されたという出来事だということだけしかない。
連続爆弾犯はちょっと厄介だということが分かった。爆弾を仕掛けるといったものに関して強いらしい。
つまり、犯人は爆弾を仕掛けることしか考えていないという人物だということが判明した。
「あんたが追っている連続爆弾犯はちょっと厄介な人物だ。爆弾を仕掛けるといったものに関しては強いらしいが、あれだけ高度なものを作るってことは何か理由があるはずだと思わないか?」
カレンが行方を追っている連続爆弾犯が潜んでいる場所は依然分からないままだ。
高度なものを作る人物は逃亡先の日本に潜んでいるという噂が出ていた。
逃亡先を日本に絞って東京のどこかにいるということになる。
「でも、【殺しのヴィーナス】ってどういうこと?」
「彼女はね、5年前に起きた誘拐事件に関与しているんだ」
5年前に起きた誘拐事件でカレンらしき女性を見かけたという話が出ていた。
その時、早間綺羅という少年を誘拐して連れ込んで行ったらしい。後は目撃情報も出ず、行方は掴めないでいたのだ。
「5年前、誘拐されたのは早間綺羅という少年。そいつは催眠術で操られているんだ」
「催眠術!?」
「そう。催眠術を駆使して、敵だと思い込ませることで誰にも心を開かないようにしたんだ・・・・・・違うか?」
早間綺羅はカレンの催眠術によって操られていた。敵だと思い込ませて、誰にも心を開かずに育ってきた。
5年経った今は風貌が変わっていて、キラとは思えないような感じになっていたのだ。
「ほぼ正解よ。でも、警察が来ない限り・・・・・・」
「へっ、そう言うと思ってたぜ。もう逃げられないよ」
そう言って呟いたのと同時に俺の背後から複数の明かりがカレン&ハルを照らす。
「そこまでだ、カレン! 逃亡した挙句の果てに、バンに捕まれるとはな」
「なっ・・・」
そう、俺が考えて仕組んだ罠・・・つまり、挟み撃ち作戦だったのである。
カレンは冷静に状況を把握した上で、俺に向かって呟いた。
「ふっ、私が警察に捕まるとでも思っているのかい?」
「あー? どういうことだよ」
カレンが何か企んでいそうな顔をしていることから考えると、居酒屋にいた時と同じようなことをするつもりだろうか。
そう思っていたその時、カレンは閃光弾を放った。
「おまえたちに邪魔されたら、私の計画が台無しになるんでな。じゃあね!」
言い放ったのと同時にいきなり光が現れて、ピカッと明るくなった。
両手で覆いながら、俺たちは顔を顰める。
「うわっ!」
光が消えた瞬間、姿が見えなくなってしまった。また逃げられたので、今回は仕方ないと思った。
奈良警部たちも悔しさを滲ませ、怒りを露にする。
「くそっ、逃げられたか!」
「奈良警部、ヤツのことは俺に任せてもらえませんか?」
「ああ、バンなら捜査できそうだからな。何かあったら連絡してくれ」
奈良警部と連携して、捜査を進めることにした。何よりハルが無事で良かったとつくづく思う。
その時、ハルが俺のところに駆け寄ってきた。
「バン!」
「大丈夫か?」
「うん、怖かったよぉ・・・・・・」
「とりあえず、帰るか。家まで送るからさ」
家まで送ろうと思っていた矢先、グゥゥゥ--------------------とお腹が鳴る音が聞こえた。
もしかして、何も食べてないのか・・・・・・帰りに居酒屋でまた飲んでから帰ろうと思っていたのだ。
「なんだ、夕飯は食べてないの?」
「ぅん・・・・・・・」
「しょうがないな、居酒屋で喋ってから帰ろうか」
「いいの、マジで!?」
ハルはキラーンと目を輝きながら喜ぶ。そういうところが可愛いから、許しちゃうんだよな。
幼馴染であることには変わらないのだから--------------------------
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.101 )
- 日時: 2012/12/17 09:42
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
居酒屋にやってきた俺はハルと一緒にカウンターに座り、注文する。
「いつもの。あー日本酒で」
「私はコロッケ定食とカルピスサワー」
ハルは食べる気満々でいたのか、事件のことはとっくに忘れていた。
まぁ、あんなことがあったから辛いことを忘れたいというのが本音だ。
