二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.26 )
日時: 2012/12/15 21:39
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第8章の続き

(ストーリーモード:バン)

帰り道、リンと一緒に肩を並べながら歩いていた。

「おい、リン」

リンはビクッと怯えながら、俺を見る。
怒っているとかそういうのじゃないから、そんな目で見なくても良いのにと思いながら溜息をついた。

「夜は危険なの分かってるんだろ?」
「うん・・・・・・」

シュンとうなだれながら、ガクッと肩を落とすリン。
その様子だと反省しているようだが、夜中に出歩いて良いわけじゃない。

「ハルの話を聞く限りじゃあ、望月の妹と一緒に抜け出したみたいだな?」
「うっ・・・・・・」
「それにジンも一緒にいたらしいし、その時に隙を突かれて逃げられたなんてこと言ってさ」

ハルから話を聞いたときは本当なのかと思って疑った。
話を聞く限り、危険なところを探検しに行く可能性も有り得るだろう。
流石にジンもトキオシティに行ったとは想像していなかったらしく、運よく兄の幸介が優と会話していた時の記憶を思い出してくれたこともあって助け出せた。

「ごめん、バン兄さん・・・・・・」
「こんな時間に高校生が歩いていい時間じゃないぞ」

顔を顰めながら、リンの頭を優しく撫でた。
妹が危険なところに行くと言ったら驚くだろうし、流石に俺もビックリした。

「うん・・・・・・」
「まあ、たまには・・・こんなこともあるさ、今回は仕方ないから見逃してやるよ」

リンのことだから、何をしでかすかと思えば探検しに行くだろうと思った。
優の誘いに乗られたのか、リンは探検した気分になっていたのだ。

「兄さん、何で私が廃墟ビルにいるって分かったの?」
「ああ、話すと長いけどな・・・・・・」

歩きながら、リンに向かってポツリポツリと話し始めた。




事の発端は5時間前に遡る。
時間は6時ちょうどになっていた。
俺はトキオシティ駅近くの居酒屋で酒を飲んでいた。
いつもは誰かに誘われて飲むということになっていたが、今日は1人で飲んで帰ることにしようと思って決めていたのだ。

「ここで飲むのも悪くないよな」

カウンター席に佇みながら座る俺は酒をお猪口に注ぎこんだ。
酒の入ったお猪口を眺めながら、リンのことを思い出す。

(リンも少しずつ慣れてきたかな・・・・・・)

妹のリンは大人しいから、俺が酔っ払って帰ってきたときは玄関で出迎えてくれる。
そんな彼女のことが可愛くてたまらなかったのか、まるで妹のような存在だと思っていた。

(リンは健太と直太のことを気遣っていた)

姉としての役割をこなしたいという思いはあるが、健太と直太の会話についていけないこともあるのだろう。
兄としての役割を担いながらサポートすることもできるが、リンと仲良くしてもらっているから大丈夫だ。

(まあ、ここで誰かに会うわけじゃないよな)

この居酒屋は俺の隠れスポットと言っても良いほど、地下に入っている。
居酒屋の雰囲気が好きだからというのもあるが、飲み過ぎはほどほどにしなきゃいけない。

(そのことを分かってて、飲み過ぎるのはどうだかなぁ)

ハルに突っ込まれながら、何とか帰ってこれたという記憶もうっすらとしか残ってない。
俺にとっては、どうでも良いことだった・・・・・・酒浸りになっていようが、呆れられるのも承知で飲みまくっていたからだ。

(まあ、今日はゆっくり飲んで楽しもうかな)

左手でお猪口を持ちながら、口に運ぶ。
そのお猪口に入っている酒を飲んだ。


飲み始めてから4時間が経過した頃には酔い潰れ、テーブルに突っ伏していた。

「す------------すか-----------------」

寝息を立てていたとき、ムニャムニャと呟きながら起きる気になれない。
その時、ズボンのポケットに入っているCCMの着信音が鳴った。

『プルルル・・・・・・』

その音を聞いた瞬間、眠そうに身じろいだ。
重そうな瞼を開けるのがやっとだったが、左手でズボンのポケットに入っているCCMを取り出して開く。

「んぅ・・・・・」

こんな時間に誰だよ・・・・・・そう思いながら、CCMを開くと画面にはハルからの着信が載っていた。
仕方なく、テレビ電話を通すことにした。

『あっ、やっと繋がった! 電話しても出ないからさ、今どこ?』
「なんだよォ・・・・・・酒を飲んで寝てたときに電話すんな」

不満そうに言いながら、顔を顰める。
カウンターに突っ伏したまま、CCMを置く。
ハルは溜息をつきながら、俺に質問して問いかける。

『そ、そんなことよりも! リンちゃんは?』
「リン? あいつなら、家に帰ってるはずじゃないかぁ?」

リンは空手部の練習が終わった後、自宅に戻ってきているはずだ。
こんな時間にハルが電話してきたということは何かあったのか。

『さっき、バンの家に行ったけど・・・・・・リンもいないって!』
「あ? リンがいない・・・・・・?」

酔いの浸った頭で状況を把握しようとするにも、飲み過ぎたのが効いたかもしれない。
リンがいないってことは、絶対に何かあるはずだ。

『うん、どっかに行ったかもしれない・・・っていうか、どこにいるの?』
「トキオシティ駅近くの居酒屋だよ」
『トキオシティ!? あんた、何でそんなところにいんのよ!!』

居酒屋にいることを知って驚くハル。
トキオシティはたまに遊びに行くことが多いから、飲みに行くのが楽しみでたまらなかった。

「良いだろォ・・・・・・別に飲んでもさぁ」
『いやいや、良くない! のんきに飲んでる場合じゃないでしょ!!』

ハルの鋭いツッコミを聞いて、顔を顰める俺。
のんきに飲んだって良いじゃんかよ、少しくらい飲ませてくれても構わない。

「あのな、俺の楽しみをぶち壊す気かぁ?」
『そのつもりはないけど、あんたが泥酔したら困るって!』
「そこまで泥酔してるわけじゃないんだよ、ったく・・・・・・」

泥酔しているわけじゃないのに、そこで突っ込む必要あるか。
ハルのヤツ、何やら慌しそうだけど・・・・・・何かあったことは間違いなく読み取れた。

『とにかく、今から行くよ! トキオシティ駅に向かうから!!』
「え、今から来るって言うのかぁ?」
『当たり前でしょ、そこで会って話さないとダメだからね!』

うわぁ・・・・・・マジかよ、ハルと会うなんて思ってなかった。
まあ、こんなこともあるから仕方がないかもしれないけれど・・・・・・ハルに会って、詳しく話を聞いてみる必要がありそうだ。

「ちぇっ、分かったよ・・・・・・トキオシティ駅前で待ち合わせな?」
『うん、ジンも一緒に来るから!』
「えっ、ジンも一緒に来る?」
『そうだよ、その時に会おう! じゃあね!!』

いきなり通話が切れたかと思いきや、ハルの慌しさに違和感を感じた。
これは何かありそうだな、ハルのヤツはリンのことで話があると言っていたから気になる。

(これは何かありそうだな・・・・・・)

しかもジンと一緒に来るって・・・・・・どういうつもりだか知らないけど、その時に会えば良いだろう。

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.27 )
日時: 2012/12/15 21:41
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

少しだけ残っていた酒を一気に飲み干し、レジで勘定を払って済ませた。
店を出た後、ゆっくりと階段を駆け上る。酒を飲み過ぎて、ふらつきながら歩くのはいつものこと。

「飲み過ぎたかなぁ・・・・・・」

ハルたちと会う約束をしているので、飲まずにはいられなかった。
それでも、幼馴染が迎えに来てくれることなんかもあるから起こしてくれるとありがたいくらいだ。

「まぁ、俺も年取ったかな・・・・・・・ハハッ」

ヒックと呻きながら、千鳥足で歩いて思い出す。
ハルに蹴られて起こされたことなんかもあったな、あの時は流石に飲み過ぎてしまったとつくづく思った。

(ハルに起こされたら、ひとたまりもないよなぁ)

幼馴染だからこそ分かる、まさに以心伝心というか。
心が通じ合えるのは確かなことで、幼馴染として認識できるようになったのは高校生になってからだった。
飲み過ぎたのもあるけれど、幼い頃からずっと接してきたからこそ分かることもあるのだ。