そういえば、直紀から聞いたことを思い出した。ハルが動揺していたのを見て驚いたって言っていたのだ。
「ハル・・・・・・」
「んー? 何ー」
「おまえ、何か動揺してたらしいけど・・・・・・何かあったのかぁ?」
「なっ・・・・・・・」
何でそんなことを知っているのかというような顔をしている。
流石にそこまで驚かなくてもいいのに・・・まぁ、しょうがないか。
「直紀から聞いてたんだよ。酒飲んで寝てたら、メールが来て・・・おまえ、急にどうしたの?」
「バンに言っても分かるはずがないもん」
「なんだよォ、俺に言えないことでもあるのかよ」
ハルの気持ちが分からなくもなかったし、話を聞くだけならいい。
それでも、悩みを聞いてやれるのは俺だけ。彼女を知り尽くしているのは、幼馴染という間柄だ。
「おまえなぁ、1人でほっつき歩くの危ないぞ」
「だって・・・・・・」
「母さんから連絡があって、ハルが帰ってないって言うし・・・・・・ったく、さんざん探した挙句の果てに見つけたかと思えば巻き込まれてるじゃないかぁー」
酒を注ぎながら、お猪口に入れる。母の真理絵から話を聞いて知ったのがきっかけで捜索しながら歩いていた。
そしたら、裏通りの方で何か騒いでいそうな感じがして嫌な予感がしたのを覚えている。
あの時、そこに駆けつけなければ死んでいたかもしれない。1人で歩いていたら危ないだろう。
「うっ・・・・・・・」
「それとも帰りたくなかったのか。言いたいことがあるなら言えよ」
「・・・・・・帰る気になれなかったんだもん、バンに会えないのが嫌だったんだよ!」
帰る気になれないでいたのなら、夜道を歩いているわけだと納得する。
俺に会えないのが嫌ってことは何か悩んでいたはずだ。そうじゃない限り、逆らうことはできない。
「ふぅん・・・・・・まぁ良いや。帰りたくないなら、ここにいれば?」
「ちょっと待ってよ、何でこうなるの?」
「だって、嫌な顔してんじゃん・・・・・・おまえ、俺と一緒に居たいって言いたいの?」
「うっ、こんなことは言いたくないけどさ! でも、バンと一緒なら良いって思うけど・・・・・・」
カァーッと頬を赤らめながら、思わずカッとなって言うハル。
そんな幼馴染を見て、照れているのが分かる。俺も話を聞きたいと思っていたところだし、せっかくだから聞いてやるか。
「そもそも、女の子が出歩いていい時間じゃないんだ。そんなこと分かってて、裏通りに行くのは危険だぞ」
「ごめんなさい・・・・・・」
「俺がいたから良かったものの、1人で行くのは良くないぞ」
確かに女の子が出歩いていい時間ではない。こんな時間に出歩いてたら、バレてしまうのも時間の問題だ。
それを承知して、歩いているのを見たら不思議がるだろう。ハルはマイペースを貫いているので、お咎めはしたくない。
「だって・・・・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃない。自分が何をしたか分かってんの?」
「うっ・・・・・・」
「本当に反省しているなら良いけどさ、ただでは帰せないな」
ハルが反省してるなら良いけれど、ただでは済まさない。幼馴染であれ、お灸を据えておかないといけない。
ますます顔を青ざめていくハルの表情を見て、そこまで説教されるとは思わなかったのだろう。
俺は右手ででお猪口を持ちながら、酒を煽って飲んだ。ハルは俺を見て、うなだれたまま呟く。
「えーなんでよォ・・・・・・」
「1人で出歩いた罰だ」
そう言って、左手でハルのおでこにデコピンを食らわす。
「あでっ、何すんのよー」
「あー? だから、出歩いた罰だって言ってるんだ。本当に性懲りもないヤツだなぁ」
そう言って、酒を煽りながら言う。彼女は構わずに反論して顰めた。
まるで、俺に不満をぶつけて言うかのように、涙目で訴える。
「バン、酷いよ! 説教なんてしなくても良かったのに・・・・・・」
「今回は説教してやったんだから、ありがたく思えよ。俺に感謝しろ」
「うっ・・・・・・あ、ありがとね。何で私があそこにいるって分かったの?」
「ああ、実は-------------------------」
ハルを見て、ポツリポツリと話し始める。
事の発端は2時間前に遡る。いつものように、居酒屋で酒を飲んでいた。
夜11時ちょうど、酒を飲んで、ゆっくり過ごしながら寝ていた。その時、CCMにメールが来ていることに気づく。
「んぁ? 誰だよ・・・・・・」
こんな時間にメール?
そう思いながら、不思議そうにCCMを開いてメールボックスを見る。
1通のメールが来ていて、それを開くと差出人は幼馴染の船津直紀だった。
【バン、ハルが帰ってないんだって! 見かけた?】
ハルが帰ってない・・・・・・いったい、どういうことだ?
いつもは部活を終えて帰ってきているはずだ。ハルに何があったのか知らない。
そう思いながら、電話帳を開く。直紀にテレビ電話をかけた。
『あっ、バン!』
「よォ、直紀・・・・・・ハルとケンカでもしたかぁ?」
そう言いながら、直紀をからかって言ってみる。直紀はツッコミを入れるはずもなく、沈痛な表情をして顰めていた。
その様子を見て、何かあったようだと察して問いかけた。
「直紀、急にどうしたんだよ。沈痛な表情して・・・・・・」
『ハルが帰ってないんだ!』
「はぁ・・・・・・メール見たけど、どういうことだよ」
『僕たち、バンの家を訪ねたんだ。その時にバンのお母さんに会って話してたんだけど・・・・・・』
自宅を訪ねてやってきたという直紀の言葉を聞いて間違いないと確信する。
母さんはそんなこと言ってなかったけど・・・・・・ハルの身に何かあったことは確かなようだ。
「それで?」
『それで話していた時、ハルの様子がおかしくなって・・・・・・』
「あん? ハルの様子がおかしくなったァー?」
直紀が言うには、バイトがあるから帰るって言った後に動揺を見せたらしい。
それが収まるはずもなく、不安そうに立ち去りながら走り出してしまったというのだ。
直紀の話を聞く限り、1人で出歩いていることは間違いなかった。
「ったく、あのバカ・・・・・・1人で悩みを抱えてんのか。しょうがないな、俺がハルを探すから寝てろ」
『うん、任せたよ。おやすみ』
テレビ電話を切り、CCMを閉じた。残っていた酒を煽りながら飲んだ。
ハルを探すついでにどこかで目撃した人がいないか聞き出すしかない。
(待てよ、深夜だよな・・・・・・こんな時間に目撃している人なんていないかぁー)
深夜だから、夜中に目撃している人がいない可能性も有り得る。
だったら、帰りにコンビニで缶ビール買ってから探すのもありか。
「バンくん、飲み過ぎはいかんぞ」
「分かってますよー女将さん」
ヒックと呻きながら、席を立つ。ふらつくけど、少しなら大丈夫だ。
レジに行って、会計を済ませた後に居酒屋を出た。近くにコンビニがあったので、缶ビールを買う。
「ありがとうございましたー」
コンビニを出て、ミソラ商店街を歩きながら缶ビールを煽って飲む。
どこかで彷徨いながら歩いているのかもしれない。ハルのことだから、夜に出歩くのが好きなわけではない。
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.102 )
- 日時: 2012/12/17 09:44
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
よく考えたら、彼女は夜道を歩いて彷徨うタイプではない。
(もし、そうだとしても・・・・・・・)
彼女がどこにいるかも分からないままでは、探す余裕すらない。
記憶を探りながら、ハルが行きそうな場所を手当たり次第、捜索するしかないのか。
あるいは、行きそうな場所さえなければ商店街の裏通り・・・・・・少なくとも可能性はある。
「とりあえず、片っ端から探すしかないかぁー」
そう言いながら呟いていたその時、CCMの着信音が鳴った。
すかさず、CCMを開くと母親の真理絵からだった。耳に当てて言う。
「もしもし、母さん?」
『バン、こんな時間まで飲んでたの?』
「飲んでたんだから良いだろォー」
『良くない! すぐに帰りなさい』
「これから帰るけど・・・・・・その前にハルを探すよ」
ヒックと呻きながら、商店街に設置されているベンチに座った。
真理絵は訝しげに首を傾げて驚く。ハルがいないことを知ったのだろう。