「リンのヤツ、何やってんだ」

溜息をつきながら、妹のリンのことが気がかりになった。
歩を進めながら、トキオシティ駅前に向かった俺はさりげなく、寝たい気分になったこともあったのを思い出した。

(そういえば、ベンチで寝てしまったことなんかもあったっけ)

その時はハルが迎えに来てくれて、気持ち良さそうに寝ていた俺を叩き起こしてくれたこともあった。
心配性なのは分かるけど、あれだけ飲み過ぎたら反省しそうになるのは間違いない。

(心配しすぎなんだよ、ハル・・・・・・)

幼馴染の言いたいことは何となく分かったので、待ち合わせ場所のトキオシティ駅前に向かって歩き出した。



数分後、トキオシティ駅前に到着したが・・・・・・シーンと静まり返っていた。

「・・・・・・あれ?」

ここで待ち合わせするんだったよな、まだ来てないのか。
ハルたちはまだ電車に乗っているのだろう。

「なんだよ、来てないんなら待つしかないのかぁ」

彼女たちが来るまでの間、駅前に設置されているベンチに座って待つことにした。
夜空に舞う満月を見上げながら、天を仰いだ。

(ハルたちが来るまで寝ながら待っていようかな)

綺麗な満月を見上げながら、そっと目を閉じた。
少しずつ、意識がまどろんでくる。俺は深い眠りに落ちた。

(少しだけでいいから、寝かしてくれ)


その思いはゆっくりとかき消されていく。
あれから何分くらい経っただろうか、深い眠りに落ちていた俺の肩を優しく起こす。

「----------ン、バンってば!」
「・・・・・・ぅんー・・・・・・・」

眠そうに身じろぎながら、少しずつ意識が戻ってきた。
重そうな瞼を開けるのに時間がかかったが、ようやく視界にボンヤリとハルの姿が映る。

「バン、こんなところで寝てたら風邪引くって!」
「・・・・・・ハルゥー・・・・・・いつ来たんだ?」

寝惚けながら、ハルを見て眠そうに目を擦りながら言う俺。
そんな俺の様子を見て呆れていたが、ハルは苦笑しながら応えてくれた。

「さっき、やっと着いたんだよ。周りを見回したら、ベンチで寝てるんだもん」
「そうかぁー」

寝惚け気味にハルの姿を捉えながら、隣にいる青年を見た。
そこにいたのは、秒殺の皇帝・海道ジンだった。

「ジンも来てたんだな」
「うん、久しぶりだね。バン君、酒を飲んでいたのかい?」
「ああ、そこの近くにある居酒屋で飲んでた。そういえば、俺に何か用?」

居酒屋で飲んでたことを思い出しながら、ハルたちに用件を聞く。
ハルとジンは顔を見合わせながら、何を話そうか悩んでいる様子だった。
訝しげに見て、これは何かありそうだと確信した。

「リンのことで話があってきたんじゃないのかぁ?」
「うん、そのことで来たんだけど・・・・・・」

ハルは『えっとぉ・・・・・・』って言いながら、ちょっと困ったような顔をして溜息をついた。
彼女の様子を見る限り、何かあったことは確かなようだ。

「リンがどうかしたのかぁ?」
「うん・・・・・・8時か8時半頃、ジンと一緒に空手部のところに行こうと思ってたんだ。その時にミソラ学園高校の正門前でリンと優ちゃんが何やら話しこんでたのを見かけたよ」

ハルの話によると、高校の空手部に遊びに行こうと思っていたところだったという。
そこで、正門前で話していたリンと優の2人を目撃して話し込んでいるところに割り込んだそうだ。

「それまでは良かったんだけど、隙を突かれて抜け出されたんだ」

ジンがハルに続いて、話を進めてくれた。
リンと優の様子がおかしかったので、話しかけてみようかと思っていたときに抜け出したらしいのだ。

「隙を突かれたって・・・・・・どういうことだよ?」
「それが、私もまったく分かんないのよォー」

ハルは肩を竦めながら、何かありそうだと言い出す。
彼女の様子を見て、話を聞いていたジンもコクリと頷く。

「僕もちょっと引っかかってね、どこかに行く可能性も有り得るんじゃないか」

ジンの言葉を聞いて、去年の記憶を思い出しながら探った。
確か、直太が悪ガキ軍団と一緒に廃墟ホテル探検しに行ったことがあったのを思い出す。

(確か、直太が廃墟ホテル探検しに行ったことがあったな)

そういえば、あの日も夜中だった・・・・・・この状況は間違いなく、どこかに出かける可能性があったはずだ。
そう考えれば、リンの行く場所は廃墟ビルの可能性も有り得ることになるのだ。

「ジン、ハル・・・・・・もしかして、夜遊びしに行く可能性もあるんじゃないかぁ?」
「夜遊び・・・・・・あっ、もしかして-----------------」

ハルは俺の言いたいことが何となく分かったようで、リンが何をしでかすか理解できた。

「夜の探検!?」
「ああ、好奇心旺盛なところが優ちゃんの性格だからな。その性格を生かさないことには、気がすまないかもしれないと思って行ったんじゃないのかぁ?」

同級生の望月幸介なら、優のことで何か知っていそうな気がする。
優はリンの同級生であり、空手部のチームメイトに当たる。
ハルもそのことを知っていたので、2人とは面識があった。

「そ、それもあり得るね・・・・・・」
「だとしたら、リンは廃墟ビルかもしれないしなぁ」

そう言いながら、頬を掻いていたその時だった。
ズボンのポケットに入っているCCMの着信音が鳴った。

『プルルル・・・・・・・』

左手でCCMを取り出しながら、テレビ電話を通した。
画面に現れたのは、優の兄・望月幸介だった。

『バン、優のこと知らないか?』
「ううん、見てないけど・・・・・・もしかして帰ってないのかぁ?」
『ああ、帰ってないよ。リンちゃんと一緒にどっか行ったかもしれないんだ』

望月の言葉を聞いて、ハルを見やる。
やっぱり、どこかに行った可能性が高い。

「やっぱりなぁ・・・・・・おい、望月」
『なんだよ?』
「優ちゃんと何か話さなかったか?」

望月のことだから、優と話していることも有り得る。
そう考えれば、行き先が分かるかもしれないと思ったからだ。

『ああ、そういえば・・・・・・3、2日前あたりに話したな』
「その時、なんて言ったか分かるか?」
『確か、廃墟ビルに行くとか言ってたな・・・・・・』

廃墟ビルに行ったかもしれないということか。
やっぱり、リンは間違いなく廃墟ビルに行ったことになる。
優の提案に乗せられて行ったということは有り得ないかもしれない。

「どこの廃墟ビルに行ったか分かるか?」
『ええと、トキオシティの裏通りにあるって言ってたな』

トキオシティって・・・・・・・今、俺らがいるところじゃないか!
その裏通りに廃墟ビルが存在していようとは思っていなかった。

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.28 )
日時: 2012/12/15 21:44
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

早々、廃墟ビルにいる可能性が高まってきたのは言うまでもない。
その場所がどこにあるかも聞かされていなかった俺たちは顔をしかめた。

「ちっ、厄介なことになったな」
「そうだな、廃墟ビルが近くにあるかもしれないな」

ジンも同感だったようで、顔をしかめながら頷く。
廃墟ビルの場所を掴むのにも時間がかかりそうだが、どうやって調べるか。

「くそっ、こんな時に限って探すしかないのかぁ」
『いや、待て・・・・・・バン、廃墟ビルの場所なら聞いたことがある』

望月がテレビ電話で話しかけてきたので、何か参考になりそうだと思って聞くことにした。

「どこにあるか知ってるのか?」
『ああ、噂によると・・・・・・確か、トキオシティの裏通りにあるそうだ。その一番奥に聳え立つ建物があるらしい』

望月の話によれば、一番奥に存在しているという古くから伝わる建物。
そこが噂の廃墟ビルというか、誰も知らない人はいないと言っていいほど有名な場所だったそうだ。

「そこにリンたちが向かったということになるのか」
『ああ、そういうことになるな・・・・・・だが、くれぐれも用心して気をつけるんだぞ』

望月の気遣いを受け取り、俺たちは顔を見合わせながら頷く。
廃墟ビル探検に行くなんてありえないと思ったし、このままでは危ないと悟ったのか立ち上がる。

「よし、そろそろ行かないといけないな」
「私も行くッ!!」

ハルが俺に向かって、突っ込みながら話しかける。
その様子を見る限り、行きたそうな顔をしているが・・・・・・ハルは物凄く分かりやすい。

「いや、ハルはダメだ」
「えーなんで?」

プウーッと頬を膨らませながら、顔を顰める。
こんな時間に女の子が出歩いていい時間じゃない。
今回は先に帰らせて、後は俺とジンの2人で追って調べながら探すことにした。