『ハルちゃんのことだけど、お母さんが訪ねてきて。帰ってこないけど、どうしたのかしらって・・・・・・・』
「ハルのお母さんが訪ねてきた?」
『ええ、手当たり次第に探しまくったらしいんだけど・・・・・・見つからないって言い出すし』
彼女が行きそうな場所は全てダメだということになる。つまり残されている場所は商店街のどこか。
そこを中心にして探すしかないと思いながら考える。まず、ハルはどこかをほっつき歩いていた。
もし、いないとしてもメインストリートではない場所にいるのかもしれない。
「そっか、見つからないなら良いんだ。後は俺に任せて」
『えっ、バン・・・・・・』
「まぁ、ハルは俺が連れて帰るから。良いよな?」
『うん、お願いね』
そう言って、通話を終えた。さて、その後はどうするか・・・・・・商店街を探すあたり、シーンと静まり返っている。
店は全て閉められているし、中に居るわけがない。ということは、裏通りにいる可能性が高い。
「しょうがねえ、あそこには行きたくないけどよォ・・・・・・」
そう言って、缶ビールを煽って飲み干した。空になったのを確認して、袋に入れる。
その時、コツコツと何か歩く音が聞こえてくる。ベンチの後ろに隠れて伺う。
(ん、あいつは・・・・・・)
1人の女性が向こうから歩いてくる。その女性を見て、どこかで見たような気がした。
居酒屋で行われた、LBXバトル大会の決勝戦で戦った人だ。確か、名前はカレン・キャベルンと言ったか。
(なぜ、こんなところにいるんだ?)
そうだとしても、彼女がここら辺を歩いているということはハルの後を追いかけているのか。
いや、それとも裏通りに向かっているのかもしれない。とりあえず、彼女の後を追いかけることにした。
裏通りに入ると、真っ暗闇になっていて闇を誘っているかのような感じだ。
その後を追いかけながら、慎重に歩いていく。この先に何があるか分からない。
気を引き締めて捜索しながら、ハルを探すことにする。
(ここにいるのなら、彼女は1人で佇んでいるのかも)
そういった確信はないが、カレンの後を追いかけつつも慎重に推理した。
まず、25年前の惨劇・・・・・・父親が抹殺された挙句の果てに爆破されてしまった。
犯人を追いかけて殺そうとするつもりでいたのだろう。
(父親が残した1つの手掛かり、確固たる証拠は1つ・・・・・・)
連続爆弾事件との関連も気になるけれど、少しだけ分かってきた。
5年前の行方不明事件もカレンがやった可能性が高まる。つまり、早間綺羅はカレンによって催眠をかけられているということだ。
(早間綺羅、リンの知り合いか何か・・・・・・)
よく分からないが、探すに越したことはない。
今はハルを見つけることが先決だ。そう思いながら、慎重に後を追いかける。
やっとの思いで辿りついたのは、古ぼけているビルの前だった。
(あれは・・・・・・)
見覚えのある女性・・・・・・幼馴染の人見晴香だった。
彼女を見つけたかと思えば、あのカレンがいた。どうやら、ハルの後を追いかけてきたようだ。
(ハル・・・・・・・)
ふと、耳に聞き覚えのある声が入ってきて様子を伺う。
ハルとカレンは対峙しながら、お互いに睨み合っている。
彼女が狙う目的は分からなかったが、ハルの後を追ってきたのだと想像できる。
しかし、目の前に彼女がいるということは何らかの理由があるはず。
「あなたは・・・・・・居酒屋で行われたLBXバトル大会の決勝戦でバンと戦っていた人ですよね?」
「そうよ。私はカレン・キャベルン、お見知りおきを」
カレンが自己紹介しながら、礼儀正しく言う。つまり、ハルに用事があってきたのだろう。
でも、カレンの異名は【殺しのヴィーナス】って言ってたような気がする。
「だったら、私のことを知ってるのはなぜ?」
「山野バンの幼馴染でしょ?」
「なっ、何で分かった?」
こいつ、俺の幼馴染だと知っている・・・・・・カレンはある程度、情報を把握している可能性が高い。
(これはいったい・・・・・・どういうことだ?)
カレンが何をしようとしているのか、想像がつかない。
あまりにも面食らったけど、彼女は何か悪いことをしていたとか聞いた記憶があったのを思い出す。
警視庁で直井さんや由美さんから聞いた話を思い出して考える。
25年前の事件に関係していることが分かるので、ハルも把握していた。
(25年前の惨劇が関係していると言ってたな・・・・・・)
25年前の惨劇というのは、イタリアのミラノで起きた事件。
イタリアのマフィアが組織として動いている場所でカレンの父親が殺されて亡くなった。
その出来事をきっかけに、父親を殺した人物を追っているという話が出ていたらしい。
(殺した犯人が厄介だとか聞いたな・・・・・・)
殺した犯人がちょっと厄介なのは分かるけれど、いったい何が起きたのか。
由美さんの話によると、犯人は爆弾を仕掛けるといったものに関して強いらしい。
つまり、犯人は爆弾を仕掛けることしか考えていないという人物だということが判明した。
「もしかして、カレンは25年前の惨劇で殺された父親の仇を取りたいんでしょ?」
「うるさいわね! 小娘、承知しないわ!!」
カレンは声を荒げて言う。いきなりハルを睨みつけておいてどうするつもりだ。
ハルはファイティングポーズを構えて、相手を睨みつけながら問うた。
「そもそも、私を狙うのはどうして?」
「山野バンの幼馴染だということが気に入らないし、目障りなんだよ」
「目障りねぇ・・・・・・よく言ってくれるじゃん、あんたなんかに命は渡さない!!」
そうだ、油断しない方が良い。カレンに殺されるよりはまだマシだ。
だけど、逃げ道が塞がれてて追い詰められる状況になっている。どうしたらいいのか悩んでいた。
(くっ、どうやって逃げ切ろう)
相手はヴィーナス・・・・・・・厄介な人と出くわしちゃったから逃げ切るにしても無理だ。
どうしようかと思いながら、目の前にいるカレンを睨みつけた。
「山野バンの居場所を教えてもらおうか!」
カレンの目的が何となく分かった。ハルの後を追いかけていたのは、俺の居場所を聞き出すためだった。
実際に知らないって言ったら殺されるかもしれない。このままだとハルが危ない!