「ハル、ここは俺とジンに任せてくれないか」
「でもぉ・・・・・・」
「女の子が出歩いていい時間じゃないぞ、おまえは先に帰ってろ」

そう言いながら、ハルの背中を押して言う。
彼女は不満そうな顔をしながら、俺を見つめていた。

「だって、バンと一緒にいたいもん」
「そりゃあ、無理だろォ・・・・・・女の子が出歩いてたら危ないって思うぜ。だから、今回は先に帰ってろ。なぁ?」

ハルの頭を優しく撫でながら言う俺。
最初は嫌がっていたが、ハルは素直に俺の言うことを聞いてくれた。

「うん・・・・・・・分かったよ、先に帰るね」
「おお、ジンと俺は廃墟ビルに行くからな。後は任せろ!」
「・・・・・・うん、バンたちも気をつけてね!!」

そう言って、ハルは手を振りながら去っていった。
彼女を見送った後、ジンと顔を見合わせながら頷く。

「じゃあ、行くかぁー」
「そうだね、バン君! 2人を探し出そう」
「ああ、2人を見つけたほうが手っ取り早いしな」

駅前のベンチを去った俺たちは裏通りにある廃墟ビルに向かった。

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと失われた過去(改) ( No.29 )
日時: 2012/12/15 21:45
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

そして、現在に至る。
帰り道を歩きながら、リンと一緒に肩を並べている。

「・・・・・・というわけだ。まあ、こんな時間に探検するなんてダメだぞ〜?」
「だって、優が言い出したんだからさぁ・・・・・・」
「それはしょうがないって言ってんだろォ・・・・・・」

リンのふてくされた顔を見ながら、溜息をつく。
女の子が出歩いて良い時間ではないことを分かっていて、そのリスクを犯すって言うのはどうだろう。
それでも、リンが無事でいてくれたのが何よりだった。

「ったく、こんな夜中にほっつき歩いてると変なヤツに絡まれちまうぞ」
「ごめんなさい・・・・・・」

リンは素直に謝りながら、流石に反省したらしい。
そんなことも気にせず、リンを見やりながら考える。

(こいつが夜中に歩き回ってんのは、何か理由があったわけじゃないよな)

そういえば、リンが優と一緒に居た時にコソコソ話していたって言ってたな。
ハルとジンが目撃したのは、そういう内容だったらしいが・・・・・・・俺は酒を飲んで寝ていたから、彼女とジンから話を聞いただけだった。

「まあ、おまえが無事で良かったよ」

ポンと頭を撫でながら笑って話しかける。
俺を見たリンもそれにつられて、笑みを浮かべた。

「うん、そうだね」
「もう2度とあそこに行くんじゃないぞ」

廃墟は危険な場所でもあるし、探検しに行きたいというところだろう。
好奇心旺盛になっている優のことを考えれば納得すことができる。
リンは優に誘われていただけらしいが、好奇心に駆られて探検した気分になっているようだ。

「初めての探検は楽しかったか?」
「うん、楽しかった!」

リンは満足そうに頷きながら、俺を見て応える。
その様子だと満足したらしく、ジンと出会えたことも貴重な経験になったかもしれない。

「ジンのこと知ってるか?」
「ううん、知らないけど・・・・・・そんなに凄い人だったの?」

首を振りながら応えるリン。
ジンのことを知らなかったらしく、廃墟ビルの地下室に居た時に優から話を聞いて知ったそうだ。

「ああ、中1のときに行われたアルテミスという大会の決勝戦で戦ったことがあるんだ。その時、俺はアキレスを使って戦ったけど、結構楽しめたぜ!」

ジンとの戦いはまさに壮絶なものだったと言えよう。
当時はイノベーターの元で操られていた灰原ユウヤとも戦った。
その時のユウヤを思い出すと、精神的に追い詰められた状態になって暴走したことがあったのだ。
ジンと俺は力を合わせて、ユウヤのLBXだったというジャッジを撃破した。

「そんなことがあったんだね! 決勝戦で戦ったのかぁー」
「そういうことだ。ジンと俺は優勝の座をかけて真っ向勝負で挑み、激闘の末に制したのは--------------」

ジンとの戦いに挑み、死闘を演じながら戦うしかなかった。
アキレスの必殺ファンクション・超プラズマバーストでジンのLBXを撃破した。

「俺だよ・・・・・・まあ、あの時はチャンピオンになれるとは思ってなかったな」
「おおー! 凄い、バン兄さんはチャンピオンになったんだね、そういうことだったのかぁー!!」

リンは俺の話を聞きながら、納得できる部分もあったのだろう。
そういえば、Lマガを読んだことがあるのかな?

「そういや、Lマガ読んだことあるの?」
「うん、あるよ! 中学の時にバン兄さんが載ってたの見たことあったんだ」

俺が載ってた特集に関するLマガを読んだことがあったらしく、その時にチャンピオンだったことを知ったらしい。

「まあ、でも凄いよね!」
「ああ、そうだな・・・・・・」

まあ、あの時はチャンピオンになれて良かったと思う。
大学3年生になった今もチャンピオンとして有名人になっていたのだ。

「バン兄さん・・・・・・」
「んー?」

リンがいきなり歩くのを止めたので、俺は首を傾げながら振り返る。
すると、リンが嬉しそうな顔をして抱きついてきた。

「バン兄さん!」
「うわっ! どうしたんだよ、リン?」

いきなり抱きしめられたかと思えば、人懐っこい笑顔で甘えてくる。
そんなリンの様子を見ていて、微笑ましそうに見つめた。

「リン、これからは夜に遊びに行くんじゃないぞ?」

優しく諭しながら、リンの頭を撫でる。
大人しそうなリンのことだから分かってくれるだろう。
そう思いながら、ゆっくり撫でていたその時だった。

(・・・ん?)

よく見たら、リンの首に何か傷痕がついていた。
もしかして虐待されたのだろうか・・・そういえば、話を聞いてなかったのを思い出す。

(リンのヤツ、大人しそうな子だなって思ったけど・・・・・・これは何かありそうだな)

その傷痕を見る限り、親戚の家で何かあったのかと思いながら考える。
リンのことだから、流石に言いたくない理由でもあるんじゃないだろうか。

「どうしたの、バン兄さん?」
「いや、何でもないよ」

リンに悟られないようにするため、落ち着いて答えた。
訝しそうに見つめていたが、リンは先に歩き始める。

(虐待されたことが原因ならば、俺たちに預かったということになるんじゃないのか?)

そう考えていれば、リンは心を開かないはずだ。
どうりで、リンが俺に心を開こうとしない理由が分かってきそうな気がする。

「おい、リン・・・・・・」
「何、兄さん?」

リンは俺を見て、首を傾げながら歩み寄った。
彼女を見ながら、肩を並べて歩きつつも試しに質問した。

「おまえ、もしかして虐待されたことがあるのか?」
「・・・っ!」

リンはビクッと怯えながら、顔を強張らせた。
ブルブルッと怯えているリンの様子を見て驚く。

「リン?」

いきなり、顔を青ざめて・・・どうしたんだ?
急に様子がおかしくなったので、リンに何があったのか問い質そうと思っていたその時。

「おい、リン?」
「バッ・・・・・・」

リンは俺を見て、顔を上げて動揺を隠せないような苛立ちを募っていた。
これは何かある。絶対に何かありそうだと確信したその時、リンは俺を見て言い放った。

「バン兄さんに分かるはずがないもんっ!」
「あっ、ちょっ・・・・・・」

リンは怯えきった顔を強張らせたまま号泣しながら、先に走り出した。
呆然と立ち去りながら走るリンを見つめた。まるで何が起きたのか分からないという状況だ。

「リン・・・」

この時、俺はリンの複雑な心境に気付いていなかった。
しかし、この日を境に悩む日々を送ってしまうことになる。