とりあえず、死を覚悟するしかなかった。俺が助けに来るとは思ってないのか。
「知らないよ!」
「フン、本当に知らないみたいだね。なら、こうしてやるか」
カレンはポケットからナイフを取り出した。それを見た瞬間、ヤバいと悟った。
しかし、その時はもう既に遅し---------------------------
「これで死ねェェェ--------------------!」
ナイフを持ったまま、カレンがハルに突っ込んで襲い掛かってきた。
同時に俺は缶ビールを放りだして、空中に上げる。それを見計らった上で右足を振り上げて蹴った。
「これでくらえ!」
右手で持っていたナイフを弾いた。カレンはその場に蹲って、顔を顰めていた。
やっとの思いでハルを守りきったというわけだ。
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.103 )
- 日時: 2012/12/17 09:46
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
まぁ、ハルを助け出せたから良かったと思っている。
「・・・・・・というわけ。無事でよかったよ」
「バン、カレンだってよく分かったね」
「んー何となくだけどね」
酒を煽りながら、ゆっくり飲んだ。このままだと朝まで飲むことになりそうだ。
ハルも流石に暇じゃないんだよな、たまに朝まで飲んで帰ることもありか。
「バン、飲み過ぎだよ。もう深夜2時よ」
「もうちょっと居させてくれねぇ・・・・・・?」
トロンとした目でハルを見て言う。飲み過ぎてるのはいつものことだ。
飲んでから帰るつもりでいたし、朝まで留まるわけにはいかない。
「しょうがないわね、まったく・・・・・・」
「もう少し飲んだら帰ろうぜ」
「ふぅ・・・少しだけなら付き合うよ」
ハルは顔を顰めながら、溜息をつく。
どれだけ飲んだんだろう、もう1杯くらい飲むことにした。
「おーい、生ビールください」
「あら、まだ飲むの?」
「はい、あと1杯で終わらせますから〜」
女将さんと俺のやり取りを見ていたハルは思わず呆れ、右手で顔を覆う。
「はぁ・・・・・・」
「ビールだけ飲んで帰るから」
「飲んだら寝ないでよ」
どれだけ飲んでいるんだという感じで呆れながら見る。
ハルの訝しげな顔を見て、首を傾げた。ちまちま飲んでれば良いだけの話。
ビールの入ったジョッキを煽りながら、ゴクゴク飲み干す。そこで意識が途切れた。
午前4時ちょうど、カウンターに突っ伏して寝ていた俺の肩をユサユサと揺り起こす。
「バン、起きて」
「んぅ・・・・・・もうちょっとぉ・・・・・・」
声を出して言うと、肩を強く揺り起こされたのと同時に声が聞こえた。
「もうちょっとじゃないわ! 午前4時だよ」
眠そうに身じろぎながら、上半身を起こす。寝惚け眼で隣の女性を見る。
ボンヤリとした視界に顔を覗き込んでいるハルの姿が映った。
「おはよ・・・・・・」
「今頃になって、それ言う?」
「眠いんだよ・・・・・・寝かしてくれねぇ?」
「バカなこと言ってないで、さっさと帰るよ!」
ハルに引っ張られて、一緒に居酒屋を出た。眠そうに欠伸しながら、帰路についた。
自宅に着いて帰ると、玄関のドアが開いていた。
「ただいまぁー」
フラフラと入ってきた俺は靴を脱いで上がる。その時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「お帰り。待ってたわよ、バン・・・・・・」
「か、母さん・・・・・・」
目の前に現れた母親の真理絵を見て驚く。いつの間にいたのかと思ってびっくりした。
壁に背中を預けて座り込んだ。そんな俺を見て、溜息をつく。
「バン、朝まで飲んで帰ってくるなんて・・・・・・」
「ハルを見つけたから良いだろォー」
「もう1回飲んでから帰るつもりでいたのね?」
母さんは俺の視線に合わせてしゃがみ込む。気づけば飲んで帰るのが日常になっていた。
目が据わっている俺の頬をギュッと抓って言う。
「どれだけ飲んだの、このバカ!」
「いててて・・・・・・飲み過ぎたんだから良いだろ。説教は後で聞くー」
そう言って立ち上がり、フラフラと居間に向かった。
居間のソファに寝転がって、トロンとした目つきで母さんを見る。
「説教してると寝るから困るのよね」
「俺がぁ?」
「うん、今回は免じて許すわ。ただし、次からはないと思ってね!」
目をウインクしながら苦笑する母さん。いつもなら説教を受けてるはずだったのに、何でと思うばかりだ。
まぁ、ハルを見つけたから良かった。その思いを刻みながら、襲ってきた睡魔に目を閉じた。
意識がまどろんでくる中、深い眠りに落ちたのだった